育む~夢。

2001.12.2記

 先日、晩秋の色とりどりの紅葉に出逢う機会に恵まれて、山間を歩いた。

 紀州釣りとは、関連しないので、甚だ恐縮であるが・・・。

 兵庫県の武田尾温泉。
 その谷間の清流は、やがて、武庫川下流へと続く。
 

 ある知人が、万葉の世の句をいくつか詠んでくれた。
 私は、さっぱり意味がわからず、風情の無い人間であったが、
 ロマンチックな歌が、心に残り、
 帰宅後、学生時代の古い書を紐解いた。

 私は、「古典文学者」 では、もちろんないので、偉そうなことは言えないが、
 その知人に教わったことを聞きかじって、ご紹介したい。

 なにせ、若干のアルコールも入っていたので・・・、
 とんだ解釈かもしれないので、多くの誤りがあると思うが、
 そんな勝手な思い込みで、毎年、晩秋の小春日和を過ごせたら、素敵だな!・・・ということで、ご勘弁願いたい。

 

育む~夢。

 武庫の浦の  入江の洲鳥    羽ぐくもる     君を離れて 恋に死ぬべし
 (むこ)      (いりえ)(すどり)   (は)

十五巻ノ三五七八                             遣新羅使人の妻
                                    
(けんしらぎしじん)

 大船に  妹乗るものに あらませば    羽ぐくみ持ちて 行かましものを
(おおふね) (いも)                    (は)

十五巻ノ三五七九                               遣新羅使人
                                    
(けんしらぎしじん)

 「育(はぐく)む」 の語源は、縄文言葉にルーツを持つ、琉球方言の 「くくむい」 弥生言葉大和言葉 「羽ぐくむ」 となり、 「育む」という言葉になっていったらしい。

 琉球方言の 「くくむい」 とは、今なお残るウチナーグチ(沖縄方言)だが、花のつぼみの状態を指し示すらしい。

 「入江の洲鳥」 ・ 「羽ぐくむ」 とは、武庫川河口の三角州に棲む親鳥が、ひな鳥を自分の羽根で、くるみ・かばい・まもっている姿。

 740年代に詠まれた二句らしいが、当時、遣新羅使人とは、大和朝廷の外交官として、半年・1年単位で、朝鮮半島の新羅という国に行っていたらしい。が、現実はコンタクトを取ることは困難であったようである。

 恋文の二句であるが、「恋に死ぬべし」 とは、「さみしい」 と読むらしい。「君」は、ダンナ。「妹」は、女性。

 ・・・・・・・・「育む」~ を、いついつまでも・・・。

 
   
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