1999年に読んだ本


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シーナとショージの発奮忘食対談  シーナとショージの発奮忘食対談 東海林 さだお・椎名 誠:文春文庫:\476:1999年9月10日第1刷

 私が日本一のエッセイストと推す(私に推されても楽しくはないだらうが(笑))東海林さだお氏と、これまた名エッセイストの椎名誠氏との、『食』を中心とした対談集。私は対談という形式の本は普段あまり読まないのだが、このお二人の対談となれば話は別。対談なのでお二人それぞれの、独特の文体の楽しい文章を読めるわけではないが、フツーの人とはちょっと違う独特の視点でドンブリものや野菜やおでんについてあれこれ言い合うから、読んでいて笑いをこらえるのに必死であった(ちなみにこの本を読んでいたのは喫茶店の中)。
 しかし、ひとつ不思議なのは、なんで対談では『(笑)』だけつけるのだらう。『(泣)』とか『(怒)』とかはほとんど見たことがない。なるべく対談の雰囲気を読者に伝えようとしているのであらうが。そういやこの本の解説で、この対談の構成を担当している方が『ト書き』付きで対談の一部を再現しているが、これ、いいと思う。改行はもちろん多いし『ト書き』と発言の間を空けるとかしないと読みづらいかもしれないが、雰囲気がよくわかって楽しさ倍増である。欠点はただひとつ、芝居の台本のようになってやたらと本が分厚くなってしまうことだろうな(笑)。

虹を創る男(下) 虹を創る男(上)  虹を創る男(上)(下) 邦光 史郎:集英社文庫:\660(上・下とも):1992年6月25日第1刷(上・下とも)

 三洋電機の創始者、井植歳男の家電事業に懸けた生涯を描いたノンフィクション。この人が松下幸之助の義弟であり、太平洋戦争で負けるまで松下電器で重役として辣腕を振るっていたということは寡聞にして知らなかったのであるが、それにしてもパワフルな生き方である。戦後の公職追放のあおりで松下電器を去り、自分で三洋電機製作所を興してからも次々と製品のアイデアを出しては世に送り出し、それをことごとくヒットさせてしまう(あるいはそういうものしか物語で採り上げなかったのか(^_^;))というのはなんだか神懸かり的にも思えてしまうのである(爆)。

背表紙の下の方だけ色が濃いのは、帯を付けたまま日に焼けたからです(^_^;)

テレビは嘘が嫌い  テレビは嘘が嫌い 天野 祐吉:ちくま文庫:\485:1992年6月22日第1刷

 テレビ批評をさせたらこの人の右に出る人はいないであらう。筆致は穏やかなのにその書かれていることのスルドイこと。思わず『そーだそーだ』と同調せずにはいられない。と同時に、やはりテレビ界を裏から見られる人だけに、『なるほどあれはそーゆーわけだったのね』的謎解きもしてくれて、実に楽しい本である。
 ちなみにこの本、単行本の発行は1986年9月、今から実に13年以上も前なのだが、もっと驚くべき事は書かれている内容は今でもほとんどそのまま通じるということ。番組や登場する人たちは変わっても(13年前の番組やタレントがたくさん登場して懐かしくなること請け合い(^o^))、テレビというメディアがやっていることはなーんにも変わらないのである。衛星放送だデジタルだと騒いではみても、テレビ番組を作るのは所詮人間なんだよね、ということをしみじみと感じてしまったのであった。(^_^;)

日米開戦(下) 日米開戦(上)  日米開戦(上)(下) トム・クランシー/訳・田村 源二:新潮文庫:\777(上・下とも):1995年12月1日発行,1995年12月25日3刷(上・下とも)【カバーイラスト:佐竹政夫】

 私のNIFTY-Serve模型フォーラム仲間数人をして“トム・クランシー最大の駄作”と言わしめた作品(笑)。思慮深い前任者を押しのけて日本の首相になったヌケサクと、彼を陰で操る経済界の黒幕が、貿易で日本を追いつめるアメリカの法律の成立をきっかけに、アメリカを軍事的・経済的に攻撃し始める。密かに配備した核ミサイルの脅威を背景にした日本の攻撃に対し、大統領と彼を支える我らがジャック・ライアンは全面戦争をいかにして回避するか? といったストーリー。
 まぁ物語自体は『駄作』とまではいかないにしても、やはり著者の従前の作品よりは落ちるだらう。それに、日本側の設定の荒唐無稽さもさることながら、日本人の描き方はやはりアメリカ人の考える日本人像を出るものではない。未だに“ブシドー”に凝り固まっていたり、最後にはカミカゼアタックをやってみたり。日本人にはこれをやらせないと物語が締まらないとでも考えているのか? しかも、それによって最後にはライアンが合衆国大統領になってしまうわけで、次の
『合衆国崩壊』(新潮文庫)では果たしてどんな活躍を見せてくれるのであらうか(もちろんもう買ってある(笑))。

日本探見二泊三日  日本探見二泊三日 宮脇 俊三:角川文庫:\417:1994年3月25日初版

 久しぶりに“宮脇節”を読む。日本じゅうのあちらこちら、できればあまり有名ではないところをのんびり訪ね歩いた13篇の紀行は、読者を行った気にさせるに充分な極上のエッセイ。おかげで私も久しぶりに一人旅がしたくなってきた。
 日本文学に鉄道エッセイというジャンルを確立したことで知られる著者の文章は、時に退屈と感じるかも知れないくらい、時間が経つのが遅い。それはつまり、著者の観察眼がじっくりと噛みしめるが如く深いからに他ならないであろう。また、旅行に出れば『目的地でガイドブックの内容を確認すること』に忙しい昨今の人たちには、往き道の車窓の風景を愉しむようなことは到底想像し得ないに違いない。そして、この感覚はまさに私の旅の感覚である。(^o^)

ブックカバーが塗料をこぼしてしまったため破けてしまってますm(_ _)m

蒼穹の射手  蒼穹の射手 鳴海 章:角川文庫:\560:1997年10月25日初版【カバーイラスト:佐竹政夫】

 これも一種のIF戦記のようなものと言えるだろうか。自衛隊が国連PKO活動などで海外に出るようになった頃、一部の政治家、防衛産業、自衛隊OBなどが密かに開発しようとしている核攻撃も可能な戦闘爆撃機“イーグルDJ改”を巡っての、腹にイチモツある政治家や開発に関わる航空自衛隊上層部の駆け引き、抜擢されて“イーグルDJ改”を駆ることになったパイロット達の人間模様を描いた作品である。
 実は、物語としてはそれほど印象に残らなかったというのが正直なところ。航空ミステリーとして初めて江戸川乱歩賞を受賞した『ナイト・ダンサー』(講談社文庫)や、『ゼロと呼ばれた男』に始まるゼロ・シリーズ(集英社文庫)と比べても、設定の“現実離れ度”においてそう変わりがあるとは思わないのだが。とはいえ、自身はパイロットではなかったにもかかわらず、戦闘機パイロットの世界を精緻に描くことにかけては、著者は日本人では一、二を争うことは間違いないだろう。主人公たちがF-15で飛んでいるシーンは充分に堪能させていただいた。現用飛行機ファンならそれを楽しみに読んでも充分に楽しめるであらう。(^o^)

========= 9月〜12月 =========

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「亡霊荘」の殺陣  「亡霊荘」の殺陣 辻 真先:ケイブンシャ文庫:\505:1993年6月15日第1刷

 重い話のあとは軽い読み物でアタマをほぐすべし。著者のミステリーはどのシリーズもサクサク読めてそんなときにはもってこい。著者のミステリーには、ちょっとトロイ(あるいはトロく見える)野郎と元気な女性のカップルが出て来るのが相場なのだが、マンガ家・大日向陽が主人公の今回読んだシリーズだけは野郎ひとり。しかも辻作品には珍しいアクションとお色気が混じっている。そしてこの作品では、ついに陽に恋人が出来るのである。今後の展開が楽しみである(って、もう続編は出てるんだろーなぁ(^_^;))。

重い飛行機雲  重い飛行機雲〜太平洋戦争日本空軍秘話 渡辺 洋二:文春文庫:\552:1999年8月10日第1刷

 敗戦記念日に先の戦争で散った英霊たちを思いつつ読む。航空雑誌などに掲載された太平洋戦争日本陸海軍航空隊の話のうち、テーマとして少々重い話を集めたもの。覚醒剤、同士撃ち、捕虜、対空特攻ののち対艦特攻へ、などなど。こんな話ができるようになったくらい、敗戦から年月が経ったのだなぁ、という感じ。アタマで戦争をした雲の上の人たちが戦後も生きながらえ、カラダを張って敵に立ち向かった人たちが靖国にいるというこの現実。著者ならずとも矛盾を感じるものである。

カヌー犬・ガク  カヌー犬・ガク 野田 知佑:小学館文庫:\438:1998年1月1日初版第1刷

 カタイ話のあとは季節柄涼しくなる本を。カヌーイストである著者が飼っていたカヌー犬・ガクとのエピソードを集めたエッセイ集。あちこちの本に書かれたガク話を集めてあるので、ガクのことをまとめて読みたい時には便利(笑)。人と犬とのつき合いの、ひとつの理想の形がここにある。アラスカの川と大地をのびのびと泳ぎ走り回るガクの姿を読むにつけ、リードで繋がれた近所での散歩が席の山のフツーの飼い犬がちょっと哀れに思えてしまって仕方がなかった。
 ちなみに、ガクという名前は著者の友人である作家の椎名誠氏の息子・岳からもらったもの。カヌー犬という犬種はもちろん存在せず、ガク本人は雑種である。また、ガクはすでにこの世に亡く、現在著者のところにはガクの息子のテツとタロウがいる。

YS−11(下) YS−11(上)  YS−11(上)(下) 前間 孝則:講談社+α文庫:\780(上・下とも):1999年1月20日第1刷(上・下とも)

 戦後唯一の国産旅客機の誕生から生産終了までを追ったノンフィクション。よくもまぁ、あんな状態で旅客機が作れて、しかも海外相手に売れたもんだ、というのが正直な感想。付き合いで使わされた運輸省航空局や海上/航空自衛隊がちょっと気の毒だったかも、と思わなくもないが、いまだに使われてるというのはやはりいい飛行機の証しなのであらう。また、エンジン選定が飛行機の命運を左右する、ということの本質がよくわかる。あと、上下それぞれ巻頭に載っている写真がキレイ。

========= 7月〜8月 =========