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三重大学春秋会(退職教官有志の会)会誌「春秋」第22号(H11.11)より



私の生垣考

菊 岡 武 男


1 わが家の生垣                                                             

 私の家は、津市八町通りに面していて、L字型に生垣で街路と隣家に接し、その奥 
は庭木というには恥ずかしい手入れをしない雑木で貧弱な家屋を隠している(写真参
照)。八町通りには生垣のある家は極めて少なく、生垣は町のなかでは馴染まないの
ではないかと久しく感じていた。                                              





 ところが、第4次津市都市計画1)では、環境創造の観点から、後述するように、植
生のある地域を市内で6割以上確保することを目指していることを知り、わが家の生 
垣も案外存在価値があるようだと思うようになってきた。                        

 さらに、それに加えて、柳井重人氏の生垣に関する論文2)を読んでからは、住宅 
地の緑化は居住環境の面から今後重要な課題であり、住宅敷地の接道都の緑の存在で
ある生垣は見直すことか大切だと考え、わが家の貧弱な生垣から、地域に共有される
住宅地の緑としての生垣を改めて考え直すようになった。                        

 以下、第4次津市総合計画に含まれる緑化計画を紹介するとともに、柳井氏の論文 
を引用しつつ、都市緑化推進に果たす生垣について考えてみたい。                


2 津市の緑の基本計画                                                       

 第4次津市総合計画は、都市像を「豊かな文化を育み21世紀に躍動する美しい県都」
と位置づけ、2010年を目標年次とし、都市経済の自立的成長を促すとともに、市民一 
人一人がそれぞれの価値観を実現できる質の高い市民生活を築き、都市としての魅力 
を高めていくことを目指している。                                             

 そのなかで、環境基本計画の一つとしては、環境創造の観点から、植生のある地域 
を市内で6割以上確保することを目指し、住宅地の緑化を求めている。また緑の基本計
画では、緑の連続性と市民にとって親しみやすい緑の創造を理念として、水と緑のネ 
ットワークを提案している。                                                   

 このように、津市は環境創造の観点から、植生のある地域を市内で6割以上確保す 
ることを目指している。植生は必ずしも生垣でなくてもよいが、わが家の生垣を見て
いると、生垣は緑をつくり出す有効な手段の一つではないかと最近考えるようになっ
た。                                                                        


3 地域に共有される生垣                                                     

 柳井氏は「地域共有の緑は視覚的な共有、機能的な共有、心理的な共有という観点
からとらえ、これらを実現した緑が地域共有の緑である」と述べている。          

 これを生垣にあてはめると、視覚的な面からは、生垣は道路に接して植栽されるか
ら、町を通る人びとの目にふれやすく、生垣のあることは緑の視覚的な共有性に役立
っている。つぎに機能的な面から考えると、生垣は所有者の私的な緑として敷地の境
に植栽されて敷地を遮断する境界の役目を果たし、視線を遮断するはか、外からの進
入を防止する機能を果している。このような役割に加えて、生垣は街路の緑として景
観を向上させる公的な効果を発揮する。                                        

 柳井氏はさらに出雲平野の築地松を例示し、地域住民は生垣として共有するととも
に、防風機能も発揮し家屋を保護するとともに、地域住民は地域のシンボルとしてと
らえ、生垣が心理面でも共有されるものだと述べている。                        


4 生垣は広まるか                                                           

 地域に共有される緑として生垣は広まるだろうか。前述したように津市は環境創造
の視点から植生のある地域を市内で6割以上確保することを目指している。どのよう 
にして緑を増やすかそのプロセスは私にはわからないが、緑として仮に生垣を対象に
したとき、生垣普及の可能性はあるのだろうか。                                

 再び柳井氏によると、戦前、東京都杉並区高円寺・阿佐ヶ谷地域の生垣所有戸数は
37.3%、そのうち1戸建住宅が多い地区では90%以上であった。しかし現在その地域 
の生垣所有戸数は5%に過ぎないという。昭和10年代、私は高円寺に住んでいた。朧 
げな記憶では、住宅地は緑に溢れていたが、その緑は生垣が主であったか記憶は漠と
して定かではない。                                                          

 柳井氏は「現在では生垣が極めて少なくなり、その代替として多くはブロック塀・
コンクリート塀などが増えている。これは囲障の設置一維持管理一家屋の新築・増改
築一新たな囲障の設置というサイクルのなかで、生垣は増減することになる。」と述
べている。同氏はさらに論を進めて「このような各段階で、行政側は生垣化を誘導す
るような対策を講ずればよく、例えば緑地協定、地区計画あるいは生垣の設置・維持
管理に関する助成金の交付などいくつかのメニューが考えられる。」と述べている。

 地域に共有される住宅の緑として生垣がもっと広まればと最近は思っているが、そ
のプロセスは簡単ではない。生垣が広まるのは私の淡い夢かもしれない。生垣も含め
さまざまな緑を対象にした地域共有の緑づくりに皆さんから是非お知恵を拝借したい
と思っている。                                                              


引用文献                                                                    

1)野村 守:計画から行政一実施機関から地方政府への脱却、都市環境ゼミナール 
       年報、第7号(1999年3月)                                       

2)柳井重人:地域に共有される住宅地の縁ー生垣をとおして考える、環境情報科学、
       27巻2号(1998年6月)                                            

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