Episode-21【2020】

(1)営みの背景


 朝8時50分。



    『おはようございます』  『おはようございます、司令』


 「おはよう」

  職員達の元気な挨拶にも素っ気ない返事だけを返して、冬月は
 ネルフ本部ビルのロビーを足早に横切っていった。
 玄関ホールを抜け、エレベーターの前でようやく足を止める。
 それから一気に18階まで上がって、まっすぐ執務室に向かうのだ。

  彼の出勤時間は、事件後の3年間にわたって朝の8時半ごろと
 決まっていた筈だが、なぜかこの一ヶ月ほどは、9時ぎりぎりの到着である。
 いつも顔を合わせる職員達は、誰もがこの事に気づいていたが、本人には
 その自覚はあまり無いようであった。

  ビルの入り口からきっかり5分で、彼は「司令室」のドアの前に到着する。


“さて、と”
 灰色のドアの向こうに広がっているであろう光景を思いだし、
 ノブに手を伸ばすことに躊躇いを感じる。


 ガチャリ


 案の定である。

 ドアを開けてまず彼の目が行くのは、不必要なまでに広い自分のデスクの
 上の『未決済』の棚だった。

 ご多分に漏れず、今日も厚いのやら薄いのやら‥とにかくたくさんの、
 おそらくは無味乾燥な内容の書類が山積みになっていた。


 「仕方あるまい、始めるか‥‥」
 そう呟いてから男は黒椅子に腰掛け、書類の山の頂によろよろと手を伸ばした。

  ここ最近、冬月は自分の身体の衰えを強く意識している。
 白髪が以前より増えたことも、自覚するところである。

 “私はもう、疲れているな、最近。”
 “果たして、ネルフを最後の瞬間まで支えていけるのだろうか‥‥”

  かつては考えもしなかった弱音も、ときおり脳裏をよぎる。
 日向達に仕事を終わらせ、禍根を後世に残さない形でネルフを解体し‥‥
 子供達の行く末を見定めるまでは決して休まないという4年前の心の誓い。
 それすらも最近は重い心の枷のように感じられてしまうのだ。


「‥‥‥」

 晴れない憂鬱を抱えながら、冬月は重要だが味気ない仕事を続けている。






(2)小さな痛み


 「じゃ、ね〜〜!!」
 「また明日!」


 にぎやかな放課後の廊下を抜け、僕はいつものように音楽室に向かう。
 今日も練習しなきゃ。
 大学受験を既に終え、部活動に戻ってきた3年生達による卒業演奏会、
 そのささやかな催しを控えて、広い音楽室は今日も活気に満ちていた。

 入学当時はやたらと広く感じられたこの部室も、
 今では自分の部屋と同じくらいに違和感を感じない。

 合奏の練習用に並べられた譜面台とパイプ椅子や、基礎練習に
 打ち込んでいる仲間達の後ろ姿ももうすぐ見納めだ。
 このなじみの音楽室で過ごす、高校生活最後の一ヶ月。
 そう思うと寂しいものがある。

 僕はチェロを昔やっていたから、この吹奏楽部に入ったときには
 バスパートを希望し、以来ずっとコントラバスをやらせて
 もらっている。


 入った理由?

 やっぱり今でも音楽が好きで…それで、この高校には音楽サークルって
 吹奏楽しかなかったから、っていうのが理由かな。
 本当はオーケストラとか室内管弦楽とかがあって、チェロを弾けたら
 よかったんだけど。

 僕が入部を決めた直後くらいにアスカも入部を表明してくれた。
 すごく嬉しかったのを、よく覚えている。

 その後、洞木さんも一年生の二学期の頃に入部を希望して‥‥‥
 以来3年の間に、初心者だった筈の二人も相当な腕前のフルート吹きに
 成長し、この吹奏楽部に欠かせない人材になっていた。

 でも‥‥二人とも、今日はまだ来ていないみたいだな。



「そこ!色男!!」

「!?」

「アスカならしばらく来ないよ、職員室に用だとか」

 ちょっと甲高い、でも風邪をひいた感じの女の声がした。
 なんとなくかすれた声が僕を呼んでいる。
 でも、この言葉遣いは‥‥。


 きょろきょろと辺りを見回し、僕は遠くの方にショートカットの見慣れた顔を
 見つけた。
 こっちに向かって大きく手を振ってる。


 流城だ。

 流城 ナオミ。
 男の子みたいな言葉遣いと、がさつな振る舞い。
 どんな事にもめげない・泣かない・悔やまない。
 そんな所がウリの女の子だと思う。

 顔はいいのか悪いのか‥案外美人なのかもしれないけど、
 アスカが大好きな僕には、ちょっとそこら辺はよく分からない。
 吹奏楽部の副部長をやっていた彼女は、“魔神のナオミ”として、
 近隣の高校にも隠れファンを持つ、とんでもないドラムの達人で‥‥
 1年・2年と続けてアスカと同じクラスだったためか、僕やアスカとも
 仲がいい。
 そして僕やケンスケと同じく、信州大学入学学組の一人だったりする。


「べ、別に今日はアスカを探してるわけじゃないんだ。
 ただ、ケンスケが話があるからここに来るってお昼に言ってたから
 それでケンスケを待ってるんだけど‥」

「ん?ケンスケ?ハハッ!!
 あいつね、そうそう、それで伝言もらってるのよ、
 そのために声かけたんだったっけ?」
「あのさ、今日、同じ大学行く奴だけでケンスケん家に集まらないかってね。
 久々に飲もうってさ。」

「ええっ?また飲むの?もう、やだよ」

「ま、決まっちゃったものは仕方ないってね〜、シンジ。
 そうそう、ケンスケはもうお酒買いに行ってるから、
 合奏終わったらちゃんと来るのよ!!
 ケンスケのハンド部仲間と、先に宴会始めてるから。」

「始めてるって‥‥もしかして、流城、合奏練習サボる気?」

「ご名算!!パーカッションの後輩にはうまい言い訳用意しといてね、
 じゃ、ね〜〜!」

「ちょっと、待ってよ、ねえ!!」

 会話は彼女のペースで一方的に打ち切られ、そして僕が何か言おうと
 した時にはもう手遅れだった。
 僕の制止を振り切るように流城はダッシュで音楽室を飛び出して行き、
 あっという間に姿をくらましたんだ。

 ‥‥まったく、ケンスケ達ったら。
 今日は久しぶりにアスカに夕飯作ってあげようと思ってたのに。

 ああ、パーカッションの人達に流城の事、どう言い訳しようか‥‥。





           「シ〜ンジ!元気してた?」

 言い訳を考えようとしていた僕の耳に、今度はなじみの声が飛び込んできた。
 後ろに振り向くと、声の主はやっぱり彼女だ。

 フルートのケースを手にした、制服姿のアスカと洞木さんが、いつの間にか
 僕のすぐ側に立っていた。
 あんまり派手じゃないウチの高校の冬服だけど、栗色の髪がきれいに
 映えるアスカには、それでもちゃんと似合って見える。

 アスカはこの3年間で随分大人っぽく、そして綺麗になったってみんなは
 言うけど、いつも顔をあわせているせいか、僕には前と変わらない、
 あの頃そのままのアスカに感じられる。
 僕の身長が伸びたせいか、昔より何だかちっちゃく見えるようにはなったけど。


 「遅かった?あれぇ?お昼に、ケンスケが放課後に来るとかって言ってたけど、
  どこにもいないじゃない!?」

 「ああ、代わりに流城から伝言貰ったよ、今日、飲むから来いだってさ、また。
  あんまり行きたくないんだけどね。アスカも来る?」

 「イヤよ、前は鈴原が吐いちゃって大変だったし‥‥そんなことよりもさ、
  今日は久しぶりに二人でパルコ行ってお買い物して、それから‥」
 「って、そうもいかないよ、もう、流城と約束しちゃったし。
  やっぱりアスカもついてきたら‥」

 「そんなの、つま〜んな〜い!!」

 アスカ、ふくれてるや。

 「‥‥そんなこと言っても、付き合いだから、さ。ホント、ごめんっ!」

 「ううん‥‥ごめんね、また私が無理言って。
  わかってるわよ、気にしないで。」

 「アスカ‥‥」

 「それよりさ、楽器の練習しないと!ね!」


 まただ。
 『気にしないで』って言ったって、僕にはわかる。
 ホントの気持ちは、やっぱり気にして欲しいんだって。

 ああ、アスカ、無理に明るい表情作ってる‥‥。
 そんなに無理して笑わなくてもいいのに、ねえ、そんなに我慢しないでよ。

 そんな取り繕う姿が、少し嬉しく、とても悲しい。
 昔みたいに、もっと我侭言ってくれてもいいのに‥‥‥。

 本当は今日こそはと思ってくれてたんだ、きっと。
 僕と一緒に二人だけでいたいと思ってくれてたってわかるんだ。
 なにしろ、ここ一ヶ月ほどは二人切りでろくに会ってないもんね。
 ごめんよ、アスカ。


 “‥‥ああ、こんな時、何言えばいいんだろ?”

 悩みに悩んで、それでも何か言おうとして口を開き書けたとき。

「ねえ、アスカ?もし暇なら帰りにウチ、来ない?
 新しい葉っぱ、コダマお姉ちゃんから届いたのよ、
 アスカって、確か紅茶、好きだったでしょ?」

「ええっ!?うん!行く行く!!」

 洞木さんの言葉が、僕とアスカを救ってくれた。

 アスカの表情が微妙にだけど、変わっていく。

 誘いの一言を引き金に、きっと僕とアスカだけしかわからない、
 水面下の気まずさが少しづつ溶けていくのがわかる。

「じゃ、僕は‥‥」

「‥また次の機会ね。でも、ナオミとくっついたりしたら承知しないからね!」

「ハハハ、何言ってるんだよ、アスカ、そんなこと絶対ないって」

「わかってるわよ、あのナオミじゃね〜。ま、あんまり飲み過ぎないようにね。」

「うん」


「じゃ、私達、もう練習はじめちゃうから。
 帰ったらちゃんと電話するのよ!ウチに!」

「もう‥‥ちょっと心配性過ぎるよ、アスカは」

「う、うう‥‥だって‥‥」

「そ、それじゃ碇君、私達行くから。ほら、アスカ、練習練習!」

「う、うん。じゃね、シンジ」

 アスカは洞木さんに半ば引きずられるように、音楽準備室のほうへと消えていった。


“ふう”

 何故かでた溜息。


 僕は、洞木さんの一言に、心から感謝した。



   *          *           *



 僕は今、ケンスケの家で飲んでいる。
 いや、飲みたくもないのに飲まされているというのが正解かも。

 もともとは合計7人の宴会――ケンスケに流城、ハンド部の4人、
 それと僕――で始まったはずだったのに、飲んべえの流城の前に
 ハンド部のメンバーは一人、また一人と帰宅の途について………

 結局、全然飲まずに食べてばかりだった僕と、家主でアルコールにも
 滅法強いケンスケだけが今は残っている。

 あとは、残った僕を“酒の肴”に、流城が水を飲むような勢いで
 ビールをあおっている。
 その飲みっぷりを見ていると、かつてのミサトさんを思い出してしまう。
 もう、凄いペースで飲むんだから‥‥。


 ングッ ングッ ングッ

「プハーッ!!さぁて、シンちゃん!!
 今度はシンちゃんの番よ〜〜!」

「もっ、もう飲めないよ!!だっ、だからさ、流城!」

「ダメよ〜シンちゃんったら〜〜〜!あんまし飲んでないのは知ってるのよ!!」

「そ、そんな〜〜」

 絡んでくる時の流城は、はっきり言って恐い。
 怪しげな口調で『シンちゃん』と僕を呼んだりするだけならいいんだけど、
 口癖が少々悪くなるのが困りものだ。

 今日もケンスケの友達が、安焼酎飲むのを断って絡まれていたような気がする。

 「ほら、シンジ、もう一杯、もう一杯ってさ!!!」

 ケンスケもひょっとして、多少は酔っているのかもしれない。
 微かにだが、台所の方からもありがたくないエールが聞こえてくる。

 ああ、今日はこんな筈じゃなかったのに‥‥。


 「ま、あきらめな、シンジ。」
 「さあ〜〜〜、まずは飲め〜〜!とりあえず飲め〜〜!死ぬまで飲め〜〜!
  それ、飲むんだ〜〜!!!」

 しようがない‥飲むか‥‥

 コップを手に取って、僕は既に旨いと感じなくなってきている液体を
 ゆっくり飲み始めた‥‥



 ・・・・・・・・


「ををっ!さすがシンちゃん!結構イケるぢゃな〜い!!
 さ、じゃ、次、次!
 ワタシも飲むからさぁあ、今度はワイン、ワインワインと‥
 あれれ? ねぇケンスケェ、もうワインのほうはないの?」

「えっと‥‥ああ、さっきのでラストだったのかな?」
「ぢゃ、ワタシ、表の酒屋でちょっち買ってくるからさぁ〜、留守お願いね」

「留守って‥‥流城、ここ、誰の家だかわかってんの?」
「失礼ねぇ!あんたの家よ、ケンスケ君!ほぉら!私はまだまだ正常よ!」

「‥‥あの、まだ飲むの?」


「んん〜っ?なんか言った?シンちゃん?」

「‥‥行ってらっしゃいませ」
「すぐ帰ってくるからね!!じゃ!」


 鼻歌を歌いながら流城は玄関のほうに歩いていき‥‥ドアが閉じる音だけを
 残して、彼女は姿を消した。

 本当に楽しそうな彼女が、僕にはとても羨ましい。
 なんか、悩み事なんて何一つないように見える彼女が
 まるで別の生き物みたいに思えたから。
 幸福な立場の筈なのに今も悩み続ける自分とは、全然違うから。

 一本だけぽつんと残っていたビール瓶の栓を開け、自分でコップに注いで
 少し飲んでみる。
 その、いやに苦い飲み物を先程から飲み続けているけど、僕は
 嫌な事やわずらわしい事を忘れて‘酔う’ことはできないんだ。

 やっぱり僕は、アルコールで憂いを忘れることはできないのかな。


 ‥‥それにしても、どこが違うんだろ?
 なんで流城はあんなに楽しそうなんだろう‥‥‥

 「シンジ、一人の時はまた悩み事か?お前らしいな」
 「えっ?」

 振り向き、大きな皿を持ったケンスケに気がついた。

 声をかけられるまで気配に全然気づかなかったのは、
 なんだかんだ言っても僕がお酒に酔っている証拠なのかな?

 できたてのジャーマンポテトが盛られた皿を、ドン、テーブルの上に置くと、
 彼は僕のすぐ側に坐り、開口一番、ズバリそのものを指摘してきた。

 『‥‥アスカのことだろ?』と。

 しどろもどろの僕。
 それを見つめるケンスケの顔には、“やっぱりな”と書いてある。

 なんでケンスケはこんなに僕の心がわかるんだろう?
 なんでアスカだってわかったんだろう?


 「なっ?ねえ、なんでわかったの?」

 「見え見えだよ、どうやら流城のやつも気づいてるみたいだし。
  ほら、アスカが一緒の時とかはあいつ、お前らには絶対飲ませないだろ?
  お前が悩んでるの見て、あいつなりに考えてるんじゃないのかな?」

 「‥‥そっか、そうかもね‥」

 言われてみればそうかもしれない。

 二人とも、僕の悩みに気づいてるんだ。
 僕は、一番大事な人さえろくに理解していないっていうのに。


「で、どうした?
 あいつなら酒屋でウロウロすると長いからさ、しばらく帰ってこないぜ。
 もし俺で良ければ教えてくれないか?‥なぁ」

 その言葉に、改めてケンスケの顔に目を向けた。

 お酒のせいだろう、顔は赤いし目も少し垂れているけど――
 それでも真面目そうな視線が、僕の心を安堵させた。


“少し話してみたら”
 そんな声が心の中から聞こえてくる。そんな気がした。


「最近‥‥‥ダメなんだ。お互い、なんだか本当に分かってあげられない
 っていうか。アスカとすれ違う事、多いんだ。
 今日、ここに来る前も、洞木さんに助け舟を出してもらって何とか
 嫌な思いをしなくて済んだって感じだし」

「‥‥そうだな、最近のお前達、昔とちょっと違うよな。
 でも、変わったって感じよりも、落ちついたって感じもするんだけど。
 高1くらいまでは、気持ち悪いくらいベタベタに見えたからさ。
 むしろ、あの頃が変だったように思えるよ。」

「でもさ、ほら、ケンスケや流城は、僕がどうして悩んでいるのか
 見当ついたんだろ?今の僕はアスカが暗い顔しても、全然わかって
 あげられないんだ。これじゃアスカが可哀想だと思わないか?」

 そこまで話して、コップに残っていたビールを喉に流し込む。
 どうしたわけか、いつもほど苦みを感じなかった事に、僕は驚く。

 ケンスケは、まだ激しく湯気の立ち昇るジャーマンポテトをつまみながら
 そんな僕をじっと見ている。

「いっとくけどシンジさ、恋人の気持ちをいつも充分にわかってあげるって、
 友達の悩みをなんとなく見抜くよりずっと大変だと思うな。
 性別が違うってのもひとつにはあるし、友達以上に自分の気持ちが
 深入りしちゃって、何事も見えにくくなるっていうのもあるし。」
「でも、そうやってお前がしっかり悩んでるって聞いて安心したよ。
 やっぱりお前ら、特別なんだな。」

「そ、そうなの?」

「そうやって、アスカの為に真剣に悩んでいるんなら、俺はそれでいいと思うんだ。
 他の連中とか見てると、相手のことなんか考えないで自分の都合だけに
 夢中な奴等が殆どさ。それに比べたらずっと立派だよ。
 自分の事より相手の事を考えてやれるって、何より大事だと俺は思うな。」

 多分、ケンスケは僕を誉めたつもりでそれを言ったんだと思う。
 ありがとう、ケンスケ。嬉しいよ。

 ―――でも、僕にはすごく痛みを伴う一言なんだ。

  《本当は、純粋にアスカが大切ってわけじゃないかもしれない》
  《ただ、アスカが自分から離れていくのが恐いだけなのかもしれない》
  《たまたま側にいたアスカが優しかったから好きなだけ》
  《優しくしてくれるのなら、全てを許してくれるなら誰でもいいのかもね》

 こんなずるくていやらしい男が、僕の本当の正体かもしれないんだ。
 手を抱えてうずくまっていた14歳の頃と変わらない自分かもしれないんだ。
 自分の中に潜むモノ全てを知っているわけじゃないから、素直に
 誉められた気にはとてもなれない。


 ダメだ。
 ケンスケとはいえ、こんな事、とても言えない。
 だから、ケンスケには一番知られたくないところを省いて、
 話をそのまま続けるしか‥僕には方法が無かった。

「‥‥だけどさ、僕がアスカにそうするのは当たり前じゃないの?
 恋人同士ってそういうものじゃないの?
 好きな者同士なら、一生懸命にわかりあおうとするものじゃないの?」

 僕は敢えて一般論を口にしてみた。
 そんな自分に、少し後ろめたさを感じずにはいられない。


「そうでもないさ。本当に好きで付き合ってるって感じなの、
 お前らとトウジ達ぐらいかな、俺の知ってる範囲だと。
 他の連中は、まあ、寂しいからだとか、この歳ならステータスだからとか‥‥
 ろくな動機じゃないよ。」

「‥‥」

「お前らみたいに本気で人を好きになれるって、無茶苦茶幸せだと思うよ。
 俺にもそんな女が見つかるといいんだけどな‥‥。そうでないなら、
 彼女なんて要らないよ、見せかけだけのイージーな付き合いなんて、ね。」

「ケンスケ‥‥。」

「ま、とにかくさ、お前らは今のままで少しづつ解り合えばいいんじゃないの?
 まだ付き合って3年だろ?
 そりゃ、最初の一年があんなのだったんだから、ここらで多少ギクシャクするのは
 むしろ当たり前だと思うよ、シンジ。」

「そっか」

「俺にはシンジがどう悩んでいるのか正確には分からないけどさ、
 解ってあげようと思ってシンジが本当に必死なら、
 その姿を見てるあいつも、お前に必ず応えてくれるさ。
 確かに昔はいやーんな感じだったけど、今はあんなにいい娘なんだし。」

「‥‥うん」

「甘いかな?こんな事言うの?」

「う、ううん、僕もそう信じたい。信じたいんだ。」

「シンジはよくやってると思うよ。そうやって真面目に悩んでいる間は
 きっと大丈夫さ。恋愛も人生も、理屈じゃないんだし。」
「一生懸命なら幸せになれるかって言ったら、そりゃウソだけど
 逆に一生懸命じゃなきゃ幸せにはなれないんだから、な。」

「理屈じゃない‥、か。」

「なあシンジ、もっと自信持てよ、な。」

「‥‥そっか、うん、そうだね。
 いろいろありがとう。なんだか気持ちが楽になったよ。
 困ったときは、また、いろいろ聞いていい?」

「もちろんさ。アスカのこと以外もな」

「ありがとう。ケンスケも、僕でよかったら」

「頼りにするぜ、シンジ」


 さっきの一言は、僕の励みになった。
“一生懸命じゃなきゃ幸せになれない”か。
 うん、間違ってないと思う。

 そうだね、さしあたり、もっと一生懸命色々やって、悩んでみよう。
 アスカのことも、他のことも。


 辛いことも多少は思い出したけど、ケンスケと色々話して、
 ちょっと気が楽になったかな。

 やっぱり、友達って、いいね。



 ピンポーン

 「流城かな?」

 バタン

 「おまたせ〜〜!!」

 やっぱり流城だった。
 玄関から上がってきた彼女の両手には、大きな白いビニール袋があった。
 中身はどうせ全部酒だろうけど。

 これからまだまだ飲めるせいだろう、すごく上機嫌な顔してるし。

 「シンちゃん〜、ナオミお姉さんと一緒に飲みましょうね〜。」
 「わかったよ、わかった、わかったから」
 「おっと、俺にも貰おうか」

 「さっすがケンスケェ!!わかってるね〜!!ああっ!いつの間に
  ジャーマンポテト作ったの!?食べる、食べる〜!」

 いつまで続くかわからない三人だけの“戦い”が再び始まる。
 いつの間にか、急いで帰りたいっていうそんな気持ちは僕の心の中から
 たちまち消えていた。





(3)夢見る乙女


 部活を終え、フルートパートの仲間達とモスバーガーで晩御飯を済ませた帰り道。
 私は久しぶりに学校の寮内のヒカリの部屋に立ち寄る事になった。

「さ、遠慮はナシね。どうぞ、アスカ。」
「おじゃましまーす」

 玄関で靴を脱ぎ、お世辞にもそんなに広いとは言えない部屋に足を踏み込む。

 ほんっと、久しぶり。
 随分長いこと彼女の家に来ていなかったと思う。

 1月のセンター試験と二次試験、それからいろいろの手続きや学校行事で
 シンジと遊ぶ暇さえなかったからね。

 数カ月ぶりに入る彼女の部屋は、なんだか以前と違う感じがした。
 特に変わったところなんて無いように見えるんだけど‥‥。

 なんでだろう、と思いつつ、ぐるぅっと室内を見渡した。

 タンスの上のパブミラー、その隣の写真立て、どれも同じよね‥。
 テレビとか窓際のセラミックヒーターも全然前と同じ。
 本棚の本だって新しいのが増えた様子はない‥‥。

 やっぱ、ただ久しぶりだからかなぁ。

「ねえヒカリ、部屋のデザインとか変えてないわよね?」

「うん‥‥どうしたの?」

「久しぶりだからかなぁ。何だか違う感じがしてさぁ」

 ヒカリはお湯を沸かす為にティーポットに火をかけながら、
“匂いじゃないわよね?何かしら”って返事をしたけど、
 私には何のことだかよくわからない。

「匂い?それって、どう言うこと?」

 匂い‥‥‥匂い‥‥。

「ほら、本棚の横。あのお皿を見て。」

 ヒカリに言われるままに、ベッドの側の本棚の上に目をやる。

 棚の上に置かれたお皿の上に、白い貝殻でできた小さなお香立てがあった。
 すぐ側の竹篭の中には、マッチ箱と数本のスティックタイプのインセンスが
 並んでいる。
 なるほど、と思って窓にかかるカーテンに近づいて鼻をくんくん
 やってみると、うんうん、気持ちのいい匂いがまだ残っている。


「へぇ〜、ヒカリもこういうの買うようになったんだ。」

「アスカの家でほら、ラベンダーとか乳香とかいい匂いだなって私も思ってね。
 最近は疲れたときとか、寝る前によく焚くのよ。」

「これは、何?私の持ってる種類には無いけど‥‥」

「白檀よ、私のお気に入り。
 ああっ!お湯!
 もう沸騰したみたい。」

 棒状の沢山のお香を手で弄びながら、近頃のヒカリの事を私は
 色々と思い出してみた。

――お香は焚くし、なんだかおしとやかで、誰にも優しい女の子になったし。
 TANTOやオレンジページばかり見てる娘だったのに、最近は服装にも
 だんだんうるさくなってきてる。
 前はそういう事はちょっと苦手っぽかったけど、最近、どんどん“らしく”
 なってるわね、ヒカリ。

 ま、18歳で彼氏つきだもんね。
 少しづつ変わっていくのが当然なのよね。

「それにしても、ローズとかじゃなくてサンダルウッドとはね〜。
 やっぱり、ヒカリらしい趣味ね。
 匂いなんて、あんまり残らないものだと思ってたのに、雰囲気まで
 変わるもんなのね。
 ヒカリも、やっと女の子らしくなってきたもんね。」

「ア、アスカ!ご覧の通り、私は昔からフツーの女の子よ。」

 少し憤慨したような口調でそう言いながら、白いティーポットを
 手にしたヒカリが、台所からこっちに歩いてきた。


  *        *        *



“コダマお姉ちゃんのロンドン土産”というそれは、味も香りも
 紅茶通を自負している私の期待を越えるものだった。
 お茶の入れ方も、ヒカリはしっかり心得ているし。

 こぎれいにまとめられた部屋の中は、今度はアールグレイ独特の
 香りで満たされていた。
 で、二人でお菓子食べながらあれこれおしゃべり。

 最初は卒業演奏会の話をしていた筈だったんだけど、話題は
 いつのまにか‥‥というか、やっぱり鈴原やシンジの事になっていた。

 『照れ屋のヒカリちゃん』だから、こういう話題を話す機会はあんまり
 なかったけど、卒業前っていう時期が時期だから‥‥よね。

 他の女の子同士の恋愛談義が、どのぐらいの長さなのかは私には分からない。
 けど、その時のヒカリとのおしゃべりは、果てることなく続くような感じがした。


 「‥‥いよいよ、鈴原とはこれから遠距離恋愛って事よね」

 「うん。第二新東京と京都じゃ、特急リニア使っても結構かかるし。」

 「ホント、大変よね。がんばるのよ、私も応援するから」

 「ありがとう。でも、アスカのほうも‥‥」

 「ああ、ああ、それは大丈夫よ。
  第二東大と信大って、実際は20キロくらいしか離れてないのよ。
  それにシンジはあそこの人文学部だから、ずっと第二新東京にいるみたいだし。」

 「いいわねぇ‥‥」

 羨ましそうなヒカリの口調が、ちょっと可哀想に聞こえる。

 本人が辛そうにしている所は見たことないけど、
 トウジと二人きりでいるとき、最近のヒカリってどんな顔をしてるのかなぁ。

 「私だったら、耐えられないわよ、きっと。追いかけちゃうだろうな、
  京大あたりならさ、結構悪くなさそうだったし」

 「アスカならそうしそうね、でも、私はこれでも平気よ、うん。」

 「まぁた!強がっちゃって!本当は恐いんじゃないの?」

 「ううん。大丈夫。トウジ‥じゃなくて、鈴原だから、大丈夫。わかるもん」

 「‥‥じゃ、電話、毎晩欠かしたらダメよ」
 「そんなもの‥‥かな‥‥でも、アスカがいうんなら、そうするね。」

 「もしかして平気とか?側にいなくても?」
 「‥‥うん、鈴原は、いい人だし、それに‥‥信じてるから」


 そこでいったん話すのをやめて、私は目の前のクッキーに
 ちょっと手をつける。

 今の会話を一生懸命思い出していたから、味のほうまでは、気が回らない。



 『信じているから』なんてね‥‥。

 ―――――――羨ましいわね。

 なんでそんなに安心できるのかな?
 なんで恐くないのかな?

 私達より、ずっと距離が離れるっていうのに。
 ヒカリ達、私とシンジなんかと違って、
 プラトニックな関係、今でも続いているみたいなのに。

 なんで平気なんだろう?
 なんで心配じゃないんだろう?

 「‥アスカ、クッキーの粉、こぼしながら食べてるわよ」
 「あ、ごめんごめん。それよりもさ、ねえ、ヒカリ」
 「何?」

 私は、思ったことを素直に訊いてみる事にした。





(4)夜の電話


 同時刻、青葉シゲル宅にて‥‥‥‥


 ピリリリリ プツッ


 「はい、青葉です。」

 『や、夜分遅くすみません、日向という者ですが、あの、
  シゲルさんをお願いします』

 「はい、え?日向さん?」

 『あれ、もしかしてマヤちゃん?ゴメン、女の人の声だから
 青葉の親戚か何かだと思っちゃったよ。』

 「あの‥私達、結婚するんです。式はまだ先だけど、
  もう籍は入れちゃって、今は一緒に住んでるんです。」

 『そっか‥‥おめでとう、おめでとう、マヤちゃん』

 「ありがとう、日向さん。じゃ、シゲルにかわるわね」



 「もしもし、日向?日向なのかい?どこだ今?」

 『チューリヒからさ。今日は、嬉しいことを報告しようと思って、な。
  でも、そっちの方にはかなわないな、おめでとう。お前も遂に所帯持ちか‥』

 「ハハハ、所帯持ちって言うなよ、所帯持ちって。ところで、日向のほうは‥‥」

 『ああ、それなんだ、伝えようと思ってた事は。
  いよいよ今度こそ間違いないみたいなんだ。確信がある。』

 「そうか、見つけたか‥で、日取りのほうは?」

 『昨日報告があったばかりだからな‥‥どんなに早くても4月の頭
 くらいってとこだろうな、攻め込むのは。』

 「本当に終わりだといいんだけどな。お前のためにも、みんなの為にも、な。
  冬月さんが寂しがってたぞ、仕事を負担してくれる副司令が欲しいって。
  例によって、日向が前線で指揮をとるんだろ?」

 『俺が望んだことだからな。我ながら、大人げないとは思うけど』

 「‥‥とにかく幸運を祈っているよ。くだらん事で死ぬんじゃないぞ。」

 『ああ。そのつもりはないさ。
  そうだ、最近のシンジ君とアスカちゃんはどうだい?』

 「二人とも相変わらずだよ。ひょっとしたら俺たち以上に熱いかもな。」

 『ハハハ、“そのためのネルフ”じゃないけどさ、二人をしっかり頼むぞ。
  まだ子供なんだから、大人のお前がしっかり守って、な。』

 「お前、ホント、それが口癖だな。わかってるよ。冬月さんもお前も、
  あの二人のことになると本当に甘いからなぁ。」

 『まあな。普段、あの子達に会わないからだよ、口癖になっちまうのは。』

 「で、話を戻すけど、今度の仕事が当たりでこれで終わったら、
  お前どうするんだ?」

 『‥‥まだ決めてないよ、そんな事。終わってから考えるよ、全部。』

 「そうか‥‥」

 『ところで、マヤちゃんとの結婚式はいつだ?』

 「一応、5月の連休を予定してるけど。」

 『そうか‥是非行かせて貰うよ、お幸せに』

 「ああ、ありがとう。絶対、来てくれよな。」

 『もちろんさ。じゃ、今日はこれで。またな』

 「ああ、元気でな」

 ピッ


 「日向君、何って?」
 「やっと見つけたらしいんだ、KAWORUを。」

 「そう‥‥じゃ、これで元の日向さんに戻ってくれるのかな?」
 「‥‥そう願ってるんだけどな、俺は。」

 「大丈夫よ、ほら、シンジ君やアスカちゃんみたいに、みんなと楽しく
  過ごせるようになるわよ、きっと。」

 「あいかわらずだな、マヤは。そんな所が、俺は好きなんだけど」

 「ありがとう、シゲル‥‥」






(5)目に見えないもの、目に見えるもの


 再び、ヒカリの部屋‥‥


「ええっ〜っ!?全然平気ぃ!?」
「ア、アスカ、声、おっきい。
 ご近所さんに迷惑よ」

「ご、ごめんね、あの、ヒカリらしくて、その、さっすがだって。」

 ヒカリの答えに、私はどこかでびっくりしているみたいだった。

 キスさえしてない、お昼も一緒に食べない、
 ひと月に数回すら一緒に遊ばない関係。
 そんな関係でもお互い信頼できるし、それで充分すぎるくらい
 満足しているって。

 私だったら、どうだろう?

 今はもちろん、付き合い始めたばかりの頃だったとしても、
 きっと耐えられなかったに違いない。

 少なくとも、幸せだなんて言えなかったと思う。

 どうして、どうしてこんなに違うのかな。
 私とヒカリ、何が違うっていうの?


「アスカはどうなのよ、いっつも碇君と一緒にいるし、これからも
 一緒なんだろうけど‥‥。」

「私は‥‥」

 私は‥‥

 いざ聞かれると、答えがでない。

 なんで即答できないのかな。
 こんなに好きなのに、こんなに一緒にいるのに。


「う、うん。安心の極みね。私、シンジといつも一緒だから」

 とりあえずヒカリにはそう答える。
 でも、自分の心はそれがウソだと主張している。
 『幸せ』って、今の私の手元にあるものよね?
 私って、幸せな筈よね?

 ヒカリ達みたいなにすごくいい友人に囲まれて、
 あんなに好きな人と一緒にいられて。


 「そうよね、アツアツだもんね、アスカと碇君」
 「そ、そうそう、熱いわよ、ホント。誰にも負けないわ。」

 「でも、アスカがこんなに甘えん坊だったなんて、出会った頃には
  全然わからなかったわね。凄いわね、今のアスカ」
 「な、何よ、ひ、人を子供か何かみたいに!」

 「だーって、アスカ、駄々こねたり、辛そうに我慢したり‥‥」

 「もぉ〜〜っ!!」
     :
     :
     :
     :


 その後も、私はヒカリの家で二時間くらいにわたって
 おしゃべりを続けていたと思う。
 部活のこととか、大学入学の手続きとか、お彼岸の墓参りの事とか、ね。

 でも、そうして喋っている間も、
“私はろくに安心した事がないし、安らいだ事もないんじゃないの?”
 という考えが私を苛み続けた。

 『私は一緒にいて欲しいって願い続けて、シンジに捨てられることを
  畏れ続け、怯え続けているだけなの?』

 『でも、私は‥‥。』



   *         *          *


 ヒカリの家から自転車で約3分。

 ワンルームの自宅の玄関。
 自分以外に人気のない真っ暗な空間に帰り着くと、急に寂しくなる。

 もちろん、電気をつけてもその寂しさが消えてくれることはない。

 だから、お風呂に入った後、シンジの家に無意識のうちに電話をかけていた。



 プツッ

 『はい、碇です、只今、留守にしています。ご用の方は、発信音の後に‥』

 ピッ

 仕方がないので、携帯のメールでおやすみだけを告げ、私はさっさと
 床についた。だけど、なかなか寝付けなかった。





 (6)宴の後


 「本当にこれで良かったのか?」

 「うん。あの二人、お似合いだし‥‥このままダメになるの、見たくないし」

 「それでお前、納得できるのかよ」

 「納得するしかないじゃない‥‥正直言うとね、私、どこかでアスカを憎んでる。
  シンジは一生懸命なのに、自分ばっかりで、あんなに甘えるだけで‥‥。」

 「流城、アスカは‥‥」

 「ううん、あんたは言ってたわね。アスカ、かわいそうな娘だって。
  あれぐらいは仕方がないって。それは信じてあげるわ。私自身、
  人の事はあんまり言えた義理じゃないし。」

 「ごめんな、流城。」

 「ケンスケは、それでも、そんなアスカでも‥」

 「やめてくれよ。もう昔の話だよ。今は、流城が好きなんだし。」

 「ごめん。解ってる。ううん、解ってるつもりよ。
  あの二人、ただの彼氏と彼女じゃないんでしょ?特別なんでしょ?
  いいの、だから。私は見てるだけで‥‥いい。」

 「優しいんだな、流城は。」

 「ううん‥‥。違う‥と思う。」

 「なあ、今日はもうこんな事を話すのはやめよう。
  それよりもさ、こんなに夜遅くまでいていいの?
  両親が心配するだろ?」

 「そうね。そろそろ潮時ね。空瓶は、持って帰ろうか?」

 「サンキュー、でもいいよ、重いしさ。明日、資源ゴミの日だから、まとめて
  おいといていいよ。」

 「うん、わかった。じゃ、また学校で。」
 「じゃな、流城。」

 「うん。おやすみ、ケンスケ。」


to be continued




 うーん‥‥二話分割だったのをくっつけたから、随分長くて読みにくくなって
 しまいました、格好悪い。

 内容はご覧の通りです。
 うまくいってるかな‥‥。

 なお、この世界では大学受験の二次は1月にしちゃっていますのであしからず。

 だらだらSSがしばらく続きます。
 どうか、寛大な心で許してやってください。

 ナオミの説明、これだけ派手にやれば充分かな‥‥。
 がんばれナオミ!
 このSSはある程度はチミの両肩にかかっているのだ!

 しっかし、ダメアスカ&ダメシンジになってきたなぁ。
 というより、やっと膿が出てきた感じ。
 俺自身、二人を応援しなきゃ。


 【99年コメント】:
 この物語で唯一、ストーリーに大きく関わってくるオリジナルキャラ・
 流城ナオミの登場です。今見ると‥いい子だなぁ。アスカもかわいい。
 久しぶりに読み返すと全然違うものですね。(^^;;;
 ではでは。


 ★続いて、外伝に移行します。
  この外伝は、無理に読まなくてもいいと言えばいいですが、
  それでも読んだほうがいいような気がします。本編の合間に
  何も考えずにちゃかちゃかと書いた代物なので、質は高くない
  かもしれません。では。


 2004年注:長い。よみにくい。辛い。でも、このパートで状況説明を
 しなければ、第二部前半から第二部後半への移行を読者に伝えられない。
 そして、第三部と第四部が生きてこない。
 長いと批判されて削れば読者が混乱すること必至。
 でも、残しておけば残しておいたなりに読者がうんざりする可能性大。
 文章のバランスを取るってのは難しいモンですね。
 どう書いても問題が残る。
  とはいえ、ストーリー展開や文章配置の骨格そのものは、初陣の
 SSとしては信じられないほどよく出来ていると思います。
 現在の自分でも、これと同じぐらいの長さの話を書いて、open〜並みの
 ストーリー骨子を製造できるとはとても思えません。
 例えば贅肉だらけの“生きててよかった”と違って、このSSには削るべき
 センテンスこそあれど、削るべき話やシーンがホントに乏しい。
 どれも、必須のカットばかりで、削ると禍根が残る。

  当時のアスカへの愛が、こんな偶然を生みだしたのでしょうか?
 文章再公正やってて、つくづく驚かされます。





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