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写真・図は印刷物をスキャンしたものです
三重志登茂会報第15号(平成12年12月5日)より

三翠会館と三翠庭園

       菊 岡 武 男(S・8土九回卒)

一、はじめに                                                                    

 私は昭和八年に三重高等農林学校を卒業して農林省農務局耕地課に奉職し、昭和二十八
年五月三重大学農学部教官に転じ、昭和五十一年に定年退官した。三年生のときに開学十
周年記念式典に列する幸運に恵まれ、また昭和四十七年には三重高農開学五十周年に当た
るので、農学部では農学部創立五十周年記念式典が行われ、私は農学部長として式辞を述
べる幸運にも恵まれた。                                                          

 これら両記念式典に呼応して、当時の同窓会はそれぞれ記念事業として、前者の場合に
は同窓会館に当たる三翠会館を完成させた。また後者では記念事業の一環として三翠会館
周辺に三翠庭園を完成させた。                                                    

 さて、私は定年退官後、三翠同窓会長に就き、その後、農・水産両学部が融合して生物
資源学部が創立されるに伴い、農学部及び水産学部の同窓会も融合して、新しい三翠同窓
会が結成されるに至ったが、その会長も勤め本年七月その職を退いた。                

 このような事情から、同窓会事務所がある三翠会館を訪ねる機会がかなりあったため  
か、会館と庭園を身近に感じている。会館と庭園のことをよく御存知の三重志登茂会員の
皆さんに対し、会館と庭園について冗滑な一文を敢えて草したのはこのような背景に基づ
いているのである。                                                              

二、三翠会館                                                                    

 江戸橋を渡り国道二三号線を北へ進み、三重大学正門に向って右折する一つ手前の小路
を右折して数十メートル進むと左手にこんもりとした森が見えてくる。これが後述する三
翠庭園である。                                                                  

 三翠庭園平面略図に示す通り、庭園西南端の裏門から小径に入り、右側の生け垣に沿っ
て進み、生け垣の切れたところから右折すると写真1に示す洋式木造の古風な建物が見え
てくる。これが三翠会館である。                                                  

写真1 白亜の殿堂三翠会館
三翠庭園平面略図



 三翠会館は三重高農開学十周年記念事業の一つとして当時の三翠同窓会によって建造さ
れ学校に寄付されたものである。今では、各学部の校舎・附属病院・講堂・体育館その他
諸研究施設等のコンクリート建築物のなかで唯一の木造建築物であり異彩を放っている。

 三翠同窓会は会館建設のために一人十円以上という募金計画にもとづき整力的に募金活動
を行った。当時の資料によると、一円、二円、三円など分納して応募する者も多数あった。
 その頃は三学科制で各学科約四〇名入学であったから、卒業生は千名を少し超える程度
であったにもかかわらず、このような偉業を遂行した私ども先輩の団結心の強さに改めて
敬意を表する次第である。                                                        

 さて、この建物は二階建て(一部平家建て)で建坪は一〇二坪七合五勺(三三九・六七u)、
延べ面積一六一坪 (五三二・二三u)、建設契約金額は一八、七〇〇円、請負者は加藤組
(津市栗真村)で、昭和十一年一月契約、同年九月に竣工し、同年十一月から供用開始と
なった。供用開始後は学校関係者の宿泊、集会等に一般より格安の宿泊料・使用料にて盛
んに利用されていた。                                                            

 現在、一階の一部は三重大学出版会事務室となっており、そのほかピンポン、民謡、舞
踊、着付け教室など教職員の福利厚生の場として、また構成同窓会の役員会あるいは教官
と学生との膝を交えての語らいの場などに活用されている。                          

 供用開始から六十余年を経過したが、その間、大学当局の御配慮あるいは三翠同窓会の
手により部屋の改装をはじめ、会館入り口の模様替えあるいは屋根の葦替えなどが行われた。
 例えば三翠庭園平面略図に示しているように、会館入り口両側に高農時代の門柱が記念
碑として据付けられ、鋼板製の「三重高等農林学校」及び写真2の通り三翠同窓会会報  
「三翠」の題字の通りに三翠の文字がはめ込まれている。                            

 また会館南側の部屋は集会所とベランダに改装された。ベランダは写真3の通りグラバ
ー邸を偲ばせる明治調の雰囲気が漂い、後述する三翠庭園の木立の緑と絶妙に調和してい
る。なおこれらは、農学部創立記念事業の一環として三翠同窓会が行ったものである。  


三、三翠庭園                                                                    

 三重高等農林学校はその後三重農林専門学校と改称され、さらに昭和二十四年三重大学
農学部となり、昭和四十七年には三重高農開学から五十年を迎えることになった。当時の
三翠同窓会は学部が企画した農学部創立五十周年記念事業を全面的に支援し、活発な募金
活動を行い、各方面からも協賛を仰いで、会館前に日本式庭園(図面参照)を造成し、三

写真3 三軍会館のベランダ
写真2 三翠会館入り口の記念碑の一部

    

翠同窓生の熱い思いを込めて三翠庭園と名付け学部に寄付した。                      

 三翠会館の南側のベランダから眺めて奥の方にはベランダと向き合って地下水汲上げ式
の滝がつくられ、そこから庭園内の池に至る水路は、岩の間を流れる渓流を模した石積み
構造となっている。                                                              
 池の形は除草鍬ホー(hoe)の刃形を模し、その傍らに立つあずまや(写真4参照)   
はホーの柄をイメージしている。また池から下流の水路は玉石の空積(からづみ)構造に
なっている。                                                                    

 池の周辺と池から下流の水路末流部の右岸には、あじさい苑が広がり、それに続く庭園
の隅は野趣溢れる竹林になっている。あじさい苑は三翠同窓生の薮内信義さん(拓訓・昭
和十六年修了)と長年同窓会事務を担当された元農学部事務長別所忠雄さん(故人)の御
協力によるものである。                                                          

 庭園の造成に当っては、建設業に関わっておられる三重志登茂会員の皆さんから土工資
材の採取運搬をはじめ、学内外からの樹木の移植その他の土木工事に献身的な御協力を煩
わしたのである。その御労苦に改めて厚くお礼を申し上げる次第である。              

 庭園の樹種は、三翠同窓生の川北要始補さん(農学部林学科・大学六回卒)の御調査に

写真4 三軍庭園のあずまや



よると百十八種にも達しており、なかでも特記すべきは樹齢八十年になるポンドサイプレ
スである。                                                                      
 この樹は会館北側に隣接して立っており、原産地はアメリカ東部で、三重高農開校後、
国の林業試験場から入手した各種の苗に混入していたものといわれている。これまで発芽
に成功した例がなく、三重県で現存するのはこの木だけだといわれている。            


四、おわりに当って                                                              

 昭和初期の洋式木造建造物の三翠会館と緑につつまれ野鳥の楽園になっている三翠庭園
は、いつしか世間の関心を集め、平成七年九月には津ケーブルテレビで会館が放映され、
つづいて平成八年七月には津市中央公民館主催の樹木ウォッチングのコースにこの庭園が
選ばれた。このような学外の関心の高まりはまことに喜ばしいことである。            

 大学当局は三翠会館の存続に関心を寄せられ、三重大学創立五十周年記念事業の重要施
策の一つとして会館の改修工事を企画しておられる。大学の企画が実現することを願い、
学園のシンボルとして全学部に広く利用されるよう期待して止まない。                

 三翠同窓会の遺した会館と庭園がさらに広く脚光を浴びることを心から願い拙稿を終り
たい。                                                                          


引用文献                                                                        
 三翠同窓会会報「三翠」第五三号(昭和十一年十月)                              
 津市民文化二四号(平成九年三月)                                              
 三重大学五十年誌(平成十一年九月)                                            



関連報文 三重大学春秋会(退官教官の会)機関紙「春秋」第25号(2002.11)より (前掲の報文以後の新しい内容の部分のみを抜粋しました) 三翠会館と三翠庭園         菊岡武男         1 はじめに 2 三翠会館の概要 1) 位置 2) 同窓会の募金活動 3) 会館の概要 4) 建物の概要 (以上は前掲の報文とほぼ同様なので省略) (写真2)会館南側のベランダ 5)登録有形文化財に指定  前述の通り会館は簡潔な意匠で、建築費も廉価で技術面でも単純な建築様式が採用され、 昭和年代初期に建造された地方の木造公共建築の特色を良く伝えているので、平成14年2月 14日付で登録有形文化財に指定され、さらに3月12日付で遠山文科相より「文化財保護法第 56条の2第1項の規定により文化財登録簿に登録したことを証する」旨の登録証が三重大学 に与えられた。 3 会館の大改修 1)三重大学のご配慮  会館は供用開始から約70年経過した。その間三重大学或いは同窓会により、外壁等の修 理のほか、会館入り口の両側に高農時代の門柱が据えつけられ、鋼板製の「三重高等農林 学校」および同窓会会報題字「三翠」が填め込まれている(写真3)。  さらに三重大学の格別なご配慮により、三重大学開学50周年記念事業の一環として、8 千余万円も投じた大改修工事が実施され、平成14年3月25日に完成した。大改修後の会館 平面図は図2の通りである。 (写真3)会館入り口の門柱 (図2−1)会館1階平面略図 (図2−2)会館2階平面略図 2)改修計画のコンセプト  登録有形文化財としての価値をさらに高め、身障者にも利用しやすいようバリアフリー に気を配り、かつ一般にも公開できるような資料展示室を備えた「歴史から学べる記念館」 をコンセプトとして改修が行われた(写真4参照)。 (写真4−1)応接室兼展示室 (写真4−2)展示室の一部 3)構造材等の保存  改修としては、外壁、内壁、床および天井の下地補修補強が行われた。なるべく当初の 材を再利用し、構造材を取り替えるときは、同一材種を使用し、また仕上げを新しくする 場合も形状および工法とも当初の通り行われた。  なお耐震診断に基づき耐震補強も行われ、基準値以上の安全性が確保されている。 4)仕上げおよび機能面のリニューアル  内部の主要な部屋および色も当初のまま残すようにしたが、1階のトレなどの水廻り部 分は著しく腐朽していたので、一般への開放および高齢者への対応も考慮して、既存部分 と調和するように改修された。  また多目的ホールおよび応接兼展示室は、講演・研修・交流活動などのサービスが円滑 に行われるよう改修された。  2階の間取りは改修前と同じであるが、畳替えおよび障子の張替えが行われ、青々とし た新しい畳の青が満ちている。 4 三翠庭園 (以下は前掲の報文とほぼ同様なので省略) 1) 三翠庭園の由来 2) 庭園の構図と造成工事 3) 庭園の樹種とポンドサイプレス 5 結びに代えて                                        △
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