【無名墓地】


  かつて、痛い痛い、それは痛いオタクが一人いたそうな。

  オタク仲間に認められることだけが、彼の小さな慰安だった。

  ああ、痛い痛い。

  なんと痛い、そして汚く醜い海鼠のようなオタクだろうか!

  彼は深くて狭いオタク海の底で、不平を言いながら暮らしていた。

  その、だらしなくも没個性的な生は、いつまでも続くかのように思われた。


  だが、ある日、殆ど突然に彼は死んでしまった。

  ある日聖書を読んでいた時、天使がお迎えにいらしたからだ。

  テンシキタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!アーカイブへ飛ぶ

  喜んだのもつかの間、天使はオタク海鼠を撲殺した。

  死体を踏みにじり、近所の魚の餌にしてしまわれた。

  だが、そこはさすがの天使様。

  魂だけは喰われないように抱きかかえておられた。

  天使の御元に抱かれて、オタク海鼠の魂はその広さと

  深さ、そして世界に対する認識の違いに唖然とした。

  ボクハウミノソコシカシラナカッタクズナマコダ

  海鼠は天使に請い願う。

  オタク海の海底以外の世界を、海鼠以外の世界もオレに
  みせてください、水の上にある世界を歩かせてください、と。

  天使は優しく微笑むと、海鼠を違う生き物へと転生させた。

  こうして、あのオタク海鼠は完全に死に、異なる生き物が誕生した。

  今、彼の魂は、この世界のどこかで、もう少し程度のいい生き物に

  転生して、もう少し程度のいい生を生きているといわれている。

  尤も、それがどんな生なのかは全く定かではない。

  あのオタク海鼠そっくりの海鼠が海底で寝そべっているのを見た

  という噂もあれば、今では生まれ変わって翡翠となり、大空から

  自由奔放に狩りを続けているという伝説もある。


  いずれが本当かは定かではないが、ただ一つだけ確かなことがある。

  それは、あのオタクは死んだということだ。

  もう、彼は決して戻っては来ない。

  あの日天使様に撲殺された時、彼は一度死んだのだから。

  転生の後に何になったのかはともかく、あの彼はいないのだ。



  このつまらないファイルは、そんな一人の悲しいオタクの死を

  弔った小さな墓である。

  もやは誰にも顧みられることも思い出されることもない、

  哀れな海鼠の為の慰霊碑である。もし知人である私が

  供養しなかったら、おそらく誰も供養してくれないだろうから、

  せめてネット墓地だけでもと思い、こうして慰霊碑を作ったのだ。


  もし、この小さな墓地をたまたま発見したあなたが、彼の

  海鼠の在りし日を知っているなら、どうか手を合わせてやって欲しい。

  そして、その頃の海鼠の姿を、どうか思い出してやってほしい。



 →なんでこんな変な所に来たんだろう?元の屑籠に戻る

 →‥‥もう屑籠は沢山だ。トップページまで一気に戻る