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地蔵通り商店街とは別の、西原通り商店街。
 
その脇を、子供達が楽しそうに走り去って行く。
 
本日の業務が終わった後、例の草原を見る為に、「地蔵通り商店街」に向かう途中の事で有る。
 
とその時、冴上刑事は思った。
 
「最近はどこも開発が早くてね、街がどんどん新しく成ってしまう。古い街は置いてけ堀さ。それにどんな意味が有るのか、そしてどんな意味が有ったのか…、それを考える暇さえ与えられない。」
 そう、この「西原通り商店街」も「地蔵通り商店街」も、置いてけ堀の街なのだ。 
王刑事がふと足を止めた。
 
「いったーい!」
 
ふと顔を上げれば…
 
「よう源さん、いるかい!」
 
「よう、王さんじゃないか。久し振りだねぇ。」
 
「久し振りに来たと思ったら今日はどうしたんだい、女の子を三人も連れて。羨ましいねぇ、まったく。」
 
「そうかい、ウソでも嬉しいよ。所で今日は何を買って行ってくれるんだい?」
 
「絹を四丁と、わさび四本…」
 
注文を聞き終えると、慣れた手付きで袋詰めをする。
 
「そうかい…(コメットじゃなくてサミットなんだがなぁ…)」
 
「おっと、下らねぇ愚痴を聞かせちまったな。すまねぇ、すまねぇ。王さんが来ると、ついつい要らねぇ事まで話しちまう。そっちのお嬢さん方も、今の話は忘れてくれよな。」
 
そして店主は、袋を四つ差し出した。
 
「はい。」
 
「ありがとうございますぅ…」
 
「ここの豆腐は絶品でね。わさび醤油で食べると最高なんだよ。出来れば今日中に食べて下さいね。」
 
「それでは行きましょう。それでは源さん、また。」
 王刑事は歩みを進めた。 | 
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