#25 水草>楽しい科学                 可良時寿子
動物&植物の国 FORUM8 #6448,#6484,#6542,#6594 94/3/28,31,4/4,10より転載
可良時寿子  ID:KBB53931

水草>楽しい科学1。(#6448)

【ぱるすさん】

 ぱるすさん、こんにちは。
 もう少し、水草の生理と、根の役割に付いて話しを続けましょう。

| どこにいても根から同じように吸収するのなら、葉の形はともかく、硬さや
| 表面組織まで変える必要はないのではと思ったからなんですよ。

 確かに、水草の場合、葉からも肥料成分を吸収しますが、これは水草に限った
事ではなく、陸上植物でも、窒素系の肥料は葉面散布と言って、葉から吸収させ
る方法もあります。園芸関係者なら良く知っている事でしょう。

 また、アナナスの仲間(良く知られたパインアップルもこの仲間)は肥料や水
は主に葉の付け根のところから吸収していますが、葉は極めて固い物です。
 なにしろ、中には砂漠に生えている物も居て、柔らかい葉では強い日射に耐え
られませんからね。すなわち、葉の固さと、肥料を吸収できるかと言うことは、
一義的な関係は無いと言えます。

 葉の堅さや表面組織が水上葉と水中葉で異なるのは、肥料の吸収形態に着目す
るよりも、植物体全体の水の収支に着目すべきです。

 陸上の葉は、強い太陽光線と、乾燥した空気の中で、必要以上の水を失わない
ように、水を通しにくい堅い表面組織で武装し、裏面の僅かに開いた気孔で、呼
吸と、水の蒸発による温度調整をしています。

 この部分は、水は通しても、樹液に含まれる糖分などは通さないと言う特殊な
組織です。

 これが水中葉になると、乾燥から身を守る必要が無くなるので、堅い表面組織
が不要になるだけで(もう一つは、水の排出の能率を上げるために、気孔が多く
なると言う変化もあるが)、肥料を求めて柔らかい表面に変化するのでは有りま
せん。

◆
 次に、植物体の中の水の動きに着目する事にします。

 まず、水草と言うのは、ニテラの様な進化の程度の低いものを除き、陸上に進
出する前の原始的な植物ではなく、水中から陸上に進出した高等植物の一部が、
生存競争の少ないところを求めてもう一度水辺や水中に進出して物です。
 従って、花が咲いたり、茎のある高級植物としての水草はは、陸上の植物と多
くの共通点を持っているので、陸上植物を観察する事が水草を理解する手がかり
となります。

◆
 さて、陸上植物の背の高さは最大どの程度有るでしょうか。
 南洋材などでは30mを超える高さまで成長する物があります。
 杉や檜も20mを超えますね。

 そこで、これらの植物はどのようにして水分を木の先端まで供給しているか考
えた事が有るでしょうか。

 もし、ぱるすさんが考えているように、葉から水を蒸発させて植物の内部が真
空(と言っても物理的な意味での真空ではなく、トリチェリーの真空というやつ
です)になった圧力差を利用して水を運ぶとすると、1気圧の地上から10mの
高さまでしか水を運び上げる事が出来ネいので、地球盾フ全ての植物は、10m
以上の高さに育つ事は出来ません。

◆
 しかし、植物の水が通る組織は導管といって、細い管になっており、さらに植
物内部の液体と言うのは、単なる水ではなく、植物自身が合成した糖類や、根か
ら吸収したミネラルその他の肥料成分がとけ込んでいるので、その表面張力を利
用した毛細管現象によって、あと10m位は水を持ち上げる事が出来ます。

◆
 上に述べた、蒸発による圧力と、毛細管現象の組み合わせで、20mを少し超
えるところまで水を運び上げる事は説明できますが、これではまだ、30mも樹
高の有る植物が先端まで水を運び上げるメカニズムを説明する事が出来ません。

 植物の体内の水の動きに着目すると、重力に逆らって水を運ぶ力は、
        葉からの蒸発によって、真空力で水を持ち上げる。
        毛細管現象で運ぶ。
と言う二つまでは解っても、更に別のエネルギーの存在を探さないと、植物体内
での水の動きを説明できない事は理解できたと思う。

◆
 では、まだ別のエネルギーが有るとしたら、植物の『何処』に『どのような』
エネルギー源が隠されているかを考えてみて下さいと言うのが、今回の話しで
す。

 ヒントを出すと #6393 でのろさんが述べた根圧に行き着くと思いますが、大
切な事は、それがどのような仕組みで、どんな力を発生する物であるかを解明す
る事です。

 ここで、一度話を中断し、私の見解を示す前に、ぱるすさんに考えてもらい、
明快な解説をお待ちすることとします。

◆
 タイトルに「1」と付いているようにこの話しは続く予定です。
 それにしても、水草の話しをするのに、樹高30mの南洋材の話しから始める
わけだ。楽しいなぁ。

水草>楽しい科学2。(#6484)

 あぁ、水草の生理の話しが盛り上がってきましたね。
 今日は、陸上の木がどうやって35mの高さまで水を持ち上げるかと言う話し
は、後の楽しみに残して置いて、いくつかのレスだけ。

【ばるすさん】RE:6441

|  水草として売られている、実際には水草ではない代表種のレッド・グラスな
| ども水中に入れれば、暫くの間は鑑賞できますが、結局枯れてしまいます。
|  根からの養分吸収が充分ならば枯れることはないと思いますが?
|  それだけではなくて、どんな植物だって水中で育成可能となってしまうので
| は? 実際には水中葉になれないから枯れるのだと思いますよ。

 その最後の水中葉に成れない植物は水中で枯れるという観察結果は正しい。
 問題は、なぜ、水中葉という特殊な葉に成らないと生きていけないかと言う事
です。

 一つは、呼吸の問題です。
 水中にとけ込んだCO2やら、O2を植物内部とやり取りするためには、空気中
から利用するよりも遥かに能率を上げる必要があります。
 水上葉を水中に入れたのでは呼吸量が不足してそのままでは枯れると言うわけ
で、水中での呼吸に適した水中葉を作れる植物だけが生き延びる事が出来るので
す。人間だって、水中では呼吸できない事を考えたら解るでしょう。

 もう一つの問題は、植物体からの排水の問題です。
 乾燥した空気中に排水するのは容易ですが、相手が水中だと勝手に蒸発してく
れるわけではないので、水上葉のままでは排水できなくなります。
 この、植物に於ける排水と言うのは、動物の排泄に相当する活動ですから、排
水が出来なくなると、新たな栄養を外部から取り込む事、即ち例え根が健全で
あっても、新しい水も肥料成分の吸収も出来ないので、乾燥から防ぐ必要がなく
なった代わりに、排水能力は数桁大きくしないと生きて行く事が出来ないと言う
わけです。(厳密に言うと、植物の主要な排泄行動はもう一つ有るが、本論に関
係ないので省略。)

 要するに、一言で言えば、水中葉と水上葉の違いは、周囲の水の蒸気圧の違い
に対応して、呼吸、排水能力を調整している物と考えるべきでしょう。
 この調整能力を獲得した植物だけが、水草に成れたわけです。

 前にも言った通り、肥料の吸収から水中葉の役割を考えると、理解できない事
に成ります。

【あっちさん】

|   まず、今お話されている養分吸収についての話は、水草一般についてなの
|  ですか? 可良時寿子さんの文章を読んだ限りではその様に思ったのですが。

 ニテラの様な下等な水草とか、コケ、藻類を除く、高等植物としての水草一般
の話しのつもりです。

|   次に、植物一般の進化過程についてはわかるのですが、だからといって陸
|  上の植物の根の構造をそのまま水草のそれにあてはめて考えるのは危険では
|  ないですか?

 水草と言っても、ほとんどの水草は、乾季には水の上に出て、雨季には水中に
没するという、水陸両用の植物です。

 従って、水の中で、葉や根が呼吸できるという事と、水の中で排水能力を持っ
ていると言う事は、陸上の植物と断絶のある違いではなく、能力の程度の差です
から、根、茎、葉の果たすべき役割は、基本的には陸上も水中も大した違いは無
いと考えています。

|  こういうとき、規模の大きな学校ってうらやましいって思います。
|   聞きにいこうにも生物科の教授に知り合いはいないし。

 いや、私の知識は学校で学んだ物では有りません。

【PONさん】

|  地球の遠心力は?潮のみちひきと関係があるとか。

 地球の遠心力も僅かながら働いているでしょうね。
 しかし、遠心力なんて、測定誤差以下にしか扱えないほど、強力な重力が働い
ており、アレヤコレヤを全部合わせて、大気の圧力(これも重力の作用)だけで
は木の中を真空にしても、水は10mしか持ち上がらないのです。

| 雨は?下から吸い上げるって事もあるけれど、雨だって降るし?

 良いところに着目しましたね。しかし、それはダメです。

 まず、植物の葉は、排水能力は高くても給水能力は殆ど有りません。
 そういう構造になっていると言う事です。

 次に、
        降ってくる雨を能率良く吸収できると仮定して、
        始めに高い木が有ると仮定すると、
上から降った雨を吸収しても、本来、樹木が持っている水を持ち上げる能力の高
さまで一気に落ちてしまい、木の中の水位は上がらないのですから、この植物本
来の水位以上の部分は枯れてしまいます。
 実際には始めから、その水位以上には成長できないと言うわけです。

 もし、水を吸い上げる力が、蒸発による真空力だけとしたら、トリチェリーの
実験を思い出すだけで、いくら上から供給しても一定水位以上に成れない事は容
易に解って貰えるでしょう。

水草>楽しい科学3(#6542)

 さて、植物の葉から水を蒸発させて体内の圧力低下を利用して水を吸い上げる
としたら、根を切断してもその切断面から従来通りの水を吸収できるはずであ
る。これは、丁度切り花を水に差している状態に対応するが、これだけでは水が
不足してその中に切り花がしおれてくるのは、誰でも経験するところである。

 植物の根の先端部と言うのは、切断面とは全く異なる原理で水を吸収している
が、これを一言で言うと、「根の先端部の細胞は半透膜である」と言えば解って
くれるだろうか。

◆
 半透膜と言うのは、濃度の異なる二つの液体を仕切って置くと、膜の両側の濃
度が等しくなるように、濃度の低い方から濃度の高い方に向かって、溶媒(水な
ど)だけが透過できる膜の事である。

 人工的な半透膜の代表はセロファンを挙げる事が出来る。

 例えば、セロファンで仕切られた両側に、一方に淡水、他の一方に海水を入れ
て置くと、海水の方に向かって淡水だけが浸透する。
 ここで、海水の方は、いくら水が入ってきても薄く成らず、どんどんと水位だ
けが上昇すると仮定すると、膜の両面で圧力の差が生ずるので、海水と水の水位
差が或る一定限度に達したときにこれ以上水が透過できなくなる。

 この、これ以上溶媒が浸透できなくなったときの、膜の両側の圧力差を浸透圧
と言う。
 浸透圧は、溶媒(物を溶かす物質)、溶質(とけ込んでいる物質)、濃度に
よって決まる。

 では、海水側に無理矢理圧力を掛けるとどうなるだろうか。

 浸透圧以上の圧力を掛けると、海水中から水だけが逆方向に浸透するので、海
水から真水を取り出す事ができる。これが、逆浸透膜による精水器の原理であ
る。

 ちなみに海水の浸透圧は25 Kg/cm である。
 つまり、パイプの底にセロファンを張って置き、パイプの中に海水を入れた物
を水中に漬けて置き、もし、パイプの中の海水が永久に薄くならないと仮定する
と、海水は浸透圧で25mの高さまで持ち上げられる事になる。
 勿論、その圧力でセロファンが破れるなんて話しは無しと仮定しての事だが。

◆
 植物の場合、根の先端部の細胞は半透膜になっており、植物体内には、水だけ
でなく、光合成された糖類やタンパク質の他、ミネラル成分がとけ込んでいるの
で、当然浸透圧が上がっており、外部との濃度差が無くなる方向、つまり、外か
ら中に向かって、水を吸収する。

 この半透膜で発生する圧力が根圧と呼ばれ、植物体内で、水を持ち上げる力の
源泉であり、真空圧とか、毛細管現象とは別の第3のポンプの力であって、植物
体内で水を更に10m以上持ち上げる力である。

◆
 ここで、重要な事に気がつく。
 つまり、根からどんどんと水を吸収するだけでは、何時かは体内の濃度が薄く
なり、これ以上水を吸収できなくなるので、根からの吸収を続けるためには、吸
収した水をどこかに排出して、体内の液体濃度が下がらないようにする機構が必
要になると言う事である。

 この排水は、葉からの蒸発と、葉の細胞にある排水機構に頼っており、葉の排
水と言うのは、体内の糖分などを透過させず、水だけを透過させる逆浸透膜とし
て働いているのであって、植物と言うのは、根の浸透膜と、葉の逆浸透膜で、水
のサイクルを構成している事になる。

 水草の場合、葉からの蒸発が期待できないために、能率の良い逆浸透膜を持っ
た水中葉に成れない物は、例え根が健全であっても新しい水を吸収できないので
生きて行けない事になるわけである。

◆
 ここでは、根の役割として水を吸収する事だけを述べたが、実際の植物の根の
細胞と言うのは、理想的な半透膜ではないために、水を吸収するときに、不純物
として、微量の肥料成分を吸収してしまう。
 これが根から肥料を吸収できる機構であり、水草と肥料の関係を人間と薬との
関係で例えるなら、

            水草                人間
         ---------------------------------
            根から吸収          口で飲む。
            葉から吸収          塗り薬。

の様な関係と例える事が出来るかも知れない。

◆
 植物の根が半透膜である事が解ると、濃度の高い肥料を与える事がどれだけ害
になる事か良く解る。

 極端に言って、植物体唐謔閧焉A外部から与えられた肥料が濃いと、根の部分
では、水が吸い出され、脱水症状が起きる事になる。
 これは、園芸の方で、濃い肥料を与えたときの「根焼け」と言う現象であり、
肥料は濃いのを一度に与えるよりも、薄いのを継続して与えるのがよいと言われ
ている理由である。

◆
 ナナ等の根を砂の中に埋め込むと、成長が弱るのは、呼吸の問題である。
 どんな植物の根も呼吸しているが、水中で呼吸するのは楽でない。

 水中での呼吸能力が劣る物は根が腐って水草になることが出来ず、それより少
しだけ呼吸能力の高い物は、流水中に根を曝して、呼吸を助ける必要があり、更
に呼吸能力の高い根を持つ植物は、砂の中に根を張る事が出来るわけである。

◆
 これで、植物の根の秘密と、植物の中の水を動かす3つの力(蒸発による真空
力、毛細管現象、半透膜)は明らかになった。
 南洋材が樹高35mの樹冠まで水を持ち上げて育つ事も説明できたし、水草が
水草として生きて行ける為の、根と水中葉の関係も明らかになった訳である。
 v(^_^)v メデタシ、メデタシ。

◆
 と、言うわけで、この話しはめでたく・・・・・・・・・・・・終わらない。
 まだ、続く予定である。


水草>楽しい科学4、実験編(#6594)

 さて、植物の根が半透膜として水(と、僅かな不純物としての肥料成分)を吸
収している事は前回述べたが、話しがうますぎて疑っている人が多い事だろう。

 と言うわけで、今回はこれを自分で確かめる実験をする事としましょう。
 人工の半透膜であるセロファンの袋を作って、そこに濃い砂糖水を入れて実験
するのが適当だと思うが、そうすると
        『ちょっと待て。植物の根はセロファンじゃあるまい』
と言う反論が聞こえてきそうなので、本物の植物の根を使う事とする。

 植物の根と言っても、細い根では実験が難しいので、今回はニンジンを使う事
にする。


◆ 実験道具。

 用意する道具は次の通り。

        新鮮なニンジン、1本。(半透膜のモデル)
        ストロー、2本。(水圧を観察するために、出来るだけ透明な物
                        1本は対照試験のために使う)
        ドリル、または三ツ目錐1本。(ストローよりちょっと細い物)
        包丁1。(ニンジンを切るための物)
        コップに1杯の水。

◆ 実験の準備。

 まず、スーパーマーケットで出来るだけ新鮮な人参を1本買ってきて、葉が付
いている首のところを水平に切断する。
 ニンジンにはここ以外に傷を付けない事。
 シッポの折れたニンジン等は使えない。

 この切断面から、ニンジンの長さの半分くらいの深さまで、ストローより僅か
に細いドリルの刃を使って、穴を開ける。
 今開けた穴の半分くらいの深さまでストローを差し込む。
 この時、ストローを口で吹いてみて、スカスカと空気が抜けなければ成功であ
る。
 ストローとニンジンを、水を入れたコップに入れる。
 コップの水深は、ニンジンの長さの70%位有れば良い。

◆ 観察。

 上の準備をして、2本のストローの中に水が登ってくる事を観察する。

 単なるストローの方は、毛細管現象で2mm位まで水位が上がっても、それ以
上は何の変化も無いであろう。これは、先端を切断されて、切断部から水を吸収
する植物の根の働きに対応する物である。
 勿論、毛細管現象で上昇する水位は、ストローの内径と、材質に依存する。

 ニンジンに差したストローには、すぐに水が上がってこないので、コーヒーな
どを飲みながらゆっくりと観察する事にする。
(あっ、これは私の好みです。人によってはビールでも良いでしょう)
 すると、ニンジンに差したストローの中を水が登ってくるのが観察できる。
 そのまま放置して置くと、もう一方のストローの水位を超えるだけでなく、最
後には、ストローの先端から水(厳密に言うと、単なる水ではなく、ニンジンの
体液であるが)が溢れるところまで水位が上がる。

 これがニンジンの根の表面にある半透膜によるポンプ現象の現れであり、根圧
と呼ばれている物の正体である。

◆
 今回の実験にはニンジンを使った。
 別に他の植物でも良いのであるが、失敗無く実験し易いと言う理由で選んだ物
であるから、興味のある人は他の植物でも実験して貰いたい。

◆
 今回は「子供の科学」レベルであるが、根圧を自分で確かめる方法を紹介しま
した。
 この実験方法を最後に書きたくて、シリーズのタイトルを「楽しい科学」とし
たのでした。
 以上で、水中散歩教室『楽しい科学・水草編』の授業はおしまい。チャン、チャン。

水草>楽しい科学への補遺  可良時寿子

 これで話しを打ち切ると、疑問が残るようですから、少しだけ補足して置きま
しょう。

◆

|  排出の能率を挙げるために気孔が増えるというのは、根から吸収を行なって
| いると考えた場合にはそのとおりでしょうが、根からの吸収が中心ではないと
| 仮定した場合には養分の吸収のために気孔が増えると考えられますよねぇ。

 だから、勝手な仮定なら何でも仮定できるのです。
 問題は、その仮定が正しいかどうかという検証です。
 もし、葉からの養分(水も)吸収が主で有れば、根を切断しても殆どダメージ
を受けないはずですね。ところが、実際には多くの水草は根を切断すると、勢い
が失われ、成長でき無いどころか、その中に枯れてくると言うのは、このシリー
ズの最初に、観察の結果を述べているでしょう。

 様々な仮定を置く事は出来ますが、どれが実際の観察結果に一致するかと言う
事で仮定の正しさを確かめないと、単に空想力比べの論議になるだけです。

◆

|  陸上植物の背の高さですが、いくら陸上植物と大部分の水草に共通点が
| あるとは言っても、いきなり南洋材を例に挙げられてもぉ・・・(^^;)
| 見た目からして全然違うものですし、確か導管の構造も違ったはずですから
| それを例に挙げてもなんか素直に納得いかないんですぅ。(^^;)

 高さ5cmにしかならない草を考察の対象としたら、水を運ぶ力は毛細管現象
だけでも説明できます。つまり、実際には他の力が働いている事を見落としても
気がつかない恐れがあると言うわけです。
 そこで、毛細管現象と、蒸発による真空力だけでは説明の付かない事実がある
事を突きつける事によって、浸透圧に考えが至るようにしようと言うわけで、水
を運ぶ三つの力を全て理解しなければお話にならないようなモデルを提出した訳
です。
 導管の構造が違うかどうかと言うのは、植物というマクロなモデルを扱う上で
は、どうでも良い事で、そこに目を奪われるとしたら科学的な観察力と、想像力
という点からみて、視野が狭いと言う事になります。

 実際、植物の構造の細かい違いを取り上げるとしたら、水草の種類ごとにそれ
ぞれ違いがあるわけで、それこそ、「水草」と一まとめにした論議そのものが成
り立たなくなります。

◆

|  水草が水没すると水中葉を出す理由の一端は判りました。
| 乾燥を防ぐ必要がない、効率よい水分の排出を行なえるようにするため、
| それらは判りましたが、それがなぜ「養分吸収のためではない」という結論に
| 繋がるのかが判りません。環境に合わせて水中葉になっているのならば
| 養分吸収にも適しているのではないかという考えが離れません。
|  この辺、もしよろしければ、もう一度詳しく説明してください。

 水草と言えども、自然界で何億年も掛けて進化した物ですから、この進化する
環境がどんな物だったか考えて貰いたいのですよ。
 普通、自然界の流水と言うのは、空気に触れているから各種のガスはとけ込ん
でいるとしても、雨とか、湧水を源として居る水は、本来貧栄養の水です。
 つまり、葉からの栄養吸収をメインとできるような富栄養水の環境で進化した
物では無いのです。

 もし、葉からの栄養をメインとしても成長できるほどの栄養に富んだ環境なら
淡水藻が繁殖するので、こんな環境では水草は光合成を妨げられて、快適に生き
て行けないでしょう。
 ちょうど、魚を沢山飼育している水槽という環境がそれに相当し、皆さんはコ
ケに悩まされ、水草が成長できない事を経験しているはずです。

 水草と言うのは、このシリーズの一番最初に述べたように、一度陸上に上がっ
たものが生存競争の少ない環境を求めて水中、或いは半水中に再進出した物です
から、富栄養水のところは藻類に譲り、藻類も殆ど居ない貧栄養水の環境に適応
しながら進化したと考えると、根から養分を吸収するという役割を捨てる事が出
来なかった理由は納得できると思いますがどうでしょう。

 近年、各地の湖沼の富栄養化(表現を変えると、汚染という)が問題になって
いますが、こういうところでは、多くの沈水植物は絶滅の危機に晒されており、
大体富栄養化という現象そのものはごく最近のことですから、水草と言うのは、
そういう環境で進化したものでないために適応できないでいると考えるべきで
しょう。つまり、水草と言うのは、葉から栄養を取り込むことは元々期待してい
ない植物だと言えます。

◆

|  根からの吸収は浸透圧(根圧)を利用しているだろうと思います。
| で、底床添加肥料を使った場合なのですが、底砂中の水が肥料分で高濃度に
| なって、水草(の根)が脱水症状を起こしたりしないのでしょうか?

 底床に埋め込むタイプの肥料と言うのは、容易に水に溶けない物となっていま
す。
 イニシャルD等が水に溶けてドロドロに成っているように見えても、これは物
理的に小さな粒に崩れた物が水中に分散していると言うだけで、化学的に溶けて
いるのとは違いますから、浸透圧が上がらず、根からの脱水症状が起きないと言
うわけです。

 従って、農業用の水耕、礫耕栽培用に市販されている、水溶性のミネラル肥料
などを、高濃度のまま底床中に注入したりすると、これは化学的に溶けている物
ですから、浸透圧が上がって、脱水症状を起こします。
 つまり、底床中に混ぜるタイプの肥料と言うのは、たとえ形が崩れても、水に
は溶けにくい構造に成っている必要があるわけです。
 見た目に形が崩れて溶けているように見えるかどうかと、実際に水に溶けて浸
透圧が上がっているかどうかは区別して考える必要があります。

◆

|  ところで、実際に研究者による水草の養分吸収などについての詳しい
| 研究結果って発表されてるのでしょうか?
| もし発表されてるのでしたら、是非知りたいですね。

 私が Watch している範囲には、水草の研究と言うのは殆ど有りません。
 これは、経済的に大きな利益を見込める分野でもなければ、化学技術の根幹に
関わる研究でもないと言う事で、どこも人と金をつぎ込む予算が付かないと言う
わけです。

 まぁ、社会的な要求の無いところでは、どんな研究も進まないものです。。
 それだけに、趣味のアマチュアが手がけても、それなりに面白い分野ではない
かと思っています。私はやらないけど・・・。

                    ASCII/net55370  NIFTY/NCC02701  PCVAN/KBB53931
                                      Oo。(^。^)y-゚゚゚  可良時寿子