納豆との出会い

よく、関西人は納豆が嫌いとか言いますが、大阪在住の僕は好きです、納豆。

初めて食べたのは確か小学校の3~4年生頃でしたか。それまでは納豆というものの存在は知っていましたが、見たことも食べたこともありませんでした。家族の誰も食べないので、食卓に並ぶことがなかったのです。

納豆そのものがあまり売られていなかったという説もあります。

僕が納豆を食べるきっかけになったのは、単純な理由からです。当時、何かのTV番組で、『関西人は本当に納豆が嫌いか』というリサーチみたいなのをやってました。そして、大半の関西人が嫌ってる、という結果で締めくくられました。僕はこの番組に刺激されて、納豆を食べてみる気になったわけです。

母に頼んで納豆を買ってきてもらい、いざ食べようとフタを開けたところまではよかったんですが…。のて~んとした、糸引く豆の塊を見た瞬間、一気に食べる気が失せてしまいました。

それからしばらくは冷蔵庫に寝かせて置いたのですが、あまり放りっぱなしにしてるのも良くないだろうと思い、再び口にしようとしたとき、ちょっとした違和感を感じました。

前にフタを開けたときと、納豆の様子が違う…。

そのとき、僕は母に向かってこう叫びました。

「お母さ~ん。この納豆、腐ってるで~!
「アホ。納豆はもともと腐ってるんや」

母からは至極もっともな返事が返ってきました。今思えば、バカなことを口走ったもんです。

仕方なくその納豆を食べていると、しばらくして母が僕のもとにやって来ました。そして僕の食べている納豆を見て、こう言いました。

「あんた、その納豆、カビ生えてるやないの」

そう、それそれ。僕がさっき言いたかったのはカビのことです。『カビ』という単語が浮かんでこなくて、つい腐ってると言ってしまったんです。通常の食べ物ならまだしも、納豆でこの言い間違いは決定的です。

とんだアクシデントに見舞われましたが、僕はこのとき食べた納豆をいたく気に入ってしまい、以後は好物の1つとなってます。いや別にカビが好きとかじゃなくって。

ただ、一度好きな食べ物が出来ると、その食べ方のあらゆる可能性を追求してしまうのが僕の悪い癖で、親の目を盗んでは調理中のシチューやカレーに納豆を忍ばせて、家族から反感を買ったりしてました。美味しいと思うんですけどねぇ。