時の祈り


少女はうつむいていた
賛美の言葉にも
叱責にも
下を向いたまま
瞳を動かそうとしない

少女は鏡を見た
父と 母に似ていた
少女は目を閉じ
顔を背けた

時が降る
平凡と呼ぶ雑駁が
彼女の上に降りかかる
友が 仕事が 恋が
少女を篩いにかけた

ある日 鏡の中に
昔の少女は
一人の女を見た
小皺とシミのある中年は
力強い眼差しをしていた

人の言葉によく笑い
悲しい事には涙する
気持ちそのままの
よく動く表情と
今は亡い両親を
懐かしがらせる面影

あんなに嫌いだった
自分の顔が
好きになってる不思議に
女は感動した

時は祈りに似ていた

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