第2話:ある日常


1.第二新東京大学医学部付属病院第二内科医局 AM11:00


 樫村「…ああ、確認済みだ。一時間前に、例の事件のパイロットを山中にて
    二人とも保護したそうだ。現在、ヘリでこちらに向かっている。」

 稲葉『容態については?』

 樫村「一人は腹膜破損で脱腸しているらしい。意識レベルは200で
    プレショック状態だとさ。もう一人は気管内挿管で心マで
    保たせてると。」

 稲葉『大仕事っぽいな、樫村、もう少し情報が欲しいんだが。
    役人さん達、情報ケチってるんじゃないの?』

 樫村「仕方ないさ、諦めろ。現場の指示は、そちらの判断でやってくれ。
    ネルフ絡みだから慎重に頼む。もちろん、VIP待遇でな。
    救急後の内科的処置については、全てこちらに任せてくれ。」

 稲葉『第一外科との連絡については?』

 樫村「既に向こうもネルフから依頼を受けているとさ。手の早いことで。
    連携については、そっちは心配しなくていい。」

 稲葉『わかった。』

 樫村「よろしく頼む。」



2.緊急処置室 AM11:30



 稲葉「そっちの患者に輸液だ!そうだ!大きい方のパックを使え!」

 福井「あの‥こちらの男の子には‥」

 稲葉「迷っている暇があったら手を動かせ!カテコラミン、まだか!
    ぐずぐずしていると、患者が死ぬぞ!」

 福井「はい!」

 山西「男性患者、輸液、開始しました。
    イノバン10γ、ドブトレックス8γでスタートします。」

 輿野「女の子のほう、目のほうの傷は大した事は無さそうです。
    140/96,パルス78。バイタルは回復してます!」

 稲葉「検査の準備は?」

 福井「フルボディMRIと腹腔鏡以外は、今すぐにでも可能との連絡です。」

 稲葉「わかった。一山越えたほうから、順番に始めろ。」

 福井「判りました。」

 山西「女の子の方は、とりあえず安定しました。ICUに移送します」

 稲葉「ようし。二内と一外の連中には話はつけてある。先に行ってくれ。」

 山西「はい!!」

 稲葉(問題は、男の子のほう、か‥‥。)



3.ICU専用棟カンファレンスルーム PM2:40

 樫村「‥なるほど、装置の作動は順調か。
    では二人の患者の現状について、概略を。」

 萩原「惣流さんのほうは、ope後のイレウスも回復し、意識も現在はalertです。
    ショック状態からの離脱はほぼ完了しました。依然腎機能の低下が
    みられますが、コントロールの範疇です。」

 樫村「現時点におけるリスクは?」

 萩原「まだ経過が浅いので、断言は出来ません。腹部のinfectionに伴う
    発熱はまだまだひどく、CRP10.5やWBC14000と、気を抜けません。
    癒着が心配ですね。確かに改善はしてますが‥このまま抗生剤を
    点滴して、経過を診ていこうと思います。」

 樫村「ネルフのエヴァンゲリオンというものがどういうものかはしらんが‥
    そのパイロットの症状だ。予期しない病態が隠れている可能性もある。
    安定しても、油断だけはしないでくれ。」

 萩原「とりあえず、こちらの方に今後しばらくの治療方針を
    まとめておきましたが。」

 樫村「見せてくれ‥うん、これで頼む。
    次、男の子の方‥‥碇、君、だったな?」


 河田「ええ‥‥なんとか心停止のほうは回復しましたが‥。不整脈が顕著ですね。
    一応、キシロカインも併用して時間稼ぎをしていますが‥‥」

 樫村「心機能そのものは?」

 渡辺「心係数が全く駄目ですね。停止は時間の問題でしょう。
    補助人工心臓を現在、主治医の河田先生が用意しています。」

 樫村「他に、特に留意すべき点は?」

 渡辺「腎臓は、両側共にもう使いものになりません。ガタガタですよ。
    多かれ少なかれ他の臓器も痛んでいます。肝機能の低下もひどく、
    現状維持で精一杯というのが正直な所です。」

 樫村「率直に言って、君はどう思う?」

 渡辺「心と腎の緊急同時移植を。河田先生も同意見だそうです。」

 樫村「そうか‥‥そうだろうな。」

 渡辺「他の方法では難しいと思います。全身状態が落ちつき次第、
    やってみます。」

 樫村「わかった。では、二人ともご苦労だった。これからも、よろしく頼む。」
   (確かに、あの患者を救うには、それしかあるまい‥‥だが、
    心臓のドナーは簡単に見つかるものではない。どうする?)




4.第二内科 医師宿直室 PM10:24


 河田「はい‥こちら第二内科宿直室です。」

 冬月「あの、ネルフの冬月という者ですが‥」

 河田「ああ、お話は伺っております。私は河田と申します。
    碇シンジ君の担当医のほうを、担当しております。」

 冬月「恐れ入ります。ではさっそく、容態の方を手短にお願いします」

 河田「では、早速、惣流 アスカ さんの方からですが‥‥‥」

                :
                :
                :
 冬月「となると、シンジ君の方は、そんなに悪いのか!」

 河田「はい。申し上げにくいことですが、緊急の臓器移植の必要があります。
    現在、ドナーを探している所ですが、正直、難しいです。
    先にも申し上げたとおり、人工心肺を用いてはいますが、
    長期に渡って現状を維持することは、やはり困難かと思われます。」

 冬月「そうですか‥」

 河田「申し訳ありません。非常にシビアですが、最も客観的なところでは
    こういう予後になるかと思います。」

 冬月「いや、わかりました。また明日電話させて貰います」

 河田「はい」

 冬月「では、失礼します」

 河田(ドナー、か。この短期間では、とても見つかるまい…)



                          to be continued


 【作者のつぶやき】
 この辺り、ちょっと外の視点から書いています。このsave your lifeでは、
 こういう場所が他にもあります。はっきり言って、気に入ってませんが、
 治す暇が無かったんです。(^^;;;ごめんなさい!ま、まあオマケディスクと
 いう事で。(^^;;何かの間違いでこの物語の個人本を出す時には、ちょっと
 スタイル変えようかな‥‥‥。(爆)


 2004年筆者注:痛いですねぇ、このつぶやき書き込み。痛すぎます。止めて欲しい。
 でも、昔の記録なので敢えて残します。また、この対話形式挿入部を外すと
 ただでさえ薄味のこのSSがさらに薄味になるので、仕方なく削除せずに残しました。



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