[ new cinema ]


夢見たとおりの人生の、思いがけない罠……

フランソワ・オゾンが愛をこめて描く、新たなヒロイン、エンジェル。
動物たちは静かな存在感で作品を彩ります。



(2007/ベルギー・イギリス・フランス合作/119分) 公式サイト
監督:フランソワ・オゾン
出演:ロモーラ・ガライ、サム・ニール、シャーロット・ランプリング、ルーシー・ラッセル、マイケル・ファスベンダー
12月22日(土)よりテアトル梅田ほか全国順次公開。(東京では12/8より公開中)
配給:ショウゲート



『8人の女たち』『スイミング・プール』などの作品において 、さまざまな女性の姿を描いてきたフランソワ・オゾン。彼が、1900年代初頭のイギリスを舞台に、はじめての英語作品に挑戦。色彩の移り変わりが女の一生をも暗示する美しい映像と、実力派の俳優たちの的確な演技、そして、あまり共感を得られなさそうな女性でも、チャーミングに描くことができるオゾンの真骨頂を見ることができるでしょう。

[ ストーリー ]
20世紀初頭のイギリス。田舎町に住む食料品店の娘、エンジェル・デヴェレルは、幼いころから上流階級の生活に強烈な憧れを抱き、近所の豪邸“パラダイス”に住むことを夢見ていた。その憧れや夢をペン先にこめ、強い思いで小説に仕立て上げていく。
16歳で作家デビューを果たしたエンジェルは、名声、贅沢な暮らし、上流階級出身の画家との結婚と、望んでいたすべてを手に入れる。しかし、忍び寄ってきた戦争を経て、エンジェルの行く末には思いもよらない皮肉な運命が待ち構えていた……。




[ 動物たちの存在 ]
作家になる夢を実現し、子供の頃から憧れていた屋敷を手に入れたエンジェル。次は? 動物好きな彼女が動物を飼わないわけはなく。「私たちには広すぎるわ」と言う母親をよそに、「だって家具が入るのよ」と跳ねまわるエンジェル。そして、豪華な家具が搬入されるのと共に、たったっと部屋に入ってきた犬は…。で、でかい!

さすがエンジェル、犬の選択もでかい。巨大な屋敷に超特大型犬。世界一大きい犬、アイリッシュ・ウルフハウンドがお目見えです。しかもつけられた名前が、“王”の意味を持つ「スルタン」。これまたでかい名前だけど、スルタンが横たわっている姿は王様然としていて、名前負けしていません。ゴミゴミした街中をうろついている犬たちもちらっと出てきますが、そのへだたりは、エンジェルの昔と今の生活との差を表しているとも言えます。
エンジェルの動物好きは、出版社の発行人の家の猫をかわいがるシーンで最初に描かれます。ただ、彼女が自認するように本当に動物好きだったかどうかは…? 犬に対して非常にドライな反応をする瞬間は、彼女のとらえどころのない性格の確たるところでしょう。

犬のほかには、たくさんの猫、オウム、クジャクを飼うエンジェル(どちらかというと、猫のほうが犬よりも出番が多い)。動物たちは派手な活躍はしませんが、いつも悠然とかまえていて、静かに窓際やベッドの上などにいます(さすがのスルタンもたった一度、動じますが)。そして、飼い主や屋敷に住む人たちの生きざまを、じっと見つめているのです。そこには、ある種の“目”が感じられます。人間を観察するためにつかわされ、その本質を読み取るための存在。自信家で不躾、嘘つき、しかしひどく純粋で、夢想の人生を送るエンジェル。正直、人間の目では彼女をきちんととらえられません。本人さえも知らない彼女の内面を本当に知っていたのは、犬や猫たちだけだったのかもしれません。



[ 俳優犬情報入手! ]
スルタンを演じたのは、イギリスに住むシェイマス君、もうすぐ4歳(撮影時は2歳)。アイリッシュ・ウルフハウンドの中でも特別大きいそうで、体高は94cm、体重はなんと、75kg! お父さんはドッグ・ショーで優勝したこともある、由緒正しいわんこです。今のところ、『エンジェル』でのスルタン役が出演作中もっとも大きな役柄なんだそうです。



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