【月並みな感想、温泉宿の女性コンパニオンを眺めて】2004. 06/02

  病院の温泉旅行、早春の石和温泉で見かけた、
 コンパニオンのお姉ちゃん達に関しての回想。

 きれいだね。
 まあまあ、出来立てみたいだね。
 露店に並んだ金時計みたく、やけにピカピカしてるね。
 でも二十年後も、まだピカピカしてるかな?
 ちゃんと時計の針は動いてるかな?

  男性性欲というやつは何かと面倒で、しばしば精神的価値も
 文化的価値も金銭的価値も健康的価値も低い異性に対してまで
 性的興奮を惹起する。醒めた目で、そういう自らの情動を眺め
 やると、なんとも不必要で邪魔な脳の機能だと思わずにはいられない。
 少なくとも、現代を生きるには過剰な性的興奮だ。
 今後の付き合いも展望も望めず、しかも会話も貧困な女性達。
 セックスでもやらかして、一過性の快楽をむさぼることすら叶わない、
 ただ若くて肌が衰えていない以外には取り柄のないつまらない女達と
 会話をする。下水に沸いた泡のような会話に、時間と資金を浪費する
 という行動は、私にはかなりしんどいものがある。※1

  こう考えると、わざわざお金を払って、若いだけで他に取り柄の無い
 女性達に会話の相手をしてもらうという行動は、大人のやる事としては
 非合理で、非適応的で、非経済的だと思うわけである。
 この事を思いついた時の私は確かに酒に酔っていたが、それでさえ
 こんな事を考えつくのだから、素面の時だったら尚更だったろう。
 祭りの露店で、ハズレしか無いくじを引いて喜ぶ子供の幼稚さや
 拙劣さと、どこが違うというのだ?子供じゃないんだぞ!?
 彼女たちは、見た目が少々若くてピカついていることを除けば、
 コミュニケーションの対象としても性欲の対象としても『はずれくじ』
 である。(いや、私などにとっては、ピカついているのも厭で仕方ないが)
  会話がしたいなら、質の高いコミュニケーションに特化したサービスを
 提供する場所に行けばいい。性欲を満たしたいなら、性欲の解消に
 特化したサービスを提供する場所に行けばいい。
  どちらも一度に手に入れたいと思う贅沢者は(多分そういう人は
 妻や恋人だけでは足りないというわけなのだろうから)、浮気なり不倫なり
 をして、自らの人生をチップにして豪奢な愛人を得るのがいい。
 一定確率で、人生メルトダウンのリスクを抱えることにはなるけれど。

  とはいえ、これらはどれも費用対効果の面を考えると、あまり合理的・
 効率的な選択とは言い難い。ステディがいるなら尚更だ。いないとしても、
 それらは一過性に男性性欲の緊張をほぐす以上の効果をもたらさず、
 すぐに消えるうえに空しさを伴うリラクゼーションを発生させるに過ぎない。
  さらに言えば、このコンパニオン達との泡のようなお喋りというやつは、
 男性当人に文化的・精神的な経験をプラスさせる事が少なく、文字通り
 ただのリラクゼーションの効果だけときている。他の多くの娯楽や趣味に
 比べると、得るところが少なすぎる。自慰と比較しても費用対効果は悪く、
 そのくせ他風俗などと比べると性欲の緊張を解消する効果も悪い。
  男性性欲があまりコントロール出来ない人にも、勧めがたい。
 そして、可能ならば、男性性欲を一定のコントロールの範囲内に
 制御することによって、金銭的・時間的浪費や、人間関係に与えるリスクを
 回避することが一層適応促進的だと思われる。
 もちろん男性性欲を完膚無きまでに制御・抑圧するのは無理なので、
 何らかの対策が必要なのは認めるが、それがハイコストであることは
 自覚しておいたほうがいいのではないだろうか?

  ちなみに私はもう、性欲という名のサキュバス※2を相手にする事に
 疲れ果てている。こんなバケモノを相手に葛藤するのはうんざりで、
 振り回されるのはもう御免こうむりたいものだ。
 しかしこの暴れ馬は、制御したと思ってもまたぞろ出てきて、
 くだらない事に様々なコストを支払わせようとする。
 しかも恋愛、生殖、結婚、異性とのコミュニケーションなどといった
 重要なファクターを促進するうえで、サキュバス様の貢献は実は
 大きいわけで、もし彼女(=性欲)が無ければ、きっと恋愛から大切な
 1ピースが抜け落ちてしまうだろうし、子供を持つ事もできない。
 とはいえ、適切なサキュバスのコントロールは、やはり私には
 大きな課題だ。既に一度サキュバスのコントロールに失敗して、
 取り返しのつかない代償を支払った身としては、彼女に服従する
 ではなく、彼女を服従させなければならないという想いが強い。
 彼女(性欲)というバケモノに隷属することは、雄としてはもちろん
 自然なことだとは思う。しかし、一人の分別ある成人男性
 (を目指したい者)しては、不自然で不適切ではないだろうか?
 他のみんなは、どう考えているんだろう?

  性欲という名の夢魔に隷属するのは容易く、時に心地よい。
 しかし、それは何らかのコストと引き替えの選択になることを、
 なぜか多くの人は忘れている。
  一方、性欲という名の夢魔を隷属させることは難しく、時に
 息苦しいうえに雄として不自然だ。その代わり、夢魔によって
 もたらされる、様々なコストや受難を回避しやすくはなる
  実際は、性欲にどこまで隷属してどこまで隷属させるかは、
 人それぞれの判断や性分に依存した程度問題だとは思うが、
 少なくとも完全に性欲の奴隷になった場合は、昔話に出てくる
 サキュバスに取り憑かれた男性よろしく、破滅だけが待っている
 だろう。温泉街のコンパニオン程度の女性を見るたびに
 いちいちサキュバスの言いなりになっているようでは、命と金と
 心証が幾らあっても足りない。逆に、全く性欲が無い状態と
 いうのも、今度は別のことで困り始めるから厄介だ。

  性欲というやつは、他の諸々の欲と同様、とかく付き合いづらい。
 しかも、他の欲と同様、たぶん死ぬまで付き合っていかなければ
 ならず、避けて通るのはほぼ不可能な、人生の友(たぶん悪友)だ。
 このバケモノとの付き合い方次第で、リスクも利益も、損失も利得も
 大いに変わってくるはずだ
 少なくとも、温泉街の安っぽいコンパニオン嬢達との一過性で
 深みのないお喋りにお金を投げやるような確率はえらく減る事だろう。
 だが、彼女たちのようなメッキ女達が商品として成り立っているという
 事は、いかに性欲コントロール不良の男性が多いかを証明している。

 世の中に たえて女の なかりせば 男の心 のどけからまし
                             (蜀山百首より)

  全くもってその通りだ。
 今も昔も、男達は雄としての本能に苦しみ、振り回され、そしてしばしば
 失敗したり浪費したりしている。しかも、こういった性欲コントロールの
 難しさを前提としたビジネスや騙しや女性側の戦略が存在し、男達を
 陥穽へと誘う。時には、いい歳したおっさんやおじいさん達をも見苦しい
 醜聞に巻き込み、そして人生を破滅させる事もある。
 どうして世の男達は、こんな恐るべき相手に対して無警戒なのだろう?
 どうして世の男達は、この恐るべきサキュバスを甘やかすのだろう?
 かわいい顔をしているからだろうか?
 女のいい匂いを発しているからだろうか?
  私達は、狡猾な他人と同じかそれ以上に恐るべきバケモノを、自分の
 脳の中に飼っている。その事をもっと恐れても、いいのではないだろうか。
 特に、そこそこの歳になった男がサキュバスに振り回されるのは、
 非常に見苦しい(もちろん見苦しくても生のまんまがいいという意見も
 尊重されて然るべきだ。見苦しさの中に価値を見いだす視点もある)。
 二十代の前半ぐらいならいざ知らず、ある程度の年齢になってきた
 男性は、このバケモノとの付き合い方について真剣に悩んだり困ったり
 葛藤したりしてもいいのではないだろうか?

  そして私個人は、出来うることならば、性欲をあるレベルに
 コントロールし、無駄な出費やリスクを回避したいと思っている。
 性欲コントロールが上手くいけば、生活の安定や心の安寧に大きな
 メリットがあるように思える=私自身の社会適応を向上させる ように
 思えるのだ。極めて難しい課題だ。だが、一度このコントロールに
 失敗して破滅した身としては、何としてもコントロールしたいものだ。





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 【※1かなりしんどいものがある。】
  しかし、我ながら嫌悪感と軽蔑を露骨にした文章だなぁと思う。
 だがしかし、こう思ったんだから思った通りに書くのが妥当だろう。
 このテキストは、例えばnerd studyなどと違って書きたいように、
 感じたままに書いている。だから、こういう文面になるわけだ。

  ちなみにもし彼女たちがもっと話術やウィットに優れ、智慧深く、
 それでいて若くて美しくてセックスもできるなら、温泉街なんぞで
 コンパニオンをやってはいないのだろう。もっと違った仕事なり、
 違った立場なりで、よりベネフィットの高い環境で高水準の
 仕事なり生活なりを達成しているに違いない。
 地方の温泉街のコンパニオンなどという、社会的ヒエラルキー
 (平等を謳っている我が国でも、これは厳然として存在する)の
 下層に彼女達が位置しているのは、それなりの理由があっての
 事なのだろう、氏か育ちかはともかくとして。

  ‥‥やっぱり、彼女たちにお金を払ってお話しようって
 気持ちには、なれないなぁ。



 【※2サキュバス】
  うちのサイトを覗くような人なら知っていそうな気がするが、
 一応説明を書いておく。サキュバスは夢魔とも言われ、男性の
 夢の中に出てきてエロい夢を見せて精気を吸い取っていく
 言われている悪魔の名称だ。
 ちなみにサキュバスはエロエロしい女性の姿で男性の夢に
 出てくるが、女性の夢に出てくるバージョンはインキュバスと
 呼ぶ。やっぱり、エロい夢を見せる夢魔である。

  でも、うちのサイトを巡回するような物好きさんの大多数は、
 サキュバスぐらい知っていそうな気がしてならない。