『'02年夏(前編)』

6月中旬、日本中で沸騰した2002年サッカーW杯の熱気は日本代表の敗退により、一気に冷めつつあった。

例外なく私も、W杯の熱気から文鳥に対する狂気の虜に移り始めていた。

私は最近の文鳥を取り巻くペット屋事情を知らず、何軒かペット屋を探索すれば雛を購入する事が出来ると楽観視していた。

タウンページで調べた千葉市中心街にある3軒の小鳥屋を取り合えず廻る事とした。3軒のうち、1軒は店先で引き返し、

もう1軒は休業中(9月に閉店)、最後の1軒は新店舗建築中の為、仮店舗での小ぢんまりとした店だった。

勿論、この時期に店に文鳥の雛は置いては無く、成鳥だけが売られていた。秋に成らないと雛は入荷せず、

また参考に文鳥の雛の値段を訊くと2500円の返事であった。安くは無いなぁと思いながら、この店に合格点を与え、

秋まで待つ事にするか、それとも雛の置いてある店を探すかと迷ってしまった。(因みに嫁さんはこの店でセキセイインコ:蜜柑を衝動買いした)

7月初めの買い物帰りの途中にあるペット屋を探索。ここでは、店内に動物を展示しておらず店の奥に置いてある。

店番のおばさんに文鳥の雛の事を尋ねると、「雛を買うんだったら、秋産まれの一番仔がいいわよ。丈夫で健康だから。取寄せになるけど

予約しとけば入荷したらすぐ連絡しますよ」と笑顔と共に回答が来た。価格は2900円。人の良さそうなおばさんの笑顔にぐらっと

その気に成り始めたが、持ち前のケチと後から後悔する事が嫌いな性格から即答するのを止めたのであった。

よそでは自家繁殖の雛が500円位で引取られるという事実を知っているだけに、この価格設定が気に入らなかったのが大きな理由であった。

ただ、おばさんの一番仔が良いという言葉を真に受け、秋の雛入荷シーズンまで待つ事にした。

そして納得の行く店で王朝の源流となる雛を迎えたいという気持ちから、店の探索範囲を広げる事とした。

タウンページを検索して、千葉市・習志野市・船橋市・市川市・四街道市のペット屋30軒程をリストアップし、

探索地域・探索ルートを考慮した探索計画を立案した。

この事が嫁さんに知れると呆れ返られるので、隠密行動とし、カモフラージュとして連れて行く子供達には緘口令を布いたのであった。

1日目:船橋駅方面の3軒を探索する。最初の1軒は、古くから営業している店で店名もなかなか味のある店であったが、

おばさんの話では文鳥は置かないとの事。しかし、シナモン文鳥がペアで1万円以上で売られていた。

最近は、文鳥の人気が無いらしい。いい感じの店であったが、残念であった。

もう1軒はトリミング専門店風で、生体は置いてなさそうだったので店先でUターン。最後の1軒は、飼料専門店風で

小鳥屋という感じではなかったのでこれも店先を通過するのみで終わった。

まだまだ初日、俄然やる気が出てくる。

2日目:西船橋方面の4軒を探索する。最初に行った店は、小鳥の卸商といった感じがする店で、店内というより鳥倉庫といった

室内には3段のラックが4列ほど置いてあり、1段に鳥籠が8個ぐらい並べてあった。種類によって籠の中には12〜13羽位入っているものも有れば、

2〜3羽しか入っていないものがあって様々であったが、全部でもの凄い数の小鳥が置いてあった。

実際に小売りをするのか心配になったが大丈夫であった。この時期、文鳥の雛はいなく、店の大将が言うには、

「10月位にならないと入荷しないねぇ」と言ってくれた。この店では、桜:1000円、白:1500円の破格の価格であった。

この店を販売店評価ランキングの上位に位置付ける事とした。(林檎購入店)

2軒目は、道路沿いに有る小鳥屋であったが、車を止める所が無く外からの観察であったが良い雰囲気を受けた。

秋になったら再度、訪問する価値があると判断した。3軒目は、総武線沿線の駅前にある小さな小鳥屋でおばさんが1人で営業しているようだ。

6畳位の小さな店で、籠の中とかも清潔にしてあった。勿論、ここにも雛はいない。この店も上位にランク付けするが、価格が高い。(トン購入店)

最後の1軒は、門前通りに有る店だった。ここはおばーさんが1人でやっている店で、小鳥は僅かしかいない。

雛は手が掛かるので面倒見切れないから、置かないとの事。おばーさんが長々と営業してきた店の様で、この代で終わってしまうのかと

つい、思ってしまった。

あともう1軒候補が有ったのだが、その店は潰れてしまったようであった。独身の頃、中山競馬場から徒歩で西船橋駅まで歩いて帰る

道の途中にその店は有ったのだが、車で通ると営業している雰囲気がない。休日にこんな状態なら見る価値も無いと判断したのであった。

(結局、閉店していた)

3日目:世間様より、ちょっと早い夏休みを取った為、お盆休みが始まる土曜日から再スタートとなった。今回は、習志野北部を探索。

1軒目を見つける事が中々出来ず、2軒のみで終わる。最初の1軒は住宅街の中に有り、コンクリート造りの1階は店舗、2階は住宅といった

歴史を感じさせる店であったが探し回った疲れと、雛など絶対に置いていないと決め付け、こんな遠くにあるこの店で購入する事は

無いであろうと判断して、折角、発見したのに店内に入る事も無く2軒目へ向かった。

2軒目は、感じの良さそうな店であったが、前の店同様こんな遠い所まで買いに来る事は無いであろうから、車からも降りずそのまま通過。

よっぽど困った時に再び来る事に決めた。

4日目:四街道方面の3軒を探索する。1軒目は、魚系が中心であったが文鳥らも少し置いてあった。

元々は、鳥や小動物専門であったが世の中の人気が観賞魚と成った為、魚を中心とした営業方針となったという感じの店であった。

ここには文鳥が数羽置いてあった。実は魚よりも鳥の方が好きと見えるおばさんが世話している春生まれの文鳥は元気が良く、

感じも良かったが買いたいのは雛であるので残念ながら次の店に行く事とした。この店の価格はそんなに高くなかったと思う。

2軒目は駅近くの店であったが、表の雰囲気から営業している様に見えない。鳥の声はするが入口の扉にカーテンが掛かっている。

こんな遠くまで来て買いに来る事はないと思い最後の1軒に向かう事にする。

その店は若葉区に有るのだが、もう潰れかけているという感じの店で、金魚や鳥がちょっとしか置いていない。

子供相手に営業している小動物屋さんは、今後こういった運命を辿って行くかと思うと寂しくなってしまった。

5日目:1週空けて、今回は若葉区方面の5軒を探索。

まずは、大型ホームセンター前で営業している鳥屋を訪問してみた。車をホームセンターに駐車してホームセンターを表敬訪問として、

ペットコーナーを覗いてみる。文鳥等の小鳥も販売していたが、世話をあまりしていない様で爪がかなり伸びている。

目当てはここではないので、さっさと鳥屋へ移動する。店の看板は、小動物販売に対する意欲なのか、

それとも目の前のホームセンターに対する対抗心なのかわからないけど、気合の入った文字が並んでいる。

店の中は雑然としていて、文鳥もいる様だったけど店の主人は見当たらず、雑然とした雰囲気の店に入るのに躊躇してしまい

店先から覗いただけで終わった。気合が空回りしているような店だった。

次の店は、魚系が中心の店だったので店先で回れ右。残りの3軒はかなり探したのだけど、見つける事が出来なかった。

住所上あるはずの所が、空きテナントになったりしていて、閉店した様だった。

この日は、結局収穫は無く、徒労に終わっただけであったけど、今ある小鳥屋の将来は、どんどん閉店して行き

総合ペットセンターやホームセンターのペットコーナーしか残らないのではないかという大きな不安を感じてしまった。

こうやって猛暑の8月は終わってしまったのであった。(後編へ続く)