【97年4月25日(金)】

日産生命倒産


日産生命が倒産した。 日本の生保の倒産は、戦後の混乱期を除き、戦後初めてだという。

−−−コメント−−−

さて、ついに保険業界にもやって来た。日本の話題だが気になる。

これも、バブルの後遺症と言えるが、単にバブルで済まされぬものがある。
日本の右肩上がりの成長を信じ、株価上昇に依存した経営のツケが一気に現れたということだ。

また、同社は94年から実質的に債務超過状態だったという。
日本の金融機関の情報開示(ディスクロージャー)の遅れが批判されるのも無理ない。
日本の生保の経営の問題。保険業法の問題。MOFの問題。ディスクロージャーの問題。相互会社の問題。
同社の責任準備金の積み立ても、純保険料式にはほど遠い(何年チルメルかは知らぬが)方式だったようだ。

日債銀の海外部門撤退・業務大幅縮小や北海道拓殖銀行と北海道銀行の合併・海外部門閉鎖など、銀行のニュースが相次いでいたが、ついに生保だ。
新聞報道では、「運用の失敗」とされているが、これは大間違い。
運用部門に責めを帰するのは酷というものだ。
紛れもない、「商品戦略(価格戦略)の失敗」だ。
(もちろん、そのような商品を販売するリスクを認識していなかった経営の問題であるが。)

僕自身も日本で積立型商品の予定利率の論議の中心にいたので、予定利率の重要性は嫌というほどわかっているつもりだ。(積立介護のときに無理をして「通期保証」を入れておいたのがせめてもの慰みだ。)
生保の場合、予定利率が「横並び」であったため、日産生命も、自社自らで真剣に考えることをせず、 業界の流れに従ってしまったのに違いない。
そして配当を支払う段になって過去の含み益を実現し、消滅時特別配当(ミュー配当)としてしのいでいたということなのだろう。

損保でも超長期商品の比率が増えて来ている中で、予定利率が負担となるリスクが相当大きくなっている。

契約者から見れば、物価が上がらなければ給付(年金もしくは満期返戻金)も増えなくても良いはずだ。 したがって恐いのは金利が上がらないのに物価が上昇する事。
消費税引き上げで現在の日本は一時的にそういう状況になっている。

それにしても今の日本の低金利は何だ。
どう見てもおかしい。国民すべてが預金残高に比例した寄付を銀行に対して行っているのと全く同じだ。 いかん、話がそれてしまった。

今回の生保初の破綻でソルベンシーマージンの再検討に拍車がかかるという。当然だ。
現在の契約者保護基金をベースにして支払保証機構の検討が始まるようだ。

アメリカでは New York が事前拠出方式だが、これには大きな批判がある。
1980年代に、この基金を保険業界以外の用途に使うことが認められてしまったからだ。
いわば、政治の横暴だ。

日本の自賠責運用益特別会計にも似たようなことがあったと記憶している。
(1980年代中頃(1985年?)の自賠責料率改定において運用益(特別会計と民間の合計約6000億円)を料率引き上げ幅抑制ファンドに充当したが、赤字補填方式が民間に著しく不利な方法となった。ただしこの頃、僕はまだ入社5年目くらいであったので、その重要性をどこまで正確に理解していたかは怪しいものだ。)

日本で支払保証機構を検討する際に、生損保を一緒にするという議論もあるようだが、これは全くおかしい。いくら保険業法が改正されたからと言って、ひどすぎる。現在ズタズタの生保の奉加帳に損保も入れられてしまうというのはたまらない。

最後に独り言。日本の経済状況の変化・経済のグローバル化・規制緩和といった大きな流れの中で、現在ほど「日本企業(特に金融機関)の真の経営」が問われている時代はないのではないか。


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