【97年3月24日(月)】

米国大手金融機関の収益管理体制(セミナー)


講師は Price Waterhouse(Big Six Accounting Firmsの 一つ) の Management Consulting Group の Partner。

講演タイトルは魅力的だが、抽象的・概括的に過ぎ、退屈なセミナーだった。
具体的アクションに結び付けにくいというのが最大の問題。
(もともと、ただのセミナー(それも昼食付き)だから仕方ないかとも思うが。)

なお、備忘のため、ちょっとおもしろいと思った項目のみメモしたのでそのままアップする。

  1. 米国の2700の銀行は、個別に見ると総資産 $100Mil以下が圧倒的に多い。日本に比べると小規模。
    大部分の銀行(総資産で、銀行全体の7割弱)は Multi State BHC(Bank Holding Companies)となっている。
  2. 小規模銀行であっても持株組織になっているのが通常。
    理由は税務上の理由と法的規制。
    Holding Company の 下には、
    ・National Bank
    ・Regional Bank
    ・Insurance Subsidiary
    ・Investment Management
    ・Sec 20 Trading
    ・Mortgage Company
    等の会社が水平に(あるいは一部は垂直に=孫会社)ぶらさがっている。
  3. 銀行の最近のトレンドは次のとおり。
    ・多様な業務
    ・革新的な経営情報管理システム
    ・システムの分散化
    ・買収に積極的
  4. 内部収益管理(Internal performance reporting)は、Legal Entity(会社組織)とは全く別であり、ビジネスライン(Line of Business)ごとに分けて管理する。
    具体的には、以下のような区分が例として挙げられる。
    ・Consumer Banking
    ・Commercial Banking
    ・Capital Markets
    ・Operations(Data Processing, Operations, Facilities等)
    ・Support Functions (Finance, Human Resources, Credit Admin, Internal Audit等)
  5. Profit/Cost の配分は、Legal Entity と Internal Reporting で往々にして異なることが多い。
    銀行としては、legal entity の数を可能な限り減らしたいと考えている。
    (ビジネスの多様化に伴い、管理が複雑化しているため)
  6. 月例収益管理資料の作成時期は翌月5−7日頃。
    銀行によっては10日頃となっているところもある。
  7. 収益管理手法としては、RAROC(Risk-Adjusted Return on Capital:レイロック)が普及し始めている。
    RAROCでは、次の2つを比較する(ただしこれ以上の説明がなかったので良くわからないというのが正直なところだが。)
    ・Return
    ・Credit Risk + Market Risk + Operational Risk
    (Risk の 大きな投資については、大きな Return が得られて当然、という概念と思われる。損保のRBCや銀行のBISを、Capitalではなく、収益管理にあてはめたような概念と想像される。単純なROEやROI、ROAに比べると進んでいるとも言えよう。)
    −−−コメント−−−

    「内部収益管理(Internal performance reporting)は、Legal Entity(会社組織)とは全く別。」というのは予想したとおりの話。

    持株会社になっているのは、銀行が合併で大きくなって来たという経緯にも関係しているのだろう。

    保険業界でも、AIGを始め多くの会社が持株会社になっているが、これは必ずしも、日本で最近話題になったように「分社化」したという訳ではなく、「収益の上がりそうなビジネスを積極的に買収して来たらこうなった。」あるいは「新たにビジネスを始めるときに別会社を設立した。」という歴史的経緯もあるようだ。

    いずれにせよ、日本では連結納税が認められるのが環境として第一歩だ。


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