生きててよかった 外伝3
【洞木さんの長い一日】 (2017. 3/20)
今日はもう、卒業式。
結局今日まで言いそびれたあの言葉を、今も心の中で繰り返した。
この学校に引っ越してからも、やっぱり気の強い女で通ってた私。
二学期は、結局私がクラス委員長だったから、委員長っていうあだ名も
変わらなかった私。
だけど、本当の私って、意気地なしね。
“好き”
たった2文字、たったこれだけ言えば楽になると判っていても‥‥
言えないんだから。
クリスマス、お正月、バレンタイン……今までにチャンスなんて
いくらでもあったっていうのに、そのたびに私は怖じ気づいて、
告白の瞬間から逃げ出した。
サードインパクトの時には、好きって言ったり抱き合ったりしていたはずなのに‥
それなのに言えない‥‥。
遠くから眺めながら胸の痛みを募らせるばかりで、何も出来ないの。
だけど、今日を逃したら、もうおしまいかもしれない。
鈴原と私は、入る高校が違うから。
どんな事があっても、だから、今日、やらなきゃ。
ダメかもしれないけど、何も言わないままダメになったら、きっと
今まで以上に悔やむモン。
「ヒカリ‥‥」
「ヒカリ!」
がんばれ、わたし。
「ねえっ!ヒカリっ!!」
「な、何?」
我に返ると、青い目をした親友が私の前に立っていた。
私がすぐに返事をしなかったためか、少し頬を膨らませて。
「また考え事?やっぱり、あいつの事?」
「ちっ、違うわよぉ!もうっ!アスカったら!」
いきなり核心をついてきたから、私はちょっと声をうわずらせた。
アスカはそんな私の気持ちなんてみんなお見通しなのだろう、
妙にニコニコしている。
「ふぅ〜ん‥‥彼のほうも、ヒカリの事を心配してたわよ。
最近、イインチョ元気ないから、力になってやってくれって。
励ますように頼まれちゃったわよ、私。」
「ホント!?」
「ええ。だ・か・ら、私にできる事があったら、何でも言ってよ。
あいつ、結構照れてたようにも見えたからさ、ひょっとすると実は両思い‥‥」
「なっ‥何いってんのよぉ‥」
小さくウインクして微笑むアスカが少し憎らしい。
たまらなくなって、私はうつむいた。
自分の顔が火照っているのがわかる。
赤くなってるかもしれない。恥ずかしい。
でも、アスカは言ってたものね。
“辛くても、心の壁を乗り越えて初めて解ることもあるのよ”って。
サードインパクトの前後に、アスカと碇君との間に何があったのかは
私も全部は知らない。
けど、いっぱい辛い事を乗り越えて今の幸せを掴んだって事ぐらい、私にもわかる。
だから、私だってこのくらいの事‥‥。
私だって‥‥!!
アスカの『両思いかも』っていう言葉、今はそれを信じたい‥。
「ヒカリったら最近、私が話しかけても上の空ね。
気持ちはわかるけど、ボーッとしすぎはよくないわよ。」
「ごめんね‥。」
「ううん、私にあやまんなくてもいいんだけど、ヒカリって委員長でしょ?
ほら、しゃんとして。」
そういえば、ここ一週間くらい、ろくにアスカに構ってあげてないかも。
アスカは私の心配をしてくれてるっていうのに、ごめんね、アスカ。
だけど‥‥私、気が変になりそうで‥‥何も見えないから‥つい‥‥。
ガラガラ
「あっ!先生来たから、また後でね。」
先生が教室に入ってくる。
他の生徒たちと同じように、アスカも大慌てで自分の席に戻っていった。
“鈴原は何してるんだろう‥‥”
鈴原のほうに視線を送ると、たまたま鈴原も私のほうを見ていた。
私自身を見ていたのかどうかは、実際はわからない。
でも、ビクッと胸が揺れて、慌てて視線を逸らした。
バカみたい。
でも、仕方がない。
彼は不思議そうな顔を一瞬浮かべてような気がしたけど、
鈴原のほうも結局すぐに視線を逸らし、隣の女の子と何かを話しはじめた。
「では、洞木さん。今日で最後ですが、朝礼のほう、お願いします。」
「は、はい、先生。」
委員長の仕事も、今日で最後。
鈴原と同じ学校にいられるのも‥今日で最後。
「起立」
「礼」
「着席」
私の声と重なるように、チャイムの澄んだ音が教室の中に響いた。
* * *
この学校の校長先生の話って、どうしてこんなに長いんだろう。
真面目で通っている私も聞いていられないほど、つまらなくて長い話が続く。
だから、横目で彼をチラチラ見ていた。
彼の横顔を見つめ続ける事ができなくなっている自分に気づいた。
どうしてこんなに辛いんだろう。苦しいんだろう。
おとぎ話や物語はもちろん、誰もこんな切ない気持ちは教えてくれなかった。
コダマお姉ちゃんも、アスカも、今はいないお母さんも。
好きになんてならなきゃよかったかもしれない。
だけど‥私は、鈴原が好き。好きなの。
壊れそうなほど、好き。
『‥‥これをもって、第39回島々中学校卒業式を終了します。
生徒職員、起立。 礼。 着席。』
恋の神様 ほんのすこしの勇気をください。
ほんのすこしでいいんです。
私に 勇気を ください。
* * *
式が終わって、再び教室。
卒業証書を手にした鈴原は、相田君達と一緒にだべっている。
さすがに今は何もできないわね。
時々聞こえてくる陽気な関西弁と笑い声が、悔しい。
二人きりになるチャンス、欲しいな。
アスカはというと‥シンジ君とラブラブね、今も。
本人達はいつも違うって言うけど、最近の二人っていつもべったりベタベタ。
『公認』になってもう長いけど、見ているほうが恥ずかしくなるくらいね。
不潔だとか何とか思ってた時期もあったけど、今はただ、羨ましい。
碇君と付き合いはじめて、アスカは絶対にかわいくなったと思う。
ひとつひとつの仕草、話し方、考え方‥‥‥。
別人のように変わってしまったアスカを見ていて、恋に憧れた女の子は、
私一人じゃないはず。
私も、かわいくなりたい。
私も、変わりたい。
こんな私でも、もっともっとかわいくなれるわよ、きっと。
* * *
卒業式の後、いつもの仲間で集まるって約束したとおり、
私は葛城さんの家に向かった。
ピンポーン
「「はぁい」」
ドアを開けて出てきた碇君とアスカ‥‥。
玄関先でもツーショットなんだから、もうっ。
恋人同士で一緒に暮らせるって、すっごく羨ましい。
「ねえ、アスカ‥‥彼、来てるよね?」
「ええ、今は私とシンジと鈴原だけよ。」
「えっ?」
思わず『葛城さんと加持さんは?あと、相田君は?』と訪ねてしまう私に、
アスカが嬉しそうな顔で「もちろんいないわよ」って答えた。
やだっ、碇君まで頷いてる‥‥。
「アスカっ!なんで碇君に喋っちゃうのよ!」
「アハハ、ごめんね、その、つい。」
「アハハじゃないわよもうっ!」
「ま〜た赤くなっちゃって!ま、いいわ。私達、ちょっと麓のコンビニまで
行ってくるから、悪いけど、鈴原と留守番してて貰える?」
「え?留守番?」
聞いてないわよ、そんなの‥‥。
「そうよ。お留守番、悪いけどお願いねっ!さあ、シンジ、行こっ!」
「うん。じゃあ、また後でね。」
「ちょっと!!」
バタン
碇君を連れたアスカは悪戯なウインクだけを残して、たちまち
家の外に消えていった。
どうしよう、いきなり二人っきりになっちゃった‥‥。
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『‥次のニュースです。今日、気象庁が今年度の気象白書を発表しました。
白書によれば、サードインパクトによる地軸変動による気候の変動は
依然として早いペースで続いており、最終的にはセカンドインパクト以前の
気候に推移するであろうとした上で、向こう数年間は、やや寒冷な‥‥』
アスカの家のお茶の間で、鈴原とテレビを見ていた。
番組は、ごく普通の6時のニュース。
私とトウジの間には、甘い雰囲気も何もない。
さっきから私ったら、ニュースのことばっかり喋ってる。
鈴原のほうも、なんか変ね。
私に相槌をうつばっかりで、向こうからは話しかけてくれない。
こっちも向いてくれないし。
「ねえ、アスカ達、遅いね。」
「あ、ああ。」
また同じ事を聞いちゃった。
これで三度目かな?
麓のコンビニまでは往復で30分はかかる。
アスカと碇君は、気を利かせて二人きりにしてくれたんだろうと思うけど‥。
もう、辛いの。
今しかチャンスはないってわかってるけど、
告白なんてできないわよ、これじゃ。
二人きりになるのをずっと待っていたのに、これじゃ‥‥。
「‥‥ねえ、鈴原‥‥クン‥」
「どした?」
「‥卒業、しちゃったね。」
「あ、ああ。」
「最近、なんだかあんまり話しかけてこないね、私に。」
「は?」
「‥‥。」
「言われてみれば、そ、そうかもしれんな。」
「そうよ。」
「そ、そうか‥」
な、なにを話せばいいかな‥‥。
がんばっていわなきゃ、いわなきゃ。
「ごめんね、わけわからない事ばっかり言っちゃって。」
「ん?わいはいいんや、別に。それより、ほんま最近のイインチョは心配や。
どこか、ボーッとしとるさかい、そばで見とれんわ。」
“みんな、鈴原のせいなのよ!”
「‥‥ホ、ホント?」
「ああ。」
ホントに心配してくれてたのかな?
心配してくれてた?
私の事を?
私を?
私を?
私を!?
「‥‥どうしたん?急にうつむいて?」
「なっ‥なんでもないの。なんでも。
あの、ちょっと私、忘れ物思い出しちゃった。」
自分の顔が赤くなっている事に、その時私は気づいてた。
逃げ出すように、部屋から出ていく自分は、なんて臆病なんだろう。
せっかくのチャンスから逃げ出している。
いつだったか、お弁当を食べてって言えた頃の、まだ好きになり始めていた
頃の自分に返りたい。
どうして私、こんなになっちゃったんだろ?
* * *
卒業祝いのパーティーが終わった後、道草した夜の公園。
静かに揺れるブランコに腰掛けたまま、何も考える事ができない。
「元気出さないと‥‥。」
水銀灯も月明かりも、明るくぼやけてよく見えない。
自分の家には帰りたくなかった。
家にはお姉ちゃんとノゾミがいるから、帰りたくない。
メソメソ顔なんて、誰にも見られたくないよ。
――アスカが気を利かせてくれたチャンス。
それを逃した私を、神様は赦してくれなかった。
二人きりになるチャンスは、その後は一度もなかったの。
笑顔の絶えないパーティだったけど、何故か長く感じられた。
無理して笑う自分と、心の中で泣いている自分がいた。
碇君に背中から抱き付くアスカを見たとき、私は嫉妬の苦い味を覚えた。
そして今は、後悔だけで胸がいっぱい。
意気地なしの女が、夜の公園でいじけている。
ピリリリリ・・・
「あっ‥‥」
携帯だ。
誰からだろう?
誰とも話したくない。だけど、取らないわけにはいかない‥‥。
誰が見ているわけでもないのに涙を拭いて、私はバッグの中から
それを取り出した。
「はい、もしもし。」
『もしもし、ヒカリ?』
この声‥‥アスカだ。
「‥‥」
『ねえ、ヒカリでしょ?なんで返事しない――』
「‥‥」
『‥‥ヒカリ?』
「言えなかったの‥‥」
『嘘‥』
「なんにも言えなかったのよぉ‥」
『ええっ!?みんなでいた時はあんなにはしゃいでたじゃん‥』
電話を取る時に我慢していたものが、声と一緒に溢れ出した。
携帯電話を持つ手が、熱いもので濡れていく。
まさか私が告白してなかったとは思っていなかったのか、
電話の向こうのアスカはオロオロしていた。
だけど、アスカの気持ちなんて、とてもじゃないけど気にしてあげられない‥‥。
『ねえ‥元気出して。明日、言えばいいじゃない。』
『これでお終いってわけじゃないんだから、さ。』
『大丈夫よ、鈴原だって絶対ヒカリに気があるって。』
『ねぇ‥‥フラれたわけじゃないんだから、そんなに泣かないでよ。
チャンスあるって』
不器用で一生懸命な励ましを、ただ聞いていた。
何も言えなかった。
自分が、人前で泣くとは思ってもみなかった。
『そ、そうだ、近いうちにWデートなんてどう?
私とシンジだけじゃ行きづらいからって事で、ヒカリと鈴原も誘ってさ。』
「ありがと‥アスカ。
でも、もう‥‥いいよ。」
『何いってんのよ、もうダメって決まったわけじゃないんでしょ?』
「でも、できないもん」
『できるって!今、言わなきゃ、ずっと後悔引きずるのよ。
今から電話かけてでもいいじゃない!だからさ!』
「‥‥やっぱり、恐い‥‥」
『ヒカリなら大丈夫だって。』
「‥‥。」
『ね。』
今から電話?
電話でちゃんと伝えられるかな?
好きって、電話で?
「‥‥やっぱり、直接会ってじゃないと、言えない。」
『じゃ、電話で呼び出しちゃえばいいじゃない。』
「そ、そんな事できないわよぉ!」
『じゃ、私が呼んじゃおうか?
ヒカリが二人きりで会いたいって言ってたって。』
「ぜったいダメッ!
‥‥わかったわ、今からでも一回かけてみる。」
『よかった。約束できる?』
「う、うん。」
『約束破ったら、開運堂のプリンとケーキおごってもらうからね!』
「うん。」
『それじゃ、元気だしてね。絶対大丈夫だから。またね。』
「バイバイ、アスカ。またね。」
ピッ
携帯を切って、もう一度辺りを見渡した。
ブランコのすぐ側の水銀灯は、相変わらずとても眩しく光っているけど‥。
コオロギの穏やかな声に耳を傾けて、まずは、心を静めよう。
それから、空の星を見て、涙を止めて。
“アスカの言うとおりよ。フラれたわけじゃないんだから。”
“同じ後悔するにしても、絶対言ったほうがいいに決まってるよね。”
バッグにしまってあった携帯をもう一度取りだし、
私は鈴原と電話で何を話すのか考え始めた。
“‥‥電話、してみようかな。”
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10分ほど悩んで悩んだ末、私は勇気を出してダイヤルした。
緊張してるけど、何を喋るか決めてあるから大丈夫。
上手く言って、もう一度チャンスを作るのよ。
場所は学校、時間は今度の日曜‥‥心配ないわ。
プルルルル‥プルルルル・・
コール音が止まるのを、身を堅くして待つ。
自分の心臓の音ばかりが、ドキドキと耳を打った。
プルルルル・・ プッ
『もしもし、鈴原ですが』
「あっ?鈴原 君?私、洞木だけど‥‥。」
『こんな遅うに、どした?』
「あの‥‥。」
な、何言うんだったっけ?
えっと‥。
鈴原に、言うことは‥。
『‥‥ん?』
「‥‥えっと‥。」
ダメ、頭が真っ白になっちゃって、なんにも思い出せない。
でも、今から切るのも変だよね‥。
『急に黙って‥‥どした?』
「‥‥。」
『わいに出来る事やったら、相談に乗るで。』
「あの‥‥。」
そんな‥そんな事言わないでよ。
もう‥‥ダメよ‥潰れちゃう。
『そういえば、イインチョ、一体どうなってしもうたんや?
今日の卒業パーティーでも変やったしな‥。』
私の悩み、何にもしらないのに、心配なんかしないでよ。
もう、ダメよ!ダメ!!もう、楽になりたい!
「す、す、好きなの。」
『は?』
「鈴原が、私、好きっ!」
『洞木‥‥‥??‥』
「好き!本当に好きなの!言いたかったけど、ずっと言えなかった‥
「こんな私でいいなら付き合って!
最初は友達からでもいいから、お願いっ!」
『わし‥』
「何?」
『わしでええなら‥‥』
「えっ?」
『こんなわしでええなら。わしからも、付き合ってくれって、頼むわ。』
「ホント!?ホント!!」
『ああ。そやけど、わいは女の事はさっぱりわからん男や、苦労するで。』
「うん!苦労する!」
『そうか‥‥あの‥ありがとな、洞木。その‥‥あ‥こ、これからも、
な、何ていうか、その、よろしゅうな。』
「うん!ありがとう!」
夢みたい‥夢?
違う‥‥夢じゃない!
嬉しい!!
告白して、よかった‥。
そ、そうだ、アスカに電話して、ありがとうって言わないと。
いろいろアドバイスしてくれたから、ここまで来れたんだからね。
ありがと、アスカ‥‥。
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【そして、アスカとシンジの部屋にて‥‥】
「ねえアスカ、最近、キスしてないね。」
「キス?そ、そうね。でも、いいじゃん、私、ちゃんとシンジ好きよ。」
「じゃあ、今夜はしないの?」
「しなくてもいいじゃん、ほら、シンジは私のこと、好きでしょ?
ちゃんと信じているしょ?」
「う、うん‥‥」
「じゃ、よかった。」
「でも、キス、気持ちいいよ?それに、サードインパクトが終わった後は
キスしたり抱き合ったり、あんなにいっぱいしてたのにさ‥。」
「だって‥あの時はさ‥‥シンジが本当に私を大事にしてくれるのが
嬉しかったから‥‥でも、いつもあんなんだと、壊れちゃうよぉ。」
「じゃあ、ダメなの?」
「ミサトや加持さんも言ってたでしょ?そういう事はもっと大人になってから
でも遅くないって。」
「そっか‥そうだね。うう‥‥」
「‥‥んもうっ!またそんな悲しそうな顔してぇ!
じゃ、一回だけね。いっとくけど、今夜は特別よ。
明日も明後日もってわけじゃないから。」
「うん!」
「そんな嬉しそうな顔、しないっ!」
「だって、嬉しいんだもん。」
「じゃ、行くよ、アスカ。」
「布団に入って、電気消してでいい?」
「‥‥うん。」
「ありがと。」
ピリリリリ・・・
「あ、ゴ、ゴメン、私の携帯みたい。」
「う、うん‥。」
「間が悪いわねぇ‥‥一体どこのどいつかしら? もしもし?」
「あ、ヒカリ?」
「えっ!」
「ホント?」
「よかったぁ!!」
「うんうん、じゃ、これからはトウジ君って呼ぶわけ?」
「ホラホラそんなに怒らない怒らない!
だけど、私はちゃんとシンジって呼んでるでしょ?」
「あったり前じゃん!私、シンジがだーいすきだもん。フフン。」
「なんですってぇ!まあ見てなさい、私達の愛の深さ、今度見せてあげるから‥」
「うん、わかった!じゃ、何かあったらまた私に聞いてね。バイバーイ。」
ピッ
「委員長から?」
「そうよ。鈴原に告白して、オッケーだったって。」
「そっか、よかったぁ。」
「私達を越えてみせるだってさ。さすがにそれは無理だろうけどね。」
「う、うん。僕、ホントに好きだから。」
「私もよ。」
「‥‥ねえ、途中でやめちゃったから。」
「んもうっ!わかってるわよ。じゃ、はいっ。」
「気持ちいい。ダメ?」
「う、ううん。シンジ、好き。シンジとなら、いい。」
「そ、その、好きっていうだけじゃ足りないから、キスしたり、こうやって
アスカをだっこしたりするんだよ。わかってね。」
「わかってる。私だって、ホントはキス、好きよ。
でもね‥‥」
「何?」
「‥‥ごめん。でも、私‥‥その‥やっぱりまだ恐いのかな。
うん、やっぱりキスとかは好きじゃないのかも。」
「いいんだよ。今は、こうしてるだけでいいんだよ。」
「ホント?ホントに、いいの?」
「ほら、そんな恐い顔しないで、アスカが18になるまで、
あんな事とかこんな事は僕、待つつもりだからさ。ね、もう、寝ようよ。」
「シンジ、それでもちゃんと私だけ見てくれる?」
「当たり前だよ。
あ、アスカの髪、女の子の匂いがする。」
「‥あっ‥やだっ!耳、くすぐったぁい!」
「ゴメンゴメン。じゃ、おやすみ。」
「おやすみ、シンジ。」
おしまい
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