送り狼になるかも writer:h.k

 

 ぼくは20代後半の青年だ。自分で言うのも何だが、イケ面である。

  そんなぼくの趣味は、引っ掛けた女の子に「送り狼になるかもしれないけど、いいかい?」とまずは下心があるように見せかけて、一夜のお付き合いの了解をもらうことから始まることだ。

 なにせぼくはスタイルはいいし、職業が医者ときている。最強、鬼に金棒である。なのでよくもてる。今まで拒まれたことはない。

 送り狼が彼女をマンションまで送れば、後はなにおかいわんやである。

 だがぼくの趣味の続きは、違う。

 女のマンションの前で「じゃあね」と軽く手を振る。送り狼が狼にならずして、据え膳食わぬは男の恥のまま、何事もなかったかのように去っていく。今までに通算すると、100人は下らないだろう。
 「えっ、どういうこと?」たいての女性は顔に戸惑いの表情を浮かべる。ぼくから、からかわれ、振られたっていうことだ。中には屈辱感を覚える女性だっているかもしれない。

 「送り狼なるかもかもしれないと言って、何もしなかった彼」、つまりそんなぼくは、女から嫌われる最低の男に成り下がる、っていうわけだ。

  ところがある日、「送り狼になるかも」といって誘惑してみた女性が、ぼくにこう言い返してきた。
 「私、みんなに赤ずきんちゃん、って言われます」
 「えっ?」
 「赤ずきんちゃんは良い子で、しかも誘惑に弱いから、みんなが好きになるのよ。だからあなたも狼になりたいんでしょう?」
 「いや、そのう……」ぼくは言葉に詰まった。選んだのはぼくではなく、彼女はぼくに選ばれし女性なのだ。
 「男の人はみんな、送り狼になって、私を誘惑する。だからその手にはのらない! 赤ずきんちゃんは、良い子であり続けることに疲れています」

 ぼくはその時、初めて振られたことを実感した。
 以来、ぼくはこの赤ずきんちゃんに近づく送り狼どもの撃退役として、日々、彼女を守り続けている。

 狼はしょせん、赤ずきんちゃんには勝てないのである。