#19 バクテリア>増殖についての続き       可良時寿子&Yugo
動物&植物SIG FORUM8 #669,#1036,#1039  より転載
可良時寿子  ID:KBB53931
Yugo         ID:HCM79755



#969/971 水中散歩 魚&水草
水質>バクテリアの使い方>ヒロちゃん        可良時寿子

Re:#906 水草>CO2等々>可良時寿子さん        ヒロちゃん

> でも、どっかに完成された濾過バクテリアが売っていて、それ
>を濾材に掛ければ温度を上げなくても、半日で完全なフィルター
>の完成となるようなものは無いですかね。

 これは難しい話だと思いますよ。
 極端な話、バクテリアの数だけが問題で有れば、ちょっと純度が低く、余計な
バクテリアも混じっていることを承知で、市販の「スーパー・バイオ」の様なバ
クテリアを10バック位買ってきて水槽にブチ込めば、即フィルターが完成とな
るはずですが、実際にはそうなりません。

 ここには二つの問題が有るでしょうね。

 一つは、バクテリアというのは、水中に漂っている状態では、きわめて活性が
低く、ちょうど自分の体のサイズに合った穴に潜り込んだとき、活性が上がるの
で、やはり適当な濾材の表面に着床する為の、時間が必要です。

 もう一つは、雑多なバクテリアの混合物から出発して、いかに目的の濾過バク
テリアを優位にするかという問題です。
 微生物も、きびしい生存競争を繰り広げており、活性の強い微生物が多いと、
活性の弱い微生物の活性が抑えられてしまいます。
 濾過の良く効いた水槽では、病気が出難いというのも、これに関連したことで
すから、経験からも解ってもらえると思います。
 また、水槽を新しく設置して、バクテリア相が不安定な数日間は、水が白く濁
るが、やがて、その水槽環境にもっとも適応した微生物が優勢になって、バクテ
リア相が安定すると、水が透明になると言う事でも、わかります。

 さて、窒素や炭素の汚染物質を処理する微生物は沢山有りますが、一言でいっ
て、炭素を処理する(代謝のエネルギ源とする)微生物は、活性が強く、窒素を
処理する微生物と混在させると、窒素を処理する微生物は、殆ど活性を持つこと
が出来ません。

 BODという言葉を知っているでしょう。
 「生物的酸素要求量」といって、汚れた水を微生物に処理させるとき、どれだ
けの酸素が消費されるかという値で、水の汚れには様々な原因が有りますが、窒
素も炭素も含めて、全体としてどの程度汚れているかを示すことが出来るので良
く使われるパラメータです。

 様々な物質で汚染された水を、微生物を使って浄化する実験をして、酸素の消
費量と水質の変化を追跡すると、面白い現象にぶつかります。

 まず、汚水の中には、炭素化合物も、窒素化合物も混じっており、バクテリア
にも、炭素をエネルギー源とするものや、窒素をエネルギー源とするものが混
じっていると仮定します。排水処理と言うのは、単一の汚染物質だけが対象にな
らないので、大概は、この条件に当てはまります。

 そこで水質の変化を追跡すると、まず炭素をエネルギー源とする微生物だけが
働いて、炭素化合物がどんどんと処理されますが、窒素化合物は、全くといって
良いほど処理されません。
 これが暫く続くと、炭素化合物が全部処理されて、炭素をエネルギー源とする
微生物は活動の余地が無くなります。

 ここで初めて、窒素化合物をエネルギー源とする微生物の活動が始まります。
 つまり、微生物による汚水処理というのは、全ての微生物が同時平行的に働く
のではなく、初めに炭素を処理する微生物、その後で窒素を処理する微生物とい
う風に、2段階の動作をするわけです。

 これは、一つの環境の中では、窒素をエネルギーとする微生物は、極めて競争
に弱く、炭素をエネルギー源とする微生物が活性を持っている環境では、殆ど働
くことが出来ないということを示しています。

 以上の実験の結果から、私たちが水槽のフィルターに期待しているのは、魚の
排泄物であるアンモニア、アンモニゥムという窒素化合物を、好気性の硝化バク
テリアによる処理ですから、ここには炭素をエネルギー源とする微生物は出来る
限り、繁殖しない方が、フィルターの能力が高まるに違いないと推定できます。

 これが前回、エタノールを餌にして、炭素をエネルギー源とする微生物に有利
な環境を作らない方が良いと述べた根拠です。

 勿論、フィルターの中で繁殖を期待する硝化バクテリアの細胞も炭素を含んで
いるので、細胞を合成するためには、炭素が必要ですが、これは、代謝エネル
ギーとは無関係ですから、ごく僅かに存在すれば良く、普通は水にとけ込んでい
るCO2 を利用するだけで、必要量を十分賄うことが出来ます。


可良時寿子



#1036/1040 水中散歩 魚&水草
細菌+CO2>おそらく編                Yugo.

細菌>光合成バクテリア(PSBも含む)

  PSBのことをとやかく書くと、問題があるので止めておきますが、
  光合成細菌(バクテリア)は、現在の養殖業の話題の技術かなー?
  特に大型魚飼育には有効な手段ではないでしょうか?

  増殖も簡単で、濃い目のアンモニアの分解に優れているはずです。
  他のバクテリアが居づらい処に生息し、酸にも強いはずです。
  n*っていう名前の光合成バクテリアが、有名ですよね。

  逆に、アンモニアの少ない環境では、他のバクテリアにすぐにいじめられてし
  まいます。旨く使うなら濃縮培養されたものを数十倍に薄めて餌に混入しても
  良いかも知れませんね。魚のうんちがまとまって集まるようならそこに居付く
  はずですが、あまり居付くと藻類の格好の住処を作るようなものですから、
  鑑賞水槽にはほどほどに使うという判断が的確な利用法かも知れませんね。

  カラジスコさんと話していたのは、通常の硝化バクテリアといわれるやつの話
  で、光合成細菌は特殊な環境で爆発的に繁殖するちょっと異色のバクテリアな
  んですよ。ただ、ある意味では、ディスカスの糞処理やアロアナなどのうんち
  には有効でしょうね。また、小さな水槽に沢山魚を入れたい人には格好のバク
  テリアかもしれません。また、魚の郵送時に・・・と思ったけど、光が届かな
  いとだめだなー。きっと、局部的に使えば有効なバクテリアでしょうね。

細菌>活着の話。

  n*等も含む話題のバクテリアは、小さいなんてもんじゃないくらい小さいん
  ですよね、通常の非常に高価な光学顕微鏡で見ても1000倍位が限度です。
  安い顕微鏡の1000倍と違い、明るく見やすい奴で、オイルを入れたり、
  蛍石を使ったモノは非常に良く見えますが、それでもあまり見えてきません。

  こんな小さなバクテリアにとって、たった一滴の水は、凄い大きさで、一度見
  失うとまず捜せないようなものです。そのために寒天培地を使って擦るように
  して、上下の厚さを無くして観測します。まるで、中国の米に絵を書く人のよ
  うな道具で作業します。下手にさわろうモノなら、大地震のようです。

  こんな世界では、水が流れるという事は、凄い事で、かといって流されている
  間は相対性理論の話でいう基準の無い世界に匹敵します。好気性と嫌気性の違
  いはかなり凄い違いが生じていると思っても間違いではありません。
  とはいえあまり流れがきついと困るんですが、溶存酸素にぶつかり好気性でい
  るものと、砂利の間でヘドロに埋まって流れの悪い嫌気性でいるものや、増え
  すぎて潰されそうな中のほうにいるものの状況差が、重要な水作りのキーポイ
  ントになって結果として水質を左右させているはずです。

  水がローリング運動をすることで、多少の好気性を維持し、それで水を浄化す
  る効果を期待しても、活着状態とは違います。この差を環境差に考えなくては
  ならず、BP法には環境が重要な鍵になりますよね。

なんだか解りにくい話でしたが、もうひとつのCO2>の話。

  CO2の過剰な宣伝をしたような気がしますので、恐い話。
  きっと、シーモンキーさんは充分解っているはずですが、魚を増やせない困っ
  た話を書きます。植物には比較的有効そうなCO2ですが、魚にはキビシー世
  界が待っています。まず、CO2に慣れるまで、水面をぱくぱくしてないと死
  んでしまうほど入れると、鑑賞の意味はありませんよね。それだけに少しづつ
  添加量を増やすとか、最初からそういった環境に強い魚を入れるとか、事前に
  魚の選択が重要になります。

  もしくは、慣らしてごまかしていくとか、ばっ気する手もいいでしょうね。
  ところがこのばっ気は、PHをドーンと動かしてしまいます。これは弱い魚
  にとって大変な変化ですので注意が必要です。状況次第で50倍程度のH+
  濃度が変動します。

  また、CO2の溶けすぎは好気性バクテリアにも、そして、新しく購入した
  魚にも、厳しい環境を作ります。結果、買いたしたいと思っても買い足せない
  とか、問題は山済みされます。そこでとりあえず、夜間のばっ気法をお勧めし
  ます。短時間の多回数ばっ気も、有効ではないかな?と思っています。

パールサンド>なかなかユニークな素材?

  まだ使い始めて2年たっていないはずですが、この素材は問題を沢山投げかけ
  てくれました。とがった形は、時間と共に底砂の目詰まりを起こし、環境を悪
  化させてしまいそうで、転がして丸くしてもらえないかな?とか、PHの落ち
  込みは、嫌気性部分にあるのかな?とか、赤の好きな方にはとっておきの環境
  を提供し、逆に他の環境には計り知れない問題を教えてくれたような気がして
  います。流行の小さい水って奴の応用ができないかとただ今思案中です。

                                                              Yugo.



#1039/1040 水中散歩 魚&水草
水質>バクテリアの話>[伊蛍]              可良時寿子

Re #1010  水質>バクテリアのお勉強            [伊蛍]

  [伊蛍]さんも、段々とふかみにはまってきたようで。
 濾過に限らず、近道する方法と言えば、他人の研究成果を参考に、もっとも成
功率の高そうな方法を選んで、自分で試してみることでしょうね。
 こんなものは、近道とは言えないと言われたらそれまでですが、それ以外に確
実な方法と言うのは、無いと思います。

◆嫌気性濾過の話。
  確かに生物濾過といえば、現在主流となっている、好気性バクテリアの他に、
嫌気性バクテリアの働きも無視できませんが、PSBというのは、ちょっと一般
の嫌気性バクテリアと違って、光合成細菌であり、活動のためには光エネルギが
必要ですから、これを利用するのは容易なことでは有りません。

 つまり、
    a、嫌気環境で。
    b、なにかに着床させ。
    c、なおかつ、光を当て、
    d、濾過対象となる水を循環させる。
と言う、簡単で、安定した動作をさせる方法が開発されないままに、バクテリア
だけが販売されているので、これを買ってもまず無駄です。

 最近流行の、ガラス製の瓶の中に細菌を入れて、水槽に沈める方法も、bとd
が考慮されていません。
 つまり、ごく僅かずつ栄養を与えて、バクテリアの長期間維持ができても、小
さな穴から拡散する水量だけでは、殆ど濾過効果を期待できず、あれなら、カボ
ンバを1本分の1/100の濾過効果も発揮できないはずです。

 嫌気性細菌を利用するならば、光エネルギを要求しないものの方が、利用しや
すいのでは無いでしょうか。
 その意味では、Yugoさんの、厚い底砂という方法も、どこまで上手くゆくか、
興味を持って見ていますが、あれは、底砂の厚みと、水の循環状態との、バラン
ス状態のコントロールが難しいので、安易にまねの出来る方法では有りませんか
ら、簡単に試してみたい人には、濾過条件をコントロールしやすい、外部(パ
ワー)フィルターを、嫌気フィルターに使う方法を実験することを薦めます。

 勿論、好気性のフィルターはしっかりと効かせた上で、これとは全く別個に、
嫌気性フィルターを、増設するのです。

 ドイツではかなり普及していますから、微生物に対する基本的な知識さえ有れ
ば、確実に成功できると思います。
 それが、各人の飼育条件に価値のある手段となるかどうかは、別の話で、わが
国の場合、海水魚には使う価値があっても、淡水魚には使う必要の無い技術と考
えていますが。

可良時寿子