そして僕等は途方に暮れる
―Fate/stay nightより―

 聖杯戦争も4日間を繰り返す不思議な事件も一応の終わりを見せたそんなある日。

 目を覚ますと、衛宮士郎は、仰向けになって全裸で台の上に寝かされていた。

「なんでさっ!?」
と口癖にまで昇華した台詞が虚しく響き渡る。

 そこは遠坂邸の地下室。

 赤毛で幼さを印象付ける童顔、日々の鍛練やアルバイト、雑用によって鍛えられ、程よく筋肉の付いた小柄な身体が一糸纏わぬ姿で部屋の中央に置かれた硬い台の上に寝かされ、しかもご丁寧に四肢を鎖で台の四隅に繋がれていた。
「な、なんだよ、これ……くそっ」
 理解不能な事態に悪態をつきながら、士郎は、身を起こそうとするが鎖の戒めは強く、ジャラジャラと耳障りな音を立てるだけだった。
「落ち着け……確か昨日は遠坂に呼ばれて、家まできて……」
 混乱する思考を整理するため、士郎は、この事態に至るまでをたどった。
 士郎が通う学園の同級生にして魔術師、さらには士郎が魔術を師事する師匠でもある遠坂凜に用事があると呼ばれ、坂の上の洋館に呼ばれたのが夕暮れも迫った頃。
 話を切り出される前に出された紅茶を一口飲んだあと、突然睡魔に襲われて……
「遠坂ぁ〜!」
 眠りに落ちる寸前目にしたツインテールのあかいあくまの笑顔を思い出し、士郎は、呪詛の如くその名を叫んだ。
「やれやれ、まったく貴様という男は何処まで迂闊なのだ」
 突如聞こえた声のほうに顔を向けると、そこには銀灰色の短髪の長身の青年が立っていた。
 彼はアーチャー。
 聖杯戦争の折、遠坂凜が召喚した弓兵のサーヴァントである。
 今日はいつもの赤い外套はなく、黒のハイネックのノースリーブのような姿であった。
「あ、アーチャー!
 なんで、おまえがここに!?」
「何を言っている?
 ここは遠坂邸の地下だぞ?
 私が居ておかしい道理があるまい?」
 噛み付くような険しい視線を向ける士郎を軽くいなし、アーチャーは、肩をすくめて言葉を返した。
 二人ともとことん相性の悪いことを自覚しているので、向けられた皮肉に士郎は、アーチャーの小馬鹿にした態度をぐっと飲み込んで我慢した。
「そ、それはそうだけど……でも、これはいったいどういうことなんだよ!?
 なんで、俺、素っ裸でこんなところに寝かされてんだよ!?」
「あー、まあ、それについては凜から伝言がある。
 どうやら実験に付き合ってもらいたいらしくてな。
 直接言うのは憚られるので、一服盛らせてもらったのには一応謝罪の気持ちはあるらしいな」
「じ、実験って……な、なんだよ?
 遠坂、また俺に何させようってんだよ!」
 弟子になってからの数々の無理難題に無茶振りを思い出し、士郎は恐怖に顔を青ざめる。
「いや、残念ながら命に関わるものではないぞ、今回は。
 なんでもほしいものがあるので、協力を要請したいということだ」
「それならこんなことして脅さなくても手伝ってやるのに、何だって俺をこんな恰好にしたんだよ、遠坂は?」
「何を言う。
 凜が意味も無くこんなことをするはずがないだろう?
 きちんと合理的な意味があるのだ」
「はっ? い、意味があるって、何だよ?
 あいつ、いったい何ほしいってんだよ!」
 嫌な予感を背筋に感じ、顔を引き攣らせる士郎にアーチャーは、珍しく視線を反らし、ばつが悪そうな顔で答えた。
「ま、魔術師の精液だということだ」
 その一言に長い沈黙が地下室を満たす。
 そして、しばらくして士郎が搾り出すような声を出した。
「……アーチャー」
「……何だ? 衛宮士郎」
「とめろよ!」
「無理だ!」
「即答かよ!?」
「しかたあるまい!
 ちゃんとした理由を盾にされては、私に断ることが出来るわけないだろう!」
「ちゃ、ちゃんとした理由?
 なんだよ、それって……」
 訝しげな顔を向ける士郎に、アーチャーも普段の5割増で眉間にシワを寄せ、大きくうなずいた。
「間桐桜の事情は知っているだろう?」
「桜? 桜がどうしたっていうんだ!?」
 後輩でもあり、遠坂凛の養子に出された妹にして、共に聖杯戦争を生き抜いた間桐桜の名に、士郎は、驚きの声を上げる。
「元は遠坂の人間であったのを無理な調整で間桐の魔術に馴染ませられたのは、貴様も知っているだろう?」
「ああ、そのくらい知ってるさ。
 でも、たしか、その問題は、遠坂がなんとか頑張って桜の中の蟲はどーにかなったんだろ?」
「そのとおりだ。凛の努力で一応の解決は見せたのだが、しかし、未だ後遺症らしきものが残っているのだ」
「後遺症? それってなんなんだよ!?
 桜は、大丈夫なのか?」
「今すぐどうこうなるというものではない。
 しかし、対策を練っておくに越したことはないという判断でな。
 貴様に協力を求めたというわけだ」
「そりゃ、協力は惜しまないけど……それと俺の……その、せ、精液と何の関係があるんだよ!」
「知らぬわけではあるまい。
 間桐桜は、胎内の蟲どもを沈めるために定期的に魔術師の体液を必要としていたということを。
 それゆえに、衛宮士郎、貴様の精液を摂取、分析し、間桐桜の後遺症を抑える薬を作り出すつもりなのだ」
「ちょっ、ま、待てよ!
 なんで、そこで精液になるんだよ!
 体液なら、血でもいいんじゃないのか?
 な、なんで、そこで、せ、精液なんて……」
「別に血液でも構わんのだが、そうなると、衛宮士郎、貴様の血液を限界まで搾り取ることになるかもしれないのだぞ」
「ええっ! な、なんで、そ、そこまで!
 と、遠坂、どんだけ、俺の血がいるってんだよ!?」
「さてな。血液に含有された魔力となるとかなりの量が必要になると言うことではないか?
 だが、精液であるならば、吐精の際のエネルギーも加わり、血液よりも濃度の高い魔力が含まれるのはたしかだ」
「……うう、でも、な、なんで、こんな騙まし討ちみたいなことするんだよ。
 直接、俺に言えば済むことじゃないか。
 桜のこともあるし、いくら恥ずかしいことでも、俺は、協力しないなんとことないぞ」
「貴様、凛に直接『衛宮くん、実験に使うから明日までに限界まで精液取ってきて』とでも言えというのか?
 そう言ったが最後、ガンド乱れ打ちは基本として、現場となった衛宮邸もしくは遠坂邸、はたまた穂群原学園校舎は壊滅の憂き目に遭うぞ!」
 意外と似ているモノマネを披露するアーチャーが示唆した惨状を容易に想像した士郎は、顔を青ざめさせ、剥き出しのままの萎えたモノが恐怖にキュッと縮こまった。
「わ、わかった。
 じゃ、じゃあ、せめて、家に帰らせてくれ。
 ここで、このままってのは、さすがに……なあ、わかるだろ?」
「わかってやりたいが、それも無理だ。
 こういったものは、鮮度が命だからな。
 この部屋には、凛が魔術を施していてな。
 貴様が放ったものを瞬間的に封結させる手はずになっている。
 衛宮邸では、これほどの術を施すのは無理だろうし、第一、今あの家に逗留している者たちにバレずにできるのか?」
 アーチャーに言われ、士郎は、押し黙る。
 聖杯戦争後、衛宮邸に居候をしているのは、士郎のサーヴァントであるセイバーと魔術協会に所属していた元・封印指定執行者の魔術師バゼット、「教会」から派遣された監督役のカレン。
 それに加え、昔馴染みの姉的存在である藤村大河、凛や桜、桜のサーヴァントであるライダー養父・衛宮切嗣の娘であるイリヤスフィールなどの多数の人間が出入りする衛宮邸で終始家事に負われている士郎にプライベートな時間はほとんどなく、そんな中、凛からの依頼とは言え、自慰をしているところを目撃されようものなら、自宅でありながら居場所がないと言う結果に陥るだろう。
「それじゃしかたない、か。
 ここですることにするから、鎖、外してくれ」
「いや、それには及ばない。
 貴様の精液は、私が残らず搾り取ることになっているのでな」
「はあぁっ!?
 ど、どういう、そ、それこそ、どういうことだよ!
 な、なんで、お前なんかに、お、オナ、……されなきゃいけないんだよ!」
「違うな。オナニーではなく、この場合、手淫と言うべきだろう」
「そ、そんなこと、どうでもいいんだよ!
 なんで、お前にそんなことされなきゃいけないんだって言ってんだろ!?」
「私は、限界までと言ったはずだぞ。
 自慰では、貴様が満足する二回か三回までが限度だろうが、外的要因からの刺激であれば、さらに搾り取れるからな」
 そう言って、アーチャーは、すっと腕を伸ばし、萎えたままの士郎のモノを握り込んだ。
「うわぁっ、やめ、ろ、あ、アーチャー!
 こ、これも遠坂の指示なのか!?」
「いや、そこまでの指示は受けてない。
 方法は任されているのでな。
 なぁに、覚えたての頃、1日最高6回の記録を出した貴様ではないか。
 私の手が加われば、その記録を塗り替えることぐらい軽い軽い」
「ま、待て、アーチャー!
 お前、なんか、や、やけになってないか!?」
 はっはっはっはっと乾いた声で笑うアーチャーの目が笑っていないことに気付き、士郎は、股間を弄る手の感触に耐えながら声を上げる。
「やけにならんで、こんなことやってられるか、たわけ!
 遠坂のやつ、なにが『昔の自分なんだからどうすればいいかお手の物でしょ』だ!
 だいたい、昔っから、アレをしろ、コレをしろ、オレに無茶ばっかり言って、真冬のテムズ川に叩き落としただけじゃ物足りないのか、こんちくちょー!
 ああもう! 他の記憶は、とっくに磨耗してるってのになんでこの恐怖だけは消えないんだ!
 地獄に堕ちろマスター!」
 声を荒げ、思わずいつもの口調を崩し、士郎のようになるアーチャー。
 英霊となった未来の自分の錯乱した姿を見て、自分にとって、あのあかいあくまの存在がどれほど大きな影を落としているのかを知り、士郎は、自分の将来に途方もない不安を今さらながらに覚えた。
 フラッシュバックした恐怖に捕らわれていたアーチャーだが、ようやく落ち着いたのか、すーはーと深呼吸を繰り返し、なんとか気を取り直させた。
「というわけだ、衛宮士郎。
 大人しくしなくてもいいが、まあ、あきらめろ」
「もういいよ。好きにしてくれ、アーチャー」
 二人分の我が身を嘆き、士郎は、自嘲気味に笑った。

 萎えたモノが無骨な男の手で弄られ、その感触が甘い快感を起こし、士郎は、小さな呻き声を漏らす。
 そんな士郎のモノをただ黙々と弄り続けるアーチャーの無表情な顔を見つめ、士郎は、ひとつ大きなため息を吐いた。
「気を逸らすな。私の手の動きに集中して、さっさと勃起させろ」
「お、おまっ、ぼっ、勃起って……いや、なんだ、その……物心ついてから、はじめて触られたのが、未来から英霊になってやってきた自分ってのは、シュールだな〜って思ってさ」

※注意※このSSは、『PS2版:Fate/stay night』の設定の下、お送りしています。

「……まあ、その点は、同情しないでもないが……これも運命だ。
 あかいあくまと関わった我が身を呪うがいい」
 そう言いつつも、せわしなく手を動かすアーチャーの巧みな手技に、士郎のモノは、だんだんとその硬度を増していった。
(アーチャー……こいつ上手い……ていうか、なんか妙に俺のツボ刺激してくるってのは、やっぱり、俺とこいつって、同一人物だってことか……
 それにしても、うっわ、いつも自分でやってんのと同じ感じなのに、いつもより気持ちいいような……当たり前か。
 こいつの剣技が俺に合うのと同じで、今俺が味わってるのは、衛宮士郎が長年をかけて完成させた手コキなんだもんな……って、なに完成させてんだよ、未来の俺!)
 股間から伝わる甘美な快感が良い分、さらに情けなさを感じ、士郎は、心の中で虚しい叫びを上げた。
 しかし、身体は正直で、アーチャーの手の中で士郎のモノは徐々に形を変えていく。
 普段からそこを刺激しているのか、未使用な割に綺麗に先端を露出させ、えらの張り出した亀頭は、初々しい濃いピンク色に染まり、下腹に水平になるまで屹立し、鼓動に合わせて、ヒクヒクと蠢いていた。
「あー、私が言えた義理でもないが……余りヌキ過ぎるのも考えものだぞ」
「う、うるさいっ!
 聖杯戦争に関わってからそうでもねえよ!
 つか、こればっかりは、ホント、お前にだけは言われたくないぞ!」
 余計な忠告に思わず声を荒げる士郎に軽く同情しながら、アーチャーは、完勃ちして弄りやすくなった勃起を本格的に扱き始めた。
「んっ、うっ!
 あっ、はあうっ、んっ、ん、んっ……!」
 激しいが痛みを感じるほどでもない手の動きが生み出す快感の電流が全身を駆け巡り、士郎は、思わず漏れそうになる嬌声を必死で堪えた。
 かつての自分が悶え喘ぐ姿に、アーチャーは、どーにもやるせなさを感じながらも、それでもマスターの命令だと言い聞かせ、自分の持てる技術を尽くし、手の中のモノを扱いていく。
 そのうち、どんどん快感が高まり、士郎は、先端から滲み出た先汁で濡れたアーチャーの手の動きに合わせて、腰を動かし始め、手が動くたび、クチュクチュと濡れた音が地下室に響いた。
「ふっ、ああぁっ、んっ、んうぅっ!」
 そして、身体を数度、ビクンビクンっと痙攣させると、亀頭の先端から白濁した体液が噴き出し、股間から全身を痺れさせる快感の電流が放たれ、士郎は、つぐんだ口の中で享楽の声を押し殺した。
 吐き出された精液は、遠坂凛の施した魔術でどこかへと瞬時に消え去り、アーチャーの手の中には、先走りの液に濡れ、未だ硬度を保ったままのモノがビクビクと快感の名残りを見せている。
「続けて二発目いくぞ、衛宮士郎」
 そう短く告げると、アーチャーは、先ほどのように勃起を激しく扱き、さらには空いた手のひらで濡れそぼった先端を包むとぐりぐりと握り込んだ。
「くあぁっ! ちょっ、おっ、で、出たばっかはっ!
 んあっ!」
 達したばかりで過敏になった亀頭を責められ、士郎は、激しく身体を揺らした。
「ガマンしろ。多少無理でも出るなら出しておくに越したことはない」
「むっ、無理っ、無理だって!
 そ、なあぁっ! ひうっ!」
 過剰な快感に目の奥がチカチカ明滅するような感覚に翻弄される士郎の制止を無視し、アーチャーは、ひたすら事務的に手を動かした。
「ちょぉ、ちょぉ、き、きつ、あっ、ふあぁっ!」
 過敏になっている先端からの強烈な刺激に言葉を続けることもできず、士郎は、何とか逃れようと四肢を暴れさせるが戒める鎖に勝てるわけもなく、地下室に耳障りな音を響かせるだけだった。
 先走りの汁が留めなく溢れ出し、アーチャーの手の動きに合わせ、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。
「もぉ、や、やめぇ、ひんっ、ち、ち○こ、がぁ、お、俺の、ち○こ、限界ぃっ!」
「何を言う。まだまだ、こんなものではないはずだそ、衛宮士郎」
 磨耗した記憶にうっすらと残るかつての自分の健全男子な欲求に、アーチャーは、弱音を吐く士郎を鼓舞する。
 そんなアーチャーの手淫による快感は、少年を容赦なく責め立て、士郎は、身体を左右にくねらせ、悶え喘いだ。
「はあぁっ! 来るっ! ま、また、で、出るっ!
 はぁっ、あんっ! ひぃ、ああぁっ!」
 ほどなくして、士郎は、再び全身を震わせて、その先端からたっぷりと精液を吐き出した。
 硬い台の上に身体を横たわった士郎は、吐精後の疲労感に全身を覆われ、全力疾走でもしたかのように荒い息を繰り返し、胸を上下に動かしている。
 さすがに、これ以上勃起を刺激するのは忍びなくなったのか、アーチャーは、士郎の股間から手を離すと、今度は、上下する両の胸で硬く尖った乳首を指先で捉え、爪の先で軽く引っ掻いた。
「んうっ!」
 先ほどとは違う箇所からの刺激に、士郎は、小さく声を上げるのを確認すると、アーチャーは、今度は大胆に乳首を摘み上げた。
「なっ、そ、そんな、とこ、お、おい! アーチャー!」
「安心しろ、男でもここが感じるのは同じこと。
 陰茎への刺激が落ち着くまで快感を持続させる必要があるからな。
 こちらを弄らせてもらう」
 二度の放出でさすがに半萎えになった勃起に視線を向け、淡々と告げるアーチャーの指先が乳首を弾くたび、そこから士郎の身体に、ぞくぞくとした快感が流れ、士郎は、背筋を仰け反らせる。
「んふっ、ふっ、くぉっ……んっ、んぁっ……」
 アーチャーの指遣いは巧みで、長年培ってきた技巧を感じさせ、士郎は、ますますこの先自分がどういう道を歩んだのかと気持ちを落とした。
「どうした? 衛宮士郎。
 悩んでいる暇があるなら、妄想でも働かせてさっさと回復させたらどうだ」
 そんな士郎の様子に気付いたのか、アーチャーは、冷たく言い放つと、強めに乳首を捻り上げる。
「ひぐぁっ!」
 痛みすら覚えるあまりの刺激に士郎は、悲鳴を上げる。
 しかし、予想外に良かったのか、萎えかけた勃起は、徐々に硬度を増していき、アーチャーは、再びその勃起を扱き始めた。
「はっ、はあぁ……んうっ、ん、んう〜……」
 三度目ともなるとさすがに感度も落ちてしまい、士郎は、片方の乳首と勃起に与えられるぬるい快感に不満気に声を漏らした。
 アーチャーもなかなか達しないのに痺れを切らしたのか、突然、士郎の胸元に顔を寄せると、もう片方の乳首にぞろりと舌を這わせた。
「んはあぁっ! お、まっ、あ、アーチャー!」
 いきなりの行動に、思わず声を上げる士郎の反応に気分を良くしたのか、アーチャーは、さらに士郎の乳首を舌先で弄んだ。
 舌が動き、なぞり、またはきつめに吸われるたびに、士郎は、腰をガクガクと揺らし、どぷどぷと先汁を溢れ出させる。
「ああぁっ! くっ、そぉっ!
 おま、ああぁっ!」
 新たな刺激に、士郎は、身を悶えさせ、シコシコとせわしなく扱かれる屹立の先端を震わせ、三度、精液を迸らせた。
 連続して、三度吐精させられた士郎は、全身を弛緩させ、朦朧とした頭で地下室の天井をただ見つめるだけだった。
 アーチャーは、士郎の四肢を戒める鎖を外すと、脱力した両足を持ち上げ、左右に大きく開かせる。
 あますとこなく股間を、それこそ尻の穴までさらす格好を取らされ、逃れようとするが、全身に力が入らない士郎は、力なく身をよじるしかなかった。
 そんな抵抗を簡単に抑え込み、アーチャーは、先汁で濡れた自分の人差し指をいきなり士郎の後孔へずずっと挿し入れた。
「ぐおぉっ!」
 考えもしなかったところへの突然の異物感に士郎が声を上げる。
「あ゛、アーチャー……おまっ、な、なんとこっ……ぅああぁっ!」
 首を起こし、睨みつける士郎に応えず、アーチャーは、目の前で萎えかけた勃起にもう片方の手を添えると、敏感になりすぎている先端には触れないように優しい手つきでにぎにぎと刺激を加える。
「んんぅっ」
 先ほどとは違う緩やかな刺激に、士郎は、思わずうっとりとした声を漏らす。
 アーチャーは、挿し込んだ指を馴染ませるようにゆっくりと動かしながら、勃起の下に実る皺だらけの肉袋に顔を寄せ、いきなり舌を這わせた。
「んはぁっ、ああぁっ、そ、そなっ……ああぁっ」
 濡れた熱い舌が這う感触に声を上げ、士郎は、ゾクゾクと背中を震わせる。
 アーチャーは、ちゅぷちゅぷと濡れた音を立て、士郎の肉袋を唾液塗れにしながら、ゆっくりと屹立を扱いていく。
 そんなゆるい快感に士郎が浸り始めたころを狙い、アーチャーは、挿し込んだ指をぐりっと動かし、抉るように直腸の上部を刺激した。
「ひゃうっ!」
 すると、抉られた部分から電流のような快感が流れ、士郎は、悲鳴のような甲高い声を上げて、台の上で身体をビクンっと跳ね上げた。
「あ、あーちゃー……な、なんだよぉ、い、今の……」
 考えもしなかったところからの強烈な快感に、士郎は、力なくアーチャーに問いかける。
「さすがに陰茎への刺激は限界だろうからな。
 前立腺マッサージに移ることにする」
「ぜ、ぜんりつせ……? な、なんだよ、それぇ!
 お、お前、そんなとこして、何になるってんだよ!」
「なんだ、知らんのか? 肛門に指を挿し入れ、仰向けの場合、先ほどの、この辺だな」
 言いつつ、アーチャーが再び指を上部に抉るように動かしすと、
「ひあぁんっ!」
 士郎の身体はまたビクンっと跳ね上がった。
「と、このように快感が得られるというわけだ」
「……ば、ばかやろぉ……な、なんてことしやがるんだ、アーチャーぁ……」
 怒りにまかせ、怒声を浴びせたいのだが、あまりの衝撃に士郎は、弱々しい声で、アーチャーに言うしかなかった。
 そんな士郎を無視し、アーチャーは、説明すべきことは終わったとばかりに黙々と手と舌を動かした。
「ひぃ、やぁっ! あっ、やぁっ、んあっ、ひ、く、くるし、やぁ!
 はぁっ、んっ、そ、そな、やあぁっ!
 お、俺、な、んっ、尻で、こ、こな、にぃ……あぁっ!」
 異性との経験もないまま、まったく知識外の快感を与えられ、しかもそれが英霊となった自分にされているというとんでもない状況に、士郎は、涙目になりながらも身体をビクビクと震わせ、アーチャーに扱かれていた屹立の先端からドプドプと精液を吐き出した。
 吐き出された白濁液は、例によって瞬時に消え去り、透明な先汁に濡れ、ドクドクと脈打つ勃起を握ったまま、アーチャーは、ふと不思議そうな顔で尋ねる。
「敏感過ぎではないか?
 おかしいな、まだこのころは、こっちの経験はなかったように思うのだが……まさか、貴様、すでに開発済みか!?」
「ぁアホ抜かせえぇ!
 んな開発されててたまるかぁ!
 ……って、お前、今さらっととんでもないこと言ってたなかったか!?
 『このころは』ってなんだよ!
 お、俺、まさか、このまま行くと男に走んじゃないだろうな!?」
「何をバカなことを……そんなわけあるまい。
 第一、周りに、凛、セイバー、桜、イリヤ、加えて、藤ねえがいるのだ。
 いくら女性恐怖症になろうとも、この監視網をかいくぐって誰かと付き合うなどできるものか!」
「そ、そうか……そりゃ良か……良くねえよ!
 なんだよ、そのお先真っ暗な未来!
 何か!? それじゃあ、俺は、この先、誰とも結ばれることなく短い生涯を終えるってのか!?」
「……いや、その辺りの記憶はないな。
 ふむ。やはり幸せな記憶ほど優先的に磨耗していくものなのだな」
 などと、しみじみ呟くアーチャーを見て、士郎は、
(じゃあ、遠坂との記憶がいつまで経っても磨耗しないってのは、よっぽど……)
と内心肝を冷やした。
「ま、まあいいや……それより、け、経験ってなんだよ!
 お、俺、この先、し、尻でイくようになる予定なんか組んでないぞ!」
 気を取り直した士郎が尋ねた途端、アーチャーの表情が一瞬にして暗転した。
「あ、アーチャー?
 お、おい、なんだよ。い、いきなり、黙るなよ。
 つーか、黙るなら、指、抜けよ、なあ?」
「……時計塔で」
 恐る恐る声をかける士郎に気付いているのかいないのか、ぼそっと口を開くアーチャー。
「と、時計塔って……ああ、ロンドンの魔術協会か」
 それが遠坂凛の留学先であり、いずれ、自分もセイバーやアーチャーを伴って行くことになる予定の魔術師の総本山であることに士郎は、思い当たる。
「……研究の費用、学費、生活費、セイバーの食費と魔術用の宝石代……」
 そんな士郎をおかまいなしに、アーチャーは、暗い顔でぶつぶつと呟き続ける。
「バイト、限界、俺もアーチャーもフル回転……え? 割のいいバイト?
 ちょっ、そ、そな、とこっ!
 と、遠坂、そんな道具、いったいどこで!
 だ、ダメだ、やめっ、あぁ、も、もう、で、出なっ、あ、ああぁぁぁっ!」
「お、おい! アーチャー! あ、アーチャー!
 しっかりしろ! 気を確かに持つんだ!」
「…………はっ! あ、ああ、あ、わ、私は、いったい……」
 真っ青な顔のまま、突如、叫び出した弓の英霊に必死で呼びかけ、士郎は、なんとかアーチャーを正気に戻した。
「もういい……もういいから、アーチャー。
 とっとと次をやってくれ」
 いろいろと聞きたいことは多々あるのだが、それを聞くには、それ相応の覚悟が必要になると思い、士郎は、あえて英霊エミヤと言う名のパンドラの箱に蓋をし、自分で自分の足を抱え、アーチャーが弄りやすいように脚を開いた。
「あ、ああ、そうだな、よし、再開といくか」
 アーチャーも深く考えることを無意識下で避け、士郎の身体への刺激を再開させる。
 前立腺を弄られ、硬度を保ち続ける士郎の勃起をアーチャーは、手の筒で上下に扱き、陰嚢を舌で舐めまわす。
「んっ、ふあぁっ、んおぉっ、んっ……」
 先ほどの衝撃は薄れたのか、士郎は、股間から発する快感に敏感に喘ぐ。
 何故か抵抗もなく素直に身体を開く士郎の様子を不思議と思いながらも、アーチャーは、手を緩めることなく、今度は、何度も精を吐き出した屹立の先端を口の中にすっぽりと咥え込んだ。
「あっ、はうっ!
 あ、おっ、なっ、そ、そこまです……ああぁっ!」
 後孔に指を挿し込まれたのが想像外だとしたら、これは、さすがに予想外のことで、士郎は、思わず股間に顔を埋めたアーチャーの頭を両手で掴んだ。
 しかし、アーチャーは、それに介さず、口内に納めた先端を熱く濡れた舌で飴玉のように舐めまわす。
 その手の雑誌でしか見たことのない初めてのフェラチオに、士郎は、戸惑いながらも濡れた舌のざらついた感触が亀頭を這い回ると、口からあられもない嬌声を上げてしまう。
「はあぁぅ! あっ、んやあぁっ!
 いぃ、ひぅ、あ、はあぁっ!」
 年頃の男子にとって、セックス以上に興味があるであろう口淫の刺激は、経験値0の士郎にはたまらないもので、さらには前立腺への刺激も重なり、あっけなく五度目の精をアーチャーの口内に迸らせた。
「んぐっ、んっ、くっ」
 口の中で跳ね上がる亀頭から精液が勢いよく放たれ、突然の噴出にアーチャーは、むせながらもなんとか飲み下した。
「んくっ、き、貴様、出すときは、出すと先に言え!
 私に何を飲ませ……うっ、な、なんだ、こ、これは……」
 とんでもないモノを飲まされ、怒ろうとしたアーチャーだったが、突如、身体の芯が熱くなるような感覚に襲われた。
「ど、どうした?
 アーチャー……なんか、お前、顔赤いぞ?
 そういや、飲んだって、せ、精液をか?
 でも、遠坂の仕掛けた魔術ですぐに消えちまうんだろ、それ?」
 許容範囲限界の射精を強いられ、心身ともにへとへとの士郎に問われ、アーチャーは、はっと顔を上げる。
「しまった! 迂闊だった……凛の仕掛けた魔術は、室内への干渉。
 しかし、私が口内で放出させてしまったため、魔術の干渉を受けなかったのだろう」
 身体の芯の熱がさらに疼きだし、アーチャーは、息を乱し、つらそうに顔をしかめる。
「じゃあ、次から気をつければ、いいってことか。
 まあ、そろそろ限界も近いし、せいぜい、あと1回くらいだけどさ。
 でも、お前、なんかつらそうだけど、どうしたんだよ?
 まさか、今飲んだのに当たっちまったとかじゃないよな?」
 ハハハっと軽く笑う士郎に、アーチャーは、無言のまま、熱に浮かされた眼差しを送る。
「……え? ま、待てよ、アーチャー……なんで黙ってんだよ。
 まさか、今言ったの、本当じゃないだろうな?」
「そのまさかだ……くそっ、こんなことになるとはな……」
 悪態をつきながら、アーチャーは、すっと身を起こすと、魔力で編まれた服を解除し、鍛えられた赤銅色の肌をさらす。
「おおぉ、すご……ってえ、な、なんだよ、それぇっ!」
 その姿に思わず見とれる士郎だったが、不意に視界に入ったアーチャーの股間のモノに悲鳴を上げる。
 見れば、アーチャーの股間では、士郎のモノと形は似ているが若干サイズアップしたモノが天をつく勢いでビンビンにそそり立っていた。
「仕方あるまい。貴様と私とは元は同一人物。
 貴様が発する魔力は、私に馴染みがいいのは道理だ。
 その影響が私の中であらぬ反応を起こし、結果……まあ、こういうわけだ」
「え、えと、つまり、だ……アーチャーは、俺の魔力のせいで、その、なんだ……発情しているってわけか?」
「ひとを犬猫のように言うな……まあ、近い表現ではあるが……」
 立派に成長を遂げた股間のモノを凝視する士郎の視線を感じながらも、どうにも治めることができない情欲に、アーチャーは、所在無さ気に、ポリポリと頭をかいた。
「事情は分かったけど……なんだよ、裸になることはなかったんだじゃないか?」
 本能的に何かの危機を感じ取ったのか、台の上で後ずさり、士郎は、アーチャーから距離を取ろうとする。
 そんな士郎を追いかけるように、アーチャーもまた台の上に乗り、士郎の両の足首を掴んだ。
「まあ、物は考えようだ。私と貴様の魔力がほとんど同じなのは今の通りだ。
 ゆえに、私が貴様に魔力を抽入し、補充すれば、あともう少しの無茶は効くのではないだろうか?」
「ま、魔力の抽入?
 そ、それっていったいどうやって……いや、いい!
 言うな! なんか、すっごいヤな予感するぞ、俺!」
「なあに、そんなに難しいことではない。
 私が貴様のここに突っ込み、精を注いでやるだけのこと」
「だから、言うなっていっただろう〜!
 い、いやだぞ! い、いくらなんでも、そこまですることはないだろう!
 第一、何が悲しくて童貞捨てる前に、男に、しかも、あんたに犯されにゃならんのだ!」
 あまりの提案に、当然ながら激しく拒絶する士郎。
 そんな士郎をおかまいなしに、アーチャーは、掴んだままの足首で強引に身体を引き寄せ、両足を大きく開かせる。
「や、やめっ……この、こら、はな、せぇっ!」
 何とか逃れようと暴れる士郎だが、6度も連続で精を放った後の体力をすり減らした状態ではなんの役にも立たなかった。
 そして、無言のまま、若干息を荒くしたアーチャーは、股間で雄々しく脈打つ屹立に手を添えると、先ほど自分で指を挿し入れていた後孔に先端を宛がうと、腰を前に押し進め、目の前で怯えて震える少年の中に剛直を突き入れた。
「ふぐあぁっ!……あっ、んぅ、ぐ、はぁっ……」
 激しい痛みと熱い塊が直腸を犯す感覚に悲鳴を上げる士郎。
「んっふぅ……」
 一方、アーチャーは、いきり立った剛直を熱く包み締め上げる感触に、磨耗した記憶にかすかに残る性の快感を思い出し、一つ、ため息を漏らした。
 異物に侵入された後孔でドクドクと脈打つ剛直の熱を感じ、士郎は、はふはふと苦しげに息を繰り返す。
 士郎の苦しげなようすに、アーチャーは、気遣うように、そっと赤毛を撫でた。
「んっ、な、なんだよ、あ、アーチャー……」
「いや……なに、仕方のないこととはいえ、無茶をさせているからな」
「ぜんっぜん仕方なくないんだが……もう、んうっ、い、いいや……ここまでしちまったんだから、さっさと終わらせようぜ。
 第一、時間掛かり過ぎで気になった遠坂がやってきたら、俺死ねるぞ」
「それは……私も同じだな。
 それでは、行くぞ!」
と、ひとつ気合を入れて、アーチャーは、両手で士郎の腰を掴み、腰を前後に動かし始めた。
「ひっ、ぐ、おぉっ……んはあぁっ!
 ひぃっ、ひはぁっ、あ、あ、んんぅっ!」
 直腸を蹂躙する熱い塊に、士郎は、呻きを上げる。
 排泄にしか使われたことのない器官への無茶に、痛みと苦しみに襲われる士郎だが、先ほど責められた部位を擦られるたびに、甘美な快感が発し、次第に歓喜の嬌声を上げていった。
「んっ、はっ、んうっ、くふっ、ふっ、は、ふぅっ……」
 アーチャーもまた久方ぶりに味わう性の快感にだんだんと夢中になり、ただひたすらに腰を振り続けた。
 腰を前後するたび、熱く締め付ける内壁に擦られた剛直から伝わる快感に全身をおののかせ、アーチャーの動きが激しさを増す。
 かつての自分の身体をまるで性具のように扱うという事実がまたアーチャーの心を乱し、その背徳感がさらに快感を底上げし、士郎の中でその剛直は、さらに密度を高めた。
「はあぁっ! んはあぁう!
 ふ、ふと、太いぃ、あ、な、中、ま、また、お、おっきく、ああぁっ!」
「どうした?
 そんなに太いのが嫌いか?
 そんなはずあるまい?
 貴様のここは嬉しそうに震えているではないか」
 そう言って、苦しがる士郎の勃起を掴み、意地の悪い笑みを浮かべ、アーチャーは、手の中のモノを上下に扱く。
「ひゃあうっ! ひぃ、や、やあぁ!
 そ、んら、そこ、触るの、ら、らめえぇ!」
 剛直で前立腺を擦られ、さらには快楽の塊である勃起を扱かれ、士郎は、ろれつの回らない口で悲鳴を上げる。
「んうっ、あ、ああぁっ」
 士郎の勃起を扱くたびに、突き入れた剛直を直腸がキュンキュンっと締め付け、アーチャーは、その快感に小さく歓喜の声を上げ、少年の最奥に向け、勃起を弾けさせ、熱い精の迸りを解き放った。
「ひにゃあぁっ、あちゅ、あうっ、ひ、お、奥、にぃっ、ひああぁ!
 や、なんっ、ひうっ、あ、あちゅいぃ!
 へ、変ぅ、か、身体、熱う、ひっ、やあ、んっ!
 出う、ま、また、ち○こ、出うおぉっ!」
 身体の奥に精液を流しこまれた瞬間、士郎の身体にも先ほどのアーチャーと同じような現象が起こり、強引に流しこまれた魔力に性感が増幅され、ガックンガックンっと全身を激しく痙攣させ、無骨な手に包まれた勃起からビュクビュクと精液が噴き出した。
 ほぼ同時に達し、寒々しい地下室に二人分の熱と激しい息遣いが響く。
 しかし、すぐにまた、アーチャーは、腰を動かし、快楽を貪る。
 浅黒い肌に汗をびっしりと浮かばせ、カクカクと振り立てる尻にえくぼが出来ていた。
「ひはぁっ! ああぁっ、あうっ、あ、はあぁ!
 あ、アーチャー、ああぁ、いあっ、あ、あーちゃ、ああぁぁっ!」
 士郎もまた後孔を穿つ剛直に早くも慣れ、自らも快感を追うために腰をくねらせ、自分を犯す未来の自分の名を何度も呼んだ。

 マスターである遠坂凛から魔力供給を受けたアーチャーに魔力を注入された士郎が濃度を増した魔力の篭った精液を吐き出し、それを遠坂凛が研究に用いる。
 ある意味、永久機関のようにも見えるこの行為は、鳴いて喚いてもう無理と叫んでも士郎が気を失うまで延々と続いたのであった。

「ありがと、アーチャー。
 これだけあれば、充分だわ」
 数時間後。遠坂凛の部屋に呼ばれたアーチャーは、マスターである少女に礼を言われた。
「私は、マスターの命令を実行しただけだ」
「まったくあんたって……まあ、いいわ……そ、それで……え、衛宮くんは、どうなの?」
 そっけなく応える自分のサーヴァントに苦笑しながらも、凛は、落ち着きのないようすで尋ねる。
「ああ、かなり無茶をさせてしまったからな。
 事後報告で悪いが、客室の一つを使わせてもらって休ませてある」
「む、無茶って……あんた、いったい士郎をどんな目に遭わせたのよ?」
「君に言われたとおりのことをしたまでだ。
 命令を復唱してもいいのだが、君に暴れられては邸が崩壊しかねんので避けるが、別に、根こそぎ搾り取っても構わんのだったのだろう?」
「……ね、根こそぎしぼ……わ、私は、そこまで頼んだ覚えはないわよ!
 た、ただ、その……多ければ、いいかな〜ってだけで……」
「まあいい。せっかく衛宮士郎が協力した結果だ。
 あいつの苦労を思うのなら、せめて、間桐桜の薬の開発を頑張るのだな」
 何を想像したのか頬を赤らめて口篭る凛に、一言告げて、アーチャーは、部屋から姿を消したのだった。

 場所は変わって、遠坂邸の客室。
 丁寧に用意されたベッドの中で、士郎は、静かな寝息を立てていた。
 そこに、アーチャーが姿を現すと、ベッドに近付き、眠る士郎の髪をそっと撫でた。
「……んぅ? あ、あーちゃー、か?」
 目を覚ました士郎が寝ぼけた声で、アーチャーに声をかける。
「ああ、すまんな、起こしてしまったか。
 ああ、いい。そのまま寝ていろ。
 気を失っていたのだ。無理をするな」
 身を起こそうとする士郎を制し、アーチャーは、掛け布団を直した。
「……気をうしな……て、あっ、ああああーちゃー!
 お、お前、なっ、お、俺に、お、俺、あ、あんなこ、とをおぉっ!」
 地下室で何をされたかをまざまざと思い出し、恥辱に身悶えし、恨みの声をあげる士郎。
「何を言う。貴様も同意したことではないか。
 第一、最後には甘えてねだって、私の腰に足を絡ませて自分で陰茎を扱いてい……」
「言うな言うな言うなああぁぁぁぁっ!
 ひ、他人事だと思って、何を言うか、このばかやろー!」
「そう騒ぐな。腰に響くだろうし、凛に気付かれてしまうぞ」
 騒いで喚く少年を軽くいなし、アーチャーは、落ち着かせるために、ポンポンっと頭を撫でると、士郎は、不満気に口をつぐんだ。
「まあ、実験材料は、充分だと言っていたからな。
 今回のようなこと、二度と要求されることなどあるまい」
「でも……ホント、どーすりゃいいんだよ、俺」
「ああ〜……それだがな……少し困ったことが起きて、な」
 落ち込む士郎の傍らで、アーチャーが珍しく困った顔で呟いた。
「なんだよ、お前の困ったことなんか構ってられるかよ。
 こっちはこっちで青少年に大問題なんだからな〜」
「いや、それが私だけのことならいいのだが、その、つまり、だな」
「ん? なんだよ、もう何があっても驚かないぞ、俺」
「実は、繋がってしまってな」
「はあ? 繋がるってなん、だ、よ……て、おい、ま、まさか!」
「ああ、そのまさかだ。貴様と私、魔力供給のラインが繋がってしまってるのだ」
「はあ!? な、なんでだよ!
 なんで、俺とお前の間で……」
「どうやら私が貴様に魔力供給をしたのがまずかったらしくてな。
 魔術師からサーヴァントからの供給するのが普通だが、それ逆を行い、しかも、同一の魂による供給というのがおかしな働きをしてしまったらしくてな。
 今後、衛宮士郎が全力で魔術を必要としたとき、強制的に私から魔力を引っ張ることとなるのだ。
 それがどのような状況をうながすかは、先ほど身を持って味わったとおりだ」
 地下室でも痴態を思い起こし、顔を真っ青にする士郎。
「なっ、お、おい! そ、そんな、の……え、ええっ!?」
「まあ、落ち着け。過剰な魔力の使用がなければ、起こり得る事態ではない……のだが、凛と行動を共にする以上、たまに起こり得る事態ではあるか……」
 何かしらのトラブルに巻き込まれ、凛やセイバーと共に立ち回り、全力を出し切ると同時に発情する自分の姿を想像し、士郎は、真っ青な顔で頭をブンブンと振り回した。
「……嫌われる軽蔑されるそして慣れた頃にネタにされ弄ばれる……」
 ぶつぶつと未来の不安を口にし出した士郎をさすがに気の毒に思い、さらには、恐らく、どうしてそうなったかを問い詰められ、自分にも累が及ぶことを想像し、アーチャーもまた真っ青な顔で恐怖にブルっと背筋を震わせた。
「ま、まあ、手が、ないわけではない」
「……え? そ、そーなのか?
 さ、先に言えよ、そういうことはさ!
 で、なんなんだ? どうすればいいんだ?」
 希望を見出し、目を輝かせて尋ねる士郎に、アーチャーは、言い難そうに答えを口にする。
「私が供給した魔力が影響ならば、その魔力を私に返せばいいのであってだな、その……」
「……ちょ、待て、なんかイヤな予感がするんだけど、それってつまり……」
「ああ、貴様が私に魔力供給する……そういうことだ。」
 絶望に表情をなくし押し黙る士郎。
「分かり難かったか?
 つまり、貴様が私に精液を……」
「言うなああぁぁぁぁ〜!
 というか、お前だって、さっき俺の、あ、あれ飲んだら、ヤバいことになってたじゃないか!
 それなのに、それしか方法がないって、どういうことだよ!?」
「たしかに、私にも状態変化が見られたが、あれは、不意を突かれてのこと。
 霊体が主となる存在のサーヴァントだ。
 魔力の流れを正確に把握しておけば、防げる現象だから問題はない。
 しかし、肉体という檻に縛られている人の身では、そこまでの把握はできないだろうからな。
 まあ、その、なんだ……諦めろ、衛宮士郎」
「あ、ああぁぁ……嘘だろ……ど、どーしてこんなことに……」
「それを言うな……泣きたいのは私も同じだ……」
 あかいあくまに関わった我が身を呪い、途方に暮れる二人のエミヤであった。

 合掌。

―了―

『パロディ小説』
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