ベスト・キッド 原題『The Karate Kid』
お勧め度:★★★★(4点) 1984年公開
 カラテ映画。アメリカ人の「KARATE」のイメージを決定付けた、罪深い作品(笑)。
 家庭の事情で、ロスのとある街に引っ越してきたイタリア系少年ダニエルは、学校の女の子に一目惚れをしてしまうが、その子の元カレが、カラテ使いの愚連隊で、ダニエルはボコボコにいじめられる。そこを助けてくれたのが、近所に住む日本人のミヤギだった。ダニエルは、カラテの達人のミヤギにカラテを教わるのだが…。てな内容。
 しかし、ミヤギは、なぜあんな訓練法を取り入れたのだろう?「ワックスを塗る、ワックスを拭く」とか、「塀にペンキを塗る」とか。そんなことしなくても、ちゃんと普通に空手の練習をすれば良かったのに、と思いますが(笑)。
 日常の動作がそのままカラテの技に通ずる、というのなら、まず最初にカラテを教えてから、日常的な動きへの応用を説明するほうが、理解が早かったと思うのだが、どうだろうか?
 ちなみに、ミヤギ役のパット=モリタは、実は特に空手の習得はしていないらしい。
 逆に、ダニエル役のラルフ=マッチオは、しっかり練習をしているようである。彼が作品中で披露する型は、セイエンチンという古流で主に練習される型らしい。あそこまでヌルイ動きではないが(笑)。彼のナマ演武を観させて貰ったが、徒手もサイもトンファーも、意外と鋭いいい動きをしていた。しっかり練習している事が良く判るものだった。映画の時は、まだ練習不足だったのか?(笑)
 微妙な日本文化の勘違いも含めて、何となく面白く、尚且つ意外とアツくなれるので、いっといていいんじゃないかと。
H190604


ブレイド 原題『BLADE』
お勧め度:★★★★★★★★(8点) 1998年公開
 ウエズリー=スナイプス主演、マンガ原作の吸血鬼アクション映画。

 初めてこの映画のビデオのジャケットを見た時、何も知らなかった私は、思わず吹き出してしまった。
 グラサンをした黒人が、日本刀を持って立っているその写真。
「勘違い忍者ムービーか?(笑)」
 ところが実際に本編を観たら、驚いた。
 冒頭から、いきなりのアクションの奔流。主役・ブレイドの放つ、銀の弾丸で塵と化すヴァンパイヤ達。西洋の剣術にはない、無闇に剣を掌中でクルクルと回す動作。明らかに中国武術系の動きを取り入れた殺陣は、ケレン味たっぷり。
 もともとはマーブルコミック系。ブレイドは、人間とヴァンパイヤのハーフで、人間を捕食対象として襲ってくるヴァンパイヤを狩っている。
 ヴァンパイヤの若きリーダー、フロストは純血のヴァンパイヤで、人間を支配下に置くため、ヴァンパイヤの神を復活させ、強大な力を手に入れようと企んでいる。フロストとの戦いが、メインのストーリー。
 自らがヴァンパイヤであることを否定するため、吸血行為を拒み、血清を打つことにより吸血衝動を抑える、など斬新な設定がいい。
 ただとにかく、ストーリーは単純なこの映画、スナイプスのカポエラ+ケンポーカラテ(なんだそりゃ―笑)の絶品の動きを堪能するのが吉。勢いもあるので、すっきり観られます。


シックス・ストリング・サムライ 原題『SIX-STRING SAMURAI』
お勧め度:★★★★★★★(7点) 1998年公開
 まさにカルト・ムービー。日本では、小さい劇場で一週間ほどしか公開されていない、ある意味幻の作品。
 核戦争後の地球が舞台(あまり真剣に考えない方がいい)。
 1957年(旧ソ連がICBM実験に成功した年)、ソ連がアメリカを占領する。
 共産主義に覆われた中で、ロスト・ベガスが自由の最後の拠点となる。
 ロスト・ベガスにはキング・エルビスが君臨していた。
 しかし、40年後に、キングが死亡する。

 「ギターと剣を手にする者は、荒野に響く声を聞く。ベガスは、新しいキングを求めていた。」

 はあっ?
 な、オープニングである。「まじめに観るな」と言わんばかりのナレーションから始まるのだが、この映画のストーリーテラー(主役ではない、と思う)は、スーツに銀縁メガネ、破れた傘、ギターと刀を持ち、行きがかり上助けた、母を殺された少年を連れ、ロックと自由の聖地・ロスト・ベガスへと旅をする。<ロードムービー>と言って良いのだろうか?
 世界観的には、『マッドマックス』な感じ。ノリ的には『北斗の拳』といったところだろうか?
 ストーリーテラーのバディー=ホリーは、「キングに最も近い男」として、共産主義者や、トップ・ハットという、キングの座を狙う男に狙われている。

 こんな感じのお話である。まじめに考えちゃいけません。この映画は、監督ランス=マンギアと、主演ジェフリー=ファルコンの同人映画なのである。
 とりあえず、全編ロックンロールとカンフーと、好きな映画のパロディで埋め尽くそう、そんな意欲が激しく感じられる作品である。

 ストーリー的には、ジェフリーとトップ・ハットとの戦い、ジェフリーと少年との心の触れ合い、というところが中心になるのだが、いかんせん趣味で作っているだけあって、お話的にはかなりシュールで、ぶっちゃけて言うと「破綻している」。しかし、それもいい。そんなことは、どうでもいいのである。ジェフリー=ファルコンのカンフーアクションを観ているだけで、この映画は8割理解したも同然である。
 走って追いつける車での、蛮族とのカーチェイス(?)もさることながら、マカロニ・ウェスタンの埃っぽさ、共産主義者(笑)との百人切りから、トップ・ハットとの『スター・ウォーズ』ばりの剣対決(ライト・セーバの効果音付き)、さらには『エクソシスト』の流用など、およそ「プロならば絶対に手をつけない」部分のパロディは、個人的には非常に好きである。

 ラストはバディVSトップ・ハットは「ロックVSヘビメタ」の構図で、監督の真意が分からないので、首を傾げるだけであるが、「ロックンロールは良いよ」と言いたいのであろうか?そこは観て、判断していただきたい。

 とりあえず、なんだか分からないなりにかなり楽しめます。いいっすよ、かなり。

 ちなみに、主演のジェフリー=ファルコンは、白人ながら香港出身で、北京大学で長拳を習ったこともある、いわば本格派である。
 ただ、太極拳は下手だった(泣)。

 付録:この映画のサイト(英語)を見た時、翻訳ソフトにかけてみたのだが、
 「六人のひも侍」
 と訳しやがった。暫く笑いが止まらなかった。


カラテ・キッド 原題『KARATE WARRIOR』
お勧め度:★★★★(4点) 1987年公開
 もし、本気でこの映画を観よう、としている人があれば、ひとこと忠告しておきます。期待してはいけません(笑)。しかも、イタリア映画である。決してハリウッド映画ではない、念のため。
 コアな映画ファンなら、もしかしたら名前は知っているのかも(私は知らなかった)、なイタリア美形俳優キム=ロッシ=スチュアート主演の、『ベスト・キッド』(1984年公開)のパクリ映画(笑)。これは、完全な確信犯的パクリである。お疑いの方は、『ベスト・キッド』と比較しながら観る事をお勧めする。爆笑度四割増(当社比)。
 主人公アンソニー(キム=スチュアート)が、旅行先の日本(どう贔屓目に見ても、タイかフィリピン)で、カラテの先生に出会い、イヤなカツアゲ野郎をカラテのリング上で叩きのめす。そんな感じのストーリー。オリジナル版ではパット=モリタ扮するミヤギ先生役には、ナゾのスキンヘッド・カラテマスター・キムラ(『キック・ボクサー』のヴァンダムの師匠にも似ているぞ―笑)。そのキムラ先生は、アンソニーに「それ、もしかしたらテコンドーの型じゃない?」と突っ込みたくなるような技術を教え、さらに必殺技(笑)「ドラゴン・ストローク」を授ける。それは、間違ったイメージのハッケイそのもの。しかも牛さえ一撃で倒す威力を持つ。そんな技を、にっくきカツアゲ相手に試合で使ってしまうのだから、「カラテ精神修養論」を説くキムラ先生の教えも、アンソニーにはちっとも役に立ってはいない。
 しかし、なぜか面白いのである。ついつい観てしまう。この映画を楽しいと思った時点で、人間的に敗北していると分かっていても、である(笑)。とりあえず、もしレンタルビデオ屋で見つけたら、迷わずいっときましょう。勢いがないと辛いから、観るのが。
 ちなみに、続編『カラテキッド激闘編』というのも出てます。


キックボクサー 原題『Kickboxer』
お勧め度:★★★(3点) 1989年公開
 最近、2代目引田天功と浮名を流した(?)ジャン=クロード=ヴァンダムの出世作。
 え、欧州カラテチャンピオンだから、東洋武術だろって?映画の題材はムエタイだから東洋武術だろって?すいません、私の中では、アレは空手ではありません。良くてもサバットかな?パンチ、ヘタ過ぎだし。だから、やっぱり西洋武術系なのである。
 お話は、すっげー強いムエタイ選手に、キックボクサーの兄貴が潰され、リターンマッチを誓った弟(ヴァンダム)だが、タイで知り合った彼女までが、そのムエタイ選手に手篭めにされたので、(結局は)私怨てんこ盛りで地下ムエタイ試合(はぁ?)で恨みを晴らす大暴れ映画。
 中身は空っぽ、ヴァンダムのムエタイの先生は、カン違いウーシューマスターっぽい変なスキンヘッドじじいだが、ヴァンダムの180度おっぴろげジャンプ(by『けっこう仮面』)を見るだけでも、この映画を観る価値はある(ホントか?)。
 ラストの地下ムエタイの試合は、『ロッキー』風の編集方法なので、騙されているような迫力がある。とりあえずは勢いで楽しめるでしょう。ヴァンダムの動きは非常に良いので、いっといてもよいのでは?


 マトリックス 原題『MATRIX』
お勧め度:★★★★(4点) 1998年公開
 その映像技術で一世を風靡した、ウォシャウスキー兄弟の作品。今では、サントリーの「DAKARA」という清涼飲料水のCMでパロディー利用されるほど、その認知度は高い。
 「この現実は、果たして本当の現実か?」という所からのストーリーの展開は、個人的には好きである。「マトリックス」という一つの巨大な仮想現実を舞台に、その世界では万能を誇るエージェントとの壮絶な戦いを、キアヌ=リーブスが体当たりの熱演。話題となったモーフィング撮影、ワイヤーワーク、カンフーアクションなど、B級マニアが泣いて喜びそうな内容。が、「カンフー」の部分は、ユアン=ウーピンがついていながら、なんという体たらく(涙)。それだけを取り上げるなら、評価は−★★(マイナス2)ぐらいだ。まあ、サブカルチャー(要はオタク文化)の集大成として楽しむなら、これは結構楽しめると思う。
 色々な国の神話などをモチーフにした、と言うが、「キリストの復活」以外は、『アキラ』『攻殻機動隊』『北斗の拳』『機動戦士ガンダム』などの良いトコ取り、プラス東洋思想(主に仏教系)で補強してある、という印象が強い。見方によっては、「自立した」コンピューターウィルスが、ワクチンソフトと戦い、ハードディスクから飛び出そうとする「反マイク○ソフト」物語、とも取れるか(スケール小せぇー)。
 「マトリックス」という世界観、そして、「悟り」を得る事により、超越した力を得る、というのは、知り合いのお坊さん(!)の言葉を借りれば、「かなり密教的(!)」である。密教をデジタル的に解釈すれば、なるほどそういう見方も出来るかも。ある意味、目から鱗が落ちる感じだ。
 話のネタに、一度はいっといたらいいんじゃないでしょうか。

 キアヌ扮する「ネオ」が「悟った」直後の、エージェントの攻撃を片手でさばくシーン。私にはどうしても「片手で鼻くそをほじりながら、相手の攻撃をさばいている」ように見える。あいにく、他の人は、特にそうは見えないようだ。「何故気付かない?」(笑)。


ロッキー 原題『ROCKY』
お勧め度:★★★★(4点) 1976年公開
 もう、あまりにも有名な、シルベスタ=スタローンの出世作。貧しいイタリア移民が、ボクシングで成り上がって行く様は、スタローン自身の人生と重なる部分多し。だから、リアルで魅力的な映画なのだろう。
 とにかくがんばるスタローン(ロッキー)の姿に胸を打たれる。アメリカンドリームのひとつの形を見せられる。しかもそれが、「ボクシング」である事がミソ。道具や知識だけではない、カラダが資本のこの競技で、世界の頂点を目指す。
 「やるからには全力を尽くす」。その姿勢は、ボクシング、あるいは体育競技にとどまらず、全ての事に共通する、信念を貫く理想のスタイルである。ハリウッドの好きそうなパターンである。
 世界ヘビー級ボクシングの迫力を味わいたいなら、行っといて良いでしょう(たいがい行ってるか)。
 ちなみに私の友人のメキシコ人達は、みんなこぞって「スタローン、トラボルタ(ラテン系の俳優)は、俺らのヒーローだ!」とよく言っていた。


クライング フリーマン 原題『Crying Freeman』
お勧め度:★★★★(4点) 1995年公開
 日本・アメリカ・カナダ・フランスの共同制作の映画。原作は、小池一夫・池上遼一コンビのマンガ『クライングフリーマン』。私は、原作の方はしっかりと読んでいないので、映画版との比較は出来ないが、B級映画としては、よく出来ていたのでは。
 主役はマーク=ダカスコス。彼を、この映画で初めて知ったが、映画を観たときの感想は、「西洋人でここまで長拳系の動きが出来る人がいたとは!」だった(映画の内容そのものはそっちのけ)。
 マークについて調べてみると、彼の父親は、スペインと中国とフィリピンの混血。彼の母親はアイルランドと日本の混血。「髪が黒いからラテン系」と予測した私は、ちょっと外れた。ラテン系の血は五分の一しか入っていなかった。
 ハワイ生まれのマークは、両親から武術、またカポエラを習い、後には台湾に渡って、少林拳も学んでいる。
 またマークの父は、カジュケンドー四傑の一人で、混合拳道(Wun Hop Kuen Do)の創始者でもある(截拳道に理論が似ている)。
 そりゃあ東洋武術系の動きが出来るわけだ。けっこう納得。