A生態学の基本−エネルギーの流れを中心に− 生態学=生物と生物の関係を扱う 関係=物質・エネルギーの授受等 1)エネルギーとその単位 エネルギー:力,光,電気,熱,水力,原子力,地熱,・・・ →仕事をすることができる(P)+熱が発生する(H) P+Hは保存 →最終的にはすべて熱になる=熱量として比較可能 (生態学では熱量を使うことが多い) ◎よく使う単位 カロリー:1グラムの水の温度を1℃上げるのに要する熱量 = 1calと書く(食品学では1000cal = Calと書くので注意) 他にもいろいろな定義があるが大まかには同じ ジュール:1N(ニュートン)の力で下に引っ張られている物体を1m持ち上げるの       に必要な仕事(100gのおもりを1m持ち上げる)=1J    カロリー←→ジュール(相互変換可能)1cal=4.2J ワット:1秒あたりのジュール量,1秒間に1J使うなら1W J/sec = W ワットは時間当たりのエネルギー量だから,エネルギーの流れを表している。 (エネルギーの流れを解析するときによく使う) 例)500Wの電熱器3秒の熱量は何calか 解)500W=500J/sec, これが三秒だからエネルギー量は1500J 1cal=4.2Jより,357cal (357mlの水が3秒で1℃上昇) 2)エネルギーの相互変換 ┌──────────────┐ @光の流れ→電子の流れ:太陽電池 │エネルギー→熱以外の変換では│ A電子の流れ→光の流れ:発光ダイオード,蛍光灯 │必ずロスがあって100%の効率 │ B電子の流れ→熱の流れ:ヒーター,パソコン │にはならない。ロスは熱になる。│ C光の流れ→熱の流れ:光を吸収する物体 └──────────────┘ D光の流れ→化学エネルギー:光合成 (流れではないことに注意) =エネルギーの固定 3)光で入って熱で出る 地球に入ってくるエネルギーは基本的に光 ◎絵◎ 太陽 → 光放射 → 地球  地球 → 熱放射 光はエネルギーの一種 E= hν   h:プランク定数 ν:振動数(波長の逆数) 振動数が高いほど(波長が短いほど)高エネルギー 目に見える光をとくに「可視光線」という。波長は400nmから700nm 波長によって色が決まっている ┌─────────┐ 光が物質に吸収されると熱になる。 │400 violet │ (ひなたぼっこはあたたかい) │450 blue │ よく光を吸収する物質ほど光→熱への変換効率がよい │500 blue-green │ 地球は平均すると30%の光を宇宙へ反射している │550 green │ =残りの多くは熱エネルギーになっている │570 yellow │ │590 amber │ どのくらいのエネルギーが地球に来ているか? │610 orange-red │ 大気上層:2 cal/平方センチ/分 │660 red │ 地上 :1 cal/平方センチ/分 │680 dark-red │ └─────────┘ 比較のためにWに換算 1cal/cm2/min = 1/60 × 10000 cal/m2/sec = 4.2/60 × 1000 J/m2/s = 700 W /m2  ← 最大値。現実はこれより低い(夜,曇天,緯度など) 平均日射エネルギー 100〜180W/m2 程度 地上に来るエネルギーはこの程度。これを生物が利用している。 4)生物は燃える(エネルギーを持っている) 植物の光合成 ↓エネルギーはここに蓄えられている(燃える) nCO2 + nH2O → (CH2O)n + nO2 ↑ (光・栄養・多量の水) ↓このエネルギーの元が光 C6H12O6 + 6O2 → 6H2O + 6CO2 + 670 kcal/mol  (燃える=熱エネルギーを出す) ◎燃えるもののほとんどが生物と関係している 木,草,紙,ヒト,魚類,甲殻類,ゴム,プラスチック,石油,石炭・・・ Why? 宇宙からの光エネルギーを固定するのが植物,利用するのが動物だから ↑ 「一次生産」という 最大で太陽光の1〜2%しか利用できない 5)エネルギーは物質に乗る 植物以外の生物は物質を食べる以外にエネルギーを得る方法がない 生物(動物) 酸素(A) 熱(U)    ↓ ↑ A:available 食物(A) →    生   物    → 排泄(A, U) U:unavailable ↓ ┌─────────────┐ 二酸化炭素(U) │食物を摂取して排泄しても │ │A+Uは保存される。しかしA │ │は減少してUが増加する。 │ └─────────────┘ 熱エネルギーは生物のエネルギー源にならない(地球の外に行く) 生態ピラミッド(栄養段階ごとの関係) ┌──────────────┐ │ U──────────┼─  →熱 │ 動物 A │ │ 動物 A │ │ 動物 A │ 植物を守る理由 光──┼─→植物 A │ └──────────────┘ 転換効率:植物→動物 あまり良くない。大体10% 太陽光(140W/m2)→(転換効率2%)→植物(2.8W/m2) →(転換効率10%)→ヒト(0.3W/m2) 問:ヒトの一日のエネルギー要求量は2000kcalである。これを植物から得るとするとどのくらいの面積が必要になるか計算せよ。 2000kcal/ヒト/日 = 8.4×10e6 J/ヒト/日 1日=86400秒だから 約100J/sec = 100W 100W ÷ 0.3W/m2 = 333 m2  (約18m×18m) ◎実際には植物だけを食べているわけではない ┌────────┐ ┌──────────┐ │ 【写真】 │ │ 【図】 │ 個体どうしのつながりを │  日本の条件 │ │ food web │ 示すと網状になる │ │ │ │ └────────┘ └──────────┘ 6)ストックとフロー ある時間内でバランスしていればフロー(F)をうまく使っている バランスしていなければストック(S)を使っている (ある時間:目的に応じて設定する)  例)エネルギー 石油(S),石炭(S),水力(F),原子力(S) 太陽電池(F,S),コメ(S),木材(F,S) ◎非常に長い目で見ると自然はストックを作っている 石油・石炭・天然ガス・・・・生成に長い時間 フローとして使うことはできない 例)クルマ(一日20kmの走行〜30分) 1000W/8m2/day = 125W/m2/day (太陽日射と同じ) 光合成の100倍,蓄積量の1000倍の速度 逆に考えると,だからこそ化石エネルギーは有用だともいえる ◎都市を一つの系として見ると,エネルギー的に100%ストック依存(生産効率高い) ┌────┐ 化石エネルギー   →│ 都市 │ →排熱 (not光エネルギー) └────┘ (地球システムと相似ではない) このままでは長続きしない 省エネが最優先 まとめ: ・エネルギーは相互に変換可能で,最終的には熱にすることができる ・適切な時間設定をすればcal, J, Wは相互に比較ができる ・地球に届くエネルギーは光で,出ていくエネルギーは熱である ・光エネルギーを化学エネルギーに固定するのが植物である ・その効率は良くても1〜2%程度である ・植物以外はすべて植物由来の化学エネルギーで生きている ・植物はストックを作っている ・ストックを一度に使うと効率がよい ・しかし地球システムとは相似でない