第11弾お絵描きワークショップ
「花と野菜の共演」

 
 


2008年5月11日(日) 13:30〜16:30
場所 山科身体障害者福祉会館
講師 光島貴之
参加者 見えない人・見えにくい人 : 5名
サポーター : 9名

── 鳥養庸子報告 ──

会場の様子 見えなくても、見えにくくても絵を描こう。
お絵かきワークショップ第11弾は「花と野菜の共演」と題して、ビューの中心メンバーでもある、アーティスト光島貴之さんの企画で、立体コピー(注1)やラインテープとカッティングシート(注2)を使って旬の野菜や花を描きました。

いつもは目の見えない人、見えにくい人とサポーター役の見える人がペアになり作品をつくるのですが、今回は見える人のほうが多かったので、アイマスクをして作品づくりにも参加してもらうことに。

皆で野菜を触る 前半は、いろんな旬の野菜を触った後、自由にマーカーで描いてもらい、立体コピー機にかけて描いたものを浮かび上がらせます。
アイマスクをつけた人は、机の上にある野菜や絵を描く道具をすっと手に取ることもままならず、見えない人に手伝ってもらう場面も。
また、ふだんは見た目で野菜のかたちを捉えていたけれど、手に触れることにより、客観的なかたちよりも手触りからいろんな感情が生まれたという感想も聞かれました。
ブロッコリーのぶつぶつ感やソラマメのさやの中のふわふわ感などが表現された作品たちを、手で触りながら互いの作品を鑑賞。
選んだ野菜を描く1 選んだ野菜を描く2 選んだ野菜を描く3
描いた絵の立体コピーを触る1 描いた絵の立体コピーを触る2
後半は、ラインテープとカッティングシートを使って花を描きましたが、 見える人は、サポート役になるか自分で作品をつくるかを選んで参加してもらいました。

大きい棕櫚の葉を触る 用意されたのは、バラ、カーネーション、ユリなど花屋で売っている花のほかにも、 庭に生えていたシュロの葉や、ねぎ坊主なども。
花を触りまくる機会なんて、ふだんはあまりないけれど、今回は花びらを 分解してもいいから遠慮なく触り、自由に描いて欲しいと光島さん。

花を触る講師光島氏 目の見える人が花を描くとき、花が咲いている風景や花瓶に挿された花の美しさを 描くことが多いと思いますが、今回のワークショップでは、花イコール美しいという枠を越えた 個性的な作品が生まれました。

ねぎ坊主が愛嬌のある天に向かってそびえるタワーに。
シュロの葉を触り、ハエたたきにしていた子供の頃を思い出し、自分の手のひらや指でサイズや位置を測りながら、 ラインテープをうまく使って描いていた人もいました。

花を手で観察 また、花にも絵にもこれまでほとんど縁がなかった男性は、カーネーションを触り、 花びらが幾重にも重なっていることをはじめて知ったそう。
いざ絵にすると言っても、最初はどうしたらいいのか緊張されていましたが、 サポーターに切ってもらったカッティングシートの花びらなどを貼っているうちに 気分も乗ってきたよう。実はこの方は、たまたま会場に来られたところを、 せっかくだからと飛び入り参加され、はじめての経験をそれなりに 楽しんでいただけたようです。

ユリの花を触り、女性のなまめかしさを感じたけれど表現しきれず、 堅い一本の茎から細長い葉が放射状に何本も伸びた大きなシュロの葉から 力強さを表現した人も。画面中心の太い幹から、大きな葉があふれんばかりに左右に伸び、 一枚一枚の葉は、紫や赤や青などで描かれ、いろんな感情やエネルギーがほとばしるよう。
つぼみと開いたユリを触り、ユリが生まれる前から枯れて行くまでを4枚の絵で表わした人も。 生まれる前は卵のかたちで表わし、ユリのつぼみの中をこじあけて触ったおしべとめしべの感触が、 どの絵にも印象的に描かれていました。

それぞれのペアが自然なコミュニケーションによって、共同作業で作品をつくっておられたようです。
アイマスクをつけ花を触り、そのままひとりで作品をつくった人もいました。 アイマスクをつけると視覚的なイメージ通りに描こうとするのはむずかしいけれど、 なにか別の感覚で絵を描くこともできるのではないかという発見も。
目の見えない人たちから、絵を描くときに感じていることを、もっと聞いてみたいと 思ったという感想も聞かれました。
いままで一方的にサポートする側、される側とにわかれてワークショップをしてきましたが、 もう一歩先のなにかが少し見えたような気がしました。
今後はもっと自由なスタイルでのワークショップにもトライできそうです。
制作中の様子
花を描く1 花を描く2 花を描く3

出来上がった皆さんの作品
作品発表1 作品発表2
作品発表3 作品発表4 作品発表5
作品発表6 作品発表7
注1)立体コピー
特殊なインクをマイクロカプセルに閉じ込めた紙を立体コピー機にかけると、 描かれた部分だけが熱を吸収し盛り上がります。
注2)ラインテープ・カッティングシート
製図用などに使われているラインテープは、指先を使って直線や曲線を描くことができ、 色は黒、赤、青、黄色、緑など。 今回は2ミリから1センチくらいの太さのものを用意しました。
カッティングシートは好きな形に切り、シールのように裏紙を はずして貼ることができます。 原色、蛍光色、淡色など色数も豊富。


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