原の中

ざわざわざわと風動く
ススキの原の隠れ道
走り抜け行く影二つ
前と後ろに手を繋ぎ

先行く影は漆黒の
髪と瞳を持つ男
息を切らして後行くは
ススキの色の銀の髪

ざわざわざわと風揺れる
何かに足を取られたか
ふたり縺れて原の中
折り重なって倒れ込む

それほど痛いはずはない
しかし動かぬままふたり
ふと風とまるその時に
息のみ見つめ合うふたり

ここに来るまでなに捨てた
先には何が待っている
刹那を生きるためならば
未来が闇でも笑えると

黒雲低く通り過ぎ
ススキ濡らして通り雨
濡れた躯を庇うよに
強く互いを抱き寄せる

触れれば通いあう温み
無言でわかる胸の内
いつか頬から唇へ
指先が這うそろそろと

ざわざわざわとススキ原
風のせいやら違うやら
明日が晴れでも嵐でも
ただ真実があるばかり


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