生きててよかった 外伝5 「管弦楽同好会」
Episode-03 【第三楽章:メヌエット】
「文化祭、終わったね。」
「初めてのステージだったけど、私、全然緊張はしなかった。
最後まで、リラックスして吹けたと思う。」
「そっか、アスカはやっぱり本番に強いんだね。」
「‥‥何でもできるようにドイツで英才教育受けてたからね。
私の本当の力じゃないわ。」
「そんな事‥」
「あるわよ、私の長所って、みんな表層上のものばっかりだもん。
インパクトの時、思い知らされたわ。第一、私は心が貧しいし。」
「だけど、僕、アスカ好きだよ。」
「バカ!こんなところで、言わないでよ!
もしユースケ達が聞いてたら、また話のタネにされるわよ!」
「そ、そうだけど‥‥かわいくて成績優秀なだけじゃないよ。
大丈夫。もし、なんにもできないアスカても、僕は、きっとアスカが
好きだと思うよ。」
「‥‥ホント?」
「ホント。」
「信じられないの?僕の言葉。」
「信じたい。」
「じゃあ、お互いの心を確認する‥」
「は〜いストーップ!!そこまで〜〜!!」
「キスまで見せつけられちゃ、たまらんからな。」
「聞いてたぜ、お二人さん。」
「げっ!」
「あっ!み、みんなっ!!」
「ねえ、みんな、聞いた?さっきの碇君!
『僕、アスカ好きだよ』だって!!アハハハハ!!」
「カズミっ!!なんで笑うのよ!!」
「だ〜っておかしいんだもん。あんた達って同棲してるから、
絶対進んでタダレてると思ったのに、実はウブだったのね〜!」
「‥‥人は見かけによらないもんだな。」
「だってアスカがキ‥フギュル」
「こらバカシンジ!変な事言うんじゃないわよ!
まあ、ね、同居してるからさ、そこら辺はやっぱり、こういう友達っぽくないと
きっとすぐ飽きちゃうと思うし、いけない事を始めちゃったら、行き着く
所まで行っちゃうのが怖いからね。み、みんな、そう思わない?」
「俺は思わないな。」
「全然思わないね。」
「とか言って、二人とも、単にお子様なだけなんじゃない?
何の抵抗感も感じないで、毎晩一緒にお風呂に入ってるとか。」
「カ〜ズ〜ミ〜!!!!!」
「ほら、怒ってる怒ってる。図星ねきっと。
クラスのみんなにも教えてあげよっと。」
「バカ!あんた、自分が何言ってるか解ってるの?」
「やめてよ!僕たち、そんな事してないよぉ!」
「ユースケ、お前どう思う?」
「嘘だね。一緒にお風呂、確定だな。」
「そこっ!断定しないっ!!」
「でもさ、信じたい云々言ったり、好きだ云々‥‥やっぱり普通じゃないよ。
カズミの言うとおりじゃないなら、二人とも頭の中がイチゴジャムで
できているとしか思えないよ。」
「うう〜。」
「だけど、ある意味羨ましいよな。
まあがんばれよ、二人とも。」
「ついでにお風呂も一緒にね。」
「あんたぁ!殴るわよ!」
「まあっ!アスカお姉さまったら、怖い怖い!」
「カズミ〜〜!!」
* * *
「ただいま〜。って言っても、誰もいないか‥。」
「さてと。熱くて汗かいちゃったから、お風呂沸かそうっと。」
「でも、打ち上げは8時からだよ。急がないと。」
「そうね。」
「お風呂かぁ‥‥僕もちょっと汗かいたから‥‥一緒に入っちゃおうか?」
「‥‥ダメ。」
「ダメ?」
「ダぁメっ!
もぉ!あんたの場合は純真もへったくれもないんだから!」
「でも、カズミ達はお風呂に入るのはお子さまだって言ってたよ。
ほら、アスカと僕にぴったり。」
「ニコニコしながらそんな事言っても、説得力ないわ。
それに、あいつらと違って、私はあんたと溶け合った唯一の人間だから、
みんな知ってるのよ。」
「う‥‥」
「シンジも、人並みくらいはスケベだってね。
私の事を思っていつも我慢してくれてるのは優しいと思うけど。」
「僕が‥‥スケベ‥‥。」
「‥‥ホントは、私が欲しくてしかたないんでしょ?」
「ちっ違うよ!」
「じゃあ、なんで耳たぶまで赤くなってるの?」
「ぐ‥‥」
「いつも言ってるけど、せめて18になるまでは待っててね。
私、まだ‥‥‥」
「うん、そんなの気にしてないから、今はこのままでいいよ。
‥‥あっ大変だ!
8時までに、二人ともお風呂に入る時間がないよ。
やっぱり、一緒に入らないと、もう打ち上げに間に合わない!!」
「あんたは、打ち上げ終わってから入ればいいのよ。
そんなシリアスな声出しても、ダメなものはダメっ!」
「ちぇっ‥‥だめか‥。」
→to be continued
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