◆ 鯉とシンボル

 

 

● 鯉は、鯉のぼりに象徴されるように、私たちの生活や文化の中に深く根を下ろしています。

  また、古典をはじめ、短歌や川柳などの文学作品にもしばしば登場していることを考えれば、  淡水魚の中で一番親しまれてきた魚は鯉だといえるでしょう。

  調べてみると、鯉を町のシンボルとして大切に扱っているところは、意外に多くあります。島根

県の津和野町や栃木県の栃木市、兵庫県の養父町などが有名ですが、それ以外にも全国各地に多数あります。これらの町は、掘割や河川に錦鯉を放ち、訪れる人の目を楽しませてくれています。

  また、鯉のぼりの生産地として全国的に有名な埼玉県加須市では、5月になると長さ100メ

ートルを超える巨大な鯉のぼりを製作し、爽やかな空に泳がせる企画や12月には「鯉のぼりマラソン」を実施するなど鯉と深い関係を作っているところも多いようです。

  ところで、我が国のように親しみ深い鯉も、世界に目を向けてみると受け止め方もまちまちな

ようで、国民性の違いが見えて来ます。そのいくつかをご紹介しておきます。

 

★ ヨーロッパ

 

☆ ドイツでは、もともと食用としてドイツ鯉が飼われていたこともあり、好意的な捉え方をしてい ます。現在は少なくなりましたが、クリスマスの晩には「七面鳥」ならぬ「鯉」の料理を出す習慣 がありました。

  また、ドイツやオーストリア等から東欧諸国にかけては、祝いごとがあると鯉料理が出される

ことが多くあります。また、鯉釣りなどもよく行われており、鑑賞鯉の品評会も行われています。(参考までに→釣り上げられる大きなドイツ鯉

 

☆ ランスでは、川魚よりも海の魚の方を食すことが多かったのかもしれません。あるいは、鯉

そのものの伝搬が遅かったのか、よく分かりませんが、あまり良いイメージを持っていないようです。鯉の持つイメージや象徴として、「無知」とか「寡黙」を意味するそうです。

 

★ 東南アジア

 

☆ ベトナムでは、新年に先立つ12月の末に「吐君節」という行事があり、かまどの神がその家

の一年の行いを天上の神に告げる日とされています。(言ってみれば、日本の「庚申の日」に相当するようなものでしょうか。)その際に、かまどの神は鯉に乗って天上界へ行くと言われています。その日には、いろいろな供物とともに生きた鯉を供えるそうで、この鯉に託して、家に付いている悪霊なども一緒に天上界に連れていってしまうそうです。悪霊などを連れ去った鯉は、12月の終わりに家に戻ってくると信じられています。また、秋の半ばの祭りのときに、民間伝承に知られる悪霊や金の鯉の悪さから家を守ってくれるのも鯉だそうで、鯉は家を守るシンボルとして大切に考えられているようです。

 

  一般的に見て、極東アジアでは、鯉は縁起の良い生き物として扱われています。鯉自体の寿

命が長い事により、長寿の象徴としても取り扱われていますとし、また、日本のシャチホコのように屋根の上に、火除けのまじないとして据え置いたりしています。

  日本や中国では、鯉は勇気と忍耐を象徴するものとして考えられています。前に書いた「登竜

門」という言葉に関連しますが、鯉は知的優位のシンボルとされ、受験生に鯉を贈ることは、試験の合格を祈念する意味があります。

 

★ アフリカ

 

  ちょっと意外な象徴性を持っている国を紹介します。アフリカの西部にある「マリ」という国に暮

らすバンバラ族では、鯉は女性器の外陰をあらわすシンボルとなっています。割礼の儀式を受けた娘さんたちは、『コイのおばさん』という歌を歌うそうです。歌の歌詞は、「♪コイのおばさん化粧に行った。なにかが前に現れた。よく見てみると、赤いリボンのよう、赤いポンポンのよう♪」という内容だそうです。よく分かりませんが、鯉は物質的にも、精神的にも多産を象徴するものとして受けとめられているようです。

 

  次回は、時季はずれですが、鯉のぼりについて書きたいと思います。

 

 

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