松

それは緋色の大木
よく目を凝らすと
枯れた松の木

固い柿の実
たわわなナナママドも
紅には遠い
こんな季節に赤い松

たぶんその木の
何万分の一という
小さなものに因って
強引にもたらされた現実

長い時が培った大木の
その歴史の最期

松は怯えたか
松は戦ったか
その意志は
どこに放たれた?

木々の緑が色づく前
いっさいの葉を枯らして
佇む巨木の根元で
悲しむことしかできない
自分もまた
哀しい生き物か

          
戻る