自殺されちゃった僕

吉永嘉明/飛鳥新社(2004.12.25)

友人であるねこぢる、同僚であり良き先輩であった青山正明、 最愛の妻である巽早紀、の3人をたった5年の間に次々と 自殺で失った著者。
その苦しみの軌跡を全て吐き出した手記となっている。

もっと苦しくていたたまれない気持ちになることを覚悟していたが、 すこしフィクションの感じがしてしまう。
著者が未だ現実感を取り戻せないまま綴ったからなのだろうか。

世代としては彼ら全てと同世代であるわたしだが、いわゆる 「サブカルチャー」な経験はしていない。言葉すら知らなかった。
知っていたらどうなっていたのだろう、と怖くもある。

ねこぢるのマンガから直接伝わってくる彼女の儚さは、本当は <生きることにすでに興味がない>という事だったのか。

そして著者とその妻の激しい共依存の関係にも驚く。 どちらかが潰れてしまうまで依存が強まっている感じがした。
妻が先に折れてしまったから彼は助かったのではないか、とすら思えた。


永遠の10分遅刻

松尾スズキ/ロッキングオン(2004.12.21)

本人によると、過去10年間にあっちこっちに書いたものを 寄せて集めたものだそうだ。発行は2001年。
全くわたしが彼を知らない時期に、これまた読むはずのない 雑誌に書いているものたち。会えて良かったよ。

取り上げる映画も「バタフライ・キス」「世界中がアイラブユー」 「無敵のハンディキャップ」「スポーン」とお気に入り続き。 離れていてもわたしたちの愛は永遠ね、などと勘違いを受け取りそうだ。 テレビ画面からわたしに合図した、とかも言いそう。

そして、最後に収録された脚本。「祈りきれない夜の歌」
これ。この世界観がみんなが覚えている松尾節なのだろう。 こんな風なモノを書け、と期待しているのだろうか?
わたしはこの時代の芝居をライブで観られなかったので是非とも観たいが、 もう観た人たちは次の段階に進んでいい、と松尾ちゃんを解放してあげても いいと思うよ。うん。

そしてその感想。
なるほど生きている事に意味など無い。ただ、意味など無いと解った上で <どれだけ楽しがれるか、もちろん両手放しで>って事だよね。


魔王

伊坂幸太郎/エソラ#講談社ムック(2004.12.19)

小説誌はあまり買わないようにしている。なぜならせっかく読んでも 取り置くのが嵩とりなのと、連載にハマると身動き取れないから。 だって忘れちゃうんだもの一月も前の事なんて。しくしく。

そんなわたしでも、伊坂幸太郎の新作一挙掲載!なんて言葉には弱い。 アントニオバンデラスとベニチオデルトロがダブルで来ちゃったくら弱い。 ごめん、わかりにくい例えで。

今回の伊坂作品には「軽快・ポップ」なんて言葉は似合わない。 いつも登場人物の誰かがほんの数行だけ語る政治や未来の事を中心に据えている。
もしかしたら未来をレシピで判断する優午は伊坂本人なのかも知れない、 と思ってしまう。

未来を変えたいなら、本気でそう思っているなら、今だ。今しかないぜ。 そう彼は言っているのだろうか。

空恐ろしくて数えたくないが、<いま>思考停止型の人間はどれくらい居るんだろう。 誰かが決めてくれることに従いたい、と願うのは思考停止の証拠だ。 行き着く先がどこになろうと他人のせいに出来て楽だもの。
後になって「えぇ〜っ!こんなとこに来たかったんじゃないのにぃ〜」と 言ってみたところで、決して元には戻れないんだ。

少しは自分で考えろ、マクガイバー。


さまよう刃

東野圭吾/朝日新聞社(2004.12.14)

「デッドマンウォーキング」の感想を何年も前に書いた。 万が一覚えている人がいたら、先に謝っておく。感想としてはきっと同じ、だ。
ヒトというのは変わり易くて変わり難いものだと思った。

罪と罰がアンバランスで、いろいろ飲み込み難い現代を生きているわたしたち。 明日は我が身、だ。いつ自分が被害者になるか、被害者の家族になるか、遺族になるか、予想もつきやしない。真面目に生きてることが気に入らないというヤツもいる。 真面目に生きてないのが気に入らないというヤツもいる。

罪を犯したら、それがガキだろうがキチガイ(あえてこの言葉にする)だろうが かまわない。被害者もしく被害者の関係者・遺族の気が済むまで償え。

気が済むなんてこと、決してないと思うがな。

「本当はいい子なのに世間が・・・」とか言うな。そんなに<世間>てヤツが悪いなら、いまごろそこら中で殺し合いだよ。あんたも生きちゃいないよ、たぶん。

だれか明確に答えてくれ。
19歳11ヶ月だと「更正」して、20歳3日だと「更正しない」根拠を。

東野さんは小説という形で世の中をなんとかしようと動いたんだ、と思う。 いつもいつも考えてはいるが、いったい何ができるんだろう、と更に考え続ける。


リアル鬼ごっこ

山田悠介/幻冬舎文庫(2004.12.6)

もんのすごく気になっていたこの作品。
Webから遠くはなれて世間からも疎くなったわたしにも 賛否いろいろな気配が受け取れていた。バカ売れはドキドキさせる要素だ。

登場人物がステレオタイプ、王様の言葉遣いなんて何時代っすか?だ。 ひとつひとつのエピソードに感情が乗っていない。薄い。
ただ、考えてみた。万が一こんな鬼ごっこが始まったら?  自分が参加しないと仮定しよう。
現実感を抱けないままぼんやりとしている内に 何もかも終わってしまいそうじゃないか。

人の内面を描くことを求められるのが常だが、実際のところ、 ヒトはそんなにモノを考えているのだろうか。 いつもいつも様々な感情が渦巻いていたとしたら疲れて生き残れないよなぁ。
そんなところがかえって<リアル>なのかも、と思うのだった。


古傷

東直己/光文社文庫(2004.12.2)

おかえり、法間(のりま、もしくはホウカン)さん。 相変わらずのヨイショぶり、素敵だよ。
出会った人、なんならすれ違っただけの人だって、 全て誉めまくる。その腕でちょっと誉めてみて欲しい。 わたしのどこに誉めちぎりポイントがあるのか見当もつかないのでね。

どれ程の地位や名誉を持っていたとしても、人には等しく時が流れ、 細胞は死に続ける。生まれた瞬間から死に向かってカウントダウン してるんだしね。
楽しく過ごそう。できるだけたくさん愛しい人と、と思うのだ。


依存症の女たち

衿野未矢/講談社文庫(2004.11.28)

いろいろなものに依存する女たちが登場するが、何だろう。
「それは大変だったね、ゆっくり治そうね」的な気持ちにはなれない。 もともと客観性などを持ち合わせていない大人に育てられ、 自分自分と言い続け、各々の<自分>がぶつかると 完全勝利を収めたがり、叶わないと何かに依存する。

なんかこう程々というか身の程というか、そういったモノを 身に纏って生きたいもんだ。
それでなくても面倒な自我を抱えて右往左往しているのだから 出来るだけスマートでストイックでクールでありたい。


偶然の音楽

ポール・オースター/新潮社(2004.11.22)

静かにゆるやかに壊れてゆく人。
いくら考えてもきっと誰にもわからないターニングポイントは 目立たずひっそりとあったのだろう。
今のところなんとかコチラ側にとどまっているわたしだが、 とどまるためのポイントを知らずに越えて来たんだろうと思う。
見たこともない大金が手に入り、それを浪費するうちに 自らの内面からも様々ものが浪費されていく。

そして唐突に終わりがやってくる。 あぁ、こんな風でいいんだよな、と受け入れてしまう。


グラスホッパー

伊坂幸太郎/角川書店(2004.11.12)

鈴木、という余りにも没個性な苗字を持つ あからさまに普通な男を巡る騒動。

彼の妻が2年前にバカに轢き殺されるところから、 この騒動は始まったんだ。
2年間を復讐の準備に費やし、さぁって時に目の前で 先を越されるってどうよ?飲み込めないだろう。
あげくに事故だったりしたらもうダメ。 せめて殺されてて欲しいと祈るのが人情というものだろう。 だから彼は押し屋を追ったんだろう。
「やってくれたのか?」と確かめるために。

飛びバッタは本当にそういう理由で出現するのだろう。 とすると、ぎゅうぎゅう詰めで生きるのは良くないんだ。
本来動物は自分が個体として生き残り、さらに子孫を残すよう 刷り込まれている。だからきっと他の個体には優しくないんだよ。
ヒトだけ特別っていうのは思い上がりか。


読んだはしからすぐ腐る

松尾スズキ×河合克夫/実業の日本社(2004.10.22)

概ね何の役にもたたないエッセイ。
その中でいっこ怖い。すっごく怖い。

「交通事故にあって脳をちょっと持っていかれた人」のことだ。 ちょっと持っていかれても生きて歩いて電話しようとしてるのが 怖いし、その後どうなったのか全く追いかけてないのも怖い。 実話だし。うっかり見かける事じゃないよ、それ。


幸福な遊戯

角田光代/角川文庫(2004.10.10)

デビュー作がこれですか。すごすぎ。

彼女は常に生物学上の家族とは何らかの理由で決別しても、 他人同士が一つの家に住み努力して家族になる物語を綴る。 <血>の意味を問い続ける。

わたしとしてはどこかに答えがないか、と読み続ける。


屁タレどもよ!

中村うさぎ/文春文庫(2004.9.26)

ナンシー様亡き後を中村うさぎにまかせていいのか、 が気になる一冊。

答えはまだ出ない。納得していいのかなぁ、と。
確実におもしろい。本人が明言しているように 「他人の悪口」は楽しいのだ。
しかしもうひと味、ちみぃ〜っと付けて欲しいのだがいかんせん。 何味が足りないのか決められないわたしだ。ダメじゃん。


死の仕立屋

ブリジット・オベール/ハヤカワ文庫(2004.9.17)

んあぁ、さすがオベール。
作者オッケーが出るまでどっちかわからないんだ。 絶対「どっちか」なのにさぁ。


宗教が逝く

松尾スズキ/マガジンハウス(2004.9.2)

はちゃめちゃのドタバタ喜劇の様相を呈していながら痛い。
松尾スズキの描き出す人物に宿る抗いきれない負の方向性。 うっかり共感すると凶暴なまでの磁力で引き込まれる。
アチラ側への境界線を軽々と越えそうになる恐怖と戦う。

様々な登場人物がカラフルな思いを抱きつつ各々の望みを成就したり 断ち切られたり、と何ともかまびすしい。

が、最期にはシンと静まり返る。
「愛」なんて気恥ずかしい命題と差しで置き去りにされる。


言葉はいつも思いに足りない〜ドン☆キホーテのピアス9

鴻上尚史/扶桑社(2004.8.6)

もうタイトルだけで脱帽よ。
そうなの、いつもそうなの。言葉だけでは足りないの。
だいたい思いを正しく言葉にできる人なんているの?ってこと。 いやぁ、すっきり。そうよねそうよね、だ。

最近出会った人と話すと幸福感に包まれる。 言葉を選び直す必要がないから、だ。 常に、伝えたいと思うことに少し足りない言葉を探り出した後に、 更にその人の理解するであろう言葉に置き換えていたわたし。 特別言語能力が優れている訳でもないのに。
そんな悲しくも虚しい努力から解放された幸せを噛みしめている。 が、気をつけろわたし。反対に相方が努力しているやも?だぞ。


黒十字の騎士

ジェイムス・パタースン/ヴィレッジブックス(2004.7.23)

歴史物が特別苦手なわたしをすら、がっちりつかんで離さない。 すごいすごい。
歴史アドベンチャー、なのかなぁ。はらはらどきどき。


家族狩り(第1部〜第5部)

天童荒太/新潮文庫(2004.7.11)

痛くて痛くて辛くて苦しくて・・・何度も投げ出したくなる。 感情を閉ざしたくなる。心が悲鳴をあげる。 これ以上知りたくない、と思ってしまう。

しかし相変わらず理由や境界を探しているわたしは、 もっと知らなきゃと思っている。
なぜ探しているのかも解らないし、結果誰かを救えるだなんて思わない。
誰かのために・・・なんて思考自体がおぞましくも利己的なのだろう。

それでも何か出来ることは無いか探してしまう。 そう、せめて自分の心の平静のために。



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