劇場版#1「鬼ヶ島へ急行せよ」

昭和六十三年三月十二日公開 脚本・上原正三 監督・小西通雄
主な登場怪人・カメレオン怪人
(他にアンモナイト怪人、コウモリ怪人三体、ノミ怪人二体、サイ怪人、カニ怪人、トカゲ怪人)

粗筋

 各地で子供達がカメレオン怪人に誘拐される。BLACKはカメレオン怪人と戦うが、そこに剣聖ビルゲニア乱入。苦戦するBLACKはロードセクターを呼んでやっと撃退。
 街に「コスモスサバイバルスクール」のバスが出現、「21世紀は飢餓の時代」などの宣伝文句で入学者募集のビラをまく。ビラを見た光太郎、子供達とカメレオン怪人を乗せたそのバスを追跡するが見失ってしまう。光太郎は海岸にいた釣人から子供達が鬼ヶ島にいることを教えられ、彼の船で島に近づき、海中から島に上陸。
 BLACKはカメレオン怪人の迎撃をかわして内部に突入、子供達の一部を解放するが、自らも罠に落ち、捕らえられてしまう。再改造手術を施されるBLACK、突然「神よ!」と叫び、手術台の固定具を引きちぎって脱出、ゴルゴム神の像を破壊。
 BLACKは再びカメレオン怪人と対戦、これを斃して作戦を粉砕する。

暗黒大公曰く

 今回の倉田の役柄は「南光太郎/仮面ライダーBLACK」に非ずして「南光太郎/仮面ライダー」。本編では南光太郎より先に変身済みのBLACKが登場する。
 ビデオソフトの箱、ラベル、LDのジャケットには副題の表示は無い。そもそも予告編でも副題が謳われていない。また、LDのジャケットには「キャスト」の中に何故か「剣聖ビルゲニア」と書いてある、下記のような具合だ。
倉田てつを 井上明美
田口あゆみ 石森章太郎
剣聖ビルゲニア 小林清志
 その予告編の迷台詞「ゴルゴムの怪獣達」。「異形の人間」というより「二足歩行をする動植物」と言う方がふさわしいゴルゴム怪人だが、劇中で語られる来歴のとおり、連中はあくまでも改造人間であり、決して獣ではないのである。
 ヨシコちゃんの部屋での薔薇の花の喋り方が実にいやらしい。「いつ見てもかわいいねえ」その筋の趣味なのだろうか。
 今回誘拐された子供達の中に湯原弘美。室内でバイオリンを演奏していた時に誘拐される。白いリボンをつけて、実にお嬢様然とした服装。湯原は後にテレビシリーズ#26の主役。また、テレビシリーズ#13の太一役・速水昌治が再出演。
 冒頭のBLACKとカメレオン怪人の戦い、カメレオン怪人が猛攻をかけている時に剣聖乱入。「不服か!」が格調高い。光球になってBLACKを追跡してバトルホッパーから突き落とす辺りを見ても、戦力的には剣聖にスーパーマシンは必要ではないことが判る。相変わらずBLACKはダークストームが苦手なようだ。剣聖はBLACKに対しては直接斬りかかるよりも幻術でじっくり苦しめる方が効果的ではないか。
 その戦いの場面で挿入歌「ゴールへ向かって走れ」の一番が流れる。作詞は原作者。曲の途中が端折られてしまっているのが残念。また、今回の使用では女声コーラスが無い。テレビシリーズ最終回での使用では、音盤商品同様の女声コーラスが聴き取れる。
 カメレオン怪人と剣聖の退却後の創世王の怒り方が凄い、電撃はいつもより派手で時間も長く、石が転がって何本も柱が倒れる。珍しく反省の弁を述べるも謹慎を命じられておとなしく下がる剣聖。
 テレビ番組やコスモスサバイバルスクールの自動車から瞬時にゴルゴム臭を嗅ぎ取る光太郎はやはり大したものだとは思う。車内で子供達が喰っているのは「明治のお菓子仮面ライダーBLACK」。バスとそれを追跡する光太郎は青天の下を走っているのに車内から光太郎を見る場面では雨降りで、どうも撮影は天候に恵まれなかったようだ。
 原作者が「釣人」役で特別出演。この作品の目玉であろう。バスや子供達の行方を尋ねる光太郎に「鬼ヶ島じゃ」。光太郎に船や潜水服を提供、そして名台詞「真っすぐに行け、幸運を祈る」。印象深い出演であった。
 今回誘拐された子供達や、テレビシリーズでの教授、代議士、会長の「土下座三人組」の様子等を見ていると、ゴルゴムは怪人になりたい人達を後回しにして、嫌がる人達ばかり無理に怪人にしようとしているような印象を受ける。
 不可解なのがゴルゴム神の像。今回出て来ただけで、テレビシリーズには登場せず。創世王とはまた別なのだろうか。BLACKが手術台に縛り付けられ、ダロムが手術を始めようとする場面でのM22の使用が実に効果的である。ダロムは再改造後のBLACKを「最強の怪人」と称していて、改めて両世紀王を戦わせようとはしていない。もし再改造が成功していたら、BLACKは子供軍団を率いる大怪人ブラックサンにでもなって、シャドームーンの部下として生きながらえたのだろうか。
 BLACKとカメレオン怪人の最終決戦で「BLACK ACTION」一番と二番のそれぞれ前半が使用される。これも作詞は原作者。この曲の歌詞、前半はゴルゴムの描写、後半はBLACK讃歌と言う内容になっている。「BLACK」では「悪の組織の歌」は無いので、この曲が代用されているような趣がある。
 BLACK対分身カメレオン怪人、逆「戦隊」状態。BLACKがカメレオン怪人の一体の舌を持ってその体をぶんぶん振り回す、実に豪快。分身五色の派手さは劇場版向きの趣向である。これの着ぐるみの出来も秀逸である。
 ラスト近く、港で歌う光太郎の場面は、男性の特撮愛好家の間では白けてしまって不評なのに対して、倉田愛好家の女性には大変人気のある場面である。歌の場面の最後、光太郎の口の動きが二番の歌詞になっている。あの歌をフルコーラス流されてはたまったものではない、短縮で正解だ。
 映画ではオープニングで全てのクレジットを表示している。ゴルゴム大幹部では剣聖が筆頭に挙げられ、三神官はダロム、バラオム、ビシュムの序列どおりに並ぶ。

クレジット

仮面ライダーBLACK         映倫 製作 渡邊亮徳 原作 石森章太郎    少年サンデー    てれびくん 連載 コロコロコミック    小学館学習雑誌    テレビランド プロデューサー 吉川 進         堀 長文
脚本 上原正三
音楽 川村栄二
    主題歌 「仮面ライダー  「LONG LONG AGO, ・   BLACK」  20TH CENTURY」   作詩 阿木燿子   作曲 宇崎竜童   編曲 川村栄二   歌 倉田てつを 歌 坂井紀雄     (コロムビアレコードCK‐797)
撮 影 松村文雄 照 明 中川勇雄 美 術 秋森直美 イラスト 野口 竜 プロデューサー補 高寺成紀
録 音 太田克己 編 集 菅野順吉 選 曲 茶畑三男 効 果 大泉音映
製作担当 寺崎英世
進行主任 八鍬敏正 助監督 岩原直樹 計 測 西野高司 記 録 富田幸子     製作デスク 岩永恭一郎
装 置 東映美術センター 操 演 神尾克郎 美 粧 サン・メイク 衣 裳 東京衣裳 装 飾 大晃商会
    後楽園ゆうえんち    撮影協力                AQUA PALACE
資料担当 小佐野 聡      (石森プロ) キャラクター製作 レインボー造型企画          前澤 範 合 成 チャンネル16 現 像 東映化学
オートバイ協力   S SUZUKI
ビデオ合成 東通ECGシステム   峰沢和夫 近藤弘志   前岡良徹 鈴木康夫
特撮監督  矢島信男
(株)特撮研究所 操 演 鈴木 昶     尾上克郎 撮 影 高橋政千 照 明 加藤純弘 美 術 佛田 洋
出演 南 光太郎 仮面ライダー  倉田てつを 秋月杏子  井上明美 紀田克美  田口あゆみ
釣人    石森章太郎         (特別出演)
益田哲夫 荒木 路 有騎美穂 木村 修
速水昌治 今井洋平 渡辺美恵 湯原弘美
アクション監督 金田 治         (ジャパン・アクション・クラブ)
岡元次郎 北村隆幸 山本貴浩 末永貴久 渡辺 実
剣聖ビルゲニア 吉田 淳 大神官ダロム 庄司浩和 大神官バラオム 高橋利道 大神官ビシュム 好井ひとみ
ナレーター 小林清志 ダロムの声 飯塚昭三
監 督  小西通雄

使用音楽一覧
場面番号または歌曲名音楽メニュー
襲われる少年V9T2
喋る薔薇V9T2冒頭のみ
子供達の誘拐から副題へM34(uptempo)迫りくる怪人
BLACK対カメレオン怪人M6悪魔の追撃
カメレオン怪人の猛攻V8絶体絶命!
剣聖乱入V7aT5邪悪の神殿
BLACK対剣聖V1変身!
バトルホッパーM48c危機脱出
ロードセクター「ゴールへ向かって走れ」
コーラス無し
バトルホッパー快癒M26
創世王激怒M20世紀王脱走
ゴルゴム神、被害児童の親の訴えM33T2
光太郎出動「ブラックホール・メッセージ」
インストゥルメンタル
カメレオン怪人M15怪人出現
釣人M48bT1
釣人に尋ねる光太郎M20コーダのみ世紀王脱走
無人島へM3張りつめる空気
体力テスト不合格M45T2怪人出撃
上陸、手術開始M21バトルホッパー
光太郎対カメレオン怪人M23毒牙!
変身、子供達救出V0ヒーロー登場
BLACK捕わるM33T2
ゴルゴム神の目輝く時M22大いなる悪の力
キングストーンフラッシュ、反撃ブラックホール・メッセージ
BLACK対カメレオン怪人「BLACK ACTION」
キングストーンフラッシュ「仮面ライダーBLACK」
勝利M9凱歌
歌う光太郎「オレの青春」
走る光太郎「ゴールへ向かって走れ」
イントロとコーダのみ


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劇場版第二作