エピソード15
 「幻の曲」


学生時代、愛用のギター、モズライトを弾きながら作曲のマネ事などをよくしていた。
そしてカントリー調のある曲が出来た時、坪井君に「こんな曲作ったんだけど詞をつけてくれる?」と頼んだことがある。数日後「あの曲の詞つけてくれた?」と聞いてみると「前半の部分はできたで」との返事。「どんなの?」と私が聞くと。
彼は「いいか…、」と前置きしその詞を口ずさみ始めた。
「草を枕に煙草をくゆらせ夜空を見上げれば……」そしてそれを聞いた私は「う〜ん。あんまりいいことないなあ。」と言ってしまった。あの時、私は坪井君にギャグいっぱいのおもしろおかしい詞を期待していたのでそのギャップに思わずそんな言葉が出てしまった。案の定、坪井君は「もう二度と作れへん!」とすっかり創作意欲を無くしてしまいこの曲も幻の一曲となってしまった。

しかし30数年たった今でもなぜかこの詞と曲がしっかりと私の脳裏に残っている。考えてみれば牧歌的な情緒があり曲のイメージにはピッタリの詞だったと思うし、完成させていれば青春時代の良い記念になったと後悔している。
話は変わりますがあの時のモズライトは私がベースに転向した時に坪井君に売却し、ベースギターとアンプ購入代金の一部としました。もしかしたらあの白いモズライトはまだ坪井君の手元にあるのでしようか?ちょっと気になりました。実はつい先日、エレキギターを購入したのです。
フェルナンデスの『芸達者』という少し小さ目のサイズでアンプ、スピーカー、ディストーションを内蔵した遊び心満点のおもちゃみたいなギターですがけっこう気に入って数十年ぶりにギターに熱中しています。

そんなきっかけで最近は時々楽器屋さんへ立ち寄ることが多いのですが陳列してあるギターの中からモズライトとフェンダーのストラトキャスターとギブソンのレスポールモデルの3本に絞り込み、どれにしようか?いつかは欲しいな!早く欲しいな!買ってしまおうかな!などとあれこれ空想しながら眺めては楽しんでいます。良い楽器は見ているだけでも美しく飽きることがありませんね。