エピソード13
 「青大将」


若い頃、栄や名駅(名古屋駅)のあたりを暇にまかせてよく徘徊した。特に栄にある中日ビルにはよく行った。
そこには様々な趣味の教室が開かれている中日文化センターがありその待ち合いのロビーには教室の生徒たちのために座り心地の良いソフアーが用意されていた。私たちは生徒でもないのによくそこへ行き時間をつぶした記憶がある。それに中日ビルの中にはめん類から和食、洋食とメニューが豊富しかも安くてボリュームたっぷりというセルフサービスの食堂があったのでよくそこで食事をした。

先日、中日ビルに行った時この店がまだ営業しているのを見つけ懐かしさのあまり30数年ぶりに食事をした。昔はよくここへ来てトンカツ定食とかカキフライ定食とか食べて満腹感を味わったものだと懐かしく思い出されてきた。そういえばこんな事もあった。

いつものように定食を平らげ食堂を出ると次の行先はトイレである。私が用を済ませて卜イレの前で待っているのだが坪井君がなかなか出てこない。きっと大きい方をしているのだろう。しばらく待っていると坪井君が出て来たが何か興奮している。
「お、おい花木!すごいのが出たぞ!4〜50センチはあるな!この世の物とは思え〜へんで後学のためにいっぺん見てみい。」とトイレの外まで呼びに来たのである。このまま流してしまってはもったいないとでも思ったのだろう。人のした大便などあまり見たくないと思ったがその反面どんなのをするのだろうという好奇心もある。「よしっ一度拝ませてもらおう!」とトイレへ戻った。「ほれ見てみい!」と坪井君の自慢げな顔。
何か怖いものを見るように恐る恐る覗き込んだが、なるほどそれは青大将のごとく見事な代物であった。加山雄三が自分の学生時代を綴った本の中で「青々とした素晴らしい大便が出てきた。」と自分の大便の事を称賛していたがきっとこれと同じ様な気持だったのだろう。私の場合はまだ人に見せたことがないが「質といい量といい今日は素晴らしいのが出たな!」と一人で感激することは時々ある。そんな日は身も軽やかになり一日中気分爽快になるものだ。
何れにしても坪井君の人を楽しませようとする心〜そして周りが楽しんでくれればそれが自分自身の喜びとなる。そんな彼の本質が今の仕事の成功に繋がっているのではないかと思う今日この項である。