【97年4月1日(火)】

NAIC 97年春の定例会議の主要項目


1.Codification of Statutory Accounting

(1)NAIC の "Accounting Practices and Procedure Manual" (損保の行政報告用決算処理基準をまとめたもの)の抜本的な改定プロジェクト。

(2)全般的には、SAP(Statutory Accounting Principle)を、GAAP(Generally Accepted Accounting Principle)に近づけようとしている。
GAAP の すべてが SAP に適用されることにはならない(現在検討中)。

(3)NAIC が次々に Issue Paper(個別項目ごとに改定点の概要・趣旨を簡単にまとめたもの)を作成し、論議・改定を続けている。

(4)CPA Firm として、Ernst & Young が全体の数値的インパクトを survey している。(sponsor は AIA(American Insurance Association))
(注)インパクトの詳細は、97年3月12日付の E&Y のレポート "Impact of the NAIC's Codification of Statutory Accounting Principles" に詳しい。(このレポートによれば、現在のところ、20項目の Issue Paper による P&C 保険業界の Capital&Surplus へのインパクトは、Pre-Tax でマイナス 4.7%(マイナス $11Bil)とのこと。)

(5)Complete Package ("Accounting Practices and Procedure Manual" の改定版ドラフト)は4月15日頃に release される予定。最初の公聴会(Public Hearing)は Chicago で6月6日(NAIC 夏の定例 Meeting と同時)に開催される。その後、7月と8月にも公聴会が予定されている。

(6)Codification は、accreditation program に組み込まれる予定。
(accreditation program とは、米国各州の保険行政・監督の仕組みを統一化する program。NAIC が何年もかけて進めて来ているが、NY州の反対なども有り、なかなか進んでいない。)

(7)新会計基準実施時期は現在のところ未定(早くても98年度以降となろう。)

2.Catastrophe Reserves

(1)94年12月の NAIC 定例 Meeting で NY州の Vincent Laurenzano が取り上げて以来、小委員会(Technical Advisory Group: TAG)を設置して検討して来ている。

(2)現状は以下のとおり。
a. 積み立ては Mandatory。
b. 対象種目は Homeowners, Farmowners, CMP および Schedule-P 2 year lines(special property 他)
c. risk factor(=exposure factor)を米国の10地域に割り当て、15年(rolling 期間)にわたって積み上げる。(注1)
(注1)10地域における保険料に、各々別の積立率を乗じてreserve を積み立てる模様。
d. exposure factor は今回(97年春)の Meeting で示され、議論が行われた。
TAG は、exposure factor に、
・historical costs of catastrophes
・modeling of future catastrophes
の両方を加味することを提案している。
e. 取崩の triggerは、次の2つ。(注2)
・ $10Bil(業界全体として)
・ PHSが 25%以上減少(会社として)
f. reserve の release は、対象種目の LOSS+LAE ratio が 70% を越えたときに可能となる。(注3)
(注2,3)「業界としての trigger を自社の取崩にどう結び付けるのか?」「trigger と "release可" との関係(trigger は必要条件であり、release は取崩額の計算方法と考えて良いのか)?」等、詳細は不明。
g.TAG は税務上の取扱(損金算入)について議会の承認を得るための検討も AIAと共に行っている。

(3)6月(次回の NAIC 定例 Meeting)以前に、本reserve の年間コストの試算を行う予定である。

3.Risk Based Capital(RBC)Formula

1994年度決算より導入された RBC については、導入後、若干ずつ修正が図られて来ている。AAA(American Academy of Actuaries) が Interest Rate Risk を 計算に算入する提案をしていたが、NAIC としては、別途、流動性(Liquidity)の検討の 中で取り上げることとした。

Note:J-NAIC.doc

−−−コメント−−−

Codification Project は、既に SEC に上場している保険会社にとってみれば、さほど大きなインパクトにはならないかもしれないが、国際会計基準(IAS)の検討・それに沿った損保の会計基準を検討する際には視野にいれておく必要がある。

また、Catastrophic Loss Reserve については、税務上のメリットなしには実現しにくいだろうが、UK でも Equalisation Reserve の損金化が認められたこと(96年度以降)や、日本でも一部異常危険準備金の損金算入が認められていること等を考えると、米国でも実現の可能性があるのではないか。実現された場合には、Homeownersを多く販売している会社(State Farm等)の収益構造には大きな変化が予想される。

RBC については、最初の導入後の改定はいずれもマイナーなものである。今回の Interest Rate Risk は、日本のソルベンシーマージン基準には、「予定利率設定リスク」として既に織り込まれているが、積立型保険のない米国損保にとって、PHS との対比で指標化する(すなわち、RBC 計算そのものに取り入れる)ことは、若干筋違いであろう。これが NAIC の今回の議論の背景にあると思う。


【「米国保険業界・会計情報」へもどる】

【最初のページへもどる】