求める会 お絵かきワークショップ



2004年8月8日(日)
場所 宇多野ユースホステル
参加者数 視覚障害者の方10名 子ども7名・大人3名
晴眼者(サポーター・世話係など) 10数名
講師 鈴木智子さん
    (子どもの絵画教室アトリエ・サジ主宰)

──鈴木智子報告──

今回のワークショップは、いつものアクセス・ビューの企画から飛び出し、「求める会」が主催した夏キャンプの一つの講座として行われました。
この夏キャンプには、地域の普通学級に通う視覚障害を持つ子どもたちとその親たちが集い、交流を深めたり、それぞれが抱える問題などを話しあったりする場となっています。

と、いうことでワークショップの参加者の多くは子どもたち。
それならば…と白羽の矢が立ったのは、子どもの絵画教室をやっている私でした。
はてさてどんな内容にしようかと悩みましたが、季節は夏。その暑さがヒントになりました。
こんなに暑いと求めるものは、" 涼 "です。
「冷たーい氷で束の間の休息」気分を味わってもらおうと思いました。
それに子どもたちは、ワクワク、ドキドキするものが大好きです。
めったに触る事のない大きな氷の塊をシャキシャキ、カンカンと削ってみたり、氷がだんだん溶けて水に変化していく様子を手から肌から感じて、楽しんでもらいたいと思いました。
氷でひとしきり遊んだ後は、A3ケント紙2枚を蛇腹状につなげたものにラインテープやカッティングシート、廃材などを使って絵を描きます。
描くテーマは「氷と水」。どんな絵でもいい、感じた事をそのままに形にしてくれたらと思いました。

いよいよ当日です。
氷屋さんから届いたのは15cm四方ぐらいの氷の塊です。
のみと木づちを各々に渡し、「好きなように削ってください!あんまり強い力だと、いっきに割れてしまうので気をつけて!」と言って始めてもらうと…

氷で遊ぶ写真1 氷で遊ぶ写真2
あちらこちらからカンカン、シャキシャキと聞こえてきました。
テーブルを廻って見ていくと、何とすでにパクッと真ッ二つに割れているものもありました。けれど、その形を触って楽しんでいる様子を見ると、『そうだ、そうだ。割れてしまっても構わないじゃないか・・・』と、削る事にこだわっていた自分がおかしくなりました。
氷で遊ぶ写真3 氷で遊ぶ写真4
そうかと思うと、コンコン、コンコンと軽い力でのみを打っています。
氷を打った時に出る音に耳を傾けていたのでした。
同じ素材でも、それに対する関わり方は、みんな違うのだということ。
それは、わかっているようでも、いつも新たな発見のように感じてしまいます。

氷を思う存分触った後は、お絵かきタイムです。
蛇腹状につなげたケント紙は、見開き2ページの本のようになります。
ですから、氷から水に変化したことでもいいですし、氷を触って感じたこと、連想したことなどを2ページ分の物語にしてもらいました。
絵本作り写真1 絵本作り写真2
絵本作り写真3 絵本作り写真4
材料写真
廃材には、いろいろなものがありました。毛糸やモール、布、ボタン、プラスチックの板などなど・・・。どれを選ぶかというのもその人のセンスです。
いろんな種類をたくさん取る子もいれば、少ない素材でシンプルにきめている子もいます。すばやく作る子もいれば、じっくりと考えて、ゆっくり作る子もいます。
中には、平面ではもの足らず、立体的に作っている子もいて、子どもたちの”枠にとらわれない”発想にパワーを感じました。

今回参加してくれた子どもたちは、年令も様々で、高校生の子もいました。
「美術を選択していないと、その機会がない」とのこと。
年が上になるにつれ、絵を描いたり、ものを作ったりすることが少なくなるのは、視覚障害があるなしに関わらずよく耳にすることです。
けれど、自分が感じたこと、考えたことを手を使って形にしてみると案外いろんな発見があると思います。
自分にとっても、それを見る人にとっても。
そして、そんな発見をお互いにやりとりすることが大切なのではないでしょうか。
【完成作品】
完成作品1 完成作品2 完成作品3
完成作品4 完成作品5

このワークショップでいろんな素材に触れ、サポーターの人たちと一緒に楽しんで作品を作ってもらえたのなら、私にとっては嬉しいことです。
学校や他のワークショップなどでもこのような場がたくさんあればと願い、私もできれば、またの機会を持ちたいと思います。

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「求める会」とは・・・

「地域の学校で学ぶ視覚障害児(者)の点字教科書等の保障を求める会」
 略称「求める会」


「求める会」は1986年、地域の学校に通う視覚障害児の、点字教科書の保障を求めて、大阪で誕生しました。
発足から18年たった現在では、会員は全国各地へと広がりを見せ、その地域的な広がりに応じて、会員の抱える問題も多様化してきています。
教科書や学習環境の保障にも、地域によって大きな較差が見られます。「求める会」としても、いろいろな地域での問題点や、親御さんの抱える悩みなどを知り、よりよい方向性を見出していければと考えています。
「求める会」お絵かきワークショップ感想を参考にしてください。


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