二つの死

八年も寝たきりの祖母が死んだ
数え年で九十だった
葬式に集まった親類は
「これだけ生きたんじゃ 祝い事だ」
と 手を打っている
その隅で臨月の妻が
「一目おばあちゃんにも
生まれてくる子を見て欲しかった」
と 涙を拭いた

予定日を過ぎて生まれた子は
千九百グラムしかなかった
心臓疾患があった
四日後ー
一度も肉親の腕に抱かれることなく
娘は逝った

待ち続けた初孫の死に
母は声を出して泣いた
ベッドで壁を向いたままの妻は
小さな肩を震わせていた
僕は何か
神に背くことをしていたのだろうか

見舞いに来てくれた伯母は
「婆さんは何か予感がして
自分だけ生きてるのが恥ずかしくて
逝ったのだろうよ」
と言った
僕は言葉もなかった

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