龍が如く 劇場版
お勧め度:★★☆(2.5点) 2007年公開
 ゲーム原作の映画。
 セガ発の、同タイトル大ヒットゲームの映画版である。かつて「堂島の龍」と呼ばれた男、桐生一馬が、10年のお勤めを終えて娑婆に出てきたところから、物語は始まる。
 歌舞伎町をイメージした「神室町」での、極道や強盗、暴走する若者などのドラマが交錯する。しかし、何といっても最大の見せ場は、堂島の龍VS狂気の極道・真島の兄さんの一連のバトルである。
 所謂「仁侠映画」「極道映画」と思って観ると、肩透かしかも。この映画は、そういった部分を楽しむモノではない。ひたすら、クールガイ桐生と、ブチギレ真島のくどいまでの対決を楽しむ、そういったノリである。
 原作のゲームでも、かなりの切れ方だった真島の兄さんだが、岸谷五郎によって再現された兄さんは、ゲームに匹敵するイカレ振りである。おそらく、全出演者のうちでも、もっとも楽しんでいたクチだろう。
 とりあえず、純粋にエンターテインメントとして鑑賞するのが、楽しむ秘訣である。その場合の評価は★×5。真面目に観るなら★×1.5くらいかも。何しろ、ボロボロに傷ついて、息も絶え絶えだった桐生さんが、
 体力最大回復!!ヒート状態維持
 スタミナンX
を飲んだ途端、回復をして敵を一気にぶちのめす!しかも拳が青く輝く!ゲームそのままの演出は、ゲームファンには爆笑モノである。一般鑑賞者には、噴飯モノかも(笑)。
 一般的な映画としてみた場合、設定やストーリーに穴が多いので、手放しでお勧め出来ないが、とにかくおバカ映画としては十二分の出来。真島の兄さんのキレ具合は、一見の価値あり!
 一言フォローするならば、桐生役の北村一輝、真島役の岸谷五郎を始め、出演者のアクションは見事な迫力で、格闘アクション好きにも納得の出来栄えである。
H190319


隠し剣 鬼の爪
お勧め度:★★★★★★★★(8点) 2004年公開
 山田洋次監督の時代劇。『たそがれ清兵衛』に続く藤沢周平第二部。
 とある東北の小藩を舞台にした侍の生き様。主役は、永瀬正敏演ずる貧乏御家人・片桐宗蔵。
 幕末の、近代化の波が押し寄せつつある世の中で、日々穏やかに過ごすことが、片桐の望みであった。が、世の中の動きは彼にそんな平和な生活を許さない。藩主への謀反の罪で、郷入りの極刑を申し渡された狭間(小澤征悦)が、牢抜けをする。かつて片桐と狭間とは、戸田派一刀流道場の竜虎とあだ名された猛者であり、藩主は、片桐に狭間の征伐を命ずる。そして片桐は・・・。
 いやいや、重苦しくなりそうなこの話を、山田洋次は淡々と描く事により、独特の求心力を持たせる事に成功している。全ての話の伏線が有機的に繋がり、観る者を飽きさせない。いやお見事!役者の演技力も素晴らしい。彼らの演技に、地味に一喜一憂しつつ見てしまう。
 戸田道場では一番の使い手であった狭間ではなく、片桐に秘剣である「鬼の爪」が授けられる。その訳や、そもそも「鬼の爪」とはどういう技か?物語を静かに、しかし力強く盛り上げるこの一撃が、このドラマをとても重厚なものに仕上げている。
 あまり期待せずに観たので、その衝撃はより大きかった。日本人たるもの、この映画は観る事が礼儀であろう(笑)。
H181214


西遊記
お勧め度:★×82(82点) 1978年公開
 西遊記。『宇宙大作戦』と並んで、私の人格形成に大きく関与した作品(笑)。
 孫悟空に堺正章、三蔵法師に夏目雅子、猪八戒に西田敏行、沙悟浄に岸辺シロー。
 映像化された西遊記の中で、これほどの完成度を誇るものは、外にない、と言い切る!中国産の西遊記は見た事が無いが、結局京劇の延長であろう事は想像に難くない。そういうものとは次元が違う。
 もうとにかく、面白いとしか言いようがない。今見ても十分楽しめる。特に、夏目雅子の美しさは、特筆モノ。また、猿と豚の掛け合い、河童の仲裁、坊主の突っ込みと、ストーリーを除外してさえ面白い。しかも、ストーリーそのものも、きっちりと組み立ててあり、原作(呉承恩著『西遊記』)に結構沿っており、古くさいながらも現代に通じる辺り、正に素晴しいの一言。
 個人的に、もう褒めるより仕方がない。とにかく観て下さい。観ずに、人生の一部をムダにする前に。
H181010


座頭市
お勧め度:★★★★☆(4.5点) 2003年公開
 座頭市である。座頭市といえば、勝新。勝新といえば、座頭市。座頭市とは、まさに勝新を抜きにしては語れない。そう思っていた。あにはからんや、である。
 ヤクザの銀蔵一家が締める宿場町に、親の仇を探す旅芸者二人、口を糊する為に用心棒の口を探す浪人、そして座頭市がやってくる。そこから始まるもつれた物語。二転三転する伏線は、唸らされる事必至。最後まで目を離すことが出来ない。
 ビートたけしの、殺陣の見事さも、必見。居合い、そして斬撃の早さは、数多の時代劇俳優の中にあっても、有数の鋭さである。期待半分、不安半分で観たのだが、がっちりと捕まってしまった。
 タップのシーンについては、色々と批判めいた感想を耳にしていた。曰く、
 「台無し」
だと。
 どんなんかな、と、ハラハラしながら観てみた。

 ・・・・・・。

 えー、駄目だ、と言った皆さん、
 出直してください。

 本編中にも、ちゃんと同系統のお遊びが入っているじゃありませんか。そこが許せないのなら、もう映画を観るのはやめといたら?
 そんなあなたたちには、渡哲也版「はぐれ雲」と、ビートたけし版「はぐれ雲」をセットで観ることをオススメする。リハビリだ(笑)。
 いや、こちらの予想を遥かに上回って、面白かった。レンタルで観たのだが、直後にDVDを買ってしまいました(笑)。


拳鬼
お勧め度:★★★(3点) 1992年公開
 大映のVシネマみたいなジャンルで発表された作品。空手家にして作家の、今野敏原作『拳鬼伝』の映像化である。
 主役の阿部寛は、常心流拳法(要は古流空手らしい)の使い手。彼の恋人の兄貴(長谷川初範)が刑事で、「素手で殺されたらしい、ヤクザ殺人事件が起こった」という機密漏洩情報をもたらす。主人公は、それを「八極拳の使い手」が犯人と喝破する(なぜ八極拳?)。なんだかんだとお話は進み、最後は八極拳の使い手(石橋雅史)との一騎打ち。年齢的に息の上がった八極じじいを、空手家阿部寛が死ぬまで連打!と言うストーリー(どんなんだ?)。
 阿部寛にしろ、石橋雅史にしろ、いい動きしています。まあ、石橋氏は極真黒帯の実力者なので、武術的動作も堂に入ったものです。まあ、途中、阿部寛が変なちんぴら相手に使う「妙な関節技」は、ご愛嬌と言うことで。あと、主人公の友達の使う八極も、ちょっと首をかしげるところがあるが…。まあ、それはそれで。
 ところで、いろいろな人が指摘している通り、この作品中に出て来る八極拳は、「完全に」『拳児』が出典(著者は特に公認していないが)。大体、八極拳の達人クラスの人間が、極め技にわざわざ「心意把」を持ってくるというのが、『拳児』の流用そのまま。ま、別にいいんですよ、そのまま流用でも。でも、「近身短打」を身上とする八極拳に対して、体当たり技だけ他の拳種、というのはあまりに失礼では?『拳児』での八極―心意把―心意六合拳という流れは、松田隆智の拳法遍歴があってこそ意味意を持つもので、それ以外の状況では成立しないパターンである。
 あと、孟村呉家の単打の「開門式から頂肘」までやっておきながら、後は漢族系の小架の動作、しかも二郎担山だけまた呉氏、という謎の套路も、何とかして欲しかった。
 まあ、小ネタにどうぞ。


ケンカ空手極真拳
お勧め度:★★★(3点) 1975年公開
 世界のソニー千葉こと、千葉真一の、大山倍達半生伝記映画。原作は大山倍達の著作のどれか(基本は『空手バカ一代』か?)。
 内容的には結構胡散臭くて、マス=オーヤマの自伝通りとはとても思えない。が、なんとなく楽しめてしまうあたり、私も日本人と言う事か?個人的には、ソニー千葉の、あの黒い道着がお気に入りである。
 ストーリーは、基本的に『空手バカ一代』に準拠していると思われる。ソニー千葉も三戦の型をやったりしているが、マスーオーヤマにしては、ソニー千葉は華奢すぎる。いい体はしているんだけどね。
 また、この映画の中には、実戦中国武術家として知られる蘇東成氏が太極拳の使い手として、なんだか胡散臭い動きを披露した上、ソニーに一撃でやられていたりする。もうちょっと見せ場はなかったのか、と首を捻ってしまう。
 理屈抜きで、スカッと楽しみたい方は、どうぞご覧下さい。止めません。