【98年6月6日(土)】

Y2K(西暦2000年)と保険会社(ZDNet-NEWS, London)


西暦2000年問題(Y2K)は保険会社にとって大きな負担となると言われている。
どの程度の負担になるかが議論されている。

業界関係者は、ほとんどの約款がY2Kによる保険責任を除外していると主張しているが、Directors & Officers(D&O)、 Errors and Ommissions(E&O)、CGL、Business Interruption 等の policy については、保険会社は Exposure があると言える。

ここへ来て、いくつかの、とりわけイギリスの保険会社は、Y2Kの絶対免責の clause を入れ始めている。

Gartner Group によれば、Y2K対応のためのシステムコストは全世界で3000億ドルから6000億ドルと言われているが、 6000億ドルの10%が保険会社の損失となるだけでも、保険業界の自己資本(3100億ドル)の20%に匹敵する。
(Merrill Lynch のレポート)

また、Y2K関連の弁護士費用は、New York の LeBoeuf 法律事務所によれば、米国だけで1兆ドルに達すると予測されている。

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−−−コメント−−−

アメリカにおける環境クレームは90年頃から業界で問題にされはじめ、94年のSEC(GAAP)開示、95年のSAP開示で ピークに達した。86年度(or87年度)までのクレームに対する reserve の増強により、保険業界にとって多くの 損失が現実化した。

Y2K問題の大きさは、最終的には約款解釈と Litigation の問題になろうが、潜在的な問題の大きさは相当大規模なものである。

西暦2000年を前にして、既にシステム関係の人員不足でシステムアナリスト・プログラマーの給与の上昇が顕著になっているが、 その他に間違いなく儲かるのは、LeBouef が皮算用するまでもなく、弁護士と言える。

保険会社としては、D&O、E&O の引受けについては、相当慎重にならざるを得まい。
(D&O、E&O については、事故発生年度の概念も極めて大きな論争になろう。)

一方、exclusion条項をしっかりと入れることは最低限必要。また、リスクをとって行く際には、Finite でということだろう。 ビジネスチャンスはどこにでもあると考えておくべきだ。
保険会社は、自社のシステムの見直しも大切だが、自分の商売についても、「経営」という観点で、守り(Exposureの管理と約款手当て)と責め(Y2K対応商品の販売)の両面から真剣に 考えておく必要がある。

時間はあまりない。


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