無敵な小児科病棟
〜狼たちの妄想編〜

1.
「ふ〜ん……。なかなかいいもん持ってんじゃん」
 気を許した一瞬の隙をつき、用を足し、しまうばかりとなったちんちんに手が伸びる。

 ここは、白岡総合病院のトイレ。

 物心ついて以来、自分以外に初めてちんちんを握られ、ショックのあまり硬直しているのは、黒髪で元気な少年らしい風貌の葉山 虹太。
 妹の作ったお弁当に当たり食中毒で入院中の十四歳。

 そして、虹太の股間に手を伸ばし、細長い指で性器を弄んでいるのは、右足の骨折で入院中の倉沢 雪。
 茶色がかった柔らかな髪で、整った顔立ちをした同じく十四歳の和風美少年。

 トイレで鉢合わせして、二、三言葉を交わしているうちに、いつの間にかこんな状況になっていたのであった。
 雪の指の動きにくすぐったさを感じ、思わず腰を引く虹太だったが、その途端、強く握り込まれ、声を上げる。
「いた……っ!」
「あ、わりぃ……。力入れすぎちまった」
 痛みに顔を歪める虹太に謝るものの、雪は、手を離さず、感触を楽しんでいる。
「どこ触ってんだよ、おまえはーっ!」
 痛みのおかげで硬直が解けた虹太は、大声で怒鳴りながら、雪の手をピシャリと叩いて払いのけた。
「いってぇ……。叩くことないだろ」
 赤くなった手を擦りながら言う雪に、虹太は、怒った顔を向ける。
 まさか、(当たり前だが)ちんちんを握られるなんて思ってなかった虹太は、雪の感触を思い出し、全身にざわざわと鳥肌を立てる。
 おまけに、感じやすい思春期の男の子。
 直接的な刺激に身体が火照り、それもまた、虹太の顔を険しくさせていた。
「そんなおっかねえ顔すんなって。ほら、俺のも触らせてやるから」
 言うが早いか、雪は、虹太の手を掴むと自分のズボンの中に引っ張り込んだ。
 虹太の手に自分と同じ、しかし、なぜか熱く、硬く、太さを増したちんちんの感触が伝わった。
「どうだ? 俺の方が立派だろう」
 虹太の手のひらにドクドクと脈打つ生々しい熱が伝わる。
「すっごいな、雪! うっわ、なにこれ?」
 初めて触れる自分以外の勃起したちんちんに、虹太は、驚きの声を上げる。
「確かに、俺のよりすごいなあ、雪。
 すっごいなあ、雪、大人だなあ」
 違う意味で驚かれ、雪のほうが面食らっていた。
 悪ふざけで触らせたのに、嫌がるどころか感心する虹太に、雪の中のイタズラ心がムクムクと膨らんでいく。
「な、ならさぁ、じっくり見てみねえか?」
「えっ! いいのか?」
 冷静に考えたら、かなりとんでもない誘いに、目をキラキラさせて、虹太は、うなずいた。
「お、おう。んじゃ、個室入ろうか」
 少し顔を赤らめて、雪は、虹太と一緒にトイレの個室に入った。
「雪っ、早く早く」
 プレゼントの包みを目の前にした子どものように急かす虹太を前に、雪は、蓋の上に腰を下ろし、パジャマのズボンを下着と一緒に下ろした。
「おおー、やっぱすっげえっ。ムケムケじゃんっ」
 小声で感嘆の声を出し、虹太は、目の前の直立した雪のちんちんを見つめた。
「触っていいか? な、雪」
「あ、ああ……」
 ドキドキしながら手を伸ばす虹太を雪もまたドキドキと胸を高鳴らせて見つめていた。
 虹太のふっくらした指が雪のちんちんをキュッと握り込む。
「うっ」
 そこから伝わる虹太の手の感触に、じんわりと快感が雪に響いた。
 そんな雪の様子もお構いなしに、虹太は、手にしたおもちゃを好きなように弄り回した。
 硬く張り詰めたちんちんの硬くも柔らかい感触を確かめるように、きゅむきゅむと握り、適度に茂った下腹を撫で、その下の袋をタプタプと触る。
「おっ、おい、新入り……」
 いくら許可したとはいえ、無遠慮に動く虹太の手に、ただでさえ敏感なお年頃の雪のちんちんは快感にピクピクと震えだした。
「新入りって言うなよ、雪。
 そーゆーこというと……」
 入院して日が浅い自分を名前で呼ばない雪に、虹太は、仕返しとばかりに濃いピンクに染まった先っぽを親指でぐりっと押した。
「くぅっあぁっ」
 先端への強い刺激に、雪は、甲高い声を出してしまう。
「ははっ。おっもしれー」
 その反応に、虹太は調子に乗って親指で先端をぐりぐりと押し続ける。
「ああっ。ああうっ。お、そ、そんなっ……ああっ!」
 敏感な先端を弄られ、喘ぐ雪の先端の切れ込みから透明な液が溢れ出し、虹太の指を濡らした。
 その液に濡れた指が勢い余って滑り、雪の亀頭の切れ込みまで刺激してしまう。
「ひっ、ぐぅっ!」
「や、やばっ……ゆ、雪、大丈夫か?」
 大きな声を飲み込む雪に、(やり過ぎたか)と思い、虹太は心配になって手を止める。
「やっ、やめんなっ……もっと、最後、まで……」
「さっ、最後って……な、なんだよ」
「イかせてくれ……このまま、お前の手で……」
「なっ! 何言ってんだよ、雪っ!
 そ、そんなことできるわけないだろっ!」
 突然の申し出に思わず手を離そうとする虹太だったが、雪は、その手を押さえてしまう。
「ここまで弄っといて、そりゃないだろ?
 それに大声出すなよ。
 今の状況、見られたら、困るのおまえじゃねえか?」
 言われてみれば、この状況。やんちゃな元気少年が美少年に無理矢理イタヅラしているようにしか見えない。
「うっ……」
「それにさ、分かるだろ?
 ここまでされて、我慢できないの、男ならさ」
 腰を突き出され、虹太は、手の中の勃起したちんちんを手に困った顔をする。
「な、いいだろ?
 このまま、イかせてくれよ。頼むよ、虹太」
 初めて名前を呼ばれ、虹太は、ハッと顔を上げ、雪を見つめる。
 雪は、息も荒く、刹那そうな潤んだ瞳で虹太を見つめていた。
「しょ、しょーがないな……こ、今回だけだぜ」
 普段は、すました雪の乱れた顔に、胸が高鳴り、顔を赤らめて虹太は、再び手を動かし始めた。
「んっ。うっ、ああぁ」
 虹太の手が動くたび、雪の身体に痺れるような快感が駆け巡る。
「こ、虹太ぁ……こう、太……もっと、もっと強く……」
 雪に言われるまま、虹太は、手を上下させる速度を上げていく。
 虹太の手の筒の中で雪のちんちんは、ドクドクと脈打ち、先端からは先走りの汁がどんどん溢れ出している。
「はあっ、はあっ、ああっ、あっ」
(すごい、雪……すっごいエロい)
 気持ち良さそうに声を漏らす雪の姿を見て、虹太の背筋にゾクゾクとしたものが走る。
「こ、虹太! あっ! 虹太! イくぞっ」
「ええっ! イくって……!」
 それはもちろん射精すると言うことだろう。
 しかし、急に言われても、初めて他人のモノを弄った虹太は、慌ててしまう。
「ちょっ、ちょっと待てよ、雪!」
 とりあえず、紙を取ろうと、トイレットペーパーに左手を伸ばす。
「ダメだっ! ああっ! イくっ! 虹太ぁ! あっ、ああっ! で、出る、うっ!」
 しかし、雪は、快感にすっかり呑まれ、腰を揺らしながら、先端の切れ込みから精液をビュビュッと噴き上げた。
「うわあっ!」
 自分の手の中で雪のちんちんがビクビクと振るえ、膨らんだ先端から精液が飛び散るのを目の当たりにして、虹太は、声を上げる。
「はあ、はあ……」
 溜息をつきながら射精後の余韻に浸る雪とは逆に、虹太は、顔をしかめながら、手についてしまった精液をトイレットペーパーで拭き取る。
「待てって言っただろ、雪ぃ。
 あーあ、どうすんだよ。飛ばすから、ドアにまで飛び散ってるぞ」
 見ると、よほどの勢いだったのか、虹太の頭を飛び越えて、個室のドアに雪の放った精液がかかっていた。
 それに応える気力もなく荒い息を繰り返すだけの雪に、虹太は、しょうがないと肩をすくめ、手にした紙でドアを拭こうと後ろを向く。
(うっわぁ〜。こんな量って……溜まってたのか?
 まあ、入院中だし、幼稚園児のチビたちと一緒だし、セクハラ変態医者の魔の手もあるから、そんな暇なかったんだろうなあぁ)
 ベッドの数が足りないため、雪と虹太は小児科病棟に放り込まれていた。
 チビたちは元気だし、部屋では落ち着くこともあまりなく、加えて、この病院には、好みの少年にセクハラの手を伸ばしてくる外科医・神代医師がうろうろしている。
 『抜こう』などという隙を見せれば、必ずやつけ込まれ、貞操の危機になるのは火を見るよりも明らかなのである。
「これで、よしっっと」
 そんなことを考えながら、ドアを綺麗にし終わると、虹太は、汚れた紙を始末しようと雪のほうへと振り向いた。
 その瞬間、虹太のパジャマのズボンが下着ごと、一気に引き下ろされた。
 犯人は、もちろん、雪だった。
「うっわあぁっ!
 お、お前、なにす……むうっ」
 大声を上げる口を左手でふさがれ、雪は、右手で、虹太のちんちんを素早く握った。
「やっぱりだ。虹太、お前ももうビンビンじゃねえか。
 太さもなかなか。毛はまだ薄いなぁ。
 先っぽも半分くらい皮余ってるし。
 俺のほうが少しばっか大人だな」
 雪の手の中で硬く張り詰めるモノの形態を口に出され、虹太の顔が真っ赤になる。
「俺のを弄ってて興奮したのか?」
「うっ、うるさいっ。は、離せよっ」
 虹太は、叩いてやろうと、手を振りかざしたが、勃起したちんちんをキュッと握られ、電気が走ったかのような快感に身体をビクンと振るわせた。
「あうっ……んぅっ」
「大人しくしてろよ。手コキでイかせてくれただろ?
 そのお返しをしてやろうってんだからさ」
「て、手コ……な、なに恥ずかしいこと言ってんだよっ。
 そ、それにいらないよ、お返しなんてっ。
 いいから離せって」
「口でしてやる」
 強引に離れようとした虹太の手が雪の一言で止まる。
「く、口って……まさかっ」
「舐めてやる。
 してほしくねえか?
 フェラチオってやつ」
 その単語は、えっちな雑誌や友達との猥談などで虹太もよく知っていた。
 それでなくても盛りの男の子にとってそれは心惹く誘いだった。
 口で性器をしゃぶられるという行為がよりいっそうの快感を生むのだろう。
「で、でも男同士で、そんなの……」
「口なら男も女も変わりねえだろ?」
「そ、そりゃ、そーかもしんないけど……」
 突然の申し出に虹太の心臓がバクバクと高鳴っていた。
 その視線は、雪の口元に釘付けになり、握られたちんちんがその硬度を増した。
「ほ〜ら、お前のここだって喜んでるぜ?」
 くいくいっと握られたちんちんをレバーのように動かされると、じんっとした快感が虹太の全身を震わせた。
 甘美な快感への誘いと道徳感が虹太の心の中で、ぐるぐると回る。
 しかし、雪も自分の手で気持ちいい思いをしたのに、自分だけ自己処理というのは、不公平な感じもすると、訳の分からない損得勘定が頭の中をよぎる。
「言っとくけど、お前がこのまま、シコるんなら、じっくり見学させてもらうぜ?」
「なっ、なんでだよ!」
 自分が考えていたことと同じようなことを言われ、虹太は、動揺して必要以上に大きな声を出した。
「だって、お前だって、俺のイくとこ見たじゃねえか」
「あ、あれは、雪がイかせてくれって言ったから……」
「でも、見ただろ?」
 間髪入れずに切り返され、虹太は、言葉に詰まる。
 人前で……雪の前でオナニーをする。
 ふと、その光景が頭をよぎる。
 立ったままで、ちんちんを握り、夢中になって扱く自分をトイレに腰を掛けた雪がじっくりと見つめ、時折、自分の顔をいやらしい目で見上げ……
「おっ、なんだ?
 虹太のちんちん、また硬くなってきたぜ?」
 思わずしてしまった想像に興奮したのか、虹太のモノは、雪の手の中で硬度を増し、頭を覗かせた先端の切れ込みからは、透明な液が滲み出ていた。
「どっちにしろ、俺に全部見られんだぜ?
 だったら、より気持ちいいほうにしといたほうが良くねえ?」
 小悪魔のような誘いに、しばし逡巡し、虹太は、こくりと首を縦に振った。
「ん? 何だよ。
 はっきり口に出して言えよ」
 いぢわるそうに笑みを浮かべ、雪は、手にした怒張をくにくにと握り、尋ねる。
 怒ろうにも、雪に煽られ続け、虹太は、限界に近かった。
「ゆ、雪……お、俺のちんちん、舐めて……く、れ……」
「舐めるだけでいいのか?」
 そう言う雪にペロッと先端を舐められ、虹太の身体に痺れるような電流が走った。
「あうっ!
 だ、だから……ち、ちんちん舐めて、俺、い、イかせてくれよ」
 恥ずかしそうな虹太に満足したのか、雪は、手の中のモノに口を近付け、先端をすっぽりと口に含んだ。
 そして、虹太のちんちんを包む手に力を入れて、先端の半分を包む包皮を引き下ろし、亀頭を完全に露出させ、そこに舌を絡ませる。
「はぅっ……ううっ!」
 唾液のぬめりと舌のざらっとした感触に露出した先端が包まれ、虹太は、喉を仰け反らせる。
 強烈な快感に喘ぐ虹太に、雪は、嬉しそうに笑い、ちゅっと音を立てて、亀頭をきつめに吸い上げた。
 普段の自慰でも刺激しない部分を責められ、しかも、入院中で溜まっていた状態の少年には我慢できようもなかった。
「ひぅっ! あっ、あ、で、出るっ!
 あっ、ああ、んぅっ! うぅっ!」
 虹太は、小さな悲鳴のような声を上げ、腰をビクンビクンッと震わせながら、雪の口の中へ精液を吐き出した。
「ぐっ、ふっ!」
 いきなりの射精に、雪は、驚きながらも、虹太の腰の振りを片手で抑えながら、口の中で暴れるちんちんからの放出をこらえた。
「はっ、はぁー……」
 吐精を終え、虹太は、全身から力が抜け、雪の膝に頭を乗せる形で、ずるずると崩れ落ちた。
 しかし、その目に入ったのは、先ほどよりも心なしか大きさを増した雪の勃起だった。
「なっ、なに、まだ、おっ勃ててんだよ、雪!」
 ビクビクと存在を誇示するように震える雪のちんちんから恥ずかしそうに目をそらし、虹太は、抗議の声を上げる。
「しょーがねーだろ?
 お前、エロ過ぎて、また、コーフンしちまったんだから」
 口の中の精液をトイレットペーパーに吐き出して、雪は、しれっと答える。
「ちょうど体勢もいいし、さ。
 虹太、今度は、俺のフェラしてくれねえ?」
「いっ、イヤに決まってんだろ!
 ちょ、チョーシ乗るなよな!」
「なんだよ。そんなに嫌がらなくてもいいじゃねえかよ」
 不機嫌に言う雪のすねた顔を横目で見て、虹太の胸にチクチクと罪悪感が突き刺さる。
「……こ、ここじゃ、イヤだ」
 プイッと横を向いたままの虹太の声を雪は、聞き逃さなかった。
「……『ここじゃ』って、じゃあ、してはくれるんだ、フェラ。
 でも、どこでだ? 病室じゃ、チビたちがいるし、俺、足骨折中だから、あんまり動き回れねえぞ?」
と、右足のギブスをプラプラさせる雪。
「夜に……してやる。
 みんなが寝たころに、さ。
 雪のベッドに行ってやるから」
「……夜這いか?」
「はっ、恥ずかしいこと言うな!
 それじゃ、まるで俺が雪のこと、す、好きで、お、襲いに行くみたいじゃないか」
「俺は好きだぜ」
 突然の雪の言葉に、虹太の思考が一時停止する。
「……す、好き? 好きって……え、好きの好きか?
 え、だ、だから、雪が俺を好きってのは……」
「何言ってんだ?
 俺は、お前を恋人にして、えっちしたいくらいに好きってことだ。
 でなけりゃ、ちんちんしゃぶったり、しゃぶってもらいたいって思うわけないだろ?」
「ええぇっ!
 ちょ、そっ、そんなこと、いきなり言われても……」
「なんだよ、お前だって、俺のこと、好きじゃん」
 ズバリとそう言われて、虹太は、言葉を詰まらせる。
「好きでもないやつのちんちん触らないだろ?
 それにお願いしたら、ちゃんとイかせてくれたし。
 なあ、虹太、俺のこと、好きだろ?」
 虹太は、困った。
 真剣に困った。
 自分が雪を好きだと言うことを否定する要素が何一つないのだ。
「と、とにかく、早くトイレから出るぞ!
 いつまでも入ったままだと、誰か様子を見にくるかもしれないだろ?」
「えー、まだ、虹太の答え、聞いてねえのに?」
 ごまかす気がありありの虹太に、雪は、不満げに言う。
「いいから出るぞ!
 ほら、ズボンとトランクス穿いて、早く立てよ!」
「しょうがねえな……分かったよ。
 よし、立つから、ちょっと、手ぇ貸してくれ」
 なんとか下着とズボンを穿けたが、片足を骨折したままでは、立つのも一苦労。
「よっとっ」
 虹太は、伸ばされた雪の手を握って強く引っ張る。
 雪は、その勢いに乗り、立ち上がると、虹太をドアに押しつけ、そのまま口唇を重ねた。
「んむっ」
 一度目のキスは、舌まで入れられたオトナのキスだったが、今度は、ただ単に、口唇重ねるだけのキス。
 それでも、好きではないかと意識し始めの心には衝撃的なものだった。
「なんだよ。
 別に初めてでもないだろ?
 俺とキスするの」
 過剰な反応に、キスをしたほうの雪も驚いたらしい。
「に、二度目だろうが、なんだろうが、いきなりキスされれば、驚くに決まってんだろ!」
「まあ、俺も虹太と入るとドキドキするしな」
 言いながら、雪が虹太の身体に密着すると、ドクドクと脈打つ心臓の音が伝わってきた。
「……ゆ、雪……そんな、お、俺……ってぇ、なに、ちんちんまで摺り寄せてんだよ!」
 股間に熱く硬い雪のモノがパジャマのズボン越しに押し付けられ、甘い感情に流されかけていた虹太を我に返らせる。
「気持ちいいんだからしょうがねえだろ?
 ああー、早く夜にならねえかな〜。
 そうすれば、虹太が夜這いに来てくれるんだしさ」
「よ、夜這い言うな!
 と、とにかく、さっさとここから出るぞ!」
 顔を赤くして、虹太は、ドアを開ける。
 その後ろを松葉杖を二つ片手に持った雪がぴったりとくっついて歩く。
「そ、そんなに近寄るなよ。
 松葉杖で立てるだろ?」
「しょうがねえだろ?
 お前が処理してくれないから、俺のまだ……げ、元気なんだよ」
 恥ずかしそうに小声で言う虹太に、雪もまた顔を赤くして言う。
 確かに、松葉杖で歩いては、股間を隠す手立てはなく、生地の薄いパジャマでは、怒張の様子がありありと分かってしまうだろう。
「わ、分かったよ。このままでいいよ」
「……それだけか?」
「んぅっ」
 密着している雪に耳元で囁かれ、虹太の全身にぞわぞわと鈍い快感が走る。
「よ、夜に、ちゃんとしてやるから、さ」
 その言葉に、雪は、満足そうにうなずき、虹太の首筋にチュッと音を立ててキスをする。
「ひっ、むぅ」
 思わず、声を上げてしまい、虹太は、慌てて口を抑える。
(俺、どーなっちゃうんだろ)
 そんなイタヅラをされても、雪が側にいることに、妙な幸せを感じ始めてしまっている。
 自分の行く末に、虹太は、一抹の不安を拭えなかった。

2.
「君を抱かせてくれ」
「はあ……?」

 ここは、鈴鳴高校の保健室。

 いきなりの衝撃発言をしたのは、一年E組の委員長・露木智司くん。
 首席で入学した期待の星で、生徒だけでなく教師陣からも一目置かれている優等生。
 銀縁眼鏡の奥に隠された素顔は、魅力的な美少年。

 間の抜けた返事したのは、同じクラスの水沢 渉くん。露木くんとは正反対の教師陣も手を焼く問題児。
 元気が有り余って余りまくっているやんちゃ小僧が抜けきれていない可愛い少年。

 そんな二人がなぜ、保健室にいるかというと、遅刻寸前の水沢くんが非常識にも三階の廊下を自転車で疾走していたところ、階段を駆け下りてきた露木くんと衝突し、その手当てをするためなのであった。
 あいにくと保健の先生は、不在。
 保健室の常連である水沢くんが勝手知ったるで、手当てを済まし、教室に戻ろうとしたら、露木くんに示談を切り出されたのだ。
 水沢くんは、自分が加害者であることは素直に認めていたので、昼食一週間を提案したのだが、露木くんは、それを一笑し、先ほどのとんでもない提案を突きつけてきたのであった。

「一発やらせてくれないか? 最近抜いてなかったから、溜まってるんだ」
 真面目で理知的なだと思っていた委員長の口から、ポンポン出てきた節操のない猥褻な言葉に唖然としている間に、水沢くんは、腕を強引に引っ張られ、露木くんにベッドに押し倒されてしまった。
「いいだろう、渉。気持ちいいことしてあげるかっ……うわっ」
 熱を帯びた囁きを途中で、驚きに変え、露木くんは、自分の学ランのズボンに目をやった。
 すると、ちょうど股間の部分に水沢くんの手が当てられ、ズボンの中で形を変えた露木くんのモノを輪郭を確かめるように触っていた。
「ホントだ……もうバキバキで、溜まってんだなぁ〜、委員長」
 何かに感心したような口調で言う水沢くんに、露木くんは、目を丸くした。
「な、なんで、そんな落ち着いてるんだい、渉」
「え? いや、ホントに溜まってんのかな〜って思ってさ。
 委員長真面目だから、こーゆーこと興味なさそうに思えたし。
 けど、やっぱ、男だもんな」
 そう言いながら、水沢くんは、露木くんのモノを掴んでニギニギと指を動かした。
「へえ、立派、立派っ。
 ちょっと羨ましいくらいだぜ」
「……ぅっ」
 感心した声を上げる水沢くんだが、露木くんの方は、指が動くたびに身体の芯に響く快感に声を出しそうになっていた。
「でも、なんでオトコ相手にそんな気になるんだ?
 やりたいんなら、オンナ探せばいいじゃねえか」
「ひ、人を節操なしみたいに言わないでくれないか?
 僕は、君の方がいい。どんな女の子たちよりも、渉は充分に魅力的だよ」
「顔だったら俺より葵の方がいいぞ。俺のは単なる母親似の女顔だ」
「まだわかってないみたいだね。渉は……」
 顔の良いクラスメートの名を出す水沢くんを露木くんは、首を横に振る。
 そして、少し弾んだ息をしながら、朱に染まった頬を寄せ、水沢くんの耳元で囁いた。
「僕は、君が欲しいんだよ。他の誰かを抱きたいわけじゃない」
 そう言われて、水沢くんは、眉間にしわを寄せて、考え込む。
「……なあ、委員長」
「名前で呼んでくれないか?」
「じゃ、じゃあ、露木。
 それって……俺が好きってことか?」
「もちろん、そうだよ」
 ズバリと聞いた水沢くんの問いに、露木くんは何のためらいもなくさらりと答える。
「あのな、露木。俺、男だぞ」
「分かっているよ」
「男だから、当然、キョーミがあるのは、女なんだ」
「僕もそうだったよ。でも、今は、それより渉の方がいいんだ」
「だあっ! ちょ、ちょっと聞けよ!」
 首筋に顔を寄せようとする露木くんを片手で制し、水沢くんは言葉を続ける。
「だ、だからな、俺が好きなのは、女であって、胸もでっかいのが好きだし、あ、あの部分がどうなってるのか、すっげキョーミあるし、自分ので見慣れてるちんこには、全然、キョーミないんだ」
 バクバクと激しい鼓動を繰り返す心臓を抑えながら、水沢くんは、眼前の露木くんの顔を見つめる。
「で、でもさ、俺、今。すっげドキドキしてる」
「渉?」
 緊張した顔で、それでも真っ直ぐな視線をぶつけてくる水沢くんの頬をそっと触れ、露木くんは、愛おしそうに名を口にする。
「い、いきなり、触んなっ。び、ビックリすんだろ」
 ビクンッと身体を震わせ、水沢くんは、声を荒立てる。
「嫌なのかい?」
「そ、そーゆーわけじゃねえんだけど……」
 悲しそうな顔で言う露木くんに、慌てたような口調で水沢くんは、言った。
「な、なんか恥ずかしいんだよ。
 それに触られたとこから、なんかビリってきて、それで……」
「感じているってこと? 僕に触られて」
「わ、わかんねえよ!
 か、感じるなんて、そんな……」
「大事なことだよ、渉。もっと良く考えてみてくれないか?
 君は、僕をどう思っているんだい?」
「俺……いいんちょ……つ、露木を……」
 真剣な表情の露木くんに促され、水沢くんは、思ったことをぽつぽつと口に出す。
「真面目で、頭良くって、俺と違って、先生たちからも信頼されてて……。
 でも、今日、初めて顔近くで見て……正直、見惚れた。
 自分の理想がここにあるって思ったんだ。
 んで、ここで、今、お前に迫られて……お、男に押し倒されるなんて、冗談じゃないって思うんだけど……」
「思うけど?……『けど』なんだい?」
「……お、思うけど……なんか、ドキドキして、お、お前だったらいいかな……って、お、俺、何言ってんだ!
 ち、違うからな!
 俺、別に男が好きだってんじゃないからな!」
「落ち着いて、渉。
 落ち着くんだ」
 心を乱し始めた水沢くんの肩を露木くんは、優しく抱き締めた。
「僕も同じだよ。男が好きってわけじゃない。
 君が……水沢 渉が好きなんだ。
 それと同じで、君も僕が好きなんだよ」
「俺が……露木を……?
 で、でも、今日の今日まで、俺、露木と話したことなんかないぜ。
 顔だってまともに見たの、今日が初めてだし。
 なのに、お前となら、お、押し倒されてもいいって思っちまうなんて、そ、そんなのまるで、い、淫乱みたいじゃねえか!」
「渉、そうじゃないよ。
 それは、一目惚れってやつだよ」
「ひ、一目……惚れ?
 お、俺が露木に?」
「そうだよ。僕も渉に一目惚れしたんだ。入学式の時にね。
 渉、君が好きだ。だから、もう一度言うよ。
 君を抱かせてくれ」
 露木くんにじっと見つめられ、水沢くんは、顔を真っ赤にして視線をそらす。
「さ、さっき、『溜まってるから』って言った」
「あれは、いきなり好きだなんて言ったら、気味悪がられると思って……怖かったんだ。
 真剣に思いを打ち明けて、君に拒絶されるのが」
「露木……そんなに俺のことを……」
「ああ、好きだよ。
 こんな無様なことをしてしまうくらいに、君が好きなんだ、渉」
 恥ずかしいような、くすぐったいような、そして、甘い感情が水沢くんの心を駆け回る。
「か、鍵掛けてこい。
 ドア、開けっ放しだろ」
「分かったよ、渉。
 でも、その前に、この手を外してくれないか?」
「えっ? 手って……う、うわあっ!」
 露木くんに言われ、水沢くんは、今までずっと彼の股間のモノを握っていたことに気付き、慌てて手を離す。
「ありがとう、渉。
 あのまま握られていたら、もう少しで我慢できなくなっていたところだよ」
「い、いいからっ、か、鍵!
 は、早く掛けてこい!」
 恥ずかしさに大声になる水沢くんに言われるまま、露木くんは、ドアへと向かい、鍵を掛けた。
 そして、振り返ると、露木くんは、驚きに目を大きく広げた。
「……わ、渉っ」
 ベッドの上で、手早く学ランを脱いだ水沢くんが全裸の身体で膝を抱えて恥ずかしそうにうずくまっていたのだ。
 露木くんは、心なしか早足で再びベッドに近付くと、銀縁メガネを机の上に置き、制服を脱いでいく。
「お、俺、初めてだからな」
「うん」
「痛いのヤだぞ」
「うんと気持ち良くしてあげるよ、渉」
 露木くんは、全裸になり、震える水沢くんの身体を優しくベッドに組み敷く。
 羞恥のためか、少し頑なに閉じた足に手を差し込み、ゆっくりと開かせていくと、水沢くんのモノはすでに熱を帯び、年に見合った元気の良さで下腹につくほど硬く張り詰めていた。
「もう、こんなにして……嬉しいよ、渉」
「つ、露木なんか、俺をベッドに押し倒したときから、そーなってんじゃんか……んっ」
 恥ずかしさに怒る水沢くんに露木くんは口唇を重ねるだけのキスをする。
「好きな人とベッドにいるんだ。男ならこうなるのは当たり前だよ」
「お、おう……。
 な、露木……もっと、キス……」
 口唇を離した露木くんの腕を掴み、水沢くんは、子どものようにねだる。
 そんな水沢くんに優しく微笑み、露木くんは、首を傾け、今度は、深く口を重ねる。
 水沢くんの口唇の中に舌を差し込み、露木くんは、貪るように口付ける。
「ふっ……んぅっ、んふぅっ」
 初めての濃厚な口付けに水沢くんは、濡れた声を漏らし、切なそうに身をくねらせた。
「んふぁっ、んあっ」
 キスを続ける露木くんの右手が水沢くんのモノをキュッと握り込み、上下に動く。
 露木くんの手の中で、水沢くんの勃起はドクドクと脈打ち、ピンク色の先端の切れ込みから透明な汁が溢れ、その手を濡らした。
 初めて味わう他人の手による快感に、水沢くんは、全身を震わせる。
 露木くんは、もう片方の手で、水沢くんの胸を探り、乳首に指を這わす。円を描くように指を動かすと、先端がプクリと尖り、露木くんは、すかさず指先で摘み上げる。
「あうっ」
 胸への刺激に、水沢くんは、喉を反らし、甘い声を上げる。
 露木くんは、顔を下に移動させると、立ち上がった乳首をねっとりと舌でねぶった。
「あっ、ああ、んっ!」
 ざらりと濡れた感触が痺れるような快感を身体に響かせる。
 露木くんは、水沢くんの屹立から手を離すと、そのさらに下へ手を回し、後孔に指を差し入れる。
「っ……痛っ!」
 慣れているわけのない突然の注挿に、水沢くんが顔をしかめる。
 露木くんは、屹立に手を戻すと、濡れた先端に指先で触れ、先汁を絡ませると、再び、後孔に指を侵入させる。
「ん、んあぅっ」
 ぬめりを借りて、先ほどよりは痛みもなく指が入り、露木くんは、ゆっくりと指を動かし、内部を探った。
「あっ、あはぅっ、うっ、んああぅ」
 指の動きに水沢くんは、声を上げる。
 しかし、自分のいきり立つモノを入れるには、もっと指を増やし慣らす必要があるが、これ以上は、水沢くんに苦痛しか与えない。
 先生の机の上を見ると、チューブ入りの傷薬を見つけ、手を伸ばして、それを取り上げた。
 そして、片手で器用に蓋を開けると、指を差し込んでいる後孔に薬を搾り出し、後孔に馴染ませながら指を増やしていく。
「うっ、ああうっ、あっ、ああ、ああぃ、あぁっ!
 あっ、あぃっ、ひあっ!」
 露木くんの差し込まれた指がある部分に触れると、そこから水沢くんの全身に電気のような強い快感が走った。
 露木くんは、探し当てた水沢くんの前立腺を中心に内部を慣らしていく。
「気持ちいいんだね。可愛いよ、渉」
 そして、いきり立つ自分のモノに手を添えると、水沢くんの後孔にあてがうと、ゆっくりと腰を前に進めた。
「はあぁっ、ぐっ、ああぁっ、んぅあっ!」
 熱く太い塊が自分の中に入ってくる圧迫感に水沢くんが苦しげな声を上げる。
「ううっ、ああぁっ」
 露木くんも水沢くんの中の熱くきつい締め付けに屹立を包まれ、快楽に切ない声を上げる。
「ほら……渉……全部、入ったよ……。
 渉のここ、こんなに広がって、僕を受け入れてくれているよ」
 感極まった声で言う露木くんは、ゆっくりと、次第に早く腰を前後に振る。
「あっ、あっ、あくっ、はうっ、ああ、ああんっ!」
 露木くんのモノに中を擦られ、水沢くんは、甘く高い声を上げる。
「あっ、いいよ、渉の、中っ、とても気持ち、いいっ」
 激しく腰を使う露木くんの動きに、水沢くんのモノが下腹でピタピタと震える。
 水沢くんは、ゆっくりと手を伸ばし、自分の屹立を握り締めて、ゆるゆると動かす。
「うぅっ、わ、渉っ」
 水沢くんが自分のモノを擦るたびに、後ろの締め付けが強くなり、露木くんが快感の声を上げる。
 露木くんは、上下に動く水沢くんの手を離させ、自分の手で屹立を握り込む。
「ぃいぁっ!
 つ、露木ぃっ、や、やだ、さ、さわん、なぁっ」
「自分でも触っていたじゃないか。
 いいだろ?
 僕が全部気持ち良くしてあげるから」
 露木くんは、ゆるゆると上下に手を動かし、それに合わせて腰も動かす。
「いぅっ! ひゃぅんっ! ああぁっ!
 ああんぅっ、ああっ、んあぁっ!」
 露木くんの腰の動きは、どんどん早くなり、二人が繋がった部分から、パチュンッ、パチュンッと濡れた音が叩きつけられ、水沢くんは、甲高い声を上げ続け、露木くんの動きに合わせて、腰をくねらせる。
「つ、ゆきぃっ、お、俺、おれ、もうっ、ひあぅっ!」
「イくんだね、渉っ。
 僕も、僕ももうすぐ、ああっ、わ、渉っ!」
 露木くんが手の中のモノの先端を指先できつく擦る。
「ひぅ、やぁっ、あああああぁんっ!」
 限界だったところに決定的な刺激を受け、水沢くんは、全身を激しく痙攣させて、露木くんの手の筒の中で、白く濁った精液をたっぷりと噴き出した。
「わ、渉っ、わ、たるっ、うぅっ!」
 露木くんも達した水沢くんのきつい締め付けに、後孔の最奥で精を弾けさせた。
「あっ、んんぅっ」
 ビュクビュクと熱い奔流が流し込まれるのを感じ、水沢くんは、ブルッと身を震わせた。
「渉、ああ、渉……大好きだよ、渉」
 何度も繰り返して名を呼び、露木くんは、赤く染まった水沢くんの顔に何度もキスの雨を降らせた。

3.
「……てなことに……」
「……なったら……」
『……良かったんだけどなぁ〜』
と、声を揃え、溜息交じりに言ったのは、ダイニングテーブルについた露木くんと雪だった。

 ここは、露木くんと水沢くん、雪と虹太が学力強化の名目で共同生活を過ごすマンションの一室だった。

「しかし、あれだね、倉沢くん。
 トイレで葉山くんのを覗いたってことは、君も彼に一目惚れだったってことかい?」
「いや、そういうわけじゃないんですけど……」
 頬を赤らめて、雪は、指をもじもじと動かす。
「なんか、元気で、うるさくて、すっごく気になって……同じ部屋だったチビには優しくしてんのに俺には全然で……まあ、最初の印象からして、しょうがないとは思うんですけど……」
「最初のって……ああ、神代医師のしつこさにキスをしてやるから諦めろって現場を見られたんだっけ?」
 露木くんは、体育祭のときの足の捻挫の治療で面識のある何か同じ匂いのする危険なお医者さんを思い起こした。
「はい……なのに、あの変態医師、俺だけじゃなくて俺の虹太にまで手ぇ出そうとしやがって……」
 入院中に仕掛けられた数々のセクハラ行為を思い出し、雪は、怒りをふつふつと湧き上がらせる。
「……一目惚れか……そうかもしれないです。
 虹太のこと、気になってしょうがなかったし……」
「でも、相手は、それに気付いてくれない……つらいよね。
 まあ、僕の場合、降って湧いた幸運に飛びつけたんだけどね」
 現実では無理矢理ながらも、水沢くんと結ばれた時のことを思い出し、露木くんは、その端正な顔をだらしなく蕩けさせた。
「いいですよね〜、露木さん。
 俺なんか、あの時、虹太のちんちん触っただけで、次は、手と口でイかせてやって、やっとできたのって、あいつが退院するときだったんですよ」
「でも、葉山くんは、食中毒で入院だったんだろう?」
「ええ。病人襲うわけにはいかないから、ガマンしたんですよ。
 これで俺たちは恋人同士だぁ〜って思ったのに、虹太のヤツ、誰にでも愛想振りまいて、俺以外に押し倒されそうになったりで、気が気じゃないんですよ」
「ああ〜、分かる!
 僕の水沢くんも人懐っこいからね。
 自分の魅力に気付いてない無防備だし、後輩には、盛りのついた駄犬がいるし、僕も気苦労が耐えないんだよ」
 水沢くんの貞操をしつこく狙ってくるサッカー部の後輩の男子を思い起こし、露木くんは、眉間にしわを寄せた。
「ホント、もう少し自覚してほしいですよね。
 自分がどんなに魅力があるのかってことに……」
「そうだね。
 そして、もう少し恋人に積極的になってほしいよね」
「はい、そうすれば、俺だって……」
「そう、僕だって……」
『……もっと燃えるのにっ』
『燃えられて堪るかあぁぁぁぁぁぁぁっ!』
 バダンッと二つのドアが開け放たれ、そこから全裸にシーツだけを身に巻き付けた水沢くんと虹太が飛び出してきた。
 二人の顔は、疲労に染まり、シーツの隙間から覗く肌には、赤いうっ血がいくつも残っていた。
「ゆ、雪ぃ!
 お前、さっきまで、俺に何回突っ込んだと思ってんだ!
 もう一回、もう一回って、結局、朝まで眠れなかったんだからな!」
「お前もそうだ、露木ぃ!
 なんで、そう底無しなんだ!
 ちったぁ俺の身体に合わせて抑えてくれる度量はないのか!
 この……こ、この……どスケベぇ!」
 大声で言い切ると、二人は、ガクッと床に膝をつき、ドアの入り口で崩れ落ちた。
「お、おい、虹太!」
「水沢くん、大丈夫かい?」
 慌てて駆け寄る露木くんと雪に水沢くんと虹太は、息も絶え絶えの声で言う。
「す、好き放題言うんじゃねえよ、雪。
 黙って聞いてれば……だいたい、俺のちんちん、そんなに子どものわけなかっただろ?
 いつも散々いいように弄くってるくせに俺の形、覚えてないのか?
 も、妄想で好き勝手なこと言うなよな……ったく」
「つ、露木ぃ……俺がお前に一目惚れだとぉ。
 無理矢理、俺をゴーカンしといて、いい面の皮だな!
 時間がなかったからって、あのとき強引にしたおかげで、血が出るほどだったの忘れたわけじゃないだろうなぁ!」
 心配で駆け寄った二人に、ヘロヘロの身体で水沢くんと虹太は、大声で文句をぶつける。
「そんなつもりはねえんだ、虹太。
 あれは、ただの妄想なんだ。
 でも、お前の気に障ったなら、謝る。
 ホント、悪ぃ、虹太、許してほしい」
「僕のも身勝手な妄想なんだよ。
 水沢くん、愛しい君との記念すべきひと時を僕が忘れるわけないだろう?
 大事なことを忘れられたと思って、いやな想いをさせたね。
 僕は、君のすべてを覚えているんだ。
 だから、許してくれないか、渉」
 慌てた顔で謝る露木くんと雪に、二人は、言い過ぎたかとバツの悪い顔をする。
「分かった、虹太。
 俺、これから、お前のちんちんの形をつぶさに覚えるまで弄くるぜ!」
「え゛っ?」
「渉、初めてで無理をさせたお詫びに、今からたっぷりと全身が蕩けるくらいの気持ちいいことをしてあげるからね!」
「え゛っ?」
 言うが早いか、露木くんと雪は、各々の恋人の手を掴むと、それぞれの部屋へと強引に引っ張り込み、バダンッとドアを閉めた。

『あ゛あ゛〜! いらんこと言ったぁ〜!』

 そして、今日も二人の子羊は、想像(妄想?)力豊かな狼たちの餌食となって、イイ声で鳴かされるのであった。

―了―
 

『パロディ小説』
TOPへ