2004年に読んだ本


線路の果てに旅がある  線路の果てに旅がある 宮脇 俊三:新潮文庫:\388:1997年1月1日発行
 2004年12月23日読了

 とりあえず机上で旅気分を味わいたい時には、やはりこの人の本である。『「旅とは何か」とあらたまって考えてみると、「日常性からの脱却」という真理に突き当たる』とは本文中で著者が記していることであるが、つまりなにも時間とお金をかけて遠くに行くことだけが旅ではないのである。本書の中で著者が鉄道を使って、あるいは鉄道にちなんで訪れた土地は、遠くは北海道の稚内や利尻・礼文という島に行ったかと思うと、近くはJR八高線、北総開発鉄道(現・北総鉄道)や千葉都市モノレールといった近場(著者は世田谷区在住だった)もあり、あるいは阪神間の私鉄乗り比べなどもあって、日常使っている通勤電車でも充分に旅気分が味わえるということを身を以て示している。ワタシも京浜工業地帯を走るJR鶴見線(本書でも取り上げられている)に日曜日に乗りに行ったことがあるが、ほとんど人の姿のない静かな工業地帯をのんびりと走る電車(車輌自体はあまり面白みはないが)にちょっとした旅気分を味わったものであった。

マンハッタンを死守せよ(下) マンハッタンを死守せよ(上)  マンハッタンを死守せよ(上)(下) クライブ・カッスラー/訳・中山 善之:新潮文庫:\705(上)・\667(下):2002年12月1日発行(上・下とも)
 2004年12月18日読了

 ダーク・ピットシリーズ16作目、今回の敵役はアメリカ人である。さすがに全地球規模の災いを引き起こすプロットを考えるのは、いかなカッスラーといえども疲れたのか(笑)。しかしまぁ、よくもダーク・ピットの近くでいろいろと惨事が起こるもんであるが、これは物語を作る上では仕方があるまい(これを『ご都合主義』という)。そんなことより読者は、次々起こるピンチをピットがいかに切り抜けるか、その過程を素直に楽しむのがいいのである。安心して楽しめる冒険小説をどれかひとつ挙げよ、と言われたら迷わずこのダーク・ピットシリーズであらう。(^o^)

ひるめしのもんだい  ひるめしのもんだい 椎名 誠:文春文庫:\437:1995年8月10日第1刷
 2004年11月27日読了

 有名人と思っていないのは本人だけ、なシーナの日々を綴る週刊誌連載のエッセイを纏めたものである。半径10mくらいの範囲内に見える様々な問題に怒ってみたり達観してみたり頑張ってみたり、とこともなく過ぎていく日常を淡々と描写していくのだが、そこはワタシが日本の名エッセイストベスト3を挙げよと言われれば迷わず推すくらいのエッセイの達人、読んでいてちっとも退屈しないのであった。(^o^)

ハルマゲドン・モード  ハルマゲドン・モード第14空母戦闘群(3) キース・ダグラス/訳・栗山 洋児:光人社NF文庫:\943:1998年12月14日発行
 2004年11月4日読了

 『正義の雷鳴』『怒りの咆哮』に続く“第14空母戦闘群”シリーズの3作目。この作品では、前2作で北朝鮮、タイ・ビルマ(ミャンマー)国境地帯と戦ってきたアメリカ海軍空母ジェファーソンを中心とする第14空母戦闘群が、なぜかそのままアラビア海にまで進出している。これだけ戦ってきたら普通は補給と休養のためいちど本国(せめてハワイ)に呼び戻されるんでねーの? と思わないでもないが(あるいは世界一周航海中?)、とにかくそのアラビア海で今度は印パ戦争に巻き込まれてしまうのである。しかもインドに侵略されたパキスタンが核兵器開発に成功したと発表したのであるからさぁ大変、核兵器の応酬となり兼ねないこの状況を我らが第14空母戦闘群は、空母ジェファーソンは、そしてトムキャット・スコードロンVF-95“バイパー”飛行隊隊長、マシュー・“トゥームストーン”・マグルーダー少佐はどう切り抜けるのか。
 とにかく、インド空海軍が装備するあらゆる機種が乱舞するのである。ロシア、フランス、イギリスなどが開発した飛行機をごちゃ混ぜに装備してるのって、兵站上かなり不利なんぢゃないかな〜、と素人ながら思ってしまうのであるが、そんなマニアの思いはどうでもいいわけで、それらの飛行機が殺到する中トムキャットは大活躍である。F-14のファンなら楽しめること間違いないであらう。でもミサイルってあんなに都合良く命中するのかね?(^◇^;)

江戸川乱歩の名推理  江戸川乱歩の大推理 辻 真先:光文社文庫:\427:1994年10月20日初版1刷発行
 2004年10月12日読了

 舞台は大分県由布院温泉と熊本市。江戸川乱歩に封印された幻の作家の小説の真相を探る、現代の作家志望の青年を巡る事件の謎を『小泉八雲殺人風土記』でデビューした雑誌編集者・服部健太郎と妻の知香のコンビが鮮やかに解いていく。今回も由布院温泉や熊本市街の描写がトラベルミステリー的雰囲気を醸し出してくれる。事件の解決にちょっとご都合主義が垣間見えるのは仕方がないところだが、それでも今回のはかなり意外な結末であった。相変わらず辻氏の作品はサクサク読めて楽しいものである。
 ちなみに本書には江戸川乱歩本人は出てこない。(^◇^;)

真実の中国4000年史  侵略と殺戮 真実の中国4000年史 杉山 徹宗:祥伝社黄金文庫:\600:2004年9月5日初版第1刷発行
 2004年10月10日読了

 言ってみれば『裏中国史』である。学校の世界史の授業では決して教えてくれない、中国という国とその国を為す人々が辿ってきた「陰の姿」を白日の下に晒し、学校教育やマスコミの報道などで培われた「陽の姿」と合わせ観ることによって、今の中国という国をきちんと理解しようというのが本書である。
 中国正州(本土)に建つ漢民族の王朝のみが文明国(中華)であり、周辺諸国には中国正州の王朝に『三跪九叩頭』(三度跪き、九回頭を地面につけてお辞儀をする事)を強制して服属することを要求する、そういったいわゆる“中華思想”による国家運営を4000年に渡って続けてきたのが中国という国である、と筆者は言う。そう考えれば現在の中国の政府要人の、我が国に対する態度は合点がいくことが多い。小泉政権初期の2001年7月24日、日中外相会談の場において当時の中国の唐家セン外相が当時の日本の田中外相に「(小泉首相の靖国参拝は)やめなさい」と命令した、という事件があったが、これなどは“そういう考え方をしているからなのだな”とでも思わない限り理解不能である(この時の田中真紀子の行動はもっと理解不能であったが・・・アンタのボスは誰だ?)。
 しかしまぁ、いかに国土が広く人口が多かったとはいえ、王朝の交替毎に何千万単位で人死にが出るというのは凄まじいものがある。それもまた漢民族の残虐性を示すものだと筆者は言うが、それだけで片づけられる数字ではないと思うのだがなぁ。ついでに筆者はやたらと日本の科学技術を持ち上げているが、それも「ホントに判ってるの?」と言いたくなることがままあった。「日本が武器輸出をすれば、その優れた科学技術で素晴らしいモノをたちまち造ってしまい、中国製兵器など市場から締め出してしまうだろう」などと書いていたりするのには『をいをい武器輸出ってのはそんなに単純なモンぢゃないぞぉ』とツッコミを入れたくなってしまうのだった。(^◇^;)

とらちゃん的日常  とらちゃん的日常 中島 らも:文春文庫:\590:2004年7月10日第1刷
 2004年9月21日読了

 堅い本の後は柔らかい本を。去る7月26日に惜しまれつつこの世を去った著者の追悼を兼ねて読む。実は初めて読むらも作品だったり(爆)。ひょんないきさつで事務所で飼われることとなった雑種のメス猫“とらちゃん”への愛をエッセイと写真で語る、というような本だと思って読み始めたのだが、どうも違ったようだ(笑)。なぜならとらちゃんは不在が多い著者より事務所の大家さんのトコロに入り浸るようになってしまったからである。なので本の内容は、著者の日々日常を綴った中にとらちゃんネタが混じる、という感じになっているのだが、おかげでワタシの日常とは対極と言っていい、舞台俳優兼ミュージシャン兼作家兼タレントの日常を垣間見ることが出来たような気がする。こういう毎日を過ごしていると朝日新聞に連載されていた『明るい悩み相談室』(朝日文芸文庫、集英社文庫)のような軽妙な回答がひねり出せるのだなぁ、と素直に感心したものである。合掌。(_人_)
中島らも公式ホームページ

死闘の本土上空  死闘の本土上空 B-29対日本空軍 渡辺 洋二:文春文庫:\590:2001年7月10日第1刷
 2004年9月10日読了

 かの大戦を偲ぶ書を読む。“蟷螂の斧”という言葉がまさにピッタリの日本陸海軍航空隊の有様を改めて思い知らされるのである。日米の絶望的なまでの工業力の差の前に、我が国ができたことといえば愛国の志に燃える若者を一機一殺の攻撃に送り出すことくらい。本土防空の重要性を最後まで判っていなかったのならまだ諦めもつく。途中で気が付いたのなら、何故その時にすぐ対策を講じなかったのか、と無念の思いが沸々とわき上がってくるのである。

小ブネ漕ぎしこの川  小ブネ漕ぎしこの川 野田 知佑:新潮文庫:\388:1996年4月1日発行
 2004年8月7日読了

 ・・・暑い。今年の夏はアヂ〜! 冷夏だった去年と足して二で割ってくだちい。ということで、本来ならこの時期戦争モノを読むところ、その前に涼しくなりたくてこの本を読む。やっぱり水面上1メートルの世界は涼しそうである。日本の、そして海外の川で、相棒のカヌー犬・ガクや気の合った仲間達と、あるいはひとりで気ままに川旅を楽しみ、そしてその楽しさをたくさんの人に伝えようとするその姿には感動すら覚えるくらいである。それに引き換え、日本の役人ってやつは・・・。(-_-;)

駅弁の丸かじり  駅弁の丸かじり 東海林 さだお:文春文庫:\486:1999年5月10日第1刷
 2004年7月23日読了

 長く重い本のあとは爽やかで軽い本を。ということでショージ君である。取り上げられているのは例によって庶民的な食べ物なので安心(笑)。しかし見慣れたハズのあの食べ物が、ショージ君の手にかかると『をを、こんな見方もできるのか!』『なんと、実はこの食べ物はこんな意図を隠していたのか!』と新鮮な感動を覚える素晴らしい食べ物に一変するのである。ただ問題は、この“素晴らしさ”はいささか“可笑しさ”寄りなので、時にその食べ物を目の前にすると思い出し笑いをしそうになるのが欠点なのであるが(笑)。

 合衆国崩壊(1)〜(4) トム・クランシー/訳・田村 源二:新潮文庫:\743(1〜4巻とも):1997年12月1日発行(1,2巻),1998年1月1日発行(3,4巻)【カバーイラスト:佐竹政夫】
 2004年7月15日読了

合衆国崩壊(4) 合衆国崩壊(3) 合衆国崩壊(2) 合衆国崩壊(1)

 いやはや長かった。各巻とも500〜600ページもある長い物語であるとはいえ、またこの半年のうちに読書に宛てられる時間が若干減ったとはいえ、読み終わるのにぴったり7ヶ月もかかってしまった。もはや第1巻あたりの細かい内容など忘れてしまっているのだよ。(^◇^;)
 さて、前作
『日米開戦』の衝撃的なラストで、政府中枢部が壊滅したアメリカ合衆国の大統領に祭り上げられてしまったお馴染みジャック・ライアン。この機会を逃さじとばかりにアメリカに様々な形で攻撃を仕掛ける中東の某国。この某国、物語中では隣の国のあの独裁者を暗殺して国を併合してしまう。現実にこれが起こっていれば中東情勢も今とはかなり違った様相を呈していたことであらう。やって欲しかったかな、とか思ってみたり(爆)。この物語で興味深いのは、何しろ日米は戦争をした直後であるだけに『在日米軍』が存在しないのである。さらにその戦争で空母部隊が被害を受けていて、太平洋で活動できる空母が1隻しかいない。だから中国とインドの双方に空母部隊で睨みを利かせることができない。しかしこういう情勢の設定を受けた物語の展開にはそれほどの不自然さはなく、このへんはさすがと思わせるものがある。またクライマックスの第二次湾岸戦争の描写も、テクノスリラーの第一人者たるトム・クランシーの面目躍如といったところか。アメリカが勝ちすぎ、という気もしないではないが(爆)。
 一方で、ライアンの娘が通う保育園をテロリストが襲うというのは、どうにも今一つその意味がわからない。テロリスト側にあまりメリットがないように思え、むしろそれによりライアン=アメリカ大統領を怒らせるだけ、という気がする。総じて物語が長い分、メカメカした部分以外のディテールがちょっと疎かになっているような気がしないでもないのだな。(^◇^;)