東京編 おのぼりさんがゆく

2008年6月30日、もさゆら、はじめての上京です。東京で新しく始まる事業に参画すべく、自社から出張を仰せつかりました。僕と後輩の2人で相手先の企業へ面接を受けに行きます。面接は夕方からです。

「新幹線の時間は自由に取っていいよ。ついでに観光しておいで」

社長から優しいお言葉をいただいたので、面接時間より5時間早いチケットを取りました。ついでに喫煙席にしました。そして嫌煙家だったらしい後輩からひんしゅくを買いました。

新幹線のホームに着いたとき、社長からメールが届きました。

「おみやげは草加せんべいでいいよ」

観光していいって言った理由はそれですか。

新幹線に乗るのは小学校の修学旅行以来だから20年ぶり。もう、テンション上がりまくりです。食い入るように窓の外を眺めていたら「あっ」と言う間に過ぎ去った2時間半の旅。僕はずっと上機嫌でした。

「もさゆらさん、通路側の席から窓を覗き込むのはヤメてください」

窓側に座っていた後輩はずっと不機嫌でした。

僕たちは東京駅に降り立ちました。おぉ初めての東京だよ。ビルが高いよ光ってるよ。と、はしゃぎたい気持ちをグッとこらえました。オトナですから。しかし顔はずっとニヤけていたそうです。後輩に注意されました。オトナへの道のりは険しいです。

僕は東京ミッドタウンに行きたかったので、嫌がる後輩を引きずって東京駅を飛び出しました。

「もさゆらさん、もさゆらさん、東京ミッドタウンは東京駅にはないですよ」

…後輩に連れて行ってもらうコトにしました。

目指せ東京ミッドタウン。東京駅構内を前へ前へと進みます。案内板が矢印が左を指していてもまっすぐ進みます。そして後輩に怒られました。

「もさゆらさん、1人で来なくて正解でしたね」
「僕もそう思います」

後輩の後ろをトボトボ歩きながら電車を乗り継いでいきました。

「もさらゆさん、ICOCAはJR東日本でも使えるんですよ」

後輩はそう言いながら改札にカードをかざして、「ビー!!」と警報を鳴らしました。路線を確認したらJR東日本ではなく東京メトロでした。

なんかよく知らんけどすごいトコロらしい、という不明瞭極まりない情報を元に東京ミッドタウンへ到着しましたが、ココは僕の来る場所じゃない、と感じて入ってすぐ出ました。

ものすごく時間が余ったので、後輩が「秋葉原へ行きたい」と言いいだしました。

「サファリハットかぶってリュックサック背負ったヒトの後をついて行ったら着くんじゃないの」

なんて冗談半分で言いつつ、それらしいヒトを見つけて実行したら、本当に電気街へ着きました。その辺をウロチョロしてたら現地のヒトと待ち合わせしている時間が近づいたので、JR品川駅へ移動しました。改札の外に何もなくて中にお店がたくさんある不思議な構造の駅です。

スタバで時間を潰そうとしたら、ちょうど1画だけ空席がありました。座ってから空席の理由がわかりました。この場所だけ直射日光が当ります。

「後輩くん、この席まぶしいね」
「俺はもらゆらさんのスキンヘッドに反射して2倍まぶしいです」

日差しは暖かいのに後輩は冷たいです。

ややもして待ち合わせ時間になりました。合流したヒトの言葉に違和感がありません。標準語にアレルギーが出るかと心配していましたが、これならイケる! と思いました。

「私もさっき京都から着いたばかりなんです」

ニセモノでした。

JR品川駅から電車を乗り継いで社屋へ向かいます。途中、渋谷だの原宿だのTVでしか見たコトのない駅名が続いたのでニコニコしながら後輩の方へ振り向きました。後輩のまなざしが冷たかったので振り向くのをやめました。

社屋に到着して現地担当者の言葉を聞き、今度こそイケる! と確信しました。

「大阪から来られたんですよね。実は私も兵庫出身なんです」

ニセモノでした。

面接だけはソツなくこなして帰り支度を始めます。駅で切符を買おうとしたら後輩が言いました。

「もさゆらさん、朝からずっと変な切符の買い方をしてますが、新幹線のチケットが東京都内や大阪市内でも使えるコトを知らないんですか」

うん、知らない。そんなお得なシステムがあるなら先に教えて欲しかったです。買わなくていい切符を何枚も買いました。

晩ご飯は駅弁です。力加減を間違えて勢いよくすくったご飯が、後輩の膝の上に飛んでいきました。

「おわっ! なんてコトするんですかもさゆらさん!!」

怒られました。

そして数日後。僕だけ面接に合格してしまい、たったヒトリ東京へ転勤するコトになりました。長い間ありがとう、大阪。さようなら、大阪。

引っ越しためにマンションの整理をしていたら、前の住人が忘れていったらしいメモが出てきました。なんと5年間も天袋の床板に張り付いていたようです。

メモ:新幹線の中で。初めて のったのに あまり 感動 しなかった。でも スピードは すごかった。

なぜでしょう。他人とは思えません。