【96年10月30日(水)】

インナーシティーへの保険会社回帰
(New York Times (10月30日)より)


(冒頭注:by I)
インナーシティーとは都市中心部で早くから開発が進んだ地域であり、建物、Facilityの老朽化から産業が抜け出した結果、端的にいえば治安が悪化し、Minority の居住区となった地域である。
(15年前の私の卒論のテーマでありました。)



インナーシテイーに、最近、保険会社がかえって来ている。記事では、マンハッタン周辺とセントルイスのケースをあげているが、回帰の理由を、「相次ぐ批判への対応策と、利益の可能性追求」としている。

批判への対応策とは、インナーシティに事務所を開き、契約を扱うことで「インナーシティを意図的に避けている」という批判をかわそうという作戦である。

扱う保険種目は、ホームオウナーズ(住宅総合)、自動車、生保等。


記事で取り上げられていたのは以下の会社。

Stetefarm、Allstate、Prudential、American Family、Chubb、Travelers/Aetna、Nationwide


−−−コメント−−−

米国では、Personalを扱っていると、保険行政からの制約が多く、難しいケースに遭遇することが多い。

州別に保険の規定は大きく異なるが、California、Hawaii、Texas、New Jersey、等は保険行政の観点から、特に難しい州である。

Red lining (各地域の契約を差別せず引き受けるべきと規定したもの)もその1つであり、90年代初めから様々な議論を呼び起こしている。

銀行にも似たような規定(Community Reinvestment Act:1977、営業を営む地域で十分な貸し出しを行う事を求めた法)があり、先の Chase Manhattan Bank と Chemical Bank の合併の際にも問題となった。

今回の記事では、保険会社回帰の理由の1つとして「収益の可能性の追求」ということがあげられているが、保険会社としては、「できればインナーシティでは積極的な営業はしたくない。」というのが本音と思う。

インナーシティ回帰は、あくまでも保険行政(消費者行政)対策という色彩が強いのではないだろうか。


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