高気密高断熱の謎(Q値?, C値?)

富士ハウスも含めて最近のハウスメーカーは殆ど高気密高断熱だと言っています。もちろん温度差はあって、C値1.0以下での高気密をうたっている所もありますが、富士ハウスはそれ程では無いです。並の高気密高断熱といったところ。カタログにC値の仕様は書いてありますが(モデル実測C値 3.0cm2/m2, 仕様は5.0cm2/m2以下)、C値の現場測定もやりません(省エネルギー等級3の場合)。
それでも昔の家に比べたらたいそうな高気密になっているので、個人的には我が家程度の気密で特に問題は無い気がしています。そう考えたから私は富士ハウスに決めたのです。

ちなみに我が家はIV地域なので、省エネルギー等級3(Q値 4.2W/m2K以下, C値 指定無し)の新省エネルギー基準の家ということになります。基本的には全窓ペアガラス断熱サッシと断熱ドアとを採用するだけで等級4になって次世代省エネルギー基準を満足する仕様(Q値 2.7W/m2K以下, C値5.0cm2/m2以下)となるそうです。

高気密高断熱は結構ですが、その指標とされるQ値やC値については、様々な疑問があります。その個人的な思いを少し書いてみたいと思います。

Q値(熱損失係数)
Q値は実測が大変難しいです。ですから大概は計算値を示しています。その計算は構造や部材をもとにしているのですが、実際の断熱性能は部材や構造だけで決まるものでは無いでしょう。同じ設計の家でも大工さんの腕次第できっちり断熱された家になったり、隙間風の吹く寒い家になったりする筈です。断熱性能は断熱材にちょっと隙間があったりコーキングもれが一部でもあれば変わるのが当然です。

と言う事は計算されたQ値とは、「理論値」であり「理想値」であることになります。断熱材の材質や厚さ等を含めた、家の構造の持つ断熱性能の比較にはなりますが、個々の家についての値はそれ程意味のあるものでは無いような気がします。車で言えば10-15燃費。カタログデータみたいなものですね。
(ちなみに我が家のQ値の計算値は3.1だそうです)

C値(相当隙間面積)
この値は「高気密」に関わっているので、イメージとしては外部と内部の空気がいかに断絶されているか、という値になります。C値が0だと家の中にしばらく居ると酸欠で死んじゃう??? そんな感じがします。
でも実際には法律で義務付けられる前から高気密住宅には24時間換気システムが付いていますから、吸気口や換気扇(排気口)が付いていて換気されています。つまり、通常の使用時には外部と内部の空気の入れ替えをするような設計になっています。・・・これでは全然(イメージされる)高気密ぢゃ無いですよ! どうせ空気を常に入れ換えているのならC値なんてどーでも良いのでは?

では何故C値が小さい方が良いのでしょうか?その理由を少し考えてみました。

(1) 断熱のため
(2) 計画換気をするため
(3) 壁体内の防湿のため(結露防止)

理由を検証してみます。

(1) 断熱のため
隙間風は寒いので・・・。
→ しかし給排気口は熱交換型では無い家が殆どです。吸気口から外の空気が直に入ってきます。これでは、どこから風が来るかだけの問題ではないかと思えますね。
そう考えると、熱交換型換気をしない限り、ある程度以下のC値が確保されていれば、それより値がどんなに小さくても断熱への寄与は少ないと言えるでしょう。

(2) 計画換気をするため
空気が吸気口から換気扇に流れて欲しい。他の所から出入りがあると空気の流れが乱れるから。
→ 高気密住宅の現場C値測定で、窓までテープでシーリングしてC値を測定しているのを見た事がありますが、それでは意味無しです。給排気口以外はそのままで測らないといけません。但し常時運転しない局所換気は塞がずに測定するのが正式だそうです。C値が低ければ風の流れや換気扇の換気能力の計算がし易くなりますが、そこまで間取りが異なる個々の家で個別に詳細に計算して設計しているかどうかはやや疑問です。理由のひとつではあると思います。C値が十分に低いので、簡単な(能力の低い)給排気システムでも計画換気が可能、という話は出来るでしょう。ちなみにC値がある程度より高いと計画換気が事実上不可能になるそうです。この場合は空気のよどみによる結露やカビの発生に注意です。

(3)壁体内の防湿のため(結露防止)
壁体内に湿気が入らないようにシーリングしている防湿シートやコーキングの性能を確認する。
→ 今はおそらくこれがC値測定の理由の最も重要な項目なような気がしています。しかしこれを考えて測定をしているビルダーは、そう多く無いような気がします。
防湿シートやコーキングは経年劣化で破れます。初期値にどれだけの意味があるのかも考える必要があるかもしれません。

結論としては、C値は高気密という言葉から受けるイメージとは違って、結露やカビの発生を避ける性能を確認する為の「間接的な」指標、という要素が強いと考えられます。少なくとも「C値が低いから高気密高断熱で冬暖かく夏涼しい」という言葉は間違いですね。

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