僕の中の

  僕の中に鳥が棲に始めた
  人が皆 嫌う鳥だ

  僕の声で鳥が話し出すと
  ダミ声を聞くまいと
  顔を背ける
  僕の着る黒い服を
  汚れ物のように見下す
  僕の目はズルそうに動く
  僕の発言は小賢しい
  人は寄り集まって囁く

  街をたむろする
  利口な鳥は
  そんな声を聞きはしない
  嫌われてもしたたかに
  自分の縄張りを
  確立して行く
  その逞しさこそ生だ

  僕の中の鳥を
  次第に好きになっている
  人を利用し疎まれるのは
  存在感の証だと
  開き直った人生観

  僕の中の鳥が
  僕を取り込んで行く
  この頃背中がむず痒い
  ある朝目覚めた時僕は
  黒い羽と嘴を持った
  カラスに
  変わっているかも知れない

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