暗黒童話

乙一/集英社文庫(2004.6.4)

人も羨む綺麗で頭が良くて性格も良い女子高生が ふとした事故で左目を失う。そして物語が始まる。

自分のことを思い出さない、過去の暮らしを思い出すさない、 自慢とは遠くなった娘を受け入れられない母親。 育ちきっていない。
誰が辛いか、誰が傷ついたか、なんて考えることもない。 自慢の娘を失った自分、が一番可哀相だと思ってる。 現実にもたくさん存在する資格試験に落ちる親だ。


銀杏坂

松尾由美/光文社(2004.5.28)

その人が居ないことが淋しいくて悲しくて耐えられない、 という気持ちを多少の自己嫌悪と一緒に封じ込めたまま生き続けると、 見えないものが見えるようになるのだろうか。

気持ちが漏れないように自分の周りに張り巡らせた壁を 少しだけ壊して風を通してみるべきなのだろうか。
結果が必ず良いなんて保証はどこにもないのに?


ラッシュライフ

伊坂幸太郎/新潮社(2004.5.21)

自殺が家伝の病気である青年。
ちょうど大学入学式の日に父親がマンションから飛んだ。 そりゃ神様に救って欲しくなるってものだ。
<自分にだけ迎えの船が来なかったような 見捨てられた気持ち>になるのももっともだ。

そして彼は「どうしてですか?僕が画家を志さなかったからですか? どこからやり直せば良いのですか?」と問う。
答えてくれる人がいたならば、わたしはその人を神だと思うのだろうか。


アウト・オブ・サイト

エルモア・レナード/角川文庫(2004.5.20)

やっばレナード×高見さんは素敵だ。 何度でも言う。素敵なんだよ、二人とも。

で、だ。ジャック・フォーリーだよ。
確か、何もかもお見通しな筈なのにどうしてスヌーピーと組むかな。 本人が言っていたように自分の人生にケリをつけるためかな。

キャレンはきっともう一度フォーりーと逢うと思う。きっと。


カリフォルニアの炎

ドン・ウィンズロウ/角川文庫(2004.5.3)

ああ、やっぱり訳は東江さんに限るのです。 他の人ではダメです。今後とも東江さんでヨロシクです。

誰も彼もが金のある方へなびいていく世の中を見るにつけ 現実から遠く離れて別の宇宙で暮らしたいと思う。
静かにゆったりと陽の光浴びて、ね。


悲鳴

東直己/角川春樹事務所(2004.4.24)

例によって舞台はススキノあたりなのだが、 北海道全体を大いに揺るがした道警のスキャンダルを受けてか、 かなりブラックだ。

キャラでは「高橋さん」が秀逸。とても正直な人で、 あまりに正直なために人並以上の苦しみを引き受けている。

きっと本当の悲しみは、この物語を「物語」として受け入れる というよりは「現実の一部」として読み取ってしまうことなのかも。
少し運が悪いと被害者になってしまう、と思えてしまうところとか。

いったい誰の利益のためにわたし達は利用されているんだろう。


残虐記

桐野夏生/新潮社(2004.4.11)

大人は嘘つきだから、信じちゃだめだよ。 読み終わっても何が本当かわかりゃしないのさ。
え?わたしのあたまが悪いだけ?うそ〜ん?


さよならの代わりに

貫井徳郎/幻冬舎(2004.4.10)

誰かを信じる、というとても難しいことを いともやすやすとやってみせる和希にシットするわたし。
誰ともわかりあえない悩みと孤独を抱えていた祐里に、 たった一人の理解者が現れる。
だから命を投げ出す?差し出す?捨てる?ことが出来るのか。 理由が何かって、簡単に愛とか言いたくない。

ダメ出しとしては、帯に流行りの女優の言葉を使ったこと。 なに狙い?やめてよぉ。


アヒルと鴨のコインロッカー

伊坂幸太郎/東京創元社(2004.4.9)

まずはタイトル。初見で <タイトル買い>しちゃう魅力的なもの。

わっくわくするタイトルから想像もしなかった展開だった。
読み継いで来たファンとしては、読後のテイストが新鮮だった。 とてもリアルな着地点だったったので。
ということは、物語というのはリアルに近づくほど 悲劇なんだ。わたしたちはこんな悲劇を生き抜いてるんだ。 ブラボー、みんな。

とにかく大丈夫なんだよね?ドルジ?
と、しっかり確認しておきたい。彼らのために。


幻夜

東野圭吾/集英社(2004.4.6)

つらい。読みかけで1ヶ月くらい休憩取っちゃうくらい、つらい。

「本当の私はこんなんじゃないの」系のお嬢さん達、お読みなさい。 ここまで捨てて、欲しいモノだけに的を絞りなさい。やったんさい。
何事にも<執着>と呼べる程の感情や欲望を抱かないわたしには とっても疲れる人々だった。

命がけって言葉はあるけど、ホントにかけちゃねぇ。


青い虚空

ジェフリー・ディーバー/文春文庫(2004.3.22)

「インターネット依存症」なる病が話題になったことがあった。 いつだって誰もが何かに依存して、息も絶え絶えに生き延びている。

かく言うわたしも、一時期きっと依存していた。
テレホタイム(懐)に接続できない環境にいると非常に不安になった。 その昔、学校を一日でもお休みすると机がなくなっちゃうんじゃないか? という不安を抱いたことはきっとあるだろう。そんな恐怖。

席がなくなっちゃう、居場所がなくなっちゃう、という焦燥感。 いろいろ苦しんだものだなぁ・・・って・・・ 小説と関係ないじゃん!


使者を侮るなかれ

ボストン・テラン/文春文庫(2004.3.17)

母親と娘が命がけで戦う。なんて恐ろしい景色だろう。 歪んだ愛情のリング。
ディーの母親から始まったのか、もっとずっと前からか。 とにかくディーは男も娘も愛せないでいる。いわゆる「普通に」は。
執着に形を変えて愛情らしきものはあっても、元が同じとは思えないほどの 変形ぶりだ。

自分の両親に愛されず、愛せなかったがために 彼らの死を背負い苦しみ続けるランドシャーク。

一度殺されて、自ら墓から這い出してきた男が そんな周囲の壊れそうな人間たちを救い出すのだ。
なんて強くて悲しいのだろう。


深紅

野沢尚/講談社文庫(2004.2.28)

とにかく始まりから急激に襲う激痛に読むのをやめてしまいたくなった。 ものすごく久しぶりに。

12歳の女の子はもう大人と同じなのだ。ほぼ形成済みだとわたしも思う。
そして泰子はその時からずっと突出して鋭敏であったのだ。

犯罪被害者の家族に対する余りに非道な法律や制度。 そのおかげで彼らは悲しみの他に様々な雑音と戦うことを 余儀なくされる。ちっとも悪くなんて無いのに。

加害者の家族だっている。その親ならば乗り切れても子供は無理だろう。

どとらも想像なんかでモノを言うのが憚られるくらい傷だらけなんだよな。 この国のわたしの知らない<世間>で、 どれくらいの人が苦しんでいるのだろう。

それは「血」の問題なのだろうか。
ただ、加害者の家族が血を絶やしたいと願うのは本当だ。


神は銃弾

ボストン・テラン/文春文庫(2004.2.25)

囚われた少女、ギャビを救い出すため・・・
父親のボブは何もかも捨てる。ほとんど命さえも。
祖父であるアーサーは何も捨てない。 アーサーの落ち度で死んだ方がよっぽどマシな目に遭う孫娘のために 何も捨てないのだ。娘の命は既に同じ理由で失ったというのに。
このコントラストが良かった。家族一丸となって彼女を救うのかと 思いきや、愛情の行き着くとこは違う。 ひたすら捧げる愛と、とてつもない自己愛。

親になったからといって誰もが本当に子供を愛したり守ったり するわけでない、とはっきり突きつけられる。


天国の銃弾

ピート・ハミル/創元推理文庫(2004.2.12)

IRAが良いのか悪いのかなんて、わたしには決して判断できない。

突然、それはきっと食事中だったり、家族でテレビを見たりしている ユルイ時間に見知らぬ他人がやってきて父や母を殺す。 子供の目の前で。
その子たちが成長し、父や母を殺した見知らぬ他人を殺す。 もしかしたら彼らの子供の目の前で。

終わる訳がない。どこかで断ち切らなければならないが、 どこで?どうやって?ジャンケンで負けた人が我慢するとか?

これだけのテーマを重いままに苦しくない程度に、しかも 説明しすぎないレベルの小説として成立させているのは凄い。
ものすっごく強いジャーナリストが主人公だが、子供と同居する勇気がない らしい。そんな意気地なしなことろがご愛敬でさらに良い。


陽気なギャングが地球を回す

伊坂幸太郎/祥伝社ノベルズ(2004.2.4)

ドートマンダーシリーズの日本版、で決まり。
ただし、お得意の「ドジ」は無しだけど。

人間嘘発見器の成瀬は、嘘だけでなく未来も見抜ける、きっと。 響野が言うように、世界の解説書を読んでしまってるんだ。

とにかく会話が面白い。
どうもわたしは「いい大人がくだらない会話を嬉々としてしている」 という状況がものすごく好みらしい。
たぶん自分もそんな風にくだらなさ満載で過ごしたいのだろうな。


スパイク

松尾由美/光文社(2004.2.2)

世界で一番愛らしい自分の飼い犬が、ある日突然、 見事にかわいげのない言葉を吐き出す。
可愛いこと言ったらぜんぜんつまんないのだが、さすが。

パラレルなもう一つの世界にいるもう一人の自分。 出会いたいのかどうか・・・お断り、かな。 だってムカツク奴に決まってるし、どうせあたしだし。


勇気の木

ダイアン・チェンバン/文春文庫(2004.1.27)

ソフィという病気を抱えた小さな女の子が主人公の物語。
彼女の知恵と勇気とに大人たちがようやく本当の意味での 大人になるのだ。大人なんて大したことないよね。


重力ピエロ

伊坂幸太郎/新潮社(2004.1.17)

春はときどき2階から落ちるものらしい。
その手には忘れずにジョーダンバットを持って。

自らの存在を賭けた怒りの昇華が果たして可能なのかどうか。
とても愛している弟が、息子が、存在していること自体に罪は あろうはずもない。たとえ存在していることで悪夢を呼び起こすとしても。
「親」とはきっとこういう生き物であって欲しい、と切に願う。


田舎の事件

倉坂鬼一郎/幻冬舎文庫(2004.1.4)

「夢は必ず叶う」
嫌いな言葉だ。んなわけないでしょう。

そんな夢見がちな言葉を真に受けてしまった人たちが とっぷり登場する。資質と努力と他の何かがないと 夢というものは叶わないこと、誰か教えてあげないと。
田舎特有の濃厚な空気の中、狂気が薄まることなく煮詰まっていく。



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