生きててよかった 第1部 「生きててよかった」
Episode-18 【生きててよかった】








 歯磨きを終えた私達はランプの明かりを消して、隣り合わせの布団に潜り込んだ。


 布団を並べた理由?
 そうね、どうしてかしらね‥‥

 シンジは余所の部屋で寝るって言ってくれたんだけど、私が引き留めたのよ。

 自分でも何故そんな事を口にしたのか、よく解らない。
 シンジとは、仮の友達だって事にしてたのにね。


 昨日の朝に感じていた、あの、シンジに対するなんとも言いようのない気持ちは
 もうどこにも残っていない。

 認めるのはなんだか癪だけど‥‥シンジと一緒にいたい、一人でいたくないっていう、
 今はそれだけなのよね。



 一緒にいて嬉しかったから?
 今日、とっても楽しかったから?

 ‥‥そうなのかな。

 まあ、なんでもいいや。
 今はこれでいいと思う。

 シンジに襲われるなんて今は全然思えないし、それに、本当に人が戻り始めているんなら、
 一人でいるよりも、知っている人が隣にいたほう安全のような気がするし。





 「アスカ、寝た?」

 「ううん。まだあんまり眠くないの。」

 「僕も同じだよ。明日、ホントに湖まで行くんなら、早く寝たほうがいいのにね。」


 別々の布団に入っているっていうだけで一メートルも離れていない位置関係のまま、
 私達はささやき声を交わす。

 確か、ランプを消したのは夜の9時頃だったと思う。

 いくら体を動かしたって言っても、こんなに早い時間に寝るっていうのがどだい無理な話なのよ。


 ほら、暗闇に目が慣れてくると、シンジも私のほうをじっと見ているのがわかる。


 「ねぇ、あんた、昨日からあんなに動き詰めで、疲れてないの?」

 「‥‥体は疲れてるし、全然眠くないっていうわけじゃないよ。
  ただ、色々あったから‥‥色々考えてたんだ。」


 「考えてたって、どんな事?」

 「あ、あの、さ‥‥。」

 「何よ?ドモってないで言ってよぉ。」

 急に言葉を渋るシンジに、私は間髪いれずに促す。


 「いきなり‥‥変なこと訊いて‥‥‥いい?」
 「何?」


 言いづらそうなシンジ。
 一体、何だろう?


 「あの‥‥」
 「何よぉ、早く白状しなさいよ。」

 シンジが何を考えているのか、興味しんしん。
 だって、私に関係した事のように思えるんだもん。


 「アスカ、僕の事、今は好きなの?それとも‥‥まだ大っきらいなの?」

 「えっ?」


 ああ、やっぱり。
 予想通り、私の事だったのね。

 見つめるシンジとその時目があった事もあってか、暗闇の中で何かがドキリと
 大きな音を立てたような気がした。


 薄々そうなんじゃないかと思っていたこと。
 予想してたこと。

 なのに‥‥‥心は汗をかいている。


 「ねえ、どうなの?」

 「‥‥‥。」

 今度は私がせかされる番だった。

 私の心は、今も答えを探している。



 「あの時‥‥アスカ、僕に言ったよね、“あんたが全部私のものにならなきゃ、
  私、何にも要らない”って。でも、逆に僕を拒んだりもしてた。あれって、
  なんなんだろうって。それでアスカって、今は僕をどう思ってるのかとか、
  そういう事を考えていたんだ‥‥。」


 布団の中が、とても熱く感じられる。

 自分の呼吸も、なんだか荒くなっているような気がして、そんな体を抑制するために
 冷静さを取り戻そうとしてみた。

 汗が出ないように、言葉がドモらないように、それと‥‥シンジを見つめる視線を、逸らさないように。
 ‥‥でも、ダメみたいね。胸が高鳴ってるのがわかる。

 こんな、そわそわした私を見てシンジはどんなふうに思うんだろう。




 どうしよう?
 私は、実際シンジの事を、今はどう思っているんだろう?

 シンジのこと‥‥大好きか、大嫌い。いつもそうだったと思う。

 他の人達についてもそうかもしれない。
 私はいつも大好きと大嫌いの合間を行ったり来たり。

 そして、シンジに対しては‥一番それがひどかったと思う。

 それは、どうしてなんだろう?


 「す、すぐにそんなの聞かれても‥‥う〜ん‥‥‥い、今はやや・・好きって所かな、
  どっちかって言うんなら。
  だけど、朝に言ってた通り、まだまだ全部は許したわけじゃないわよ、シンジの事」


 私の精一杯の返答に、隣の布団がごそごそと音を立てるのが聞こえた。

 ちらりと見ると、シンジが体の向きを変え、私に背を向けているのがわかる。
 なんとなく私もそれを真似したくなり、シンジに背を向け、窓の外に目を向けた。


 窓枠の真ん中付近、蠍座の一等星が瞬いているのを何気なく眺めながら、私は言葉を繋いだ。

 「それより‥‥‥シンジはどうなのよ?
  あの、溶け合っていた時の“アスカじゃなくちゃダメなんだ”って、本気なの?」

 「‥‥」

 「それと‥‥今の私のことは‥‥好き‥なの?」



 背中越しに聞こえたのは、『うん』っていう、力強くて短い返事。


 シンジのものとは思えないくらいにはっきりとした意志表示に、
 私はとても驚かされた。




 「ほ、本当に、私の事、好き?」

 「うん。」

 もう一度。



 「ミサトよりもファーストよりも友達よりも‥誰よりも好き?」

 「うん。大丈夫。
  だから僕の隣には、あの時アスカがいたんだから‥‥。
  首、締めた事は、僕がバカだったからで、アスカが嫌いだったからじゃないんだ。
  アスカの気持ちしだいだけど、僕は、一生かかっても償うつもりだよ。」


 「そんなに、本当の、本当に、私のこと、好き?」

 「うん。」


 「私だけを見てくれる?」

 「うん。‥‥なんだか、いっぱい訊くんだね。」



 「だって、やっぱり信じられないじゃん、首を絞めたり、隠れてオカズにするような‥
  そんな男の言うことなんてさ。」

 「ゴメン‥‥‥。」

 「死にかけてた私を助けてくれたのは感謝するけど‥‥こればっかりはね‥‥」

 「私、もう裏切られたくないもん。昔のあんたや加持さんに
  されたみたいに、好きになりかけた相手に裏切られるのだけは、
  もう絶対にイヤ。本気で大切にしてくれる人に捨てられるくらいなら、
  死んでしまいたいくらいね。」



 一気に思っている事を、吐き出していた。

 こんな事を他の人に言うのは、たぶん生まれて初めてだと思う。

 まして、シンジなんかに自分の弱い部分を見せるなんて‥‥。

 ううん、シンジだから、かもしれない。
 そう思うことにしようっと。


 「友達とか好きな人に裏切られるって、最初っから誰もいないよりも、辛いもん。」


 私は‥‥‥。
 胸の中に住み始めたシンジに裏切られたとき、逆に無茶苦茶に憎んだのよね、私。
 どうでもいい奴だったら、あそこまで憎くなったりしなかったと思う。

 もしかしたら‥‥シンジが私の首をあの時締めたのも、同じなのかもしれない。
 全然キライだからじゃなくて、どうでもよくないからなのかもしれない。

 愛憎、って奴?

 まあ、シンジの心の中の事はわかんないけどね‥‥‥ともかく私は、シンジが‥‥。

 認めるのは、とても怖いことだけど‥‥。


 「アスカは、僕とおんなじなんだね」

 「えっ?」


 物音に振り返ると、シンジも私のほうを向いていた。
 さすがに私の布団には入ってこないけど、すぐ隣に来ている。
 だから、シンジの顔がさっきよりも大きく見える。気のせいじゃなくて、ホントに
 すぐそばに。


 「僕もおんなじだった。」

 「裏切られるのが恐かったんだ。だから、曖昧にしといたんだ‥」

 「私と、おんなじ‥」


 窓から差し込んでくる月光が、シンジの顔を青白く照らす。

 いつもより端正に見える‥‥これも、気のせいじゃないの‥かな。



 「私といたいの?」

 「一緒にいてくれるの?」



 不思議な事を私、口にしている。
 シンジの事を、さも自分が好きみたいに。


 本当に好きなのかな?

 ‥‥好きかもしれない。誰かを好きになるのを怖がっているだけ、認めるのが
 怖いだけかもしれない。


 好き?
 違う?

 でも、やっぱり好き?


 一人がイヤなだけ?


 でも、本当は好きなのかな?

 シンジの事を、一番好きなのかな?


 わかんないけど、シンジといてこんなに楽しいことも暖かい事も、今まで私は
 知らなかった。

 加持さんとデートした時とも違う。
 ずっと昔の、ママにだっこされてた頃によく似た感じがする。



 これが、『好き』?

 私はやっぱり、今のシンジが、好き?


 もう、逃げることのできない心の迷路。
 出口は、一つしか見つからない。
 その出口を選ぶことがごまかしなのか、迷路で迷い続ける事がごまかしなのか
 までは、私にはわからないけど‥‥でも、今、私の目の前にはたしかにドアがある。



 私、もう、逃げなくてもいいの、かな?

 この、たった一つの答えを受けとめていいのかな?




 とても恐い。

 けど‥‥‥。


 「本当に、私だけを‥特別な女の子だって思ってくれるの?」

 心のドアの錆だらけのノブを掴み、思い切ってドアを開けた。



 「うん、もちろんだよ。
  でもね、アスカに本気になるほど‥アスカだけを見るようになるほど‥
  アスカも僕だけを見てくれないと、僕もきっと我慢できなくなる。
  友達って割り切っちゃえればいいんだけど‥無理だよ、僕には。」

 「側にいる女の子、アスカじゃなくっちゃダメだから。他の人じゃなくて、アスカなんだ。
  だから本当は‥‥本当は‥‥」

 「ぼ、僕は‥‥」

 「アスカが‥‥好き‥‥なんだ。」


 「アスカ‥‥お願い。僕と‥付き合って。」

 そして、開いた心に飛び込んできたのは、“溜息みたいなシンジの声の群れ。



 「わ、私だって、シンジが全部私のものにならないなら、やっぱりシンジといたくないわよ。
  裏切られるのはごめんだから、全部私のものになって。」


 「アスカが全部僕のものになるのなら‥‥僕も、全部アスカのものになるよ。」

 「シンジが本当に全部私のものになるんなら、私、あんたを信じる。」


 暗い世界で、私達は目を逸らすことも忘れてしまったかのように見つめあっている。




 口にしている事は、夢の世界のシンジのままだった。
 優しい所もあるけど、弱くて不器用で、勝手な所もあって、そんな奴のくせに私を求めるようなシンジ。

 そして、私もあの時のままだった。
 あったかいって思いながら、今も、シンジを全部信じているのか自信がないような、そんな駄目な女の私。



 だけど。
 何かが違う。

 私、一緒にいて嬉しい。
 シンジもきっと同じ気持ちだと思う。

 シンジが、私を大事にしてくれるのよ。

 だから私も、シンジの気持ちに応えたい。本当にに守ってくれるなら。



 とっても大切だと思うこの気持ち、いつまでも続いて欲しい。

 それにしても、不思議ね‥‥なんか、今日の私はびっくりするくらい素直になってるような気がするわね。
 ヒカリと二人きりだった時よりも、ずっと。



 素直って‥‥とても気持ちいい。こんなの、初めてかもしれない。

 シンジに好きって言われるのも、思ってる事みんな伝えるのも、とっても気持ちいいの。



  






 ミサトの家で暮らしていた頃の、ポーカーフェースの見せあいとは違う。
 溶け合っていた時、いがみ合ったのとも違う。

 心のあまのじゃくを許さない、シンジと私の不器用だけど真剣で、とっても
 大切な時間が流れていく。



 「今はいがみ合っていないけど、また、喧嘩するよ、きっと僕らは。
  アスカ、それでもいい?僕は‥それでもいい。約束したから、みんなに‥。」

 「そうね。裏切られたと思う事も、ゼロにはならないわね。それは、知っている
  つもりよ、今は。」

 「その事は覚悟するわ。自信なんて、ないけど‥。」


 言葉に想いを込めよう。

 不器用だからなかなか素直になれなくても、声がなんだか情けなく震えても、
 弱い自分を恥じずに、不器用な自分を隠さずに、シンジに思っている事を伝えよう。

 自分が、いつもこんな気持ちになれるのか、自信なんてないから、だから、今のうちに。



 「だけど、こんな私でも、いいの?あんた、私が上辺だけで
  ホントは弱虫だって、知ってるでしょ?」

 「うん。僕こそ、こんな僕でいいの?
  アスカ、僕の嫌な所、いっぱい知ってるでしょ」

 「あの時、アスカ、僕とは絶対にイヤとも言ってたけど‥‥いいの?」


 シンジも、前とは違う。

 溶け合って、私の首を絞めて涙を流して‥‥そして今は、私の友達‥‥これからは、
 友達以上になっていくのかもしれない。



 「あの時にそう思った事も本当よ。だけど、今のこの気持ちも本物だもん。」
 「そうだね。いい事言うね、アスカにしては珍しく。」

 「あっ!ひどい〜!!」




 私たちは、似た者同士。

 寂しいのが嫌い。
 ホントは一人が嫌い。


 でも、裏切られたり、拒まれたりするのが一番嫌い。

 だから、弱い心を守るために、私もシンジも心に壁を作った。
 ATフィールド――それも、とびきり分厚い奴を。


 一人は寂しい、でも、大切な人に裏切られる寂しさはもっと寂しいから、
 お互いに違うやり方だけど、私もシンジも本当の温もりと本当の悲しみから
 逃げ回っていた。




 「でも、こうしてて、私は‥‥嬉しい。」
 「僕も‥‥嬉しい。」



 不器用で自己中心的な私達はいつもすれ違い‥‥傷つけ合い続けた。

 お互い似たもの同士なのに、お互いに助け合って天国を見る事もできたのに、
 お互いを信じないで、お互いに見捨てあって‥‥地獄の毎日を送っていた。


 その事を教えてくれたのが、あの曖昧な世界だった。

 だから、ファーストに私は感謝している。




 そして、今は間違いなく私達はお互いに‥。




 「もう一回、訊くね。」

  私は、シンジが好き。



 「シンジは‥私の事‥好き?」


 「好きだよ。」


 「世界中の誰より、好き?」


 「うん。」


 「浮気したり、私を無理矢理襲ったりしない?」


 「当たり前じゃないか。そんな事絶対しないよ。アスカがかわいそうだもん。」


 よく考えたらシンジだって裏切られる辛さを私とおんなじくらい知ってるもんね。
 だから、信じてあげる。

 ううん、今は信じられなくても、信じてあげたい。




 「ずっとずっと一緒にいてくれる?他の人が来ても、一番大事にしてくれる?」


 「好きだもん。当たり前だよ。」



 「絶対に、絶対にずるい男にならないでね。」

 「うん。約束する」



 「私の気持ち、知ろうとしてくれる?
  私が困っていたら、気づいて声かけてくれる?」

 「僕は、そういうの、すごく下手で、苦手だけど、それでもいいの?」

 「そんなの知ってるわよ。それでも精一杯努力して。私、寂しいのは
  イヤ。一人もイヤ。でも。裏切られぬのは一番イヤ。だから‥‥」


 「アスカだって、僕の事、知ろうとしてね。僕に優しくしてね。」

 「うん。やるわ、私。
  そんなこと、心配しないで。」

 「よかった‥‥」


 「‥だけど、嘘だったらもう二度と許さないよ、私。
  ホントに許さないよ。その時は‥‥殺されても何されても恨まないでね。」

 「わかってる。」

 「私、イヤよ、絶対に。お願い。私を、見捨てないで。
  今まで看病してくれたみたいに、私を、大事にして。」



 目がじんわりと熱くなってきているのを感じて、もう一度窓のほうに目を向けた。

 今まで見つめていたシンジの顔の代わりに、窓辺に動いたアンタレスが網膜に
 飛び込んでくる。

 涙で滲んで十字の光に包まれたオレンジの灯り。

 私は布団の端をぎゅっと握りながら、泣くのを我慢した。




 「僕も同じだよ。アスカ、お願いだから、僕を裏切らないで、大事にして。」

 「‥‥‥」

 でも、男のくせに女々しく震える声に我慢できなくなってしまう。

 目からこぼれた最初の涙が、頬をすべりおりていく。

 それを合図に、私は声をあげて泣きはじめていた。

 泣かないって決めたはずの私の瞳から、ボロボロと流れはじめる。


 ――でも、シンジと視線を合わせていないんだから、いいわよね――


 いっぱい泣く事を決意した私の髪を、シンジが不器用に撫でてくれている。
 でも、シンジも泣いているみたいね。声が、なんだか変だもの。



 「絶対よ。絶対だから。私、ホントに赦さないんだからね」

 「アスカもだよ。僕、不器用だけど、見捨てないで‥がんばるから。」


 私が流すのは、何の涙かな?

 きっと、安堵と、喜びと、幸せの涙よね。
 少しは、ゴメンなさいの涙も混じっているのかもしれない。けど、それは認めたくないかな。


 ボロボロこぼれて絵になってないかもしれないけど、でも、ドラマみたいな、乙女の綺麗な涙だと思う。

 だから、いっぱい流してもいいわよね。

 泣いてるけど、私、今は幸せな気がする。




 「ねえアスカ‥‥」

 突然、シンジの声がした。


 「な‥に‥?」

 訊ねる私に、震える深呼吸が帰ってくる。

 それから待つこと十数秒‥‥


 「アスカ‥‥僕と‥‥もう一回‥キスして‥‥」


 およそ女の子に告白する時とは思えない、みっともない、やっぱり泣き虫な男の声だった。



 「じゃあ、目、瞑るから。」

 でも、私は拒まない。
 精一杯声を整え、私はシンジに答え、目を瞑ってシンジのほうを向いた。


 「う、うん。」







 「‥‥‥‥‥」







 「へたくそ。」


 口ではそう言っても、なんか、幸せね。

 シンジのくちびるは、暖かかくて、ちょっぴり涙の味。



 「うがい、しないよね?」



 「するわけないでしょ。」



 「ありがとう。」



 「僕、幸せだ。」




 「こんな事が待っているなんて‥‥‥」



 「アスカ、なにか言った?」




 「あのね‥‥シンジ‥‥」



 「私‥‥生きてて、よかった。」

















ママじゃない人を好きになるのはね、私、生まれて初めてなの。

正直言うとね、あんたのこと、今でも怖いし信じられないところもあるかもね。

いつか、あんたに女として抱かれる日が来る事も怖いし、裏切られる事も怖いし。

でも、もう、我慢できない。

大事にされたい。これからも、ずっと大事にされたいの。

お願い、優しくして。

私の事、世界で一番愛して。

ファーストやミサトがもし戻ってきても、みんな無視して私だけと付き合って。

それが、私の願いなの。


お願い、シンジ。

私を捨てないで。

私、精一杯あんたの事大切にして、あんたに好かれるかわいい女の子になるから。

シンジの為なら、なんだってしてあげるから。


私だけを、大事にして。ミサトやファーストが戻ってきても、手を繋いでいいのは私だけよ。

こんな私だけど、性格もあんまり良くない私だけど、捨てないで。
私も、シンジを絶対捨てないから。




だいじょうぶ。

アスカ、僕、アスカの事、何があっても一番大事にする。

浮気なんて、絶対しないし、したくないよ。

アスカのそんな気持ち、僕も、わかるつもりだから。

アスカは僕をきっと捨てない。そう信じてる。


こんな僕でもいいんなら、ずっと、アスカだけ愛していくよ。

だから、そんなに不安な顔しないで、もっと笑っててよ。

アスカは、笑顔のほうがかわいいよ。



ありがと。

私、信じちゃうからね。

シンジのこと、ホントに好きになっちゃうからね。

だから、シンジも、私を信じてね。好きになってね。

キスなんて、私以外の誰ともしちゃダメよ。




そ、そんなの当たり前じゃないか!



そうそう、その気持ち、忘れないで。

忘れたら、許さないんだから。

私も、ずっと忘れないつもりだから‥‥

だから、ずっと、一緒にいようね。





                          →to be continued








特別予告編へ

戻る   抜ける   進む