■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ パピヨン  PAPILLON ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
1973年 アメリカ
監督/フランクリン・J・シャフナー 
脚本/ドルトン・トランボ 
原作/アンリ・シャリエール
音楽/ジェリー・ゴールドスミス
CAST/スティーヴ・マックイーン(パピヨン)
ダスティン・ホフマン(ドガ)
パピヨン

STORY

ギアナ刑務所での沼地労働無実の罪で捕らえられたフランス人の通称パピヨンは裁判の末フランス領南米ギアナの流刑地に投獄される。護送船での中債権偽造の詐欺罪で同じく刑に服することになったドガに近づく。恨みを買っているドガが襲われた際パピヨンが守りにはいるが守衛に見つかりパピヨンの方が罰を受けることに。着いた先のギアナ刑務所はまさに流刑地と言うべき所でそこは更正の場とは程遠い見放されるための様な所だった。パピヨンはここで何度となく脱獄を試み時に5年の独房入りをくらうことになる。独房の中の乏しい食事の中に栄養になる果実を内密に差し入れたのは盟友ドガだったがこれも看守長に見つかるがドガが送った事をパピヨンは頑として口を割らない。結果としてパピヨンの独房は一切の窓を閉ざされ長期間の暗闇生活を強いられることになる。刑期を終えたパピヨンは別人の如く白髪の姿となってドガの元に戻るが献身的な看病により徐々に体調を戻すと間もなく次の脱獄を彼は企てる。刑務所のお祭りのある晩一考は計画を実行する。仲間が挫折する中パピヨンは逃げおおすことが叶い、原住民の集落から地元の修道院にかくまわれるがそこの修道院長の密告でまたも掴まる。次にパピヨンが送られることになった先は皆が悪魔島と恐れる絶海の孤島。陸地まで比較的遠くはないものの大変に速い潮流がその行く手を阻んでいる所だった。しかしそこでははからずも盟友ドガと再会することになる。最終流刑地とも言うべき孤島で一見のんびり過ごすパピヨンはその旨の中で次なる脱獄の手段を健闘していた。彼は潮の流れを読んでいたのである。椰子のみを束ねた浮き袋を手にしたパピヨンは島に残ることを決意したドガと別れを惜しみつつ大海原に椰子のみ浮き袋と共に身を投げる。 

ひとこと

なんとも凄まじいまでの執念がテーマの話だがこれは実話が原作であることは広く知られている。本人はアンリ・シャリエールと言う人物で、上記最後の大海原への脱出が成功し見事脱獄を成功させた後自伝を発表しベストセラーを記録している。(今は残念ながら邦訳版は絶版中)
ここでのパピヨンは単に刑務所から逃れるためだけの脱獄とは思えない執念を感じさせる。まさに完全なる自由(FREEDOM)を求めているのだとも思われる。そんな事があってか主人公は拷問とも思える独房生活や労働を驚異的な忍耐力で耐え抜く。一方盟友ドガは原作ではあまり重要な意味は無いらしいのだがここではパピヨンの唯一心を許す友として登場する。ドガはパピヨンとは思考があまりに異なっている。ドガは己で逃げおおすより残った妻の減刑の嘆願を最後まで信じている。悪魔島に送られてからは脱獄よりも島での静かな生活を選びもする。そんな意味では話を見ている我々に近い存在とも言える。ある意味私達はこのドガと言う男を通じてパピヨンを観ている気もする。パピヨン(左・スティーヴ・マックイン)とドガ(右・ダスティン・ホフマン)

永遠のアクションスタートして名高いスティーヴ・マックインだがこのパピヨンで見せた演技は他の作品と比べても凄まじいものと思う。特に独房に入れられ終いに光を閉ざされる生活を強いられ段々と気が触れる寸前までいく様は絶品であった。とりわけ独房中への果実の差し入れがドガの行いであることを吐いてしまう寸前で、彼からの手紙のメモを飲み下してしまうシーンの表情などゾッとさせるものがある。ここでのマックインはもはやアクションスターなどではない。

ところで映画の冒頭でギアナに送られる前の全裸の囚人達に「お前たちは祖国に見捨てられたのだ!」と威圧的にスピーチを飛ばす髭面の爺さんが登場するのだが、実はこの爺さんが脚本を書いたドルトン・トランボ本人なのである。トランボはハリウッドの実力派作家だったのだが、ハリウッドを吹き荒れた赤狩りで追放された過去を持つ。しかしへこたれないトランボは偽名で仕事を受け続ける。そんな中で彼はその偽名のまま「ジョニーは戦場へ行った」でアカデミー脚本賞をも得てしまう。この辺の執念はまさにパピヨンそのものに相通ずるものがある。そんなトランボの口から飛び出る「お前達は見捨てられたのだ」のセリフは何とも言えない重みがないか?この映画はそんな執念の男トランボそのもののようにも思えてしまう。
  

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