秋雪

兄さん雪だよ こんな季節に
「雨降って 地 固まる」
よく スピーチにあるやつさ
なら 雪ならなんだろう
救いようがないのかな
みんなの反対に 肩身狭くしている
僕たちみたいに

雪を見るたび 思い出すことがある
兄さんと遊んだ雪合戦
雪玉作って 投げて
手袋が濡れて 手がかじかんでも
投げて投げて
泣きながら投げた 兄さん目がけて
人が言うほど「仲のいい兄弟」じゃなかった
いつも越せない三年の壁
それが悔しくて 惨めで
僕は投げた 兄さんを憎んで

兄さん 覚えてるかい
初めて義姉さんを連れてきた日のこと
僕は最初から決めてた
「義姉さんなんて 呼ぶもんか」って
だけど ふたりの間に結ばれている
目に見えない絆の強さに
僕は圧倒されて 声も出なかった

そして兄さんが逝って
僕はいろんなことを知った
どれほど僕の感じ方が兄さん似ていたか
どれほど兄さんに憧れ 道標にしてきたか
どれほど兄さんを 好きだったか・・

みんなが言うとおり この結婚は
無理が多すぎるのかも知れない
だけど 僕たちは同じ人を愛し
まだまだ 愛したりないから
その充たされない 空回りの心を
ぶつけ合って 赦しあって
埋めていけたらいいと

わかってくれるだろう 兄さん
それだけで 充分なんだよ

季節はずれの雪の中
だれに祝福されなくても
僕は今日 この人と結婚します
きのうまで 義姉さんだった人と


                   戻る