◆ 鯉と詩歌 |
● 鯉と俳句
大漢和辞典で鯉という漢字を調べていたら、「鯉魚風(りぎょふう)」という言葉に出会いました。 『梁簡文帝 艶歌篇』に「燈生陽燧火 塵散鯉魚風」(燈は陽燧火に生じ 塵は鯉魚風に散る)という一節があり、「鯉魚風」とは、秋風を表しています。 日本風に表現すれば、「鯉魚の風吹く」とでも表現するのでしょうか...?ということで、 私も一首! あめ 秋の水 黄金に染むる 山あいの 衣を写し 鯉魚の風吹く (折り句‥秋翠・黄金・藍衣・写りもの。笑)
ところで、鯉は一年中見られる魚ですので、歳時記の中では、「鯉」という言葉に、特定の季節感を持たせていません。しかし、「鯉のぼり」については、端午の節句に関係が深いので「夏」をあらわす季語になっています。そのため、次のように多くの作品が詠まれています。
単独で、「鯉」という言葉が出てくる俳句には、
というのがありますが、当然の事ながら、言水の句の季語は「郭公」であり、羽笠の句の季語は「梅」となっています。 しかし、観賞魚としての鯉、つまり「緋鯉」となると、夏の季語となり、次のような句があります。
● 鯉と短歌
また、鯉を題材して読まれた近代短歌を調べてみましたら、次のようなものがありました。
あぎと 最上川に住む鯉のこと常におもふ噞喁ふさまもはやしづけきか 『白き山』 斎藤茂吉
古き井戸に一匹の鯉棲むと言へど見しことはなしその酷き緋を 『密糖』 真鍋美恵子 はだへ 水深く日のさし透るひとところ膚明かりて白き鯉行く 『水晶の座』 田谷 鋭 しじ 鯉のぼりの大き眼球せまりゐて繁に青葉となるを怖るる 『薔薇窓』 葛原妙子
鯉幟はためく村よ死なしめてかごめかごめをするにあらずや 『子午線の繭』 前 登志夫
秋の一日、自慢の愛鯉を眺めながら、心に浮かんだ風景を歌に詠んでみるのも楽しい時間の過ごし方かも知れませんね。また、ご投稿頂ければ、掲載させて頂きたいと思います。 次回は、古典に詠まれた歌を紹介したいと思います。
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