【97年7月9日(水)】

USAAの Hurricane-BOND


【概要】
USAAから $400Mil の再保険を受けた再保険会社(RRL:Residential Reinsurance Ltd.)が Merrill Lynch を使って CAT Bond を発行し、資本市場で capacity を調達。
Cat Bond の金額は $477Mil。直ちに完売したと伝えられている。
(注)USAAはHomeowner(家計火災保険)で米国第4位。主に現役および退役軍人を主体に3百万人の契約者を有する。

【債券(Cat Bond)の内容】
2種類の債券があり、期間はいずれも1年間。
Class A-2 が本格的な Cat Bond(メイン商品)と言える。

(1)Class A-1 (発行額 $163.8Mil)
利息のみ at risk の債券。
"Principal protected securities" と言われる。
Rating は AAA
利息は LIBOR + 273basis = 約 8.98%
covered loss の発生時には、10年延長。その期間の利息はなくなる。
(すなわち、11年後に元本が支払われる。)

(2)Class A-2 (発行額 $313.2Mil)
元本および金利が at risk の債券
"Principal-risk securities" と言われる。
Rating は BB
利息は LIBOR + 576basis = 約 11.48%
Loss 発生の際にはUSAAに6ヶ月の期間延長 option がある。
(その間にUSAAは claims settle を行う。ただしその6ヶ月分の金利は支払う。)

【債券の対象risk】
USAAの引き受ける Personal Policy(Homeownersが主) の、East Coast 20州および D.C.(特にFloridaに意義あり) の Hurricane Risk。
$1Billion 超 $500Mil の Layer の 80%(=$400Mil)をカバー
期間は97年6月15日から1年間
(実際の Loss は KPMG Peat Marwick, Cayman の procedure によって決定する。)

【RRLでの資金の運用】
risk capital は、trust account に入れられる(Bankers Trust が管理する)。
(risk capital = 53% of Class A-1 + 100% of Class A-2 = $400Mil)
残りの$77Mil($477-$400Mil)は ゼロクーポン債券で運用し、元本保証債券(Class A-1)の元本の支払いに充当する。

【債券の発行者】
発行者は、offshore の 保険会社 = Residential Reinsurance Ltd. (RRL)
(Cayman 所在(Bestの23日の記事では Bermuda となっているが、これは誤り)。USAAとの資本関係はない。USAAは自社との関係を否定している。)
RRL社は Caymanに License は あるが、office はない。
RRL社の事務は Midland Bank Trust Corp. によって運営されていると言われている。
債券は private の placement

【債券への投資家】
債券の Buyer の中には、Cat Bond Investor(PXRE Corp. と Phoenix Home Life の Joint Venture、$3Mil投資)等がいると言われているが、USAAはコメントを控えている。
全般的には、米国内および海外の、以下のような投資家と言われている。
・Asset Managers
・Mutual Funds
・Life Insurance Companies
・Hedge Funds
・Traditional Insurers(ごくわずか)

この内容から考えると、保険会社の外にリスクが移転している(すなわち、マーケット全体としては、Cat に対する Capacity が拡大している)ことが明白である。

【債券のpremium算出(商品設計)】
A.I.R.(Applied Insurance Research)を適用し、computer model を使って過去の hurricane data を利用して 17,000の hurricane の仮想的コースと契約者の ZIP code データから simulate し、risk premium を決めている。

【市場の評価】
「innovative transaction」
「この手の transaction が成功するか否かはまだ判断するには早い。」
「しかし、伝統的な再保険者は、Cat Bondを 自分達の Risk を Manage する手段として見ている。」
(Graham Dimmock, EVP Partner Re, Bermuda)

【関連資料】
・Business Insurance June 26, 1997
・Best Week June 16, 1997
・Best Week June 23, 1997
・Merrill Rynch 資料 (May 2, 1997)
note:bf970709.htm
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保険会社と証券会社が組んで Capital Market を使って capacity を得た良い実例。
金額的にもかなり大規模。USAAとしても、元受での引受 capacity が上がったと言える。
保険マーケット以外に capacity を求める際にも、保険会社が cat model を使用するなどして保険会社ならではのノウハウを利用して鞘を抜こうとしている。

保険会社として、当社もこのあたりのノウハウが必要。
(対象リスクは Cat に限らないが、ある程度投資家に納得感を持って説明できることが重要。)

なお、Swiss Re も、California のEQに関して Cat Bond(期間2年間、USAAと同様、2種類有る。) を近々 Issue すると言われている。


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