【スターブレードに関する、ありきたりな感想】2006.02/04




・演出面の見事な作品

 『スターブレード』は1991年にナムコがゲームセンター用にリリースした大型筐体モノの3Dシューティングゲームである。このゲームは当時としては恐ろしく美しいグラフィックで、特殊なディスプレイによる無限遠投影システムのお陰で“宇宙の奥行き”を感じ取りやすくなっている。これは通常のディスプレイでは絶対に実現できないものであり、『スターブレード』や『ソルバルゥ』といったこの時代のナムコ大型筐体だけに備わった特権的特徴であった。当時はテクスチャーを貼り付ける余裕のない時代だったので、戦艦や戦闘機のグラフィックはカクカクになっているが、そこを制作者の世界観と想像力、緻密なギミックと演出によって上手く補っているのが凄い。テクスチャがなかろうと、当時の私は迫り来る敵部隊に物凄いリアリティを感じることが出来ていたものである。戦闘機の旋回や艦隊行動などをみていると、それぞれの敵が明確な意志を持ち、指揮系統のもとに迎撃してくるような錯覚を覚えることが出来た。遙か遠くから生き物のように迫ってくる無数の光点には、ゾクゾクしたものである。

 『スターブレード』というゲームを語る時、あまりプレイしていない人は当時最新の3Dゲームであるという点やギャラクシアンシリーズとの世界観との合致ばかりをとりあげるかもしれない。だがそれだけではなく、敵の配置や動き、(無音を含めた)演出の数々においても頭一つ飛び抜けたゲームであった事は是非強調しておきたい。このような演出・ギミック・世界観の描写という点では、ナムコの3Dシューティングは実に丁寧な仕上がりになっていることが多く、その伝統は『エアーコンバットシリーズ』・『ガンバレット』・『タイムクライシスシリーズ』へと引き継がれている※1。とりわけ『スターブレード』はテクスチャが無いが故にこれらのごまかしがきかないず、よってナムコ歴代3D作品のなかでもとりわけそういった要素が目に付きやすい。邪魔なテクスチャに目がいかない分、プレイヤーは演出・ギミック・世界観に着眼し(勿論ゲーム性にも)、そして実際に、静かな宇宙の息吹を感じ取ることが出来るのである。




・ゲーム攻略

 プレイヤーは襲撃される空母から“ジオソード”で緊急発進を行う。いきなり宇宙にほっぽり出され、すぐさまワープ。そして敵本星に逆襲をかけるというストーリー。美しさや世界観は前述のとおりだが、そんなものを堪能する暇は初心者には与えられない。ただ闇雲に敵を撃っているだけでは、あっという間にシールドを喰われてやられてしまうだろう(注:連射装置がついてないともっと絶望的)。画面内には常に沢山の敵が散らばっているが、種類によって「凄く危ない奴」から「殆ど無害なやつ」まで様々なタイプが存在する。よって、それらの敵を撃破する優先順位をつけ、危ないターゲットや緊急性の高いターゲットから撃破していくのが攻略の基礎になる。これは他の3Dシューティングでも言えることで、例えばタイムクライシスシリーズにおいて色違いの兵士がリスク大の最優先目標なのと全く変わらない。敵目標を幾つかに分けると、以下の表のように分類出来るだろうか。

1.攻撃力大・射撃遅2〜5秒以内に撃破しないと大ダメージ
2.攻撃力小・射撃早滅多に出てこないタイプ。1〜3秒程で撃ってくる!
3.攻撃力小・射撃遅 5〜10秒以内に撃破しないと小ダメージ。1.と同時に
出現しやすかったり、戦艦の砲のように多数配置。
4.破壊可能弾を撃つミサイルやエネルギー塊を吐く敵。後で構わない
5.攻撃してこないやつ戦艦のブリッジや輸送艦など。堅いけど得点高い。


 以上のような傾向を持つ色々な敵のなかで、危ない奴から順番に撃破していくことになる。通常、撃破する順序は2.>1.>3.>4.になりがちだが、実際はケースバイケースになる。もちろん敵の配置とパターンを完全暗記すれば余裕には違いないものの、『スターブレード』はそこまでカツカツの攻略をしなくても何とかなる。

 『スターブレード』は、昨今のガンシューティングに比べればかなり余裕のあるほうで、最も危険な敵ですら、出現してから撃破までに2秒程度の余裕がある。よって、このジャンルに不慣れな人でも安心してプレイできるし、覚えれば確実に上達することが出来る。エンディングも感動的だし、15年前のゲームといえど十分にプレイヤーを魅了する可能性がある。難易度も比較的低く、ガンシューやフライトものを専攻していないプレイヤーでも十分戦うことが出来る。よって万人にお勧め出来る良作だと思うのだが、唯一にして最大の問題は、もうスターブレードの筐体はどこにも残っていないということである。ダライアスの筐体と同じかそれ以上に珍しくなっているんじゃないだろうか。もし見つけたら是非プレイしてあげて、100円玉をお布施してください。





 【※1引き継がれている】

 対してセガは、3Dシューティングに関する限り、こういった描写をするのがあまり得意ではないような気がする、もちろんこれは得意不得意に属する話だが。例えばその後に出た幾つかのセガ3Dシューティングでは、ナムコが得意とするような“動きやギミックによって世界観を描写し、プレイヤーの臨場感を高める”工夫があまりみられなかった。『スターウォーズ』などがそのよい例だが、タイ戦闘艇の動きやプロトン魚雷の航跡などからは微塵の美学も臨場感も感じられなかった。こういう仕事に関しては、ナムコの3Dシューティングは馬鹿馬鹿しいほどのこだわりがいつも感じられ、一オタクとしては満足できるのだ。

 なお、セガも他のゲーム分野に関してはよい仕事をしているし、臨場感を大切にしていると思う。それとガンシュー分野においても、『ハウスオブザデッド』あたりからはこういった部分はかなり向上しており、テクスチャの発展も相まってナムコガンシューとの格差は小さくなってきている。ただ、ヒコーキモノに関してはやはりまだまだナムコのほうがこの手のノウハウに長けているように思える。