見てみたいセントエルモの火

空中電気

輪郭がなくて『火を見るより明らか』でない火こそ怪火!



戦時中

湿った夜、アンテナ当番で外に出ていたとき
真っ暗な空に青白くボーっと薄い光を見た
しばらくして送電線塔の上の方だとわかった。
不気味な光だった。


そのことを教員と同輩が5〜6人実習中の電探室で
話したら、「それはコロナ放電だ。アンテナのてっぺんも
同じように見えるかもしれないぞ、見えればそれは
セントエルモの火という怪火だ」
との講義に続けて怪談めいた話しを聞かされた。
2〜3人でもういちど外へ出てみたが
送電塔の光りは前と同じだったがアンテナにはなにも見えなかった。
半ばカラカわれているのを知って、お返しに
「3号室のアンテナが青く光っていました!」

怖いもの見たさ半分、疑い半分で、
あとのものが見に行った。教員はニヤニヤ

アンテナ素子が新品だと何かの光を映して
青白く気味悪く見えたこともあった。 また、
整合トラップ短絡片が接触不良のときの火花。「チー」と音が聞こえる。
これらは輪郭が鮮明なので怪火ではない。



戦後

海抜2000メートルの山頂で朝霧のなか
不動明王の石像が持つ鉄剣が幽かに「シュー」と鳴っていた。
目をこらして見ると霧の粒が剣のそばで動いている。
吸い寄せられては途中から跳ね返されて飛ばされているよう。
霧の粒が帯電していて、剣との間に吸引・放電・反撥しているらしい。
もっとよく見、よく聞こうと思って近づくと音が「ジー」という弱い音に変わり
霧粒の運動も小さくなり、更に近寄ると止まってしまう。
体を近づけると電界が分散するのだろう。
アンテナも同様に霧粒が放電して受信機からは雑音しか聞こえない。

もし、暗闇だったらボーッと幽かな光が見えたのではなかろうか。
『不動明王の剣にセントエルモの火』 東洋の信仰と
西洋の神秘伝説を重ねて体験できるところだった。

見ていたら、未だに山で眠ったままかも!?

コメントをいただいていました。
 JA 0 CRの記憶では、剣の先より、指先をたかくあげると、指先より、チリチリッと音がして、
小さなカゲロウが出て、放電をしていたようでした。別に、体には何も感じませんでしたが、余り、
気持ちのよいものではありませんでした。

 JA 0 CRさんを悼む  令和元年九月



今は人のいる所に真っ暗闇がないので
セントエルモの火やその他の怪火は
度々現れていても見ることができないのだろう





私説 1

同じ空中電気だろうけれども、
セントエルモの火の燃えるところと
頻繁に落雷するところとは別のよう。
不動明王の剣に落雷した形跡はなかった。

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13号電探は雷害に対して何らの考慮もされていなかった。
(陸上用三角柱の場合も 艦船用中空檣の場合も 両方共)
アンテナや給電線に避雷器も避雷針も接地開閉器もなかった。
にもかかわらず雷害を聞いたことがない。
セントエルモの火が燃えて少しずつ雷の
エネルギーを消耗するからか?
(送信機内の空隙避雷器は目的が違う。回路事故時の自己保護用)
アンテナ系は回路上、大地から浮いている。
かといって厳重に絶縁してあるわけでもない。
素子を硬化木にサドル止めしてある。
機体の接地線は設営するときに
どのように行ったか記憶がない。
あまり重要視していなかった。
やかましく指示されれば記憶に残った筈。
金属棒を地面に突き刺した程度か?

私説 2
 セントエルモの火について東洋には古来、伝説も目撃談も無かったのだろうか?
西洋で教会の尖塔にしばしば見られるというセントエルモの火が東洋の仏塔に現れないのはどう云うわけか?
 西洋では遠洋航海が盛んで、天候の悪いときに現れるセントエルモ
の火は船の難破直前に目撃されたため、不吉と思われ、信じられたのだろう。
 軍艦や現代の船舶に現れた話を聞かないが、これは帆船時代と違って
悪天候のときにマストを見ている人がいないから気が付かないだけではないか?
窓越しではシュウという音も聞えない。
或いはまた、船体もマストも金属製になって電界分布が違ったためかも?

 えっ!飛行機に現れるって!   翼の先端あたりに?
乾燥空気を摩擦して帯電した機体が雲に入った瞬間に霧粒に放電したのだろう?


まとめ

セントエルモの火は雲や霧の水粒のもっている電荷が近傍の物体に放電する。
個々に多数の放電が連続して行われると、瞬間毎の光の走った跡が集合して炎のように観察される。
音も個々の放電による衝撃音が連続して1つの音として聞こえる。





つれづれ書き足し

乱暴な避雷策?

「雷が怖かったら機器の接地をやめてしまえ!」
接地するということは空中電気との電位差を大きくして、「雷さまどうぞこちらへいらっしゃい」
と言っていると同じだと思わなければならない! 避雷のつもりが被雷になる。

他に奨めて責任を負うほどの度胸はないが自分用は
ずっと そうしている。以来四十数年このかた雷害皆無

でも、びっくり!
雪のとき、アンテナが集めた空中電気が伝わって来て無線機本体が帯電していた。
これも絶縁がよすぎるからだ!


帯電している雲・雨・雪を受けると、HFよりも長い電波では猛烈な雑音で至近距離間でしか通信できない。
波長が短くなると都市雑音が少なくなるのは分るが、空中電気による雑音も少ないのはなぜ?


船乗りは雷が怖くない?


魚雷、機雷、爆雷の怖いのは身に染みて知っているだろうが、空から落ちる雷を怖れた話は聞かない。
この絵をご覧あれ。これは軍艦ではなくて、17世紀初めころの英国の東インド会社の船だが、
舷側に沢山大砲が覗いている。抱えている弾や火薬は相当の量だろう。当時の火薬は黒色火薬であったが、
船に雷が落ちたら弾薬庫に火が入って木端微塵だろうに、先例がないのだろうか? 
ちなみにフランクリンが避雷針を発明したのはこの絵の百年後。
遠い記憶に、泳いでいて電撃を受けたとか、小舟や筏に落雷して釣り人が死んだとか聞いたような気がする。
逆のようだが、マストが高い大船に雷は落ちないのかもしれない。

避雷針が導入される以前から日本各地の五重塔には金属製の水煙や
九輪があって雷にどう作用しただろうか、永い間には、
落雷で炎上したのもあったらしいが無事だったものが、より多い。
接地はしていなくとも避雷に効果があった?!
案ずるに、
木造の塔は絶縁体、普通、絶縁物と言いば磁器やガラスを考えるが、相対的な表現で木材も環境によって絶縁物と言える。
殊に乾燥していれば絶縁性は高い。それが、20〜30メートルもあるので多少のリークはあっても塔上の金物は電気的に大地から隔離される。
そして周囲の空中電気の電圧に帯電して電位差がないので落雷しない。
西洋の塔に比べて5層も屋根があって絶縁層を重ねた結果になり、心柱だけでは、リーク微少 〜 エネルギー不足でセントエルモの火までに至れないのか?
と!
ならば、もしも、心柱が上から下、更に大地まで湿気が連続すれば落雷の危険が生じるだろう!



主題から少し外れるが、1950年代の体験
(1)
快晴の昼中、逆L型アンテナの水平部の真下で蒸気機関車(SL)の煙突から、
勢いよく煙を吹き上げ、上昇してアンテナに懸かった瞬間にアンテナの避雷器が火花放電した。
(2)
SLの汽笛のそばに30MHzのアンテナを設置運用した。
汽笛のたびにFM受信機から「ザー」という猛烈な雑音が出力された。
これらは、どういうことなのか?
急激に噴出する水蒸気は摩擦して静電気を帯電している!
 【 不飽和水蒸気は気体であって水滴粒は混じっていない。絶縁物 & 誘電体である。】

私の不思議事項のうちから関係がありそうなので追記した。


2022 08 30 修正