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open my heart 第四部   





 Episode-36【私達のハネムーン】


 [AD2025. 6/12 AM9:00]


 「二人で新婚旅行にいけるなんて‥‥なんだか夢みたいだね」

 「うん、嬉しい。また元気になってくれて、本当に良かった。」


 『10時25分発・デュッセルドルフ行き全日空328便御利用のお客様は、
  SSTO専用第2ポートにて、これより改札を始めます』



 「アスカ、時間みたいだね、行こうか」
 「うん。」


    *       *       *


 「僕、SSTOに乗るの、初めてなんだ、なんだかわくわくするなぁ」
 「私もよ。宇宙に出るんでしょ?どんな感じなのかな」


    *       *       *


 「すごい‥‥地球が丸く見える‥‥」
 「シンジ、夜の部分見てよ、ほら、あれって、街の明かりよね」

 「本当だ‥‥場所的に、モスクワあたりかな?」
 「シンジが守ったのよ、みんな。」

 「違うよ、僕たちが、だよ、きっと。
  アスカも、僕も、綾波も、それから‥‥ミサトさんや青葉さん達、
  他にさ、トウジやケンスケとか‥要はみんなのお陰なんだよ。
  誰か一人いなかったとしても、今の僕らとは少し違った僕らになっていた筈だし、
  ひょっとしたらあの時の僕らはもっとダメになっていて、人類を滅亡させてた
  かもしれないし。」

 「‥‥そうね。シンジ、なに新婚旅行で語っちゃってるのよ。
  なんか変な感じぃ。」

 「でもさ、間違った事は言ってないつもりだよ」

 「うん。シンジは勿論だけど、ほんとにみんなのお陰なのよね、
  私がこうしてるのも、シンジが私の隣りにいるのも‥」


 「地球、青くて綺麗だよね」

 「うん。」

 「アスカ‥‥」

 「何?」

 「アスカだって、新婚旅行になんか考え事してるんじゃないの?」

 「‥ちょっとね‥ママとか、ファーストの事を考えてたかもね。」

 「そっか‥‥優しいんだね、アスカは」

 「私の心の底まで見えるわけ?」

 「ううん。見えるわけじゃないよ。なんとなくそんな気がしたんだ‥」

 「うーん‥‥私って優しいのかな‥‥‥まあいいわ、ありがと、シンジ。
  でも私、もっと優しくなりたい。
  うん、ファーストに負けないくらいにね。」

 「アスカは今のままでもいいんだよ、僕は、今のアスカが、好きだから」

 「私も同じ気持ちよ。
  だから、私は幸せだし、シンジも幸せなのよ。」


  [6/12 PM10:20]

 「ねえシンジ」
 「何?」

 「前言ってた事、どうするの?」
 「僕は‥‥アスカとおんなじ気持ちだよ、たぶん」

 「そうなの?」
 「うん。僕も、そう思ってるから。」

 「私‥‥たぶん今日あたりは‥‥」
 「そっか。じゃ、決めちゃったらもう後戻りはできないんだね。
  本当に、本当にいいの?」

 「私に、その資格ってあると思う?シンジから見て」

 「うん。アスカは、もう昔のアスカじゃないんだ。立派にやっていけるよ。
  それより、僕は‥‥」

 「シンジも同じよ、今のシンジなら、きっと大丈夫。
  お互い、パイロットだった頃とか学生時代とは違うのよ。
  思えば小さい頃は、子供なんて絶対要らないって思ってたけど‥‥
  すっかり変わったわね、私。」

 「僕もさ。お互い、助け合って今日まで来たからかな?」


 「そうね。あなたが幸せを教えてくれなかったら、
  こんな風にはなれなかったと思うわよ。
  ありがと、シンジ。」

 「ありがとうは僕の方だよ。」


 「‥そうだ、シャワー浴びてくるね。」
 「僕も一緒は、ダメ?」

 「エッチ!‥‥だから言ってるでしょ、前から。
  一緒に入るのだけはイヤよ、さすがに。」
 「ええっ?‥‥なんでだよ!?」

 「シャワーっていうのはね!!一人で入るものって相場が決まってんのよ!!」
 「背中洗ってあげるからさ」

 「バ、バカッ!!とにかく!!気持ちの問題よ、気持ちの!!
  シャワーくらいは、一人でもいいじゃない!!」

 「しかたないな‥‥」
 「しょげちゃって、もう‥‥。
  新婚旅行の一日目からそんなにハイだと、身が保たないわよ。」

 「ハハッ、それもそうだね。お楽しみは後‥‥」
 「このバカ!!そ、そんなんじゃないわよ!!とにかく、ダメといったらダメ!
  じゃね。お先に。」

 「あーあ。」



    *         *         *


                          
                      
                                 
             
                

                   
   
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 [6/14 AM9:54]

 「‥‥シンジのバカ」
 「バカはアスカだよ、何も5時まで起きてることないじゃないか!」

 「昨日の夜は‥‥」
 「もうやめようよ、人前で恥ずかしい」

 「誰も日本語わかんないから何を喋ったって大丈夫よ。
  それよりもどうすんのよ‥‥寝坊で高速バスすっぽかすって‥」

 「僕、ドイツ語と英語だめだから、なんとかしてよ」

 「まったく‥‥‥しょ〜がないわねぇ〜。
  とにかく、ターミナルに行きましょ、
  なんとかして次の便を捕まえなきゃ」

 「がんばってね」
 「あ〜あ、こういう時はシンジはてんでダメね〜」

 「‥半分はアスカも悪いんだから」
 「なんか言った?」

 「いえ‥別に。」


 [6/17 AM11:20]

 「これがママのお墓よ」
 「確か、惣流・キョウコ・ツェッペリン さんだったよね」

 「そうよ。私のママのお墓。勿論遺体はここには埋まってないけど‥‥
  今は弐号機の部品の一部が埋めてあるって。」

 「嫌な事思い出しちゃった?」

 「ううん、来てよかったし、シンジは何にも悪くないわよ。
  私ね、昔のこともあの時のことも、今はすごく大事に思えるから」
 「アスカ‥‥」

 「ママがいなければ、私はシンジと会うことができなかったのよ。
  それに‥‥ママの気持ちを考えたらね。
  私を不幸にしたかったとはとても思えないから。
  今シンジと一緒にいられるのも、よく考えたらママのお陰なんだから」

 「アスカは‥‥きっといいママになれるよ、そんな気がする」
 「ありがとう。じゃ、お祈りね。シンジもお願い。」

 「うん。じゃ、花を置いて、と。」


 (ママ、私、この人と結婚しました。必ず幸せになれると思います。
  ママの分まで、幸せになります。ありがとう。私をこの世に産んでくれて)

 (僕は‥‥あなたのお子さんをもらいます。幸せにします。
  僕にもアスカにも迷いはありません。二人で、誰よりも幸福になるつもりです)


 「ねぇ、アスカ。ヘッドセット、本当にここにおいてくの?」

 「前から決めてたのよ。このヘッドセット、子供っぽくてもう似合わないし、
  いつまでも持ってても、ね。
  私にはあなたが‥それに沢山の友達もいるんだし。
  だから‥‥ママに返してあげるの。」

 「そっか‥‥形見として持っていてもいいんじゃない?」

 「‥‥‥シンジはどうしたらいいと思う?」


 「もし、生まれてくる子が女の子だったら、子供につけてあげたらいいんじゃない?
  おばあちゃんの形見って事で。」

 「うん!そうする。」
 「そのほうが、アスカの母さんも喜ぶよ、うん。」


 [6/18 PM11:20]

 「バカッ!!バカバカバカッ!!」

 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい‥‥」

 ボカ

 「あれだけシャワーは一人って言ったのに!!!」
 「だっ、だから謝ってるじゃないか!!」

 「ぜんぜん反省してないじゃないっ!!」


[6/19 PM2:30]



 「今日で一生に一度の新婚旅行もおしまいか‥‥」
 「うん。楽しかったわね」

 「トラブルとかもあったけど‥かえって思い出に残りそうだね。」

 「そうだ、おみやげ、みんなの分、ちゃんと買ったかな?」
 「ええと‥‥ちょっとシンジ、リスト見てみて」

 「わかったよ。ええと‥‥あれ?ケンスケの分は買った?」
 「うん、なんとか社のスコープ、ドイツでちゃんと買ったわよ」

 「マヤさんのは‥‥包丁!?」

 「ええ。ゾーリンゲンの老舗のやつよ、あとは税関で引っかからないことを
  祈るだけね‥‥‥」

 「第二新東京で買い直すことになってもしらないよ」
 「まあ、私に任せときなさいって!!」



[6/20 AM10:00]


 「えっと‥‥‥‥」
 「免税店ならそこ右だよ、アスカ」

 「もぉ〜〜最悪‥‥」

 「アスカのせいだよ、包丁が‥」
 「なにぃっ?」

 「‥‥‥なんでもないです。」



                   to be continued





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