【97年10月18日】

アメリカでミニバン等の自動車保険賠償(対人・対物)料率引き上げへ
(NYTimes 971017)


Sport utility vehicle(ミニバンやジープ等) や pick up truck は、対物や対人事故において相手に大きな損害を与えるという調査結果に基づき、米国の大手損保会社のいくつかは、これらの車に対する賠償保険料の引き上げに動きだした。
値上げの幅は、最大で20%程度と見られている。
逆に、乗用車タイプの車の料率は最大10%程度下がる見通し。

これらのデータはIIHS(Insurance Institute of Highway Safety)の Crash Test の結果にも裏付けられている。
(平均より72%ロスコストが高いというデータさえある。)

この種の車は車重が大きい上に車高が高いため、衝突したときに相手に与えるダメージが大きい。

一方、これらの車は、衝突した際の自車のダメージが小さいことも明らかだが、この要素は既に料率(車両保険)に織り込まれている。また、一般的には契約者自身の傷害保険(搭乗者傷害保険:13州でしか強制付帯となっていないため、全米での付保率は40%)にはこの要素は織り込まれていないが、今回、賠償料率の引き上げとともにこれを織り込んだとしても、それによる保険料引き下げ効果は小さく、全体としては、大きな保険料率アップとなる見込み。

各社間の競争原理も働くため、ライバル社との関係で一般的には保険会社はこのアジャストには乗り気ではなく、どの程度早くこの動きが広まるかはわからないが、大手社が動いたとなると、次第に広がって行くものと思われる。

会社別の動向は次のとおり。

・Farmers Insurance Group
既に算出方法を変更。
・Progressive Corporation
既に算出方法を変更。
・Allstate
データを検証中。もう少し明らかなデータが出るまで変えない。しかし、今回の動きには敏感。より細かい料率調整(more finely by make and model)を目指している。
・Nationwide
データを検証中。もう少し明らかなデータが出るまで変えない。
・Geico
データを検証中。もう少し明らかなデータが出るまで変えない。
・USAA
データを検証中。もう少し明らかなデータが出るまで変えない。
・State Farm(18.8%のシェアを持つ No.1 の会社)
pickup truck でも特に大型の車には差異を見出しているが、rate を adjust する程ではないと判断しており、今回の動きには無関心。
(ただし、同社の顧客は田舎が多いので、一般的な顧客の実体を表わしていないという見方もされている。)
・ISO(料率算定会:株式会社化し、サービスカンパニーになった。643の小さな損保が株主となっている。)
未だに相当古いデータを使っている。1970年代に軽量で高馬力のスポーツカーの料率を高くするように「パワーウェイトレシオ」を基に5つに設定した料率区分(これで1970年代に高馬力の車が売れなくなった。)を使っている。
この結果、逆にミニバン等の料率を安くしている(=時代に逆行)。
note:BF971018.htm
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キメ細かな料率の設定、アンダーライティングが競争原理の中でどのように働くかを垣間見る好例。

保険会社にとっては、以下が重要。
・データの蓄積
・分析
・機動的な料率修正
・他社の動向の迅速な把握
・以上に基づくマーケットセグメンテーション
・料率の営業末端・代理店への迅速な伝達


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